魂の寄る辺、生きる寄す処   作:少彦名

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「あらー」

鏡を使い、移動した先で
幼児の頃に戻ってしまった子供たち
可愛い

「んふ。ふふ」

短くなった手足で、ブカブカになった衣服と格闘して脱ぎ捨てていく
時々、コテン、と転がりながら、Tシャツだけになり、悠雪が手を上げる

「ゆうじ、だっこ」

可愛い
俺、何回もこの可愛い子たち見れるってこと?
嬉しい

「ゆーじ」
「ゆじ」

「ふへ。可愛い〜」

子供たちをぎゅうぎゅうと抱きしめる
なんでこんなに可愛いかな
うりうりと頬を擦り寄せる
この世界がどんな世界なのかはわかんないけど
子供を可愛がって何が悪い

「っし!集落を探すか!」

いつものように
悠雪を背負い、悠月と悠花を抱っこして
どこかの山の中を歩く

「どこだろうなぁ、ここ」

「ゆうじ?」

「大丈夫だよ。どんな世界でも、俺はお前たちとずっと一緒だから」

眼下に広がったのは、円盤状の大都市だった


神に祈る暇も無いくらい

兄曰くは、ここはNEXTという超能力者たちがヒーローとして戦う世界だそうだ

ヒーロースーツにはスポンサーのロゴが書かれているそう

で、今

 

「子供を離せ!」

 

俺は今、人質になっていた

悠仁は兄を守って殴り飛ばされた

悠仁は飛ばされた先の窓ガラスを突き破り、ビルの外だ

衝撃を増幅するNEXT、といえばいいのか

俺に銃を突きつける犯人は、ニヤニヤとしている

悠仁の救助に向かったのは、空を飛ぶヒーロー

弟も別の犯人に人質にされている

勝手に術式を使うわけにもいかないしなぁ

 

「さっさと車を用意しろ!」

 

悠仁のことだし、自力でビルの壁登ってきそうだな

さて、そろそろ抜け出すか

 

「ゆーか」

 

「ゆじ、おこる」

 

「ひじょーじたいだ」

 

俺は斬るしかできないしな

ここは、弟の出番だろう

 

「《わんわん》!」

 

悠花の影が伸びる

その中から、現れた白黒の狼犬

バウッと吠えた二頭の狼犬が、犯人たちに襲いかかった

 

「な、何だぁ!?」

 

「犬っ!?」

 

玉犬という二頭の白黒の狼犬

なるほど

この世界だと、術式もNEXTと同一視されるわけか

玉犬は犯人に襲いかかり、俺たちを取り返して距離を取る

母犬が子犬を守るように

俺たちを背に庇い唸り声を上げた玉犬

犯人たちは犬に襲われて、俺たちを手放してすぐに逃走

でも、逃げられない

悠仁の穿血が、犯人たちを捉えた

 

「っ……悠月!悠花!」

 

「ゆーじ!」

 

悠仁がビル側面を駆け上がって、割れた窓ガラスから中に入ってくる

悠仁の瞳も、ボンヤリと燐光を放っていた

俺たちのことを抱きしめた悠仁の背には、いつも通り兄がしがみついている

 

「ゆうじ」

 

「ん?何?」

 

兄が指差した先

こちらを見るヒーロー二人に、悠仁は固まった

やば、と声を漏らした悠仁

ぎゅっ、と俺たちが抱きつくと同時

悠仁は再びビルの窓から外に飛び出した

悠仁の救助のためにいた空を飛ぶヒーローすら足場にして、夜の都市に逃げ込む

うわ、テレビのカメラに追われてる?

 

「マズいなぁ。逃げられないかも」

 

「待ってくれ!君たち!」

 

「どうしよっか」

 

悠仁も俺たちも、前の世界で生きた十年の経験がある

少しの演技くらい、問題ない

 

「にげだしたへーきになればいい」

 

「へーき?」

 

「しょーねんへーだ」

 

「ああ、なるほど!少年兵、ね。兵器か…それなら、お前たちのその服装の説明もつくかぁ」

 

さあ、この世界で生きていこうか

 

「むこうならめがすくない」

 

悠仁が逃げ込んだビルの路地裏

そこで追いついてきたヒーローたち

突風に足を止めて、ヒーローたちからジリジリと距離を取る




「ゆーじぃ!!」

「返せ!返してくれ!」

「お〜よーしよし。怖くないぞぉ」

白と緑のスーツのヒーローに捕まる悠月
俺自身は緑のスーツのヒーローに抑えられている

「暴れるんじゃない!」

「離してくれ!」

「ゆじ!」

「大丈夫よぉ!ほーら、怖くないわぁ!」

悠花も手を掴まれて、赤いスーツのヒーローに捕まっている
大丈夫
全て、うまくいく

「ふー…ふー…」

悠雪は、思わず使ってしまった術式でヒーローに切り傷を負わせてしまった
俺を守ろうとして咄嗟に使ってしまったが、血に濡れたせいで両面宿儺としての本性が出てきてしまったらしい
今は術式で威嚇しながらヒーローたちを牽制している

「……おい!バイソン!一回離してやれ!」

「だが!」

「まずはあの子供を落ち着かせる方が先決だ!多分だが、パニックを起こしてやがる!下手に俺たちが近づくより家族が近づいた方がいい!」

離された手
すぐに悠雪を抱きしめれば、ぎこちなくしがみつかれる
よーすよすよす
落ち着け〜

「…落ち着いたか?」

「……ん」

燐光を帯びていた悠雪が落ち着き、ヒーローたちもわずかに緊張を解く
赤と白のスーツのヒーローが、スーツのマスクを外した

「あなたたちは何者ですか」

「……」

俺たちのために、騙されてくれ
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