高専のことをぼかして伝えた
任務をこなして、報酬を得る
呪霊を祓うことを人を殺すことにいい具合に勘違いしてくれたみたいだ
目の前にいる判事は、難しい顔をしていた
「正確には、人間兵器と言っても差し支えないかもしれません。非合法な手段…おそらくは誘拐や売春で生まれた無戸籍の子供のうち、NEXTの子供だけを選別し、教育を施した後に商品としているのでしょう」
「……悠仁って言ったか」
「何だよ」
子供たちは、今は眠っていた
「その子たちよぉ。お前の子なんだろ」
そりゃあ、特に悠月はここまで似てるしな
「……だったら、なんだよ」
「その子たちの母親は」
「知らねぇ」
それは、本当だ
突然、現れたから
「……可愛い子たちだな。全員、NEXT持ってるのか?」
「まぁ」
この世界では、術式はNEXTという超能力となるらしい
あの燐光はそういうことだったらしい
NEXTについての常識のなさ
ヒーローたち相手にあれだけの逃走劇
これらも含めて、俺が少年兵として犯罪組織に飼われていたと勘違いしてくれたんだろう
「どうして、逃げた?」
「……言えない」
「……この子たちのNEXTは、危険だって判断されたんじゃないのか」
そのまま勘違いを続けてくれ
「お前、子供たちを殺せって言われたんじゃないのか?だから、逃げたんだろ。組織を潰して。違うか」
沈黙も、良しとしてくれよな
「全部見せなきゃだめ?」
「保護観察期間中であることを忘れずに」
「…わかったよ」
悠仁に頭を撫でられる
十種影法術で出したのは、まずは玉犬、鵺、大蛇
万象も出したが、大きさ的にすぐにしまった
「あとは何が出せるの?」
「《ぴょんぴょん》!」
脱兎を出す
うさぎに埋もれた俺たちに、悠仁がぎゅーっと抱きしめてくれる
「可愛いぃ…」
「《もーもー》!《けろけろ》!」
「多い多い多い!一旦ストップ!」
まだ円鹿も摩虎羅も出してないが
悠仁は凄い凄いと褒めてくれるのに、ヒーローたちはなぜ止めてくるんだ
「《ふーが》」
「あーら凄いじゃなーい!」
「嘘でしょ!?私の氷を溶かすなんて…」
下の兄は術式のうち炎だけを使うことを縛りにしたらしい
上の兄は逆に斬撃だけに限定した
「そろそろお前の能力も見せてくれるか?悠仁」
「俺はそこまで凄くねぇよ?簡単に言ったら血液操作ができて、俺の体液は毒性を帯びてるってだけで」
「毒!?」
「毒っていっても、3日くらいヤバめの風邪みたいになるだけで」
悠仁が構える
燐光を帯びた悠仁の目が、スッと的を見据えた
打ち出された穿血は、幾つにも枝分かれ的を撃ち抜く
保護観察となった俺たちの能力把握のため、ヒーローたち相手に術式を使うように言われて、ゆうに二時間が経っていた
俺たちの服装は、悠仁が選んだフード付きパーカーに短パンである
「能力把握はこれくらいでいいんじゃねぇか」
「他にもあると思いますが…」
「今まで散々戦わさせられてきたんだぜ?今日はこんくらいで十分だろ」
悠仁と離れていた兄たちが駆け寄ってくる
まだ、俺たちへの監視の目は離れていない
自宅として与えられたアパートの一室も、監視カメラがある
本来は、専用の施設に入るはずだったところを、この中年だという日系人ヒーローの助言によって、悠仁は軍属となることが決まった
ツテがあるのだと、笑っていた
「ふは、お腹空いたの?」
「ん!」
きゅう、となったお腹の音に、悠仁が俺を抱き上げる
兄たちも、お腹が空いたと悠仁のズボンの裾を引っ張った
「いよっし!んじゃあー昼飯はどっかに食いに行こうぜ!」
「いや、どっかスーパーないん?」
「なんだよ、つれねぇなぁ」
「いや。散々毒だの薬だの盛られまくったんで、単純にこの子たちが人からもらったものがダメみたいで」
上層部の奴らが俺たちに寄越したものは、ほとんどに毒が入っていた
それらは悠仁が処分してくれたのだが、おそらく食ったんだろうな
あらゆる毒に耐性があるのは変わらないようだから
「っ、そーか…」
「ああ、そういや、ー給料出るまで一文なしだった」
「! じゃあ、俺が払ってやるよ!どこのスーパーがいいかなぁ」
考え始めた、自分をおじさんだという日系人
俺たちのことも日系人だと思っているようだが、こちらは純粋な日本人である
そういえば、悠仁は今回も実年齢を言わないつもりなのだろうか
「あー、鏑木。調味料のさしすせそ、わかる?」
「ん?ああ、それだったら値は張るけど最近シルバーステージにできたスーパーなら種類も豊富だぞ。たしか、日本から直輸入してるとか」
「おー、そこ良さそうだなぁ」
きゅるる、となった腹に、ひもじくなって
体の幼さに連動して、涙が込み上げる
「ゆじ!ごあん!!」
「うああ!ごめんごめんって!」
穏やかな寝息を立てる子供たち
その頭を撫でて、同じベッドに寝転がる
軍に所属することになった
俺が配属される部隊は、F部隊
NEXT能力者だけで編成された特殊作戦部隊
かつて、鏑木とアントニオも配属されていたのだという
「ヒーロー、か。ふふ。悠雪はきっと見栄えするだろうなぁ。宿儺にそっくりだもんねぇ」
俺が知ってるのは、まだ俺よりも小さい子供たちだけど
みんな俺よりデカくなるだろうな
「俺、頑張るから。早くおっきくなってね。おやすみ」
額にキスをする
ふにゃん、と柔らかく笑みを浮かべた子供たち
その顔に、思わず破顔して
タオルケットを掛け直し、目を閉じた