懲罰房に拘束され三日目の夜。
18時ごろ、起きたと知ったのか看守が来てクソまずい飯を無理矢理口に押し込まれた。なんかちょっとこの前の恨みが籠っているか如く無理矢理口に流し込まれた。
この飯を食べたとしても死ぬことはない。
死にはしない。だから大丈夫。大丈夫だ。
あっ……。ちょっ……。なんか前食べた時より不味い。ジャリジャリしてて甘いのか辛いのか塩辛いのか分からない味。後で喉に指突っ込んで吐こう。
看守は持って来たタッパーから何かを取り出し皿に乗せた。
「嫌…… それは止めてくれ……!嫌だ…!それは無理だから!」
私が1番嫌いで嫌いでたまらない物がそこにはあった。赤くて小さい。そして青臭くて吐き気がする物。
何処で知ったんだよ!それ!嫌だ嫌だ!やめろ!
おい…!半分に切るな!丸呑みにして味を感じない様にする裏技が使えないだろうが!
「生のトマトはやめて……。それは嫌だ…。やめっ……!?!?!?」
口の中に青臭い匂いと味が広がる。クソまずい飯と合わせて気分が悪くなりその場で吐き出す。ゲロが口から溢れて服が容赦なく汚れていく。
生のトマトなんか最初に食べようとした奴の気が知れない。青臭い緑色のゲル状の中身が受け付けない。ケチャップになってから私の口の中に来て欲しい。食べた瞬間青臭くて匂いだけでも吐き気がする。
「や、やめて……。もう限界、限界……。」
その拷問はやめてくれ、私に効く。
いやマジでお願いします。お願いしますから。なんでもしますから。
「2個目ッ!?2個目はやめて!グゴォッ……!」
ミニトマトを口に皿に押し込まれる。吐くものがないのに嗚咽が止まらない。そんな拷問が23時まで続いた。5個から数えるのをやめた。
「ウッ…… ごめん。メルルちゃん。ちょっと吐きそう。」
「大丈夫ですか…… エマさん。」
「大丈夫。メルルちゃん。治癒魔法で治してあげた方がいいよ。」
「そうですね……。このままじゃ話を聞くどころじゃありませんし……。」
23時頃、懲罰房が開くとエマとメルルが扉を開けた。流石に吐瀉物の酸っぱい気持ち悪い匂いがする懲罰房に躊躇したらしい。メルルは手をかざして治癒魔法を……。治癒魔法?
なんで治癒魔法なんだ………?
メルルのかざした手は淡く光る。吐瀉物は逆再生のビデオの様に私に向かって……。ちょっ、待って。
「うぁぁぁ!あぁァァ!!オウェ……!ゴゴゴゴ…………!!」
時間が巻き戻るかの様に自分のゲロが口の中に戻っていく。この二人は絶対許さない。ピンポイントに私が嫌がる事をしている。
巻き戻りきった時に腹の中に全部収まっていた。具合悪い。コイツらの食べる飯にスイセンの根でも仕込んで下痢ピーでも起こさせてやろうか?
「メルルちゃんありがとう。やっと落ち着いて話ができるね。」
「いえいえ…… こちらこそ感謝しているんですよ。助かってるのは此方です……」
「事故死って事にするの?それとも誰かに冤罪ふっかける為に殺すの?」
「チサトちゃん…… 状況分かってる?ボク達が指示するだけでチサトちゃんは死んじゃうんだよ?」
「ここまで来たらなる様にしかならないし、感情的に喚いても助けを求めても変わらない。」
あと、あんな目に合わせた上にイチャイチャしやがって……
あとコイツら殺人を唆したりしてるよな? ……ならコイツらは敵だ。意味だけ理解しそれ以外を遮断した方が良いだろう。
「ボクはさっさと処理した方がいいと思うけど…… メルルちゃんがね…… 」
「昔、私達を助けようとしてた人間の騎士にとても似てて…… 調べて貰ったらその人の子孫って事が分かって……。早く苦しませないで【なれはて】にさせてから冷凍保存したいのですが、なかなか… 魔女化が進行しなくて……」
「諦めた方がいいよ。この子はシェリーちゃんみたいに魔女化しそうにないから。」
「いえ…、まだもう少し生かしておきます…… 出来れば冷凍保存したいので……」
「…でも生かしていたら何して来るか分からないし邪魔だよ。ならもうこの場で拷問した方が早くないかな?」
「エマさん流石に可哀想です…… なら、もっとミニトマトを食べさせて見ましょうエマさん。漬物も苦手らしいので沢山食べさせた方がいいかもしれませんね…… 」
「メルルちゃんは… その…… 優しいね……」
話が物騒だしコイツらはおかしい、しかもイチャイチャしてる。でもまるで漫画やアニメの悪役そのまま現実に現れた様な奴らだ。【危険予知】の反応は強くなって来ている。特にエマの方から。
…というかミニトマト食わせられたのメルルのせいかよ!次は漬物!?いや、本当に勘弁してください…!子供舌なんだよ私は!ブラックコーヒーも飲めないくらいの!
「ど、どこまで知ってんの私の事?」
「言うわけないでしょ。チサトちゃん。」
「じゃ私をどうするの?」
「ん〜…… 暫くは何としないよ。
こんなに早くバレるのは想定外だったし、事故でも装って処理でも良かったんだけどメルルちゃんがやめて欲しいって言ってくるからね。
でも、例えボク達の事話したとしても、チサトちゃんの言葉なんて誰も信じてもらえないだろうからいいかな。」
それはそうだ。エマとメルルはグループの中心にいるメンバーで信頼も絆もある。私が「エマとメルルは黒幕だ。」と言ったとしても気でも狂ったと思われるだけだ。それをしたら後はもうやりたい放題だ。印象操作も冤罪も。
どうしたものか……。明日には懲罰房から出れるかもしれないが……。その後はどうしたらいい? この詰んでいる様な状況を……。
二人は暫くした後、懲罰房から出て行った。懲罰房の外で何か話をしていたが懲罰房自体が防音性が高いのかあまり聴こえなかった。
この夜私は寝付けなかった。二日も意識飛んでいた事もあるし二人と話した事もある。しかし、今すぐ解決しないといけない問題に直面していた。
「う、ウゥ……… ト、トイレ…… トイレはないのか…?」
大小どっちも限界まで達している。罵倒や嫌みならどうでもいいがお漏らしは流石に……。その尊厳は諦められない。無理だ。人生諦めてる私とはいえ漏らすのは………嫌だ。
「はぁ…… はぁ……!寝たら終わる…… 色々と終わる…………!うぅ……。」
ヤバい、マジヤバい……。腹がぁ……。先の見えない未来より目先の危機が……。【危険予知】は命の危機に繋がる様な危険を知らせるもの。この危険には反応しない。少女の尊厳まで知らせてくれない。知らせてくれたとしても意味がない。
朝まで耐えろ…… 朝まd…… 波が……!来たッッ…!
…
…
…
あっ………
…
…
…
今は何も考えたくない………