治療狂人のヒーローアカデミア   作:熊田ラナムカ27

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14 眼前の病原は即時消毒

 

 第一回戦、障害物競走。

 

 レースは早くも終盤に差しかかった。

 

 先頭では、かっちゃん達が激しく競り合ってる。

 

 追い抜かすのなら、此処しかない。

 

「対人地雷なんて深くても14cm~15cmくらいだこれですぐ掘り出せる……!よし……よし!!」

 

「何してんだ緑谷……」

 

 僕は此処まで、身体許容(5%)上限。

 

【フルカウル】を一度も使っていない。

 

 理由は単純に、制御がまだ未熟。

 

 長時間の使用が出来ないからだ。

 

 練習中も、何度か途中で解けてしまった。

 

 多少マシになっても、弱点は変わってない。

 

 最初から使い続けるだなんて無理だ。

 

(でも、この距離だったら行けるはず)

 

 目算として、ゴールまでの距離は500m。

 

 地雷原の先の道を合わせてもその程度。

 

 これぐらいなら、使ってもガス欠はまずない。

 

 無論、個性を制御しつつ、地雷を避けるのは困難だ。

 

 だったら、いっそ、それを利用する。

 

(借りるぞ……かっちゃん!!)

 

 僕は先程、掘り起こした対人地雷の山。

 

 そこへ、ロボの装甲板に乗ったまま、飛び込んだ。

 

 すると次の瞬間、下の地雷原が一斉に爆ぜる。

 

 さながら人間大砲のように、僕は打ち出された。

 

 背後で、物凄い爆音が響いてる。

 

 風を切って、かっちゃんと轟君をそのまま抜く。

 

(やっぱ……勢いすごい!!)

 

「デクぁ!!!俺の前を行くんじゃねえ!!!」

 

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ……!!」

 

 当然、先程まで争ってた2人は追い掛けて来た。

 

 個性を用いた加速力は流石としか言えない。

 

 もう既に目前まで迫っていた。

 

 このままだと余裕で抜かれる。

 

 それ程まで、勝ちに飢えているのだろう。

 

(けど、それは、僕だって同じだ!!)

 

 僕は装甲板を、思い切り地面に叩きつけた。

  

 それとほぼ同時に、フルカウルを起動。

 

 叩きつけた装甲板を足場にして、一気に跳躍。

 

 地雷原の爆破を背にして、更に加速した。

 

 この使い方なら、解除を恐れる必要もない。

 

 それ加え、2人の足止めも多少出来た。

 

 今ので100mは引き離せたと思う。

 

『緑谷、追い越した上で間髪入れず後続を妨害!!ついでとばかりに、妨害の爆風を利用して更に跳ぶ!!飛ぶ鳥を落とすどころか、自分が飛ぶ鳥になっちまった!!地雷原ゾーンを抜け、王手まっしぐら!!すげぇなイレイザー!!どういう教育してんだ!?』

 

『俺は何もしてねぇ。奴が勝手にやったんだろ。……彼奴、いつの間に個性の制御を。それはそうと、飛ぶ鳥になるってなんだ?』

 

 とはいえ、まだ気を抜く事は出来ない。

 

 ぼさっとしてたら2人は直ぐ来る。

 

 此処まで来れば、ゴールは目と鼻の先。

 

 僕はフルカウルを起動して、直ぐ跳んだ。

 

 このまま、勝ち上がる為に。

 

 ……けど、その直後だった。

 

 僕の背後で、更なる爆破が起きたのは。

 

 しかも、その爆発は一度では終わらない。

 

 何度も、何度も、立て続けに響いてる。

 

 地雷原を抜けた僕には、幸い影響はないけど。

 

「危険ですので、どうか動かないで下さい」

 

 そんな声が、遥か後方から聞こえてきた。

 

 その直後、またしても爆発が連続して起こる。

 

 悲鳴のような、抗議の声と一緒に。

 

 ……なんかもう、大方察した気がする。

 

 良くも悪くも、僕は散々怒られて来た。

 

 そのせいか、妙な直感まで成長したらしい。

 

 よく考えずとも、彼女はそうするだろう。

 

 実際、あの地雷原は危険そのものだ。

 

 怪我や病の元凶があるなら、彼女は絶対やる。

 

 周囲とか体育祭とか、お構いなしに。

 

「ざぁけんなっ!!ピンク髪コラァ!!」

 

 僕は全力で、ゴールで向かった。

 

 かっちゃんの声も全力でスルーした。

 

 これ以上、此処に居たら本当に危ない。

 

 なんかもう、兎に角、色んな意味で。

 

 僕の言葉なんて、聞く訳がないだろうし。

 

 ……後ろの皆には、心から同情する。

 

 

 

 

 

 

♦♦♦

  

 

 

 

 

 

 あらゆる医療行為の基礎たる感染予防。

 

 その柱たる鉄則は全部で3つ。

 

 一つは、感染源の排除。

 

 一つは、宿主の抵抗力向上。

 

 一つは、感染経路の遮断。

 

 ヒーローの活動にこれ等を当てはめるのであれば、主に(ヴィラン)の拘束、排除などが感染源の排除。

 

 街の人々への貢献やファンサービス、被害者へのカウンセリングなどが、主に宿主の抵抗力の向上。

 

 (ヴィラン)の発生予防、恒常的なパトロール、怪我の未然防止などが、感染経路の遮断に当たるだろう。

 

 であれば、これは差し詰め、排除と経路遮断。

 

 どちらも予防対策において、非常に重要な事だ。

 

 故に、手を抜く事など当然、許されない。

 

 やはり、予防対策は徹底せねば。

 

「……なぁ、癒月。お前、何やってんの?」

 

「見ての通り、治療です。必要ですので」

 

「へー、そうか。ちなみに方法は?」

 

「投擲による地雷の爆破処理です。合理的ですから」

 

「じゃねぇよ!!アホか!!狂ってんのか!?」

 

「心身ともに、正常そのものです」

 

 拳藤さんは、何故か悲鳴にも似た声を上げた。

 

 私はというと、掘り起こした岩を掴み、握り砕く。

 

 そして手にした石を、一直線に裂くように投擲した。

 

 まるで、水切りをするかのように。

 

 石は数十回程跳ねて、反対側まで跳ぶ。

 

 その軌道上で、幾つもの地雷が連続して爆ぜた。

 

 派手な爆発音が、立て続けに響き渡る。

 

「これぞ病原は消毒というやつですね」

 

「いや、それ、多分悪役の台詞だし」

 

『ひっでぇ絵面だ!!その光景はさながらボン○ーマン!!癒月、レースそっちのけでまたも暴走!!地雷原を一直線に爆破処理!!しかも爆発がエグくて、誰もゴールに向かえない!!防御で手一杯の有様!!何でもありとは言ったが限度あるだろ!!限度が!!』

 

『何でもありなんて言うからだろ』

 

「畜生!!A組のヤロウは嫌な奴ばっかだ!!」

 

「今回ばっかりは本当に擁護出来ねぇ!!」

 

「地雷を踏んで怪我するよりはマシです」

 

 そう言いつつ、私は治療を黙々と進めた。

 

 切島君とパクリの人は騒ぎつつ、急いで硬化する。

 

 やはりあの2人、親戚ではないだろうか?

 

 どちらにせよ、足を止めてくれるのはありがたい。

 

 治療がやりやすくて、実に助かる。

 

 巻き込まないよう、爆破させるのは結構疲れるのだ。

 

 何より、地雷の数が尋常ではない。

 

 緊急とはいえ、中々にハードな治療だ。

 

 腕や手も、流石に痛くなってきた。

 

 本職の人が居れば、だいぶ楽なのだが。

 

「てめぇ……ピンク髪、殺す!!」

 

「ちょうど良い所に専門家の方が。協力して下さい」

 

「爆豪……わざわざ戻って来たのか」

 

「んなもん誰がするか!!クソがァ!!」

 

「随分と機嫌が悪いですね」

 

 よって勧誘すると、爆豪君が何故か襲って来た。

 

 此処まで来たのだから、手伝いに来たと思ったのに。

 

 よく分からないが、物過く怒ってる。

 

 何処でこれ程のストレスを溜めたのやら。

 

 仕方ないので、石を手放し、攻撃を躱す。

 

 確か此処は、元々地雷があった場所だ。

 

 少なくとも、この辺りはもう安全らしい。

 

「てめぇ、ちっとは真面目にやれ!!これはレースだ!!競争だ!!体育祭だ!!他人を蹴落としてでもやるもんだろ!!やる気がねぇのなら帰りやがれ!!」

 

「失礼ですね。私は至極真面目に職務を遂行しています。ヒーローや医者が、怪我を未然に防ぐのは当然。寧ろ、私に言わせれば、怪我人を生む体育祭こそが、大変不真面目。目立とうとして、人助けの本質を見失っては元も子もないでしょう。偶には初心に戻りなさい」

 

「それ以前に、てめぇは常識ってもんを身に付けろ。この体育祭が無駄に金掛けて、雑魚共にとって無駄にリスク高けぇってのは納得だが、それはそれ、これはこれだ。治療やるにしても、場所とタイミングを考えろ!!そんでもってお前の治療は力技しか能がねぇのか!?」

 

「そんな訳ないでしょう。私はただ合理的な治療をしているだけです。貴方を締め落とした事も、今回の爆破処理も。それが最速で症状に対処出来る療法だと考えたからしただけです。人を蛮族のように言わないで下さい」

 

「ほぼ事実だろ!!自覚しろや!!」

 

「インテリヤンキーに言われましても」

 

 私は襲い来る爆豪君から、ひたすら逃げた。

 

 戦ってもいいが、純粋に体力の無駄だ。

 

 余計な労力を割く理由はない。

 

 それに、治療が突然始まるのは常識だろう。

 

 病とは、何時来るか分からないからこそ病。

 

 それに抗い、患者を癒すからこそ医者。

 

 今回だって、急な地雷に私も驚いた。

 

 それに対処する事の何が悪い?

 

 あんな危険物、早々に失くすべきだろう。

 

 レースなど、治療の後に決まっている。

 

 あと私は、別に脳筋ではない。

 

 そっちの方が、大抵早いだけだけで。

 

「人助け……まぁ確かに、その通りではあるか」

 

「やり方はだいぶ……アレではあるけど」

 

「原点回帰……初心忘るべからず」

 

「これは止めなかった……私が悪いのか?」

 

「俺はまたとしても……同じ間違いを!!」

 

「飯田君!?大丈夫!?具合でも悪いん!?」

 

「あんま気にしない方がいいと思うよ、多分」

 

 周囲はというと、何とも言えない空気になっていた。

 

 私達の方を見て、何とも言えない顔をしている。

  

 拳藤さんは、私が悪いのかと言いたげだ。

 

 飯田君に至っては、何故か膝を附いていた。

 

 隣の芦戸さんは、慣れたように呆れているけど。

 

 過去に何かしらがあったらしい。

 

 まぁ、とりあえず、レースの雰囲気ではない。

 

『なんつーか……すっげー、耳が痛い。実際問題、その通り過ぎて……何も言えねぇ。いや、マジで。というかもう、何もかもグダグダだな。余裕で放送事故だろ』 

 

『おい、そこの2人。それぐらいにしねぇと除籍処分にするぞ。とりあえず両方、後で反省文。そこで突っ立ってるお前等だ。いい加減、レースに戻れ。あの馬鹿の暴走で、地雷もある程度は片付いてるだろ。それにこのレースは、一応ではあるが時間制限付き。このままだと緑谷と轟以外、まとめて敗退だ。残り時間3分』

 

 流石にこれは、色々と不味かったのだろう。

 

 プレゼント・マイクはさておき、相澤先生はキレた。

 

 スピーカー越しに、その表情がよく分かる。

 

 多くのA組生徒が背筋を、思わず震わせた。

 

 轟君は、喧嘩の間にゴールしたらしい。

 

 1位の緑谷君にも、悪い事をした気がする。

 

 予選とはいえ、せっかくの1位だというのに。

 

 私とした事が、頭に血が上り過ぎていた。

 

「……という事で、今回はいいですね?」

 

「……ちっ。背に腹は代えられねぇ」

 

「治療もある程度は終わりましたしね」

 

 私と爆豪君は、それぞれ走り出した。

 

 他の生徒達も、それにやや遅れて続く。

 

 これで敗退は誰だって嫌だろう。

 

 とはいえ、最早、障害物競走とは名ばかり。

 

 地雷の大半は、既に処置済み。

 

 第1種目最後は、純粋な速さ勝負だった。

 

 当然、先に走り出した私達に分がある。

 

 しかし、その以上となると流石に厳しい。

 

「速さ勝負で、てめぇにまで負けるか。くそがっ」

 

「悔しいですが、確かにその通りかと」

 

 何せ私は、全力以外で身体強化が出来ない。

 

 対して、爆豪君は、加速に個性を使える。

 

 純粋な走力のみで挑むのは無謀そのものだ。 

 

 そうなってくると、とても勝て目はない。

 

『とんでもアクシデント!!というか、とんでも放送事故がありつつ、1人目の問題児、爆豪が3位!!2人目の問題児、癒月が4位でゴール!!後続も続々とゴールしていく!!つっても順位、今更気にしてる奴、ほぼ居なさそうだけどな!!運営泣かせ共め!!』

 

「あっ、皆……本当にお疲れ」

 

「「「いや、マジで」」」

 

「まぁ確かに、疲れましたね」

 

「9割方てめぇのせいだろ」

 

「「「残り1割はお前のせい」」」

 

 そんな訳で、私は結局4位で予選を通過。

 

 他のA組メンバーも、全員無事に通過。

 

 幸いな事に、重症者もゼロ。

 

 トラブルはあったものの、第一種目は無事終わった。

 

 峰田君が、女子全員に詰められる事件はあったけど。

 

 それはさておき、上位42名が揃った。

 

 続くは、ようやく第二種目。

 

『第一種目で色々あり過ぎたけど、次からいよいよ本番!!此処からは取材陣も白熱してくるわよ!!キバりなさい!!さーて、第二種目はコレ!!騎馬戦!!!』

 

「「騎馬戦……!」」

 

「個人競技じゃないけど、どうやるのかしら」

 

「やっとまともな種目ですね。プラス10点」

 

「癒月評価、プラス評価もあったのか」

 

「つーかー、それ、何時まで続くんだ」

 

「はい、そこ。お喋りしない」

 

 第二回戦の種目は、騎馬戦。

 

 第一回戦と打って変わって、協力制の競技だ。

 

 その内容は、個性ありのハチマキの取り合い。

 

 これなら負傷者の数も、おそらく少ないだろう。

 

 初めからこうして欲しい。

 

『基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが……先程の結果にしたがい各自にPが振りあてられること!誰も興味が無かった順位が此処で活きるわ!』

  

「事実だけど、あんまハッキリ言うなよ」

 

「入試みてえなP稼ぎ方式。シンプルだな」

 

「つまり組み合わせによって、騎馬の合計Pが違ってくると。意外にもよく考えられてますね。追加で10点」

 

『あんたら、私が喋ってんのにすぐ言うね!!!あと、その評価は本当に喜んでいいの!?ついさっきから思ってたけど、辛口だし上からだし!!結構、効いてるのよ!!少しは運営の気持ちにもなりなさい!!』

 

「だって、事実ですし」

 

 そして、与えられるPは下から5ずつ。

 

 最下位は0Pで42位から5P。

 

 ざっと、41位は10Pという具合らしい。

 

 しかし、此処は雄英で基本、何でもあり。

 

 上位のPが、そのまま上がる訳もなく。

 

『1位に与えられるPは1000万!!そう、これは、上位の奴ほど狙われちゃう……下剋上サバイバル!!上を行く者には更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra(更に向こうへ)!!予選通過1位の緑谷出久君!!持ちP、1000万!!』

 

 生徒達の視線が、一斉に緑谷君へ向く。

 

 現に、渦中の当人の汗の量は物凄い。

 

 プレッシャーを感じるには十分だった。

 

 今回ばかりは、彼に少し同情する。

 

 否定はしないが、雄英のとんでも具合は健在だ。

 

『制限時間は15分、振り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示されたハチマキを装着! 終了までにハチマキを奪い合い保持Pを競うのよ。取ったハチマキは首から上に巻くこと、とりまくればとりまくる程管理が大変になるわよ!』

 

 これは思った以上に、頭脳戦の面もありそうだ。

 

 如何にPを守り、誇示し続けるか。

 

 もしくは、細かいをPを取りに行くか。

 

 さもなくば終盤に、賭けに出るか。

 

 自分と味方の個性次第で、動きが変わる。

  

 単純なようで、かなり奥深い。

 

『そして重要なのは、ハチマキを取られても、また騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!』

 

「てことは……」

 

「43名からなる騎馬10~12組がずっとフィールドにいる訳だよね……?」

 

「シンド☆」

 

「いったんP取られて身軽になっちゃうのもアリだね」

 

「それは全体のPの分かれ方見ないと、判断しかねるわ、三奈ちゃん」

 

 とはいえ、最低限必要なのは矛と盾。

 

 ハチマキの奪いに行ける人材。

 

 そして、ハチマキを守れる人材。

 

 足があれば尚良しだが、これはマスト。

 

 況して、私の個性は器用貧乏の部類。

 

 攻めは腕力頼りだし、15分間も守れない。

 

 治癒の方も、消耗の面から連発は不能。

 

 この2つをどう確保するか。

 

『個性発動アリの残虐ファイト!!でも……あくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!!ついさっきの問題児2人みたいな行為は一発退場とします!!絶対にやるんじゃないわよ!!』

 

「無論、ルールは厳守します」

 

「どの口が言ってんだ、ピンク髪」

 

「お前だけは言うな。お前だけは」

 

「念の為に言うけどフリじゃないから」

 

 これは、中々に厳しい戦いになりそうだ。

 

『それじゃ、これより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!』

 

「15分!!??短っ!!」

 

 斯くして、第2種目の第1段階。

 

 チーム決めがこうして始まった。

 

 そういう事で、早速勧誘したのだが。

 

「悪りぃ!!今回は他を当たってくれ!!」

 

「ごめん!私の方も今回は無理!」

 

「……なんと。これは由々しき事態です」

 

 想定外にも、切島君と芦戸さん両方に断られた。

 

 旧知の仲であるし、連携も取れると思ったのに。

 

 あと2人とも、こういう時は大抵頷いてくれるし。

 

 信頼していただけに、純粋にショックだ。

 

 これはあくまで、チーム決めであるが。

 

「……癒月ちゃんが誘ってくれたのは、普通に嬉しいよ。何時もながら、大っぴらに信頼してくれたっぽいし。でも、やっぱり無理。今回ばっかりは」

 

 固まっていた私に、芦戸さんはそう言った。

 

 その瞳に宿る決意は、鉄のように固い。

 

 何も言おうとしないが、切島君も同様だ。

 

 だいぶ前から、決めていたようにも見える。

 

「開会式の前に、轟が言ってたじゃん。USJの一件じゃ後手に回ったけど、優勝は俺が貰うって。ぶっちゃけ全部、あれって私が言いたかった事なんだよね。丸ごとそっくり、先に言われちゃったけどさ」

 

「……USJの事なら、気にしなくても」

 

「うん。分かってる。でも、悔しかった」

 

 その刹那で、USJの事をふと思い出した。

 

 私が2度目の気絶をする、直前の事だ。

 

 あの時、私の名前を皆が呼んでいた。

 

 その中には、芦戸の声もあった。

 

 何処か泣きそうな声だった気がする。

 

 朦朧としていたから、よく覚えてないけど。

 

 それに彼女は、脳無との戦いに居なかった。

 

 無論、それは間違ってないし、正しい判断だ。

 

 でも、それが、心に引っかかってたのかもしれない。

 

 人の心までは、どうやっても分からないけど。

 

「だから今回は、一緒には戦えない。寧ろ今回は戦って、勝ちたいからさ。癒月ちゃんのライバルは轟達だけじゃないって訳。今回こそは、絶対に勝つ。……そういう事だから、ごめん!お互い勝って次に行こうね!」

 

「おう、悪いな。芦戸には気持ちで負けてるかもしれねぇけど、俺も大体同じだ。どうせなら競い合って、決勝まで行った方が漢だし!俺等はお前に、挑戦するって訳だ!つーことで、他の奴等を当たってくれ」

 

 それならば、私も強くは言えない。

 

 後ろを向き去る2人を、ただ見送るしかなかった。

 

 今思うと、2人を鍛えてから既に1年。

 

 雄英に入学して、数ヶ月の時が過ぎた。

 

 人間が成長するには十分なのかもしれない。

 

「少し……寂しい気もしますけど」

 

 ともあれ、嘆いても仕方がない。

 

 今は兎に角、チーム決めが優先だ。

 

 幸いにも私のPなら、人は比較的集めやすい。

 

 右往左往している、緑谷君(1000万)よりはマシだ。

 

 思考を回し、気持ちを切り替えなければ。

 

「おう、爆豪!!俺と組もう!!おめェどうせ騎手やるだろ!?それならおめェの爆破は耐えれる前騎馬は誰だ!!?そう!!硬化の俺だ!!なんてったって、ぜってーブレねぇ馬だ!!奪るんだろ!?緑谷(1000万)……!!」

 

「あっ、ズルい!私も!私も!」

 

「クソ髪に黒目。てめぇ等、ピンク髪に誘われたんじゃなかったのかよ」

 

 なんか既に……凄く負けた気がするが。

 

「おい、アンタ。ちょっといいか?」

 

 それから、あっという間に15分が経過。

 

 第2種目における、チーム決めが終わった。

 

 各チームの騎手、騎馬が一斉に並ぶ。

 

『さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに11組の騎馬が並び立った!!』

 

『……なかなか、面白ぇ組が揃ったな』

 

 騎手には私。前騎馬にB組の拳藤さん。

 

 後騎馬には、同じくA組の尾白君。

 

 そして、もう一人。

 

「……一応聞くが、本当にいいんだな?」

 

「当然です。勝ちに行きます」

 

「此奴がこう言い出したら無駄だ」

 

「第1種目よりはマシだから……多分」

 

「もう既に不安しかねぇ」

 

 2週間前、宣戦布告しに来た人。

 

 普通科の心操人使君。

 

 この3人と一緒に、私は戦っていく。

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!』

 

 必ず勝ち上がって、優勝する為。

 

 切島君や芦戸さんと戦う為。

 

 そして目の前の病を、治療する為。

 

『よォーし、組み終わったな!!??準備はいいかなんて聞かねぇぞ!!いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!3!!2!!1……!!』

 

「では、皆さん。治療開始です」

 

『START!!』

 

 何としてでも、勝たせて貰う。

 

 

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