原罪 諦囚者 【アキラメニトラワレタモノ】 作:oldsnake
殺人未遂事件の夜。
私は氷上メルルに付きっきりで介抱されていた。気弱でおどおどしていて優しくて小動物の様な彼女は心配して声をかけたくなる。
…しかし、私の【危険予知】の魔法は相変わらず【危険】だの【嘘付き】だのと警笛をならしている。それにあの【黒部ナノカの囚人記録】の事もある。
警戒しその事は悟らせてはダメだと思い私は今は深く考えない様にする。
「あ、あ、あ…… あとは安静にしていれば治るはずです。すいません……。
その…… 魔法が弱くて完全には治せなくて……。」
「充分すぎるよ。普通ならこの傷は2〜3週間しないと完治しない様な傷なのに…。これなら2日ぐらいで完治しそうだ。」
クロノちゃんから聞いてはいたが【治療する魔法】は想像以上だ。魔法を使った瞬間から少しずつ治っていく。少し動かしてみたが傷も身体の中の損傷も不完全だが治っている。
「肩で良かったよ。胸とか腹ならもっと重症だったし。」
「あ、あまり無茶しないでください……。」
「私は身体だけしか取り柄だからいいよ。」
「そんな事……。ないです……!
皆さん心配してるんですよ…… ご自身を大切にしてください……。」
目をうるうるとし気弱だが優しく意志はしっかりしている。…と私は思った。こんな子k何故【危険予知】が警笛を鳴らしているのか?でもメモの件もあり合わせると黒よりのグレーで警戒必須だが。
私は刀は何処にあるか見るとベットのそばに立て掛けてあったので私はベットに引き摺り込んで刀を側に置く。
「メルルちゃん。そういや思ったんだけど将来お医者さんになりたいの?」
「え?あっ……。」
「医療の知識あるしお医者さんが夢なのかなって。」
「いえいえ……。私の【傷を治す魔法】は傷は少しずつ治せますが感染症とか痛みはどうにもなりません。なので……。その……。ある程度は医療の知識があった方がいいかな?って……。」
「そう……。優しいんだね。」
「痛くて眠れないなら言ってくださいね。睡眠薬があるので……。」
「大丈夫、痛みには慣れていから。」
痛みを感じて反応するのは無駄だと判断し自分から反応しない様にして慣らしている。この程度は大した事ない。
「あと……、その……。心配… なんです。チサトさんが……。ミオさんと揉めたってききましたし……。」
「あの人と仲良くなるつもりはないよ。無理に仲良くなろうとして嫌な思いしたくないのはお互い様だと思うから。」
「ですが……。このままだと……。その……。
何かあったらミオさんに罪を全部擦りつけられちゃいますね……。」
「それもそうか……。その時はその時で考えるよ。心配してくれてありがとうメルルちゃん。私はもう寝るね。」
確かに……。ある程度は付き合いはあった方がいいか。…でもサッと関わる程度にしておこうか。私はあの人が嫌いだ。
私は刀を抱いたまま寝た。【危険予知】の警笛は今だ鳴っていて、まともに寝れる訳がないが目を閉じて休むだけでもかなり休める。そ目を開けて動いているよりマシってだけだが…。
【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】
【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】【危険】
警笛が一瞬でボウガンで射抜かれた時みたいに、サイレンの様に鳴り響く。ここで焦ったらダメだ……。悟られたら死ぬ。私は目を閉じならがメルルへと話しかける。
「メルルちゃん、今日はありがとう…。こんなに優しくしてくれて嬉しかったよ。だから何かあったら私に言ってね。助けになるから。」
「え…?あっ…。はい、あ、ありがとうございます…。そう言われると嬉しいです。」
「ところでメルルちゃん……。手に何か持ってる?」
「えっ?いや……。何も持ってませんが……。どうしたんですか?」
「変な事聞いてごめん。もしかしたら私の【魔法】なのかな?って思ったけど違うみたい。神経質になってただけみたい。なんかごめんねメルルちゃん。」
「そうですか……。」
サイレンが警報へと変わる。【魔法】をちらつかせて牽制する作戦が功を奏したらしい。だが今夜は寝れない夜になりそうだ。この出来事で私の中でのメルルの氷菓は確定した。メルルは危険な人だと。【危険予知】の反応は正しかったと。
この夜、私は目を閉じて警戒し続けた。本当に寝てしまえば永眠しそうで怖かったからだ。武器はあくまで抑止力であり最終手段であり使わないに越した事はない。
…
…
…
唐突に過去を思い出す。
中学の頃に私は自殺すら考えた。しかし、私は自殺した後の事が怖くて足が止めてしまった。
学校で自殺したら学校に迷惑が。
車に跳ねられたら運転手に迷惑が。
そして何より家族に迷惑が。
死にきれず怪我で迷惑をかけたらどうなる。
死ぬ事が怖くて恐ろしくて自殺すら出来ない臆病な私。
【危険予知】で感じ取ってしまった周りからの悪意に傷つく事が怖くてプライドも自尊心や心を持つ事を諦めて、自ら壊して捨てた筈だ。
なのに… なのに… 怖くて足がすくむ。いくら感情や自尊心や心を壊し捨てようと【死への恐怖】だけは拭えない。
人である事を諦めて機械の様に心を動かし、条件で反応する様に行動する様にしたとしても。
【死への恐怖】だけはどうにもならない。だから私は死ぬ瞬間は無様に泣き叫び命乞いするだろう。でもせめて人の役に立って感謝されて死にたいものだ。
この調子じゃ、無理だと思うが……。
…
…
…
暖かい日の光が私の頬を照らす。一睡もせずに無事に朝を迎えたらしい。【危険予知】の反応は消えている。目を擦り医務室を見回すと隣のベットで寝ているメルルがいた。
私は刀を腰に差して背伸びする。左肩は少し痛むがこのぐらいなら動く。時刻は朝の7時半で一睡もしてないためにクソ眠い。
医務室を出ようとするとエマちゃんとすれ違った。
「あ、チサトちゃんおはよう。あれ、メルルちゃんは?」
「メルルちゃをなら今寝てるよ。起こそうにも起こしづらくてこのままにしてるよ。」
「肩にボウガンの矢刺さったって聞いた時はビックリしたけど……。 その… 怪我の具合は?」
「まだ少し痛いけど全然動けるよ。メルルちゃんは凄いな〜…」
「よかった〜…。」
安心するエマちゃんをよそに私は朝ごはんを食べる為に食堂へと向かった。その最中、エマちゃんから鋭い殺気を感じた様な気がしたが私は気づかないふりをした。
私は死にたくないから。