治療狂人のヒーローアカデミア   作:熊田ラナムカ27

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19 良薬からは目を背けずに

 

 癒月と芦戸の試合が終わって、少し経った。

 

 次の試合は、常闇VS八百万だ。

 

 試合を終えた癒月は、観客席へと戻って来る。

 

 芦戸はまだ、姿を見せていない。

 

「おーう!お疲れ!バチバチの格闘戦だったな!」

 

「個人的には、2人とも参考になったよ」

 

「全身スライム塗れとかエロ───」

 

「ごめんなさい。舌が滑ったわ」

 

「すみません。私も手が滑りました」

 

「癒月も梅雨ちゃんも容赦ねぇ……」

 

「いや、妥当でしょ」

 

 癒月が帰って早々、峰田は制裁を受けた。

 

 両頬を赤くし、客席で白目を剥いている。

 

 毎度の事ながら、よくやると思う。

 

 なお、左腕と右足についていた酸液は、弱アルカリ性の石鹸で、何度か洗ったところ取れたらしい。

 

「そんで芦戸は?まだ控え室か?」

  

「おそらくは。治療も終わった頃でしょうし」

 

 俺がそう尋ねると、癒月は淡々と返した。

 

 案の定というか、何というか。

 

 気合い入れて負けた後は、何時もこれだ。

 

 どうなってるかは、簡単に想像つく。

 

「じゃあ俺、芦戸の様子ちょっと見てくるわ。俺の試合も次の次だし。言い忘れてたけど、ナイスファイト」

 

「では、お願いします。試合が終わった直後に行くのは、少し気まずいので。健康上の問題は無い筈ですが」

 

「そういうとこは、確認済みなのな」

 

 そんなこんなで、俺は観客席を立った。

 

 背後では、次の試合が始まろうとしている。

 

 見たいのは山々だが、今はこっちが優先だ。

 

 そして通路を抜け、俺は控え室に着いた。

 

 そのドアを、慎重にゆっくり上げる。

 

「あー!!また負けた!!すっごい悔しい!!」

 

「やっぱ、こうなってたか。荒れてんな」

 

「切島!!あとちょっとだったのに!!」

 

「気持ちは分かるけど、声デケェって!」

 

 俺は直様、ドアを閉めて音が漏れないようにした。

 

 この声量だと、他の奴等に普通に迷惑だ。

 

 今回は一段と荒れに荒れてる。

 

 あの新技によっぽど自信があったらしい。

 

 軽く涙ぐんで、悔しそうにしている。

 

「でもよ。あそこまで追い詰めたじゃねぇか」

 

「それでも負けは負け!!やっぱり勝ちたかった!!個性抜きのハンデ有りなら多分勝ってたけどさ!!」

 

「それじゃあ勝った意味ないもんな。もしそれで勝っても、俺なら絶対納得出来ねぇだろうし」

 

「ほら!!切島もやっぱそう思うじゃん!!」

 

 芦戸はそう言って、机に突っ伏した。

 

 見たままの通り、不貞腐れている。

 

 俺は思わず頭を搔いて、言葉を探す。

 

 こういう時に掛けられる言葉は限られてる。

 

「昔の自分より成長してるってのは分かってるよ。癒月ちゃんがそれと同じか、それ以上に成長してるってのも。頭では分かってるんだよ。でもさ。悔しいもんは、やっぱり悔しいよ。やれるだけやったから余計に」

 

 そんな折にふと、芦戸はそう零した。

 

 何時もの彼奴らしくない、弱々しい声で。

 

 彼奴がこの場に居ないからこその姿だ。

 

「癒月ちゃんはさ。出会った時から、強くて、格好良くて、怖くて厳しいけど、根っこは優しくて。私の自慢の友達。今回の勝負も当然悔しいけど、凄いなとも思ったもん。そう思った時点で、まだまだなんだろうけど」

 

 芦戸と癒月の性格は正直、正反対だ。

 

 片や人当たりが良くて、片や我が道を行く。

 

 なのに、2人は妙に馬が合う。

 

 リスペクトし合って、互いを高め合ってる。

 

 片方の暴走を、止める事も多いけど。

 

 負けず嫌いなところは、似てるのかもしれない。

 

「……何時になったら私、癒月ちゃんに勝てるのかな。何時まで経っても、守って貰ってばっかりなんて、絶対に嫌。あの子が私を守ってくれたみたいに、私もあの子を守りたい。だって、友達だもん。そう思って張り切って頑張ったのに……先は長いなぁ」

 

 俺にとっちゃ、両方ともすげぇ友達だ。

 

 出会い方としては、最悪だったけど。

 

 それでも、漢気のある奴等だと思ってる。

 

 今回の試合だって、負けられないって思った。

 

 友達として、何時か並び立ちたいって。

 

 負けたくないってのは、俺も同じだ。

 

「だったらよ。また強くなれば良いじゃねぇか。次こそ癒月を負かしてやるぐらい。折れねぇ限り負けはねぇ。それが漢ってもんだ!これで諦める気はないんだろ?」

 

 そんな事を思って、出た言葉がそれだった。

  

 我ながら格好付けた言葉だと思う。

 

 それでも、言わずにはいられなかった。

 

 そうするべきだって、心から思ったから。

 

 少なくとも俺は、情けない自分でいたくない。

 

「……高校デビューマンのクセに格好付けちゃって」

 

 そう小さく呟くと、芦戸は席を立った。

 

 ついさっきまでの涙はもう見えない。

 

 身体を伸ばしつつ、快活に笑ってみせる。

 

 何時もの、芦戸らしい芦戸だ。

 

「でも、お陰で元気出た。ありがと。何時もの事だけど、愚痴も聞いて貰ったし。少しスッキリした。お互い守れるヒーローになるんだもんね。ツノ持ち同士!」

 

「ツノは関係ねぇだろ!そこあんま弄んな!」

 

 張り詰めた空気は消え、控え室は騒がしくなった。

 

 ドアを閉めておいて、改めて正解だったと思う。

 

 まぁこれも何時も通りだ。

 

 そんなこんなで、芦戸はドアの前に移動する。

 

「んじゃ、そろそろ私は席に戻るよ。次の試合もあと少しで始まりそうだし。私は負けちゃったけど、切島は負けないでよ。漢気見せろってね。それじゃあ頑張れ」

 

 そう言って、芦戸は観客席へと去って行った。

 

 さっきまでの落ち込み様が嘘のようだ。

 

 すっかり静かになった控え室で、俺は頬を搔く。

 

 この分だと、まだ敵いそうにない。

 

「……うっし。俺も気張るか!」

 

 そして俺もまた、自分に気合を入れた。

 

 

 

 

 

 

♦♦♦

 

 

 

 

  

 

 Bグループ、第1試合となる常闇君VS八百万さん。

 

 その試合は、開始直後から常闇君が終始圧倒。 

 

 黒影(ダークシャドウ)の連打で、場外まで押し出し勝利を収めた。

 

 八百万さんは終始、何もさせて貰えなかった。

 

 というより、迷いが目に見えて多かった。

 

 考え過ぎるのも、考えものである。

 

「あちゃー。ヤオモモ、負けちゃったんだ」

 

「芦戸ちゃん、お帰りー」

 

「ありゃ、相手が悪いよ」

 

「怪我の方は大丈夫ですか?」

 

「うん!問題無し!もうバッチリ!」

 

 そして、第2試合が始まる間際。

 

 そのタイミングで、芦戸さんは帰って来た。

 

 普段の芦戸さんと、変わらない様子で。

 

 この分だと、もう大丈夫らしい。

 

「次の試合は上鳴とB組の子だっけ?」

 

「癒月ちゃんと騎馬組んでたよね」

 

「とはいえ、相性はかなり悪いはずですが」

 

 第2試合は、上鳴君VS拳藤さん。

 

 片や遠距離、片や近距離戦が主体。

 

 況して、以前の私のように時間稼ぎも不可。

 

 拳藤さんが、明確に相性不利だった。

 

 私自身、他人事とは思えない。

 

「っぶね!!ギリギリセーフ!!」

 

「開幕速攻は流石に読まれちゃうよね」

 

 拳藤さんは、巨大化させた拳で上鳴君を攻撃。

 

 上鳴君はそれを紙一重で避け、攻防が始まった。

 

 芦戸さん同様、上鳴君に個性を使わせないつもりだ。

 

 実際、それぐらいしか勝ち筋が無い。

 

「って事で、目潰し!!あと投擲!!」

 

「ちくしょう!!最近こんなんばっか!!」

 

「実際、有効な手ですからね」

 

「仕方ないけど、容赦ない……」

 

 それを分かっているのか、拳藤さんは攻撃に徹した。

 

 開始直後に、自らの拳で破壊したリングの残骸を片っ端から投げつけ、上鳴君に避け続ける事を強制させる。

 

 個性を発動する隙を与えず、確実に距離を詰めた。

 

 上鳴君の個性では、瓦礫を破壊する事が出来ず、加えて無駄撃ちが出来ない点から考えても良い手だ。

 

 初撃もおそらく、この流れを見越しての事だろう。

 

 薄々分かっていたが、彼女は頭が良い。

 

「よっし!!捕まえた!!」

 

「こうなりゃいっそこのまま……ッ!!」

 

「そこはもう……根性ってね……っ!!」

 

 そして拳藤さんは、巨大な手で上鳴君を掴んだ。

 

 咄嗟に上鳴君は電撃を放ち、拳藤さんを行動不能にしようとするも、その動きを止めるには間に合わない。

 

 騎馬戦時の出力を出すには、溜めが要る。

 

 全身を電撃で痺れさせながらも、拳藤さんは掴んだ手を勢いよく振り抜き、そのまま上鳴君を場外にした。

 

 動きが固くなり過ぎていたのが、敗因だろう。

 

『癒月との戦いを通して慎重な立ち回りを学んだんだろうが、それが仇になったな。開始早々、個性をぶっ放してたら結果は変わってた。今後に期待って所だな』

 

『彼奴もバーサーカーの被害者って訳ね』

 

「俺の周りの女子強過ぎ………」

 

「騎馬戦で個性を見てなかったらヤバかったよ」

 

 こうして、第2試合は拳藤さんの勝利で終わった。

 

 仮にも騎馬戦を共に戦った仲として、拳藤さんが無事勝ち上がった事は、個人的に純粋に嬉しい。

 

 その健闘も含めて、賞賛されるべきだと思う。

 

 個性と戦術を活かした、見事な戦いぶりだった。

 

 それはそれとして、問題が一つ。

 

「あれれ?上鳴って言ったっけ?彼、拳藤に負けちゃったの!?個性相性考えたら圧倒的に有利なのに!?おかしくない!?おかしくない!?彼、強個性なのに!!」

 

「誰ですか貴方?何もかもが五月蠅い」

 

「騎馬戦で爆豪にハチマキ取られた人だ」

 

「雑魚が粋がってんじゃねぇよ」

 

「拳藤が居ないからって………」

 

 B組の金髪、物間君が普通に五月蠅かった。

 

 煽りの内容と声量も勿論だが、主に顔が。

 

 もっと言うなら、顔が不衛生だ。

 

 彼も何かしらの病気持ちなのだろうか?

 

 この学校はあまりにも患者が多い。

 

「とりあえず、唾を飛ばさないで下さい」

 

「ぐへぇっ!?」

 

「出たよ。癒月の治療ビンタ」

 

「うちの物間がごめんな」

 

「いや、こっちこそ。うちの癒月ちゃんが」

 

「今の何だったんだ………」

 

 続いて、第3試合となる尾白君VS切島君。

 

 この試合は単純明快。

 

 真正面からの攻撃の打ち合いとなった。

 

 されど、切島君がやや優勢だ。

 

「くっそ!!なんて硬さだ!!攻撃してるこっちが逆にダメージを受けるだなんて!!」

 

「おら!!おら!!どうした!?どうした!?そんなんじゃこれっぽちも効かねぇぞ!!」

 

 切島君の個性は極論、硬くなるだけ。

 

 派手さも無ければ、搦め手も無い。

 

 けれど、シンプル故にその伸び代は大きい。

 

 彼の個性は鍛えれば鍛える程、硬くなる。

 

 叩けば叩く程、まるで鋼鉄のように。

 

 その上限はほぼ無いと言って良い。

 

「こちとら伊達に1年間!!癒月と芦戸のサンドバッグになっちゃいねぇからな!!」

 

『今の発言、放送して大丈夫か!?』

 

『訓練方法としては合理的だから良いだろ』

 

「彼奴、よく1年間生きてたな………」

 

「ちゃんと加減はしてたって!!」

 

「そうです。適切な処置もしていましたし」

 

「「「そういう問題じゃない」」」

 

 そんな訳で、雄英の受験日までの1年間。

 

 私達は訓練がてら、切島君を何度も叩きのめした。

 

 その度に、切島君はどんどん硬くなった。

 

 鉄哲君も十分硬かったが、それ以上だ。

 

 治療天使の白衣(ナイチンゲール・コート)も、純粋な硬さでは到底及ばない。

 

 今の彼を正面から倒すのは、私でもかなり厳しい。

 

 尾白君の尻尾の強度では、まず不可能だ。

 

「だったら、無理にでも崩すまでだ!」

 

 尾白君は尻尾での攻撃から、格闘戦に切り替えた。

 

 手技や足技で、切島君の体勢を崩そうとする。

 

 崩したところを尾で掴んで、場外にする気だ。

 

 意外にも器用な彼の尻尾なら可能だろう。

 

 切島君の攻略法としては、間違っていない。

 

「生憎、そういう手は慣れっこなんだよ!!」

 

 けれど、それは私達もよく使う手だ。

 

 付け焼き刃では、切島君は決して止まらない。

 

 尾白君の技の全てを、切島君は硬度を更に高める事で無理矢理無効化し、逆にその懐へと飛び込んだ。

 

 ゴリ押しこそ、彼の真骨頂と言っていい。

 

 苦し紛れに尾白君は尻尾で攻撃し、切島君を迎撃しようとするも、それすら押しのけて彼は前に進む。

 

「癒月直伝!!KOアッパー!!」

 

『渾身のアッパーが顎に炸裂!!尾白が宙を舞ってリングに倒れ伏した!!清々しいまでのど根性っぷり!!』

 

『尾白君、行動不能!!切島君、2回戦進出!!』

 

「おらァア!!勝ったァ!!」

 

「ナイス!!切島!!」

 

「教えた覚えはありませんけどね」

 

 そして、いよいよBグループ最終戦。

 

 第4試合、爆豪君VS麗日さん。

 

 実力差は誰の目から見ても歴然。

 

 この組み合わせに会場中がピリついた。

 

 況して、彼は手加減をするタイプではない。

 

「緑谷君。先程言ってた爆豪君対策とは何だったんだい?」

 

「ん!本当大したことじゃないけど……かっちゃんは強い!本気の近接戦闘はほとんどスキなしで、動くほど強力になっていく個性だ。空中移動があるけど……兎に角浮かしちゃえば麗日さんは主導権を握れる」

 

 試合を前に緑谷君は飯田君にそう言った。

 

 逆に言えば、それしか勝ち筋が無い。

 

 拳藤さんと上鳴君の試合の時と同じだ。

 

 麗日さんが勝つには、兎に角近づくしかない。

 

 尤もこっちは、数十倍は相手に隙が無いが。

 

(冷静な爆豪君は強いですから)

 

 スタートの合図と共に麗日さんは駆け出した。

 

 それに対し、爆豪君は大振りな右手で対応する。

 

 かつて緑谷君が見抜いた、爆豪君の癖だ。

 

 それを読んでいた麗日さんは、爆破を寸前で躱す。

 

「躱されんなら、もう一発撃つだけだァ!!」

 

「嘘ッ!?うわぁッ!!」

 

「かっちゃんが続けて左!?」

 

「人間は学習する生き物です」

 

 爆豪君は続けざまに、左手で爆破を放った。

 

 それをモロに喰らった、麗日さんは地面に転がる。

 

 完全に出鼻を挫かれた形だ。

 

 リング全体に爆破による煙が充満する。

 

(だったら、上着のブラフで───)

 

「何する気か知らねぇが関係ねェ!!」

 

「爆破で煙ごと吹っ飛ばした!?」

 

(アカン!!本当に隙が無い!!)

 

 その煙を利用し、麗日さんは手を打とうとした。

 

 しかし、爆豪君は先手の爆破で、煙ごと策を潰す。

 

 またしても、麗日さんは地面に転がった。

 

 今度は直撃していないが、それでもキツイだろう。

 

 麗日さんは立ち上がり、我武者羅に突撃する。

 

 そんな状況でも、爆豪君は追撃の手を緩めない。

 

「よく分かんねぇけど、爆豪めっちゃキレてる」

 

「彼は元々才能の塊ですからね。普段は直ぐキレるせいで、その才能任せになってましたが、冷静になればこんなものです。これまで何度も痛い目を見てますし」

 

「この数ヶ月の……経験値の差」

 

「あの才能マン……飲み込み良過ぎんだろ」

 

「それ、余計に見てらんないじゃん……」

 

 リングでは複数回に渡って、爆音が響いた。

 

 麗日さんはよく凌いでいるが、それでも一方的だ。

 

 先手先手で、爆豪君は攻撃される前に潰す。

 

 後の先の反対、先の先を体現していた。

 

 相手に何もさせず、小細工を使う暇も与えない。

  

「俺はもう、二度と油断しねぇぞ丸顔ォ!!」

 

 爆豪君は、地元では負け無しだったのだろう。

 

 それもあって、プライドが肥大化し傲慢になった。

 

 けれど、緑谷君には訓練と障害物競走。

 

 私には騎馬戦で、それぞれ敗北している。

 

 それ故に、彼はもう誰が相手でも見縊らない。

 

 油断しないからこそ、相手を徹底的に潰す。

 

 その姿勢が、戦いっぷりに現れていた。

 

 その傲慢さは、頂点を求める気持ちの裏返しだ。

 

 これもある種の資質なのかもしれない。

 

「それでも、麗日はまだ諦めてないよ」

 

「それもまた、資質の一つです」

 

 麗日さんは休む事なく、攻撃を続けた。

 

 彼女の身体は傷つき、ボロボロになっていく。

 

 見方によっては、ヤケにも見えるだろう。

 

 けれど、彼女の目はまだ死んでいない。

 

 無謀な捨て身も、彼女の勝つ為の策だ。

 

 その準備は着々と整っている。

 

 良くも悪くも、緑谷君に影響されたらしい。

 

 自己犠牲病がうつってないといいが。

 

「そろそろ……か……な。ありがとう爆豪君……油断してくれなくて」

 

「ちっ……そういう事か」

 

『流星群!!!?』

 

『気づけよ』

 

 そして、麗日さんは遂に動いた。

 

 宙に蓄えられた瓦礫が、一斉に落ちる。

 

 その光景はさながら流星群を思わせた。

 

 おそらくは許容量ギリギリだろう。

 

 ダメージ込みで、立つのもやっとだろうに。

 

 その落下に紛れ、彼女も爆豪君へ接近する。

 

「この隙に爆豪君を浮かせる気か!?」

 

「そんな捨て身の策を……麗日さん!!」

 

 本人と流星群による挟み撃ち。

 

 今の麗日さんが出せる、最大限の策だ。

 

 顔色からして、既に限界は越えている。

 

 それでも、彼女はこれに全て賭けた。

 

 そして、勝つ為に歩みを進めている。

 

 彼女もまた、ヒーローの資質の持ち主だ。

 

 気持ちだけなら、勝ちも有り得る。

 

「ですが、気持ちだけでは勝てません」

 

「何企んでようが、全部潰すだけだ」

 

「………一撃て……ッ!!」

 

 けれど、爆豪君は流星群を大爆破で粉砕した。

 

 訓練時に見せた、アイテム有りの爆破。

 

 デメリットは当然あるだろうが、アレをアイテム無しで出せない道理は、これっぽちも無い。

 

 こういう時の為に、温存していたのだろう。

 

 無情にも流星群は、塵となって地面に落ちる。

 

 意識こそあるものの、麗日さんはその場で倒れた。

 

 限界を既に超えた彼女は、もう戦えない。

 

「んのっ……体が言うこと……きかん!!」

 

「麗日さん………」

 

「……許容限界超過(キャパオーバー)ですね」

 

「……そうかよ。これで終わりか、麗日」

 

『麗日さん……行動不能。爆豪君、2回戦進出!!』

 

 これにて、Bグループの試合は全て終わった。

 

 どの試合も文句無しに良い試合だった。

 

 次の試合は、Aグループに戻り2回戦。

 

 因縁ある、緑谷君と轟君の試合だ。

 

 とはいえ、緑谷君の姿は既に無いようだが。

 

 どうやら、麗日さんの様子を見に行ったらしい。

 

 自分の試合を前にしてお節介な事だ。

 

 だからこその、彼なのだろうが。

 

(それでも貴方は、目を背けたままですか?)

 

 視線の先で、轟君は席を立とうとしていた。

 

 彼は相も変わらず酷い顔をしている。

 

 自分の病を未だ自覚していないらしい。

 

 そんな彼を見て、思わず溜息が出た。

 

 是非とも、病原体E(エンデヴァー)の顔も拝んでみたい。

 

 彼以上に、目を逸らしている事だろう。

 

 今直ぐにでも治療してやりたい。

 

 どちらも治し方は、分かっているだろうに。

 

(全くもって、手の掛かる患者達です)

 

 そしてまたも、口から溜息が零れ落ちた。

 

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