今日はピクニック日和
唐菓子という揚げ菓子と、干した果物を詰めた巾着を持って
なぜか宿儺もついていくと言うので、みんなで近くの丘に来たわけだが
なぜか俺は着物で顔を隠せって被せられていて視界が悪い
外そうとするたびに宿儺が被せてくるから諦めた
「うぁっ!」
そんでもって、子供たちも被り物を被っているわけだが
視界が悪かったからか、人にぶつかってしまった
「すみません!うちの子が…!」
「…………ほほ。これはこれは。元気でよろしい」
うおわ、あれが狩衣ってやつか
その老人がぶつかってすっ転んだ悠花を立たせてくれる
「あぅ。ごえーなしゃ」
「おお。この齢でちゃんと謝れるのは偉いのう。怪我は────」
「触れるな」
その老人が触れようとした刹那
放たれた呪力の圧
咄嗟に、悠花を抱き込み老人を庇うように腕を広げる
被っていた着物が裂け、ずり落ちる
「やめて」
「……ふん」
ぬうっと現れた宿儺の姿に、息を飲んだ老人
多分、俺が庇わなくても良かったんだろうけど
悠花はびっくりして固まってるし、悠雪と悠月はなんかに捕まってる?
「これ。やめよ、宵藍」
「お願い」
宿儺が圧を放つのを止める
ジッ、とそこを見ると残穢くらいに薄い何かがその場に止まっているのがわかる
「ねぇ、うちの子を離してくれる?」
離してくれないか
どうしたもんかな
「たぬきじじい」
「…………へ?」
「たぬきじじい」
ニッコニコ笑顔で人様指差して何言ってんのこの子はぁ!?
「そこにいるの、ちゃんと見えてるの?」
悠仁が居心地悪そうに座る部屋の中
俺たちはガッツリハッキリ、こちらを警戒して監視するその目を見上げていた
「みえる」
「ひとがいる」
「つよい!」
「……そっかー」
悠仁に手招かれる
悠仁の手の中には唐菓子の入った巾着
一人ずつもらって食べ始める
美味い
「もしかして、俺たち監視されてる?」
「今更気づいたか」
まぁ、この時代
この髪色、この目の色は鬼だと言われても仕方ないだろう
地毛というにはいささか明るすぎる
「俺も吾妹も。ここでは鬼だろうよ」
「また呪いだのなんだの言うようなら出てくからな」
「…俺がなぜ、衣被をさせていたかわかっておらんようだな」
「なん、」
ぐっ、と悠仁の腕を引っ張った推し
うわぁ、手ェデッカ
悠仁もそれなりに恵まれた体躯なのになぁ
「この色は、目立ちすぎる」
「目立つって…当たり前だろ」
「人は、己と違うものを排他する。この色で、のうのうと人前に出てみろ。色が違う、鬼だと言われ、殺されるぞ」
なるほど
推しは、そうやって人ではないとレッテルを貼られ続けたのか
だから、呪いであろうとしたのか?
「…………宿儺。もしかして、あの人にこの子が殺されると思ったの?」
下の弟が、目を丸くして推しを見上げた
髪こそは黒いがその瞳は血のような赤
その色が、鬼だと言われると思ったのだろうか
「腹の底で何を考えておるかわからん。たぬきジジイのようだからな」
「普通に悪口だからな、それ。お前は誰に教わったのさ」
推しに腕を離され、もごもごと口を動かしていた下の弟の頬を突く
側から見てれば、ただの家族の団欒に見えるのだろうか
「失礼しますね。縫い終わりましたよ」
部屋に入ってきたのは妙齢の女性
悠仁の裂けた衣被を塗ってくれていた
だから、ここに来ている
「ありがとうございます」
「随分と可愛らしい子達ですね」
「自慢の子供たちです」
悠仁にとって、俺たちは推しとの繋がりだった
この繋がりが、本当に推しを呼び寄せた
「おいくつですか?」
「この子が五つで、この子たちが三つです」
「まぁ、双子…」
あ、そっか
昔は、双子は不吉の前兆って言われてたっけ
「もっと」
「もうないよ。帰ったらね」
「ないない?」
「そ。ないない。アイツが食べちゃったから」
何?
それは推しとはいえ許せん
「おやちゅたべたー!!」
「ないなった!ないなった!」
「おやつ、もうない…」
宿儺に激突する勢いで飛びかかった弟たち
そうだ
もっとやれ
「……、ウザ」
「お前が悪い」
子供の体からおやつを取り上げるのはダメだ
ひもじくなって機嫌悪くなるんだぞ
耳元で泣いてやろうか
「まぁ、あなたが。お噂はかねがね」
宿儺が飛ばしていたらしい式
迎えに来た裏梅と女鬼の如月が並ぶと、うん
美男美女ってすげぇな
「おや。どこぞの家の娘だったのかのう」
「京を移した際に、病を得ていたために捨てられまして。気づけば鬼に」
「なんと」
「ですので、乳母のようなことをしております」
如月は公家の娘らしく嫋やかである
でも、その身に溜め込んだ恨み辛みは相当のものだったのだろう
強い女鬼である
「ああ、忘れていました。もし、藤原家の者に会うことがあれば」
如月の目が、一瞬だけ一人の娘に向く
「藤の欠け月は、今も見ているとお伝えくださいな」
「……かけづき…、!」
「それでは」
今日は月が細い
宿儺の姿もこの闇月夜の中なら目立たないだろう
「お待ちください…!」
「彰子!?」
「離して、昌浩!行ってしまう!大叔母上…!」
大叔母?
ああ、どうりで
よく似ていたもんね
「今宵は良い月です。まことに」
如月が手に持った扇子を翻す
ざぁっと吹いた風が運んできた花弁
赤い赤い、彼岸花の花弁
風が収まる
目の前には屋敷
まって
めっちゃ便利
「ささ、今日は随分と遅くなっておりますから。夕餉のお支度もできておりますよ」
この人、次の世界にも連れていっちゃダメかな