鉄哲のとこの騎馬とやり合い始めてから、数分。
俺達は互いに駆け回り、隙を見つけ手を伸ばし。
個性をぶつけ合い、何度もハチマキを奪おうとした。
けど、こっちが手を伸ばせば向こうも防ぐ。
向こうが仕掛けてくれば、今度は俺達が凌ぐ。
その決着は、未だついていない。
「手の内はやっぱ、全部バレてるって訳か拳藤!!こっちも似たようなもんだけどな!!裏切ったなんて言うつもりねぇけど、奪った
「そりゃ、同じB組なんだから手の内くらい分かってるよ!でも、それはこっちも同じ!悪いけど、負けるつもりだって、こっちもない!勝つのは私等だ!」
俺の個性が知られていた一方、相手は全員B組。
幸いな事に、その個性は拳藤が把握していた。
そうでなかったら、今頃取られている。
とはいえ、分かっていても、取れないのだが。
「尾の守り手が想像以上に固い。流石はかの狂戦士に率いられているという訳ですね。ですが、私の裁きから逃れる手段はありません」
「尾の守り手って……俺のこと?それは随分な評価だね。尤もこっちは、評価なんてしてる暇ないけど!」
髪である蔓を伸ばし、ハチマキを奪おうとする塩崎。
その攻撃を、尾白はほぼ一人で防ぎ続けていた。
守りを一手に任せている以上、負担は計り知れない。
けれど、あらゆる方向から伸び、時に死角を突いてくる蔓を防ぐには、尾白の守りに頼るしかなかった。
その顔には、既に疲労の色が滲んでいる。
「鉄哲っ!防御だ!フェイントに釣られるなよ!」
「あっぶね!なんつー、馬鹿力してやがんだ!俺が騎手じゃなきゃ、とっくに崩れてるぞ!泡瀬、サンキュ!個性関係無しでアレとか、つくづくとんでもねぇな!」
「分かってはいましたが、切島君同様、怯んではくれませんか。騎馬戦である以上、無理矢理には崩せませんし。その手の個性は守りに入ると、本当に厄介ですね」
一方、癒月はハチマキを奪う為、攻撃に専念。
これまで同様、時折フェイントを織り交ぜながら、その怪力で相手を怯ませ、騎手の守りが一瞬崩れた隙を突いて、ハチマキを奪おうとする。
けれど、今回の相手はよりによって鉄哲。
その個性故に、癒月の攻撃を受けても一向に怯まず、本人の胆力も相まって守りが崩れる気配もない。
それに加え、泡瀬のサポートもあってか、フェイントにも簡単には引っ掛からず、癒月がどれだけ仕掛けようと、その攻撃を正面から弾き返してくる。
騎馬戦という性質上、あまり力技に頼れないのもあってか、相性がかなり悪く、無表情ではあるが目に見えて攻めあぐねてる様子だ。
鉄哲に何度も攻撃を弾かれた手は、その苦戦を物語るように薄く血が滲み、既にボロボロになってる。
かと言って、もっと深く踏み込み、その守りを強引に崩そうにも、そう簡単にはいかない。
「不味い!近寄り過ぎ!全員、一旦下がって!骨抜に引き摺り込まれる!」
「あと一歩だったのに惜しいな。もう少しで詰みだったのに。まぁ一度、引き離せただけでも十分か」
俺達が下がった直後、居た場所の地面が沈んだ。
骨抜の個性で、地面を柔らかくされたせいだ。
そこ等一帯は、まるで泥沼のようになってる。
あと少し遅かったら、身動きも取れなくなってた。
この数分間、ずっとこの繰り返しだ。
どうにかハチマキこそ奪われていないが、攻めても攻め切れず、踏み込み過ぎれば骨抜に狙われ、そうなれば下がるしかなく、体力ばかりが削られていく消耗戦。
前半、温存してた分もこれでパーだ。
全員の顔に、疲労の色が滲んでいる。
取れてない向こうも、似た心境かもしれないが。
『残り時間ももう間もなく3分!!轟チームの苛烈な攻撃に、意外にも粘る緑谷チーム!!鉄哲チームと癒月チームは互いに距離を取って睨み合う!!現在、ゼロ点の爆豪チームは脱出に必死!!対してハチマキを奪った物間チームは、無理をせず余裕の構え!!全体的に決め手に欠き、戦況は膠着状態まっしぐらだァ!!』
『今動ける騎馬の総合力に、差は殆どない。どのチームも試合の決めるだけの切り札を、それぞれ抱えている。それを何時、どう切るかで、戦況は大きく変わるだろうな。この膠着状態も、どの道長くはもたん』
とはいえ、厳しいのはこちら側だ。
互いに消耗こそしているが、地力がそもそも違う。
このまま長期戦になったら、絶対勝てない。
「心操君、大丈夫ですか?まだ動けますか?」
「……ああ、どうにか。まだ行ける」
「無理はするなよ。それで倒れちゃ元も子もない」
「大分な無茶をずっとしてるしね」
「……こんな所でも、差が出るなんてな」
その原因は、紛れもない俺だ。
他の奴等と比べ、圧倒的に体力が足りない。
鍛えてたつもりだったが全然だ。
この中で俺だけが、明らかに息を切らしてる。
攻めと守りの繰り返しで、かなり削られた。
その事実が悔しくて、思わず下唇を噛む。
思い上がりもいいところだと、自分に言いたい。
「ですが、無理はして貰いますよ。無論、健康維持に問題の無い範囲でですが。鉄哲君達を今直ぐにでも倒し、緑谷君達の1000万を取る必要がありますから」
「お前まだ、それ諦めてなかったのかよ……」
そんな俺に、癒月はやはり迷わず言った。
さっきまでボロボロだった手はもう治っている。
本人の治癒の個性で治したのだろう。
けれど、治癒による疲れは一切見えない。
戦闘中の治癒は疲労が大きいと言っていたのに。
あまりの理不尽さに、思わず笑いが零れた。
個性抜きにしても、此奴は俺より強い。
「なぁ、癒月。一つ聞いていいか?お前はどうしてヒーローになりたい?金の為か?有名になりたいからか?お前の場合、どっちも違うだろうけど。どうしてだ?」
騎馬戦の真っ最中にも関わらず。
俺は気づけば、そんな事を聞いていた。
他の2人は、少し目を丸くしている。
当然だろう。俺自身、理由なんて分からない。
それなのに何故か、そうしたくなった。
多分、たったそれだけの理由だ。
「私がヒーローになりたい理由は、病に苦しむ人全てを救う為です。この世界は、命を粗末にし過ぎている。救いを必要とする患者が多過ぎます。それをどうにかするには、根本治療以外の方法はありませんので」
「ああ、そうかよ。そりゃ大層な理由だな。俺の理由なんかとは比べるまでもない。……ただ、そいつに憧れちまったなんていう、ありふれた理由よりかはずっと」
よく考えれば、俺はずっと合理的じゃない。
なんで俺は、此奴等を洗脳しなかった?
そのタイミングは、幾らでもあったのに。
馬鹿正直に、堂々と勝ちに行った?
勝ちだけなら、利用すればいいだけだった。
なのに俺は、無意識のうちに拘ってた。
同じ夢を持つ、此奴等と勝ちたいと思ってた。
まるで合理的じゃない。
いくら考えても、理由はやっぱり分からない。
「それの何処が大層な理由じゃないんだよ。私だって似たようなもんだし。というより、
「……別に、俺はそんなんじゃない」
「でも、まぁ、いいんじゃないの?ありふれた理由で。癒月さんの言葉借りるようだけど、やりたいようにやれば良いと思うし。そういう理由で目指すんだったら、心操はきっと良いヒーローになれるよ」
「……うっせぇ。また洗脳するぞ」
やりたいようにやれば良い。
そんな気持ちを、ずっと抑え込んできた。
こんな
ヒーロー向いてないって、勝手に決めつけて。
でも、そんなの必要なんてなかった。
誰がどう言おうと、関係なかった。
だって俺は。それでも、ヒーローになりたい。
「どうやら病は、ほぼ完治したようですね。大変、何よりです。その上で尋ねますが、どうしますか?貴方はどうしたいですか?それを是非、聞かせて下さい」
俺を治してみせた、此奴みたいに。
『残り時間3分!!膠着する一角に動きがあった!!癒月チーム、守りを捨て鉄哲チームへ正面から突撃!!攻め切れねぇ状況に、とうとうヤケになったか!?』
『ちげぇだろ。どう見ても』
「正面突破とは男らしいじゃねぇか!!だったら、こっちも迎え撃つまでだ!!骨抜、一気に沈めろ!!」
「言われるまでもない」
骨抜は地面に手を付く動作を取った。
迫る俺達をまとめて沈めるつもりだ。
アレを一度でも喰らったら終わり。
ここまで膠着していたのもアレが原因だ。
だったら、発動させなければいい。
「拳藤ッ!!今だ!!」
「よっし!!任せて!!」
「ッ!?マジか!!」
拳藤は手を巨大化させ、それを大きく振るった。
それに伴い、強烈な突風が発生する。
騎馬への直接攻撃は駄目だが、これならセーフだ。
骨抜は騎馬が崩れないよう、個性の発動を止める。
その隙に俺達は、懐へ一気に飛び込む。
「この距離なら沈められないよな!!」
「まさか、お前が攻撃に参加するとは」
「くっそ!!これじゃあ身動きが取れねぇ!!」
そして癒月は鉄哲の腕を掴み、動きを封じた。
これでこっちも動けないが、近距離戦なら分がある。
此処まで近づけば、味方ごと沈めてしまう可能性がある以上、骨抜も個性を迂闊に発動する事は出来ない。
攻めと守りの繰り返しは、もう終わりだ。
『ちょっと待て!?おかしくね!?なんで騎馬の拳藤まで攻撃に参加してんだ!?相手の騎馬に普通に攻撃してるし!!上には癒月が乗ったままだし!!土台足りなきゃ余裕で崩れるだろ!?まさか普通科の個性か!?』
『ンな訳あるか。よく見ろ』
勿論これは、最初から賭けだ。
長期戦が出来ない以上、仕方ない。
だからこそ、守りは全部捨てた。
その全てを、攻撃に集中させる為に。
『何じゃありゃ!?力技にも程があるだろ!!後ろの騎馬だけで騎手を支えてやがる!!』
『癒月の人並み外れた体幹あってこそだな。他の騎馬で真似しようとしたら直ぐに崩れる。それでも後ろの2人には相当な負担が掛かってるはずだ。機動力も格段に落ちるだろうしな。此処で決め切る気らしい』
「思ってた以上に、キツイな……ッ!!」
「悪い!!直ぐ支えに戻る!!」
「重いとは、言いたくないけど……ッ!!」
俺と尾白は、ありったけの力を腕に込め続けた。
もう既に腕は震え、息も軽く上がっている。
肩や脚も、少しずつ悲鳴を上げ始めていた。
自分で提案しといてアレだが、無茶が過ぎる。
「しかし、言ったはずです。裁きからは逃れられない」
そんな状況で当然のように、塩崎は蔓を伸ばした。
骨抜を出し抜いても、相手にはこれがある。
この距離なら、尾白もガードに入れない。
距離を離せない今、癒月は格好の的だ。
流石の癒月も、死角からの攻撃は反応出来ない。
「手を放して、一瞬しゃがめ」
だからこそ、先に手は打っておいた。
癒月は鉄哲から手を放し、素早く身を屈める。
それによって、塩崎の蔓は紙一重で空を切った。
本人が無理なら、他が反応すればいい。
「まさか、癒月を操ったのか!?」
突撃する前、癒月には洗脳を掛けておいた。
こんな使い方をする事になるとは思ってなかった。
自分から洗脳に掛かる奴なんて、初めてだ。
本当に彼奴は、つくづくイカれてる。
「全員、右方向から離脱。跳びます」
俺が洗脳を解除した直後。
癒月は端的にそう言った。
そして言葉通り、彼奴は跳ぶ。
「なっ……しまったッ……!!」
『癒月、爆豪よろしくジャンプで宙に跳んだ!!すれ違いざまにハチマキを奪取!!しかし、着地はどうする気だ──おっと!?落ちる先に尾白の尻尾があった!!』
「引き寄せられないけど、これぐらい!!」
そして癒月は、離脱する俺達とそのまま合流。
伸ばされた尻尾を足場に、再度大きく跳ねた。
まるで、サーカスの曲芸師のように。
その跳躍の先にいるのは、駆けてくる拳藤。
手を巨大化させ、受け止める準備を済ませている。
「拳藤さん。着地お願いします」
「分かってるって!ナイスキャッチ!」
「洗脳解けたばっかで、よくやるよ」
「患者の頼みに付き合うのも仕事です」
これで鉄哲チームの持ち点はゼロ点。
奪ったハチマキの数は4本になった。
残り時間も、もう少しで1分。
後は逃げれば、勝ちは固いだろう。
それでも、騎馬が足を止める事は無い。
目指すは、緑谷達が居る氷壁の先。
「このまま一気に1000万を奪いに行きます」
「結局全部、お前の思惑通りか」
「嫌なら止めますが。今なら必要なさそうですし」
「此処まで来たら、最後まで付き合う」
そして癒月は、氷壁の一角を粉砕した。
この騎馬戦が始まってから数分。
心操君に必要な治療は、既に終わった。
正直なところ、1000万はもう必要ない。
けれど、治療も勝利も完璧に成し遂げる。
患者に応えてこその一流。
ならば、取る以外の選択肢は無い。
『癒月チーム、残り1分で氷壁内に侵入!!狙うは轟が持つ1000万!!完全勝利に向け突撃!!荒らしはバーサーカーの本領ってな!!最後の最後の大乱戦だ!!』
「レシプロを使い切ったタイミングで……!!」
「デク君!!どうする!?」
「このまま行くしかない!!」
「やらせるかよ……!!」
1000万は現在、轟君が持っていた。
緑谷君からつい先程、奪ったらしい。
どうやら飯田君が、切り札を切ったようだ。
緑谷君は構えを取り、轟君は氷を放とうとする。
しかし、こっちにも切り札はある。
「おい、轟。そいつは貰うぞ」
「誰が───」
「轟君?!」「轟さん!?」
「そういう事なので」
心操君は開幕早々、轟君を洗脳した。
彼の洗脳は、初見ではまず防げない。
だからこそ、此処まで交戦を避けた。
これで凍結される心配はない。
このまま1000万まで、一気に近づける。
「上鳴さん!!放電を!!」
「ウェェェイッ!!」
しかし、その後の対応は思ったより早かった。
轟君の代わりに、八百万さんが指示を出す。
自分達が感電しない用意もバッチリだ。
上鳴君は、行動不能覚悟で放電を放った。
余程、私達を近づけたくないらしい。
これには堪らず、常闇君は防御を選んだ。
緑谷君も、攻めを中断するしかない。
それでも、私達は突撃を選択する。
切り札は1枚とは限らない。
「
私の個性、ヒーリングオーラーは体内で生成したエネルギーを手から放出し、対象の治癒力を活性化すると同時に、私が病原体と判断したウイルス等を弾き飛ばす。
前者の性質は母様とお婆様の個性。
後者は父様の個性から遺伝している。
つまり、父様の個性である防壁。
その力の一端を、私が使えない筈がない。
そう考え、これまで訓練を重ねてきた。
脳無と戦ってからは、より一層。
寿命を削らずともいいように。
その結果が、これだ。
『なんだ!?何が起きた!?癒月のチームの周囲に突如としてバリアみてぇなものが出現!!上鳴の電撃を弾き飛ばして攻撃を防いだ!!ありゃ癒月の仕業か?!此処まで来ると何でもありだな!!理不尽の権化め!!』
「そんなものまで隠してたなんて……!」
「どれか分からないので、全部貰います」
放出したエネルギーで、障壁を作りつつ。
私は轟君の首元と頭からハチマキを全て取った。
相手が動けないからこそ出来る、力技だ。
そのまま横を通り過ぎ、私達は離脱を図る。
これ以上、此処に長居する理由は無い。
「一体何が……それよりも常闇君!!」
「
案の定、緑谷君は仕掛けてきた。
洗脳に掛かってない分、行動が早い。
尤も、轟君も洗脳が解けている頃合だ。
指示を受けた
しかし、その障壁は壁というより保護膜に近い。
イメージするのであれば、薬品用のゴム手袋だ。
父様の個性が多少遺伝してるとはいえ、私の個性の本質はあくまで治癒と、ウイルス等の殺菌や消毒。
その為、ガスや電気、炎といった直接的な質量を持たない攻撃には強い反面、純粋な物理攻撃に対する耐久力はかなり低く、障壁の硬さは厚い木の板程度しかない。
此処まで使わなかったのも、それが理由だ。
「話に聞いてたけど、見た目に反してほんと脆いな」
「バリアのあちこちにヒビが……!!」
「そりゃ最後まで出し渋る訳だよ!」
「常闇君の攻撃に、2発耐えただけ御の字です」
現に、障壁はほぼ崩れかかっていた。
訓練の時の
理由は不明だが、幸運にも弱体化してたらしい。
その直後、背後から冷気が走る。
「こっちも負ける訳にはいかねぇんだ……!!」
轟君の氷撃が、障壁に直撃した。
凍結こそ免れるも、障壁は完全に崩れ去る。
このまま抗戦すれば、負けは必須だ。
こちらには、あの氷撃を防ぐ手段は無い。
障壁を再度展開しようにも、溜めが要る。
交戦していればの、話ではあるが。
「すまん……やはり動けん……!!」
「もう限か……ウェェェ………」
「これでは届かない……!」
「くっそ……此処まで来て……!!」
轟君のチームの総合力は、断トツだ。
矛の上鳴君に、矛にも盾にもなれる轟君。
サポート特化の八百万さんに、足の飯田君。
けれど、致命的に継戦能力が無い。
序盤、様子を見ていたのもそれが理由だろう。
足の飯田君が潰れたのが、決定打だ。
切り札は後出しするに限る。
『終盤の消耗が此処で響いた!!轟チーム、残り時間30秒で沈黙!!癒月チームは反対側の氷壁を破壊し、逃げの一手!!だがしかし、追手はまだ残っている!!緑谷チーム、執念の追撃だァ!!障壁はもう無い!!』
対して、緑谷君のチームはバランスが取れてる。
飛び抜けては無いが、どんな状況でも対応可能。
というより、
ある程度距離が離れていても、お構いなしだ。
一人で全部賄えるなど、どうかしている。
「ならば、こっちは全員で対抗です」
『おっと、癒月チーム!!此処で例の力技だ!!機動力を捨て前騎馬の拳藤も守りに参戦!!癒月に尾白、拳藤の3人掛かり!!流石の常闇も押し切れない!!』
『残り僅かなら、確かに有効だ』
「守るだけなら、遣り様はある!!」
「こうもお膳立てされちゃあね!!」
「ハチマキに触れる事も出来ないか……!!」
これにより
そのまま防御を続けつつ、私達は逃げを継続した。
機動力は落ちたが、逃げない理由は無い。
距離こそ離れてるが、緑谷君達は確実に迫っている。
それに続くように、鉄哲君のチーム。
凄い形相の轟君も、ゆっくりだが同様だ。
とてもじゃないが、油断など出来ない。
「クソがァ!!ピンク髪ィ!!」
そして案の定、爆豪は単独で跳んで来た。
切島君や芦戸さん、瀬呂君を置き去りにして。
やはり、自力飛行出来るのは便利だ。
怒声とともに、その腕が首元に迫る。
今の私は
拳藤さんも尾白も、爆豪君まで阻む余裕は無い。
そっちに意識を割けば、常闇君に取られる。
とはいえ、油断はしてないが、心配はしてない。
「うっせぇんだよ。爆破野郎」
「んだてめぇ!!殺すぞ───」
心操君の個性は、爆豪君達に
当然、その声に返事をすればどうなるかも。
次の瞬間、爆豪君の動きが止まった。
爆破による推進が切れ、勢いが失われる。
その首元には、残りのハチマキが巻かれていた。
私はそれを迷わず全て取る。
偶然にも、これで全て揃った。
「爆豪、大丈夫か!?」
「やべぇ、ハチマキ!!」
「嘘っ!!そんな!?」
「ちっ……まだだァ!!もう一度だァ!!」
「せめて……1枚だけでも……ッ!!」
爆豪君は、瀬呂君に引き寄せられた後。
再び、爆破で跳躍。
緑谷君もまた、騎馬を足場に跳ぶ。
轟君は届かないと分かりつつ、氷結を放った。
他の騎馬も、我武者羅にこちらへ向かう。
けれど、もう、どれも届く事は無い。
「皆さん、治療お疲れさまでした」
『TIME UP!!そこまで!!』
プレゼント・マイクの声が会場中に響いた。
一瞬の静寂の後、大歓声が巻き起こる。
首元には計12枚のハチマキ。
私達の、医療の、完全勝利だ。