魂の寄る辺、生きる寄す処   作:少彦名

9 / 14
報道ヘリが追う凶悪犯
外遊に来ていたとある国の王族を襲い、護衛を惨殺
さらには、その王族の愛人と生まれて間もない赤ん坊を人質に、今もなお逃亡を続けている

『聞こえるな?イタドリ。国家警戒レベル4の凶悪犯だ。お上は無事の奪還を希望だ…………派手にぶちかませ』

『こっちはいつでもオッケーだぜ』

『へっ。ジャパニーズがどれだけできるか。お手並み拝見といこうか』

無線から聞こえる声は、テレビ通話で顔合わせだけをしたF部隊のメンバーたちの声だ
一番初めにぶちかませと言ったのは、鏑木と同じ時期に入隊し、F部隊の立場向上に日夜身を粉にする部隊長である

【ボンジュール、ヒーロー!司法局から通達よ。今回は国家警戒レベル4が発令された凶悪犯よ。それから…今回は軍部が絡んできてるわ。F部隊、知ってる人は知ってるでしょう】

耳につけたヘッドセットから聞こえるのは、ヒーローTVの女性プロデューサーの声
コキリ、と首を鳴らす
人質は二人
凶悪犯はリーダーを中心に約十名

【アニエスさん。F部隊とは何ですか?】

【NEXT能力者だけで構成された、軍部の特殊作戦部隊よ。別名】

【FREEKS。単独での作戦行動を主とする、捨て駒部隊だよ】

現在はビル屋上で人質である愛人の頭に銃を突きつけ、赤ん坊をいつでも落とせるぞとばかりにおくるみを掴み腕を伸ばしている

【え?】

【タイガーが、ヒーローになる前に所属していた部隊でもある。タイガー、F部隊ならどう動く】

【F部隊の性格の悪さは軍部でも有名だからなぁ。俺たちヒーロー以上にド派手にやらかすぞ。アニエス。中継ヘリは少なくとも500ヤードは開けとけよ】

【却下。あなたたちの活躍が】

【撃墜されてぇのか。F部隊は作戦行動に伴って民間人を巻き込むなんざ朝飯前だぞ。それに、今の部隊長は俺がいた頃からNEXT能力者以外への当たりが強い。部隊の近くにいた民間人がどうなろうが知ったことかと軍事裁判で啖呵を切ったやつだぞ。軍人じゃなきゃ、殺人鬼真っ逆さまなやつが指揮権握ってる部隊だってこと忘れんな】

やべぇな、部隊長


杯はこの身を捧ぐ代わりに

『おおっと!一番最初に駆け付けたのはスカイハイ!しかしながら人質を前に手も足も出ません』

 

『君たち!人質を解放するんだ!』

 

『近づくんじゃねぇ!』

 

『まずは説得を試みます。続いて駆け付けたのはタイガーアンドバーナビー!犯人たちが占拠する、ビル屋上と隣接するビル上で犯人たちの隙を窺います』

 

ヒーローTVで流れるのは、今まさに発生している誘拐事件の映像

リアルタイムで放送しつつ、ポイント制でヒーローたちの活躍をエンタメ化したことで、ヒーローたちの人気を後押ししているそう

 

『ただいま入った情報によりますと、司法局より軍部への出動要請があった模様です。国家警戒レベル4として、特殊作戦部隊が派遣されたとのこと』

 

じ、とただただひたすらにヒーローたちを見る

場所としては、このプリスクールのあるシルバーステージの直近

子供たちは今テレビに夢中だが、先生たちはいざという時の避難のために動いている

 

『おおっと!ここでなんと!折紙サイクロンが見張り役の一人を奇襲ー!犯人グループに紛れ込んでいたようです。声を上げさせる間もなく確保!確保ポイントが入ります!』

 

歌舞伎の隈取のようなマスクのヒーロー、折紙サイクロンが犯人を一人確保する

屋上への出入り口近くに立っていた犯人に気付かれないよう、犯人の一人に化けて近づいたようだった

愛人と赤ん坊を人質にするリーダー格は焦っているからか、気付かない

 

『続けてカンフーマスタードラゴンキッド。珍しくサイレントで犯人確保ー!確保ポイントゲットです。折紙サイクロンとドラゴンキッドが切り開いた突破口。他のヒーローたちはどう生かすのか』

 

「……くる」

 

「ん」

 

「ゆじ…」

 

『な、何が起きたー!突然、屋上に何かが……』

 

高度から飛び降りてきたその人物

軍帽、軍服、軍靴

じゃり、と床を踏み締めて、脱げかけた軍帽を直したその人物

 

『……F部隊所属、虎杖悠仁だ』

 

『なんと!ド派手に登場したのは軍部より派遣されてきた特殊作戦部隊のようです!』

 

『…………はぁ!?』

 

わあっと周りから声が上がる

悠仁を知ってるもんな、みんな

 

『っ、ふざけっっ』

 

悠仁に向けられた銃口

直後

 

『なぁんと!NEXTすら使わずに赤ん坊を人質にとっていた犯人を確保!』

 

銃を撃たれるよりも早く懐に入り込んだ悠仁が鳩尾に一発

同時に、赤ん坊を腕に抱く

俺の特等席…

 

『ドゥ』

 

『ハイヨォ』

 

さらにもう一人、こちらは戦闘服の人物が現れ人質だったはずの女性の場所に座っていた

 

『これは一体どういうことだー?!人質だったはずの女性がいなくなっている?』

 

『新人くん、その子の面倒は俺が見とくからさ。思いっきり暴れちゃいなよ』

 

『もう、制圧したようなものだろう』

 

『そっちの兄ちゃんはそうでもないみたいだけど?』

 

悠仁から赤ん坊を受け取った男が手をひらりと振る

NEXTの発動とともに犯人グループの一人と場所が入れ替わる

 

『おーい、さっさとそっちに移してくれ!』

 

『どういうことだ!次は赤ん坊を抱いた部隊員が消えました。犯人グループの数は六人。銃器を持った凶悪犯に対峙するのは丸腰の部隊員一人です。ヒーローたちはどう動くかー!』




「投降しろ。今ならまだ、痛い目見ないで済むぞ」

「ふ、ふざ、ふざけんじゃねぇー!やっちまえ!相手は丸腰だ!」

NEXT
こいつはどんな能力だろうな
へぇ
体が大きく
倍増ってとこかな

「その図体なら、大丈夫そうだな」

「死ねぇ!!」

大きく振りかぶった拳を左手で受ける
受け止められると思っていなかったのか
怯んだ犯人を見据える
右手の拳を握りしめた

「気張れよ」

「なっ、にぃい!?」

「《黒閃》」

体を巡った呪力
ごくごく単純なボディブロー
インパクトの瞬間、黒い火花が散る
ぶっ飛んで行った犯人グループの一人

「次」

屋上からぶっ飛ばしても、周りにいるヒーローたちが捕えるから、落下死のことは考える必要はない

『おー、やるなぁ!』

『お前のNEXT一体何ができねぇんだよ…』

『足場崩せんだろ、お前』

無線から流れる野次
ハッと意識を取り戻し、残り五人となった犯人グループが挙動不審となる
おそらくNEXTを持つアイツ頼みだったのだろう
黒閃を打った衝撃で脱げた帽子を拾う
一斉にこちらを向いた銃口
その銃口が火を噴き、勝ち誇ったように笑う犯人グループのリーダー
グッと帽子のつばを引き下ろし

「《解》」

屋上全体を切り刻んだ
足場が崩れ、瓦礫とともに階下へと落ちていった犯人グループ
そのうちの一人だけが、ワイヤーを使ってうまく逃れたようだった

「…あっち、プリスクールの方角だよな」

ワイヤーを使い降りていく犯人を見下ろす
背後で、瓦礫が崩れる音とともに、微かな金属音
握り拳を軽く掲げ、背後に向かって穿血を撃つ

「……捕まえねぇの?」

ハッと動き始めたヒーローたち
これ、賠償金のこと全く考えてなかったけど、大丈夫なんだろうか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。