魂の寄る辺、生きる寄す処   作:少彦名

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不審死事件が相次いでいると、司法局内で話題となっていた
狙われるのは二十代後半から三十代の、日系人の男性
見た目だけでおおよその年齢をつけられた俺も、その狙われるであろう対象の範囲内だからと、その事件の詳細を伝えられた
その死体は、まるで強酸でもかけられたかのように溶けているのだという
時には内側から破裂しているようなものもあると

「……頭の片隅にでも、留めておきます」

宿儺の指は猛毒
そして、内包される呪力は莫大である
それらを得るために、手っ取り早い方法は指を食べること
でも、俺以外の術師は、指を食べたことで総じて死んでいったという
五条先生がなんの気なしに語り聞かせたその末路に、酷似していると思った
まさかとは思う
だが、子供たちという例がある
子供たちに混じる魂の欠片を縁に、あの呪いの王ならば、こちらにくることも容易くこなしそうだ

「イタドリくん。プリスクールから連絡が来ていたよ」

判事の執務室から詰所へ戻った俺にかけられた言葉

「プリスクールから?」

「近辺で不審死事件があったそうだ。早めの迎えをお願いしたいそうだよ」

「わかりました。今日、この後はなんもないっすよね」

「ああ。休みにしておくよ」

「ありがとうございます」

詰所の事務官に頭を下げる
今日はもう、早く家に帰ろう
早く、子供たちを抱きしめたい


なぜ戦わない、なぜその目は私を見ない

兄弟全員が、感じ取った呪力の発露

悠仁はヒーローと話していて気づいていない

悠仁と繋いでいた手を離して、路地裏に歩いていく

 

「あ、ちょっと。勝手にどっか行かんで」

 

路地裏の呪力は、酷く肌に馴染んだ

路地裏に入り、悠仁とヒーローたちが追いかけてくる足音を聞きながら

その姿を見て目を見開いた

おそらく腹部が破れている何かが転がっていて、その何かに覆い被さる姿

ゆらりと立ち上がり、口元を拭ったその人物は、にぃと笑みを浮かべた

目の前に、推しがいた

四つ目に四つ腕、加えて呪印

ポカンと見上げる俺たちの前にいた

 

「…………宿儺?」

 

「なんだ。嬉しくなさそうだな」

 

キュウ、としなった目は、兄と同じ青灰色

その傍には、白髪の人物が控えていて、内心推しとの遭遇に兄弟揃って大歓喜していた

弟が目の前で動いている推しが本物かどうか試すために、その手で掌印を組んだ

 

「《ぎょくけん》」

 

普段は、擬音語で顕現させる影の式神

正しい呪詞でもって顕現した式神には目もくれず

推しは弟を払いのけた

壁に叩きつけられた弟は、ずるずるとずり落ちる

玉犬は影に戻り、悠仁の半ば叫ぶような弟を呼ぶ声が路地裏に響く

 

「《か──》」

 

続いて兄が放とうとしたその一撃は、寸の間早く推しの斬撃によって強制的に止められる

生温い体液が頬にかかる

どしゃり、とその場で兄が崩れ落ち、丸太のように太い腕が首を掴み上げた

首を締め上げられる

 

「──キュ、グ」

 

カリカリと腕を引っ掻く

悠仁が推しに殴りかかろうとして、白髪の人物の術式で動きを封じられる

 

「宿儺ぁぁあ!!テメェぇええ!!」

 

「クソッ…!至急応援をください!不審死事件の被疑者が目の前にいます!」

 

「カテェな!ローズ以上の氷使いのNEXTか!」

 

バキッと氷を破壊した悠仁

俺は投げ捨てられ、急に入ってきた空気に咽せて背を丸める

白髪の人物…裏梅が背を撫でてくれる

 

「お初にお目にかかります、若」

 

「ケホっ……わざとゆうじをおこらせたのか」

 

「ええ。このほうが効くから、と」

 

兄に目を向ける

あの程度、兄にとっては怪我とも言えない

だが、兄のことだ

推しの考えていることを理解した上で、斬撃を受けた後、崩れ落ちたのか

推しと悠仁の肉弾戦は見応えがある

 

「…ふしんしじけんは、うつわをさがしていたのか」

 

「はい」

 

「ゆうじとともにいるおれたちにりんきしたか。ゆかいゆかい」

 

野次馬が近づいてきたな

少し脅しておくか

路面に斬撃を飛ばす

突如抉れた地面に腰を抜かして逃げていく野次馬

 

「やみよりいでてやみよりくろく。そのけがれをみそぎはらえ」

 

「お見事にございます」

 

降ろした帳は、部外者を排除するためのもの

中が見える代わりに、何人たりとも入れない帳

さあ、そろそろ悠仁を止めるとするか

会えて嬉しいだろうに

全く、素直じゃない




「ゆうじ」

「っ、……!」

くい、と引かれたズボンの裾
は、と息を呑んで
宿儺から目を離せず、体がぎしりと固まる

「ゆうじ」

グッと強く引かれた裾
宿儺が近づいてきて、俺を通り過ぎ
小さな体を抱き上げる

「クハッ。随分と甘やかされているらしい」

「なぜ、ゆうじにあいにきた」

「俺の器がフラフラと遊び歩いているのでな。迎えに行かねばなるまい?」

「よくいう。ゆうじをこうしたのは【おれ】なのに」

宿儺の腕が、俺の腕を掴み引き寄せる
いつの間にか、悠月と悠花も白髪の術師に伴われて近くに来ていた

「しおどきだぞ、ゆうじ」

「次はどの世に渡るか。楽しみだろう?」

宿儺の手には、鏡
燐光を帯びた鏡が、俺たちの顔を写すその向こう
助けようと、帳を叩く音が鈍く響いていた
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