カナリィ?....もう私のことなんて覚えてないでしょ 作:はんぺんの素揚げ
「__だからさ、もしぼくが売れた時、メルには隣にいてもらうから!」
「忘れんなよ!ぜったい!!」
・・・
Pipipi....とスマホロトムのアラームが鳴り、今日も朝が来たことを伝えてくる。
時刻は午前七時ごろ。朝日が本格的に指導してくる。
私は遠い昔の夢を見た。
「懐かしいなぁ...」
子供の頃、そんな約束していたっけ。疎遠になっちゃったけど
6.7年前、私は友達の配信の手伝いをしていた。おじいちゃんのとこの工場の一角を占領して、「ここがぼくのホームグラウンドね!じいちゃん!」と言って困らせていたのが思い出す。
借りているホテルの窓を開け、大きく伸びをした。
外の景色はビル群でいっぱい。元いた時もこんな感じだったっけ?
私が来た”ミアレシティ”は5年前に大きな事故があって、再開発?みたいなことをしたらしい。通りで夜が騒がしいと思ったんだ。
なんでもいちばん強いトレーナーには一つだけ願いが叶う?叶えてもらえる?とか書いてあったな。
まあ今の目的は観光だし、そんなのは置いておこう。無闇に戦うのも好きではないからね。
「.....ジジ」
ベッドにいるジュペッタが起きた。
もうかれこれ....ミアレを出る前から会っている付き合いが長い私の相棒だ。
「そうだね、そろそろ出よっか。」
街中を歩く。どうやら人とポケモンの共生は本当らしく、街の至る所にいる。
「随分と野生が多いんだねぇ」
「ジジ」
私はジュペッタを抱えながら歩く。
そこで、私の目にちらっと移ったものがあった。
大きな変電所...に多くの人が集まっている。
なんだろうと思い近づいてみると、門番みたいな人(見た目は現場の人みたい)が話しかけてきた。
「もしかして大会にエントリーか?」
大会?なんだそれ、ゲリラで行うものもあったの?
「あっいや、私は」
「では合言葉を言ってもらおうか!」
語気が強くなった男の人がぐわっと言ってきた。
キツい...
てか合言葉ってなに...と困惑しつつ、一つだけなにか昔のことを思い出した。
ーーー
「ぼくたちの合言葉ね!やっぱりでんきだし.....決めた!」
ーーー
まさか。そんなまさか。いや、もしかして、
「れっつ、ごー、でんじほう....」
そんな訳が無い。だとするならばこの状況...
「うむ!通って良し。」
開けた場所に着いた。
ステージのある所の周りには様々な人が待機している。
小さい子から大きな人...男の割合の方が多いかな。
「...ジッ!」
抱えてたジュペッタが急に警戒の声を出した。
その時、声を上げた方向から話しかけてくる人がいた。
「おや?オタク見ない顔ですな」
ちょっと太り気味の人が話しかけてきた。
「にわかではこのカルトクイズ、勝ち上がれませんぞ?....今回はどうしましょうか。優勝は吾輩ですし...やはりここは、金のサイン付きカナリィぬいを....」
と言って去ってしまった。
なんだったんだろう。と思い....その男が言ったことを思い出す。カナリィ....やっぱりこれって
「おい!ゲーマーども〜!!しびれさせるぞ!!!」
この会場に大声が響いた。
見るとホロキャスターではあるがその姿形は覚えている。
ハッキリとしたまつ毛、一緒に紙に書いた、「こんな衣装でやる!」と言っていたままの装飾。
そっか。もう大人気になったんだ。
ほら、やっぱり私がいない方がいいんだって言ったでしょ?
誰も聞こえないような消えそうな声で呟いた。どうせ届かないのに。
「ジ.....」
ジュペッタが姿勢を変えて抱きついてきた。
「...大丈夫。痛くないよ、もう」
昔怪我をした所を抑えるように、優しく布の部分で摩ってくれた。
私には勿体ないくらいの完璧な相棒だ。
私もその頭を1撫ですると、前を向いた。
「せっかく来たんだし、楽しまないとね。」
「ジ!」
ホログラムの幼なじみが私の方を向いて驚いていたのは、きっと気のせいだろう。