「ないよー。観ててくれたの?」
「ゆうじばっかりだった」
プリスクールへのお迎え
悠月と悠花はお友達のエリーゼちゃんにまた捕まってる
初恋キラーをしちゃった悠花、沼に落とした悠月のダブルコンボでエリーゼちゃんはうちの子供たちが大好きな模様
「エリーゼ、もう帰る時間なのよ?」
「やっ!」
「……ハァ。いつもすみません」
「いえ。悠月、悠花」
「ゆーじ」
「ゆじ」
名前を呼べば、困った顔の二人が駆け寄ってくる
ふと、思いついたことがあった
「明日、俺たちが住んでいるアパートの住人でバーベキューをするんです。一家族までならお呼びすることができるんですが、どうですか?」
「ごめんなさい。実はうちも母とバーベキューをするんです。準備のためにこれから母のところに」
「途中まで、一緒に向かいましょうか?」
「ありがとうございます。ほら、エリーゼ。グランマのところに行く約束でしょう?」
あのアパートの大家がお隣の老婆であるのを知ったのは、ちょうどバーベキューの話をされた時だ
すでに子供が巣立ったシニア世帯の多いアパートに、まだまだ幼い子供たちを連れた俺が引っ越してきたことのお祝いだという
楽しみにしてたことを言われると、すぐにそちらに飛びついてしまうのは子供によくあること
挨拶をして、明日のバーベキューで必要なものを買いにスーパーに向かう
我が家が用意するのは、焼きおにぎりの材料である
「ユーカ!ユーキ!」
「まぁ、イタドリさん、うちの孫と知り合いで?」
「プリスクールが同じなんです」
弟たち二人は熱烈な挨拶をされていた
金髪碧眼の白人の幼女に抱きつかれ、助けてくれとばかりに悠仁に手を伸ばしている
今日の俺たちは悠仁お気に入りの恐竜パーカー
その格好も相まってか余計に熱烈に挨拶をされている
「イタドリさん、これどうやって焼くんだー?」
「あ、今行きます」
「にぎにぎ〜!」
「おににり!」
弟たちがなんとか脱出して悠仁の側に駆け寄る
悠仁がラップをかけていたおにぎりを、網の上に置いていく
俺は弟たちが身を乗り出さないようがっちりホールドする役
「先に焼いて、その表面にタレをかけるのか」
「はい。醤油と味噌の二種類作ってきました。タレをかけてからもう一度表面を炙って、出来上がりです」
きゅうっ、とお腹がなった
「お腹空いた?」
「がまんできる」
「もうすぐできるからね。お皿持って来て」
弟たちと一緒にプラスチックの皿をもらい、タレを用意し始めた悠仁の近くに並ぶ
「お客さーん。味は何にしますか?醤油と味噌がありますよー」
「しょーゆ!」
「みしょ!」
「悠月は醤油、悠花は味噌ね。悠雪は?」
「しょうゆ、2こ」
ぴ、と指を二本立てると、悠仁がお肉食べられなくなるよ、と頭を撫でてくる
それでも、2個、というと、悠仁は表面がカリッとしたおにぎりに、タレを塗ってくれる
タレを塗って、トングでひっくり返す
焼けるいい匂い、弟たちのお腹も鳴る
それぞれ焼けた焼きおにぎりをお皿にもらって、椅子に座る
「いただきます」
「いたーきます」
「いたーきます」
焼きおにぎりにかぶりつく
焦げた醤油の香りが食欲をそそる
「んまい」
「うま、うま」
「うみゃい」
焼きおにぎりは悠仁がつきっきりで次のを焼いている
その間、同じアパートの人たちが俺たちをみてくれていたが、俺たちのことを大人しい子だと口々に言っていた
「エリーの!エリーの!」
「大人しく座っていて。エリーゼの分はもうあるでしょう?」
「エリーの!」
本物の幼児は大興奮でピョンピョン跳ねているから、余計に大人しいと思われているんだろう
まぁ、体に引っ張られて幼い言動をしているのは確かだが、こちとら前世もある大人なんで…
おにぎりを食べる俺たちのところに、焼けた野菜と肉が運ばれてくる
「よしよし。坊主たち、串から外してやるからな」
「うしさんください」
「ビーフの方が好きか!よしよし、一等うまいとこをあげるからな!」
アグアグと大人サイズの大きな肉と格闘していると、こら、エリーゼ!と叱る声
顔を上げた先で、こけた幼児
その幼児が危うくバーベキュー台にぶつかりそうになったのを、悠仁が咄嗟に庇う
じゅうっ、という嫌な音
「ッ゛!!?」
悠仁の左手は、指が二本ない
その手が、幼児を庇い、バーベキュー台に当たった
「おい!大丈夫か!?」
「水!水持ってきてくれ!」
「ぁ、大丈夫ですっ、反っ、NEXTですぐ治せるんで」
悠仁はあっさりと火傷を治して、焦げた服をみて着替えてきます、とこちらに近づいてくる
じわじわと狭窄しつつあった視界
悠仁に頭を撫でられて、ポンポンと軽く背を叩かれる
「大丈夫だから。ね?」
こっ酷く母親に叱られる幼児を視界から追い出して、グリグリと頭を悠仁に押し付けた
咄嗟に受け止めた、エリーゼちゃん
勢いは殺しきれず、バーベキュー台に当たった手の甲が焼ける痛み顔を顰めて、ゾクッと背筋を通り抜けた悪寒に子供達を見た
子供たちの開きかけた複眼
大丈夫だと、見せるために笑顔を見せる
火傷の応急処置を、と腰を上げたお隣さんにすぐに治ると見せて、袖口の焦げた服を着替えるために子供たちに近づく
大丈夫だから。ね?」
宿儺子供たちを通して、宿儺に語りかける
ああ、宿儺がブチギレてる
何事もないといいけれど