治療狂人のヒーローアカデミア   作:熊田ラナムカ27

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入学・USJ編
2 協力は手術の基本


 

 季節は巡り春一歩手前。

 

 雄英高等学校一般入試、実技試験当日。

 

 手に持ったラムネで糖分補給をしつつ、雄英の無駄に大きい上に、金が掛かってる校門を私はくぐった。

 

 去年の文化祭以来の来校だが、流石に人が多い。

 

 ここまでの多人数となるとお婆様も大変だろう。

 

 というか、雄英はお婆様を酷使しすぎだ。

 

 もう少し休みを増やしてあげて欲しい。

 

「遂に来たぜ試験日当日!!緊張してきた!!」

 

「問題ありません。私達の合格は決定事項ですから」

 

「自信満々だね!私も当然そうだけど!」

 

 私と共に来た芦戸さんと切島君も意気込みは十分。

 

 健康状態もモチベーションも全員完璧。

 

 極度の緊張でヘマしなければ大丈夫だろう。

 

 何時も通りやれる職務を全てやるだけだ。

 

「じゃあ、早速!説明会の会場にレッツ───」

 

「お待ちなさい。2人とも。大事な事を一つ忘れています。此処まで人数が密集している以上、風邪などの感染は十分に起こり得ます。会場へ向かう前に、こちらで手洗い、うがい、アルコール消毒を忘れずに」

 

「おっと、出た。癒月のハイパー予防対策」

 

「入試当日でも発動するんだね、それ。癒月ちゃんらしいっちゃ、らしいけどさ。はい、これでいい?」

 

「ええ、問題ありません。バッチリです」

 

「俺達も随分これに慣れちまったよな」

 

「予防対策の習慣化は、とても良い事です」

 

 私達は試験会場に入る前に予防対策を行った。

 

 何時いかなる時も、これを忘れてはいけない。

 

 日々の予防対策は健康管理の基本だ。

 

 周囲の人間がざわざわと、好奇の目で手洗い場に居る私を見つめるが、そんなものは知った事じゃない。

 

 寧ろ貴方達はしないのかと問い質したいくらいだ。

 

 する気が無いなら、治療する事を前提で。

 

 試験前なので()()()……我慢するが。

 

「今日は俺のライブにようこそー!!!エヴィバディヘイセイ!!!」

 

(((シーン………)))

 

「こいつァシヴィー!!!受験生のリスナー!今から実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!アーユーレディ?YEAHHH!!!」

 

「なんて声量。なんて量の飛び散る唾。非常に不衛生。不潔です。改善もしくは治療を直ちに───」

 

「やめろ、やめろ。試験前に失格になる」

 

「一旦堪えて深呼吸。座ったままでいようね」

 

「私は常に冷静かつ落ち着いていますが」

 

 ボイスヒーロー、プレゼントマイク。

 

 直接見るのは初めてだが、とても五月蠅い。

 

 そして声量に合った、唾の飛び散り具合だ。

 

 飛沫感染リスクを考慮して欲しい。

 

 私はバッグの中から新品のマスクを取り出し、せめてもとプレゼントマイクに付けに行こうとした。

 

 けれど、隣の2人に全力で止められた。

 

 がっちりガードされ、立つ事が出来ない。

 

 なんて屈辱。目の前の病源体を駆除出来ないとは。

 

 医療現場の敗北を、この目で見た気がする。

 

「リスナーにはこの後10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!!武器の持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」

 

 仕方なく、机に置かれたプリントを見てみると、試験会場を示すアルファベットが記載されていた。

 

 受験番号が連番にも関わらず、芦戸さんと切島君とは全員、それぞれ別の会場に割り振られている。

 

(つまり2人との連携は不可能。単独行動でロボを各個撃破し、ポイントを稼ぎつつ、怪我をした他の受験者の治療及び、救助を行うのが最適解。一人で行うには中々のハードワークですね。索敵系の個性の方に協力を頼めれば、サーチアンドデストロイで、ロボを殲滅する事も可能ですが、試験である以上、それは現実的ではない。地道にコツコツ……やるしかないか)

 

 プリントを注視し、行動マニュアルを脳内で作成。

 

 試験時における、最適な医療プランを思考する。

 

 試験内容自体は非常にシンプル。

 

 ロボを倒し、ポイントをひたすら稼ぎ続ける。

 

 合格のみを目指すのであれば、()()()()()

 

 だが、それは、私の流儀に反する。

 

 私にとっての合格ラインは()()()()()

 

 負傷した者に対する()()()()()()の実施。

 

 おばあ様の負担を少しでも多く減らす事だ。

 

 それが出来なければ、何の意味もない。

 

 もし出来なければ、合格したとしても蹴る。

 

 合格が決定事項である以上、私が見るのはその先。

 

 病める世界を癒す、薬になる事だけだ。

 

「───おい。おい、癒月。話聞いてるよな?」

 

「あっ、すいません。考え事してました。大体の内容は把握してます。配管工がキノコの化物と亀を蹴り飛ばし、食人植物を退けたはいいものの、巨大な岩にやられた話ですよね?早期のコンテニューが必用かと」

 

「うん、一個も合ってない。マジで何の話?」

 

「さっき縮れ毛の奴が真面目そうな眼鏡に大声で、注意されてたってのに、それも聞いてなかったのかよ」

 

「はい。まるで興味が無かったので」

 

 私が思考してる合間に説明はほぼ終わっていた。

 

 切島君と芦戸さんは大呆れしている。

 

 必要ない説明はスキップするのが一番だ。

 

 新しいゲームを買った時も何時もそうしている。

 

「俺からは以上だ! 最後にリスナーに我が校の“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!!それでは皆良い受難を!!」」

 

 そうこうしているうちに説明会は終わった。

 

 私達は会場を出てバス乗り場に向かう。

 

 ここから先は、正真正銘、別行動だ。

 

「では、2人とも。怪我には気をつけて」

 

「おうよ!いっちょやってやるぜ!」

 

「じゃあ、今度こそ、会場にレッツゴー!試験終わった後の待ち合わせ場所は、駅前のマックね!」

  

「はい。打ち上げを楽しみにしています」

 

 バスに揺られて数十分。

 

 私は割り振られた会場へと到着した。

 

 見た限り多くの受験生が浮足立ってる。

 

 個性を思う存分使える貴重な場だからだろう。

 

(試験だからといって、現場を舐めてる)

 

『ハイ!スタートー!』

 

 予告も無しにプレゼントマイクの声が響いた。

 

 スターダッシュの要領で、私は全力で走る。

 

 これにより後続から大幅にリードを取った。

 

 事故も事件も起こる時は一瞬。

 

 事件現場であれ、医療現場であれ。

 

 数コンマの遅れが、生死を大きく分ける。

 

 本気でそれを志すなら、これぐらいやれて当然だ。

 

(そういう意味で、あの方は多少見所がある。見たところ汎用性の高い個性のようですし使い方も上手い。才能マンなのでしょう。それはそうと、顔が怖い)

 

「チィッ!!クッソォッ!!出遅れた!!女、待ちやがれぇ!!」

 

 ヤンキー擬きの叫びを無視して、私は街を駆ける。

 

 駆動音から察するに、ロボは左方向と右方向。

 

 より数が多いであろう左方向を即座に選択し、待ち構えるロボの群れを視界の先に捉えロックオン。

 

 走りながら構えを取り、戦闘を開始する。

 

 相手はロボなので、加減も治療も不要だ。

 

『標的補足!!ぶっ殺───』

 

「殺菌!滅菌!消毒!無菌!防疫!」

 

『ギギッ!?こいつ容赦ナイッ!!』

 

『何故、衛生管理の言葉を───』

 

「お黙りなさい。大人しく壊れてください」

 

『『『理不尽………ッ!!』』』

 

 私は前方の1Pロボをとび膝蹴りで破壊。

 

 続け様に横方向の3Pロボを裏拳で粉砕。

 

 破壊した3Pロボの残骸をそのまま掴み上げ、振り回し、周囲のロボをまとめて蹴散らす。

 

 金属同士のぶつかり合う音が辺りに響いた。

 

 空気の読めない輩はさっさと処理するに限る。

 

「な、なんだ彼奴!?増強型の個性か!?」

 

「ここ一帯のロボを、全滅させる勢いだ!!」

 

「あっちに居る爆破個性の奴もやべぇけど、こっちも十分やべぇ!急がねぇと、ロボが消えちまう!」 

 

「早い者勝ちなんてレベルじゃねぇ!!」

 

 私はひたすら前進し、眼前のロボを破壊した。

 

 怪我を予防するには原因の排除が一番。

 

 そもそも治療などせず済む方が良い。

 

 患者も医者も、そっちの方が楽に決まってる。

 

「大丈夫ですか?どこも痛くありませんか?」

 

「あ、ああ。お陰様で。こ、転んだだけだ」

 

「もう、大丈夫。貴方を蝕む病源体はもう居ません。尻餅をついただけのようなので、私は行きます。怪我した際は直ぐに呼んで下さい。治療を行いますので」

 

「あ、あ、ありがとうございます……」

 

 故に、患者を生み出す存在は、全て排除する。

 

 眼前のロボを全機破壊し、私は周囲を見渡した。

 

 ロボの位置、患者の位置、周囲の状況。

 

 それらを瞬時に把握し、最適な治療を行う為だ。

 

 事前に組んだ医療プランを状況に合わせ更新する。

 

 追い詰められた患者が居れば、直ちに急行し、ロボの排除し、患者への処置を慌てず急いで正確に行う。

 

 それが完了すれば、次の場所へ。

 

 ロボを破壊。状況を把握。敵を排除。治療の実施。

 

 そして、再びロボを破壊。

 

 この一連を休む事なく繰り返す。

 

 予想通りのかなりのハードワークだ。

 

 だが、まだ止まれない。

 

「1Pロボと2Pロボを確認。患者に向かって背後から接近中。緊急治療をこれより開始します」

 

 真の意味で合格する為には、まだ足らない。

 

 足も腕も既に重さを感じているが、関係ない。

 

 そんなものは所詮、体が発するのアラート。

 

 心が折れない限りは、幾らでも無視出来る。

 

 患者に迫る2機のロボを、私は瞬時に破壊する。

 

「貴方、大丈夫ですか?見たところ外傷は見られませんが、あるようなら言って下さい。治療に行います」

 

「いや、大丈夫だ。問題ない。ロボが壁を壊し、背後から接近してる事には気づいていたが、前方のロボを相手に手一杯だった。お陰で助かった。ありがとう」

 

「礼には及びません。困ってる患者を救うのは医者の役目です。ヒーローの役目でも同時にありますが」

 

 試験終了まで残り6分程度。

 

 ロボの数もかなり少なくってきた。

 

 ついさっき助けた多腕の個性の方の周囲を、念には念を入れて警戒しつつ、私は辺りの様子を伺う。

 

 0Pロボは、未だ影も形も見えない。

 

 プリントの記載通りならかなりの巨体。

 

 どうやっても見逃すはずがない。

 

 途中で出すにしても、登場が遅すぎる。

 

「……なんだ?この地響きは?あっちの方からか?」

 

 そんな最中に多腕の彼はそう言った。

 

 耳や目を巨大な腕から複製出来るらしい。

 

 ついさっきのヤンキー擬きといい、流石は雄英。

 

 優れた個性を持つ人物が揃っている。

 

 私は彼が示した方向へ視線を向けた。

 

 すると次の瞬間、ビルの一つが動き始める。

 

 見かけないと思ったら、擬態していたようだ。

 

「……予算の無駄遣いがすぎる」

 

 0Pロボは街を破壊しながら動き出した。

 

 余波だけで幾つもの建物が倒壊していく。

 

 今壊れたビルだけで……幾らの赤字だろう。

 

 多くの受験生がその脅威に逃げ惑う。

 

 他者を押し抜け我先にと走っている。

 

 このままだと二次被害が発生しかねない。

 

 病源体の早期排除が必要。

 

 だが、まずは避難誘導と救助が優先。

 

 救える命を救う方が先だ。

 

 しかし、初撃の被害が予想以上に大きい。

 

 避難誘導に回れば、救助が間に合わない。

 

 だが、避難誘導をしないのは論外。

 

 一次被害より二次被害の方が質が悪い。

 

 最悪避難場所を巡って乱闘が起きる。

 

 とてもじゃないが、一人では手が回らない。

 

「俺の時のように他の受験生を助けに行くつもりか?なら、俺も手伝おう。何をすればいい?」

 

 走りながら思考していると、多腕の彼は言った。

 

 相手は0Pロボ。メリットは一切無い。

 

 にも関わらず、彼の目に曇りは一切ない。

 

 本気で私に協力しようとしている。

 

「いいのですか?試験終了まで残り僅かですが」

 

「ああ、構わない。ここで逃げる者を見捨てたら、雄英を受けた意味がない。アンタには借りもあるしな」

 

「では、その巨体を活かし、避難誘導をして下さい。あのロボは今のところ一方向にしか動いていない。闇雲に逃げるより、進行方向の側面へ逃げた方が遥かに安全です。私は倒壊した建物周囲にいる受験生の救助へ向かいますので、そちらはお願いします」

 

「了解した。互いに受かっていたら、また会おう」

 

「きっと必ず会えますよ」

 

 私と多腕の彼は逆方向に迷わず走った。

 

 これ以上の言葉は要らない。

 

 倒壊した建物周囲は道路あちこちに瓦礫が散乱し、移動するだけでも困難な状況だった。

 

 それらを乗り越え、瓦礫を時に破壊し、要救助者が居ないか耳を澄ませ目を凝らし、気配を慎重に探る。

 

 ある程度進むと奥から戦闘音が聞こえた。

 

 大急ぎで戦闘音が聞こえた方向に走ると、そこではオレンジ髪の女性がロボ数体を相手に苦戦している。

 

「突然ですが、助太刀失礼!」

 

 私は近くの電柱を引っこ抜き、思いっきり投げた。

 

 鈍い音ともに、電柱は3Pロボに直撃する。

 

 装甲が大きくへこみ、僅かに火花が散った。

 

 ロボはそのまま動きを止め沈黙する。

 

 オレンジ髪の女性は私の登場に一瞬驚くも、気持ちを直ぐ切り替え、巨大化させた拳をロボに振るった。

 

 衝撃とともに、残りのロボ数体も沈黙する。

 

 0Pロボ以外の脅威はもう存在しない。

 

「悪いな。手を貸して貰って。あっちの瓦礫の下に埋もれてる奴を助けようとしてたら、囲まれて苦労してたんだ。ミイラ取りがミイラになるところだった。ついでで悪いけどそっち瓦礫、持ち上げてもらえる?」

 

「ええ、勿論。喜んで。手を貸させて頂きます。私が此処に来たのは、あの要救助者を治療する為なので」

 

「デカいロボが来てる上に、ポイントにもならないのに?アンタ、変わってるな。人のこと言えないけど」

 

 私は倒壊した建物の瓦礫をゆっくり持ち上げた。

 

 その隙にオレンジ髪の女性が身を滑り込ませ、瓦礫の下で気絶していた男性をどうにか引き上げる。

 

 服を脱がせ、心拍、呼吸等を検査し、念のため外傷が無いか確認も行ったが、頭のたん瘤とロボと戦った際に出来たのだろう、擦り傷以外は大した事はない。

 

 辛うじて軽傷のようだ。

 

 たん瘤から察するに逃げようとした最中、瓦礫が頭に直撃し、そのまま埋もれる形で気絶したのだろう。

 

 なんとも運の悪い患者だ。

 

『終了~!!!そこまで~!!!』

 

 要救助者の救助も済み、避難誘導もそろそろ終わったであろう事を考え、最後の病源体の排除に移ろうかと考えていると、プレゼントマイクの合図が響いた。

 

 0Pロボは合図とともに機能停止する。

 

 ……どうやら、そういう()()()だったらしい。

 

 ヒーローの篩い分けとしては合理的だ。

 

 そこから見える、大前提が確かにある。

 

(しかし、もう二度とやらないで欲しい)

 

 でも、それはそれ、これはこれだ。

 

 医者目線からすれば、常軌を逸してる。

 

 治療に長けたおばあ様がいくら居るといっても、対策をしてるとしても、万が一があってからでは遅い。

 

 そもそも、建物を壊す必要が何処にある。

 

 演出ならもっと低予算なものに差し替えろ。

 

 無駄遣いするくらいなら医療費に回せ。

 

 人の命と予算を何だと思っているのだ。

 

 この試験を考え、実行した奴はどうかしてる。

 

 直ちに頭を切開して、治療してやりたい。

 

「ア、アンタ……大丈夫?顔怖いよ」

 

「あっ、すいません。つい顔に出てしまいました。今から校長室に殴り込みに行く算段を付けていたので」

 

「詳しい事は聞かないけど、それはマジで止めときな。不合格になるどころか、警察に余裕で捕まるよ」

 

「問題ありません。私が行うのは治療です」

 

「それ絶対、殴る蹴るのやつだろ!!」

 

 校長室向かおうとするも全力で止められた。

 

 巨大な手に引っ張られて動けない。

 

 自分自身既に分かっていた事であるが、ヒーローとして、医者として、私はまだまだ未熟らしい。

 

 次は必ず、この手を振りほどいてみせる。

 

「そういえば、つい先ほどあなた達に行ったのは検査で、治療の方はまだでしたね。ジッとして下さい」

 

「えっ、治療?これぐらい大丈夫だって。掠り傷みたいなもんだし。ちょっと肘を擦りむいたけど───」

 

「いいから、ジッとしてて下さい」

 

 私はオレンジ髪の女性を無理矢理座らせた。

 

 下手に動かれては治療が滞る。

 

 私は自らの手を2人の方向に向ける。

 

「病める誰かを見捨てる事は、私は決してしません」

 

 そして自らの個性を発動し治療を開始した。

 

 意識を集中させ、半透明なエネルギーを放出する。

 

 次第にエネルギーは2人の体を包む込む。

 

「これって……治癒の個性………!?」

 

 私の個性はヒーリングオーラ。

 

 体内で生成したエネルギーを手から放出し、それに触れた相手の治癒力を活性化させ、傷を癒すとともに、私が病源体と判断したウイルス等をはじき飛ばし、滅菌消毒する事が出来るというものだ。

 

 この程度の傷なら直ぐに治せる。

 

 ただし、おばあ様のものほど回復効率は良くない。

 

 私の修練と経験が純粋に不足しているからだ。

 

 齢15歳の若造が目上に勝てる訳もない。

 

「てっきりアンタ……増強型の個性かと思ったけど、治癒の個性だったんだ。テレビ以外で初めて見た」

 

「何故か初対面の方には、増強型の個性だと良く間違えられるんです。鍛えただけでそんな力は無いのに」 

 

「いや、待て。鍛えただけ?普通鍛えただけで、瓦礫を持ち上げたり、電柱を投げ飛ばしたりするのは、どう考えても無理だろ。念の為に聞くけど、ほんと?」

 

「鍛える過程で多分にズルはしましたが」

 

 オレンジ髪の女性は私の言葉にドン引きした。

 

 最前線に立つ為にはこれぐらいは必要。

 

 傷つくヒーローを、市民を、ヴィランを癒す為に。

 

 だから、鍛え動けるようにした。

 

 それだけなのに、驚く事があるだろうか?

 

 私からすれば不思議でしかない。

   

 生かす為に死ぬほど準備するなんて皆やる事だ。

 

 ヒーローであるなら、医者であるなら尚更。

 

 その準備不足で容易に人が死ぬのだから。

 

「では、私は治療が済んだので行きます。友人と待ち合わせをしているので。帰りは怪我のないように」 

 

「あっ、そうだ。アンタ名前は?」    

 

「癒月波音。ヒーロー志望であり医者志望です」

 

「そっか。私は拳藤一佳。じゃあ、またな!」

 

「ええ。今度は同じ学び舎の下で」

 

 私は拳藤さんと別れてその場を去った。

 

 彼女とも此処でまた会えるだろう。

 

 特効薬(ヒーロー)の原石は多ければ多い方が良い。

 

 今日の試験でそれを改めて確信した。

 

 この世界は病みあまりにもアンバランス過ぎる。

 

「その為にも、もっと強くならないとですね」

 

 機能停止した0Pロボは夕焼けに照らされていた。

 

 いずれ超える自らの壁を、暗示するかのように。

 

 

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