完結の余韻に浸ってたら遅くなりました。
ちなみに先の構想は、まだありません。
この作品……本当に、大丈夫か?
すったもんだの警報騒ぎから一夜明けた。
何事も無く、午前の授業が終わった。
流石に懲りたのか、マスゴミの姿はない。
また来るようなら、治療するまでだ。
そんなこんなで、次はヒーロー基礎学。
「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることとなった」
「ハーイ! 何するんですか?」
「災難水害なんでもござれ、
相澤先生は、そう軽く私達に説明した。
けれど、その言い方には違和感がある。
本来のカリキュラムだと、担当教員は2人。
十中八九、正門を破壊した犯人を警戒しての事だ。
私ですら警戒しているのだから当然だろう。
尤もそれを、他の生徒は知らないのだけど。
「レスキュー……今回も大変そうだな」
「ねー!キツそう!」
「水難なら私の独壇場ケロケロ」
「バカ、おめー。これこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ!!腕が!!」
「腕が鳴る?骨折ですか?直ちに治療します」
「お前のそれは冗談か分からんから止めろ」
私達の反応に、相澤先生は溜息をついた。
特に私の事を、何処か神妙な目で見ている。
今はまだ、何も言うなといったところだ。
余計な混乱を避ける意味では妥当だろう。
それはそれとして、切島君の腕を私は確認する。
骨にも筋肉にも、異常は見られない。
「今回コスチュームの着用は、各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。それと訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗っていく。以上、準備開始」
そして私達は、それぞれ準備を始めた。
コスチュームに着替え、バスに乗り込む。
途中、皆を先導をしようとした飯田君が、想定していたバスの内装の違いに、落ち込むという一幕があったものの、本当に些細な事なので語るまでもない。
正直、乗れれば何だって良い。
トリアージタグの見分けじゃあるまいし。
バスは訓練場に向かって走り出す。
「私、思ったことなんでも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!? ハイ!? 蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで。──あなたの“個性”、オールマイトに似てる」
「ッ!!!」
そんな中、梅雨ちゃんの何気ない一言に、緑谷君は飛び上がらんばかりに動揺した。
痙攣を疑うレベルの物凄い震えだ。
この人は本当に、リアクションが大きい。
まぁ確かに、言われてみるとそうだが。
「とはいえ、オールマイトの個性が不明なので、何とも言えませんけどね。緑谷君の個性の使い方は未熟そのものですし。あとついでに、あの人しょっちゅう事件やなんやで、お婆様の検診をサボりがちですし」
「それでいいのか、ナンバーワン」
「絶妙に聞きたくなかった裏話」
「そそそ、そうだよ!僕なんて、まだまだだし!」
「デク君、なんか安心してへん?」
けど、流石に似ているだけだろう。
仮に同じ家系でも、全く同じ個性は有り得ない。
個性は混じり合い、世代を重ね進化する。
そう語った学者も居たくらいだ。
私の知る限り、医学的前例が無い。
そっくり個性なんて腐るほど居る。
「しかし、増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来ることが多い!俺の硬化は対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなー」
「僕はすごくかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する個性だよ」
「プロなー!!しかしやっぱ、プロも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」
「僕のネビルレーザーは派手さも強さも折り紙つき☆」
「でも、お腹壊しちゃうのはヨクナイね!」
何時しか話は、別の話題に移った。
切島君が何時もながら、要所要所で繋ぐ。
緑谷君も、それに乗っかった。
よっぽど話題を逸らしたかったらしい。
青山君はモロ急所を、芦戸さんに突かれた。
戦闘中に腹痛は、色々大変だろう。
もし漏れたら、迷わず隔離する。
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな」
「ケッ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」
「んだとコラ、出すわ!!」
「ホラ」「実証が早いですね」
爆豪君は更に吼えようとして、寸前で抑えた。
完全にヤンキーだが、学習能力はある。
しかし、あれでは人気は出ないだろう。
ヤンキー漫画の主人公辺りが関の山だ。
患者の精神衛生上、色々とよろしくない。
看護師としての採用は絶望的だ。
「この付き合いの浅さで既に、クソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
「どんな個性であれ、人気は本人次第という事でしょう。結局、内面が一番大切です。強い個性だろうと、弱い個性だろうと、治療を施せば全員同じですし」
「それ出来るの癒月ちゃんだけでしょ」
「あっ、でも、オールマイトの実例が」
「人気って……なんなんだろうな」
瀬呂君はそう言って、考え込んだ。
芦戸さんと切島君は、遠い目をする。
緑谷君に至っては、酷く複雑そうだ。
考えるだけ無駄というやつだろう。
所詮、人気なんて第三者の評価。
そんなものあっても、治療の役に立たない。
少なくとも、私にとってはどうでもいい。
現に、相澤先生がそんな感じだし。
「すっげー!!USJかよ!!?」
バスから降りて直ぐ、私達は訓練場に入った。
そこで目にしたのは、巨大なウォータースライダーとプールに、炎や土砂に包まれた町並み、倒壊したビルの群れ。その他諸々、エトセトラ、エトセトラ。
一つ一つが、アトラクション並みのデカさだ。
きっと維持費も、それぐらいはする。
それだけあるなら、医療設備に当てて欲しい。
「水難事故、土砂災害、火事……etc.あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も……
(((本当にUSJだった!!)))
「その呼称、許可取ってます?」
などと思っていると、奥に居た人物が出てきた。
その人物の正体は『13号』。
『ブラックホール』という、強力な個性の持ち主だ。
話は聞いていたが、特徴的な宇宙服である。
「スペースヒーロー、13号だ!!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!!」
「わー!!私、好きなの13号!!」
ちなみに、13号の性別は女性。
正確には、紳士ではなく淑女だ。
お婆様経由で、中身の事は知っている。
初診の際、着脱で苦労したとか何とか。
「ところでオールマイトは?どうしたんですか?」
「そういや居ないな。待ち合わせのはずだが」
はしゃぐ麗日さんをよそに、私は辺りを見渡した。
どうしたことか、オールマイトの姿が無い。
相澤先生もその事に気付き、13号に尋ねる。
「あー、その、オールマイトは通勤途中でヴィランに遭遇してしまって。事件は解決したんですけど、
そして返って来た答えは、これだった。
13号先生は言葉を選びつつ、囁くように言った。
まぁ要するに、私用による遅刻だ。
他の生徒に聞かれたら、面倒そのものだろう。
元から怪しい教師力が、更に失くなる。
私と相澤先生は、揃って溜息をついた。
人の仕事を取った挙句、何をやっているのだ。
「……なるほど。不合理的の極みだなオイ」
「ヒーローとしては兎も角、教師としては論外です」
「まぁ……はい。……返す言葉がありません」
「気持ちは分かるが、あまり大きな声で言うなよ」
「言えませんよ。こんな小学生レベルの醜態」
他の皆が、不思議そうにこっちを見た。
私達の会話の内容が気になったのだろう。
私のように、聞きに来た訳でもないし。
声を潜めていたから、聞こえていないはずだ。
その内容が遅刻などと、笑い話にもならないが。
「えー、オールマイトは遅れるそうですが、授業を始める前に、お小言を1つ、2つ、3つ、4つ………」
(((増える……)))
(話を誤魔化すのやけに上手いな/ですね)
そんな空気を隠しつつ、13号は授業を始めた。
違和感なく始まったお陰で、色々有耶無耶になる。
裏事情を知る側としては、素直に尊敬する。
咄嗟にあの切り返しは、中々出来ない。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール。どんなものでも吸い込んで、チリにしてしまいます」
「知っています!その個性で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね」
「ええ……。しかし、簡単に人を殺せる個性です。皆さんの中にも、そういった個性がいるでしょう」
緑谷君の返答に、麗日さんは何度も頷く。
けれど、それとは裏腹、13号は静かに答えた。
その言葉に、騒めいてた空気も静かになる。
(医療そのものが、正しくそうですしね)
まぁ実際、個性に限らず、何にでも言える事だ。
例えば医療用メス。あれなら頸動脈を切れる。
あるいはカテーテル。誤接続で血管を塞げる。
さもなくば薬。服用量によっては毒になる。
どんなものも、使い方によっては凶器になり得る。
超常的な力を持つ、個性ならば尚更だ。
事実、私の個性ですら、人を殺す事は可能。
健常者の治癒力を、強制的に活性化させるなどで。
医者志望として、絶対にやらないが。
「超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで、一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる、いきすぎた個性を、個々が持っていることを忘れないで下さい」
そう静かに、13号は話を続けた。
その言葉は深く、とても重みがある。
彼女自身、そういった力を持つが故だろう。
そしてそれは此処に居る、誰にも言える。
力を誰かの為に使うのは、簡単で難しい。
況して、命を救う為ならば一層に。
「相澤先生の体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り。オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では……心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう」
「君達の力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな」
だからこそ、その言葉は深く響いた。
これは医者にとっても、ヒーローにとっても基本。
そして何より、最も重要な事だ。
気付けば私は彼女に、拍手を送っていた。
自分の在り方を、再認識した気がする。
他の皆も歓声と拍手を送る。
「以上!ご清聴ありがとうございました」
「ステキー!」
「ブラボー!!ブラーボー!!」
そして13号は軽く一礼した。
授業の掴みとしては申し分ないだろう。
そうした歓声と拍手が鳴り終わる頃を見計らって、一歩下がって様子を見ていた相澤先生が進み出る。
「んじゃあまずは……」
けれど、授業が始まる事は無かった。
相澤先生は指示を出す前に背後を見る。
後方にある広場の噴水近く。
そこで突如、異変は発生した。
ズズと、黒い渦が宙に出現する。
「全員ひとかたまりになって動くな!!……13号!!生徒を守れ!!」
相澤先生は即座にそう叫んだ。
黒い渦の中から、手がこちらを覗く。
その直後、何人もの人影が現れた。
年齢や外見などは、まるで統一性がない。
共通しているのは、こちらへの殺意。
訓練では感じえない、冷たい感覚のみ。
「動くな!!あれは
次第に手が、人の形を成した。
全身に手を付けた男のようだった。
その傍らには、影そのものような男も居る。
おそらく、あれが連中の首魁。
手の男の赤い目が、鋭く揺らめく。
「13号に……イレイザーヘッドですか。先日
「やはり、先日のはクソどもの仕業だったか」
穏便に済ませるのは、まず不可能らしい。
「どこだよ……せっかくこんなに、大衆引きつれてきたのにさ……。オールマイト…平和の象徴が…いないなんて……」
どう考えてみても、連中は病原体。
「子供を殺せば来るのか───」
「緊急治療をこれより開始します」
「グフッ!??!」「死柄木弔!!!!?」
よって私は木をへし折り、投擲した。
私の投げた丸太が、唸りを上げて飛ぶ。
広場で集結していた
手の男は余波で吹っ飛び、霧の男が何やら叫ぶ。
直撃はしなかったのが残念だが、仕方ない。
此処からだと、流石に距離があり過ぎる。
「あー、うん。癒月ならやると思った」
「目が既にガンギマリ状態だもん」
「病原体に掛ける慈悲などありません」
「ケッ。多少は良い気味だぜ」
切島君と芦戸さんは、慣れたような目をした。
他の皆は、凄い目で私を見ている。
本職であるはずの13号でさえもだ。
唯一、爆豪君は機嫌良く軽く笑った。
彼は根っこがヤンキーだから、当然だろう。
このまま攻めに行きそうまである。
「癒月のアレは一旦置いておくとして、
「先生、侵入者用センサーは!!」
「もちろんありますが……!!」
気を取り直して、上鳴君は悲鳴を上げた。
八百万さんの問いに、13号は言葉を詰まらせる。
一連の流れを無かった事にするつもりだ。
気にしたら終わりとでも思ったらしい。
別に構わないが、失礼な人達である。
「現れたのはここだけか、学校全体か……何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうことが出来る個性がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間。そこにクラスが入る時間割。……バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」
轟君は、そう冷静に事態を分析した。
事実、スマホで救援を呼ぼうとするも圏外。
ジャミング、あるいは電気系個性の干渉だろう。
これでは口を封じられたも同然だ。
救援を呼べないままでは、ジリ貧になる。
「13号、避難開始!!通信可能な場所まで離脱しろ!!上鳴、お前も個性で連絡を試せ!!」
「っス!」
「先生は1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。敵も立ち直りつつあるし、正面戦闘は………」
「緑谷君。私達が居ても足手纏いです」
私は広場の様子を俯瞰しつつ、そう言った。
手の男は、忌々しげに私を見てる。
これでは再度投擲しても無駄だろう。
統率の有無は兎も角、敵の数が数だ。
下手に動けば、数的不利で押し込まれる。
何より、直ぐ傍の脳みそ男の存在が気になる。
アレは他の敵と異なり、微動だにしていない。
恐れそのものをまるで切除したかのようだ。
さもなくば、避けるまでも無いと思ったか。
どちらにせよ、危険である事に変わりない。
「私達はあくまでヒーロー志望。プロには経験値も何かも劣る。不要な処置は、病状を悪化させるだけ。迅速に避難し、救援を呼ぶ事が最善です」
「そういう事だ。一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号、こっちは任せたぞ」
そう言い残し、イレイザーヘッドは飛び降りた。
まず手始めに、自らの個性で敵を個性を抹消。
捕縛布で敵を拘束し、相手の力を利用し、眼前の相手を次々になぎ倒し、広場周辺を制圧していく。
この手際の良さは流石としか言えない。
(医者志望として……あまり気乗りはしませんが)
病源体達から目を逸らし、私は走った。
彼一人に任せるのはリスクが高い。
対症療法ではいずれ限界が来る
だからこそ、先の投擲で仕留めたかった。
しかし、病原の根源は未だ健在。
緊急治療による施術は失敗した。
イレイザーヘッド一人に任せるしかない。
何の為に居るのだと、自問自答をしたい気分だ。
(けれど、迷っている暇なんてない)
13号の先導で、私達は扉に向かった。
病原体を放置するのは癪だが、仕方ない。
敵の目的が分からない以上、尚更の事だ。
不用意な行動は、全員を危険に晒す。
此処に居る全員の無事を、まずは優先───
「残念ですが、そうはさせ───」
「五月蠅い。邪魔です。お退きなさい」
その直後に、またも黒い渦が出現した。
私達の行く手を阻むように、形を成していく。
この声はついさっきの、霧の男だ。
どうやらワープ系の個性だったらしい。
私は即座に、霧の男へ拳を振るった。
しかし、拳を宙を舞うのみ。
続けざまに左足で蹴り上げるも、結果は同じ。
漂う黒い霧が僅かに、揺らめくだけだ。
当たったという感覚が、まるで無い。
「つい先程の投擲といい、礼儀を知りませんね」
「病原体相手に、礼儀は不要でしょう」
「なんだ此奴!?癒月の攻撃が当たらねぇ!?」
「だったら、これならどうだぁ!!」
切島君と爆豪も、影の男に攻撃を仕掛けた。
私も足元を砕き、すかさず礫を投げる。
しかし、それも一向に当たらない。
2人の攻撃は黒い霧を揺らめかせるのみで、本体には遠く届かず、私の放った礫は直撃する前に渦に飲まれ、ワープゲート越しに側面から跳ね返された。
どうにか跳躍して躱すも、礫が腕を掠める。
赤い血が、私の腕を薄っすら染める。
下手な攻撃は、寧ろ逆効果という訳だ。
倒せない事は無いだろうが、実に面倒だ。
服を着ている以上、本体はあるはずだが。
「危ない、危ない……流石は雄英。生徒といえど、優秀な金の卵が揃っているようで」
「くっそ!!これでも駄目か!!」
「だが、今ので、無敵って訳じゃねぇってのはよく分かった。このまま一気に潰すまでだ」
爆豪君は攻撃を続行し、尚も仕掛けた。
相手のカラクリが、大体分かったらしい。
切島君もそれに続くように、仕掛けた。
奴を此処で叩くのは、確かに正しい。
おそらく奴は、敵にとって唯一の逃げ道。
そして手の男と同様、敵勢力の首魁の一人。
逃げ道と頭を失った敵を、制圧するのは容易だ。
2人の実力を考えても、決して無謀な策ではない。
事態を最速で収拾するには、最善手と言える。
「駄目だ!!どきなさい!!3人とも!!」
けれど、相手の方が一枚上手だった。
2人の攻撃が届く前に、黒い霧が周囲に広がる。
どうやっても避けられないと、瞬間的に悟った。
「改めまして。我々は
霧の男の言葉に、皆の思考が一瞬凍り付いた。
不明だった、敵の目的はオールマイトの抹殺。
つまり敵は、相応の手段を保有している。
どんなものかは分からないが、相当なものだろう。
そうなってくると、全員の人命が危険だ。
「私の役目は散らして、嬲り殺す」
無力にも、私は黒い霧に飲まれた。
いくら抵抗しても抜け出せなかった。
自分の無力さが、つくづく憎い。
霧に飲まれた後、私の身体は転移した。
宙に開いた穴から、前触れもなく放り出される。
受け身を取って、どうにか地面へ着地した。
「癒月、怪我の方は大丈夫か?」
「ええ、問題ありません。貴方の方は?」
「こっちも同じだ。どうってことはねぇ」
どうやら此処は、マップにあった土砂ゾーン。
私同様、轟君も此処に飛ばされていた。
その周囲を囲うように、
「ようやく来やがったか。ぶっ殺してやる」
「揃って美男美女か。嬲り甲斐がある」
「たかだかガキがこの人数に勝てるかよ」
「プロさえ居なけりゃこっちのもんだ」
誰も彼も、鋭い殺意を私達に向けていた。
ドブ以下のゲスであろう事に間違いない。
その数、有に50は越えているだろう。
霧の男の言葉は、どうやら本気らしい。
仮にも学生相手に大人気ない。
まぁそんな事、今はどうでもいい。
「私は中央の広場に向かいます。轟君は此処で敵の足止めをお願いします。貴方の個性なら可能なはずです。敵が本当に、オールマイトを倒せる策を持っているのなら、今最も危険なのはイレイザーヘッド。見殺しには出来ません。勝手ながら助太刀します」
「そいつは少しばかり、早計じゃねぇのか?お前ついさっき、救援を呼ぶ事が最善だって言ってただろ。下手に首を突っ込んでも、足手纏いになるだけだ。此奴等から情報を聞き出してからでも遅くはねぇ」
私達は敵を無視して、軽く話し合った。
こんな三下、構っているだけ時間の無駄だ。
轟君もそれを理解していた。
脳みそ男も、どうやら居ないようだし。
「確かにそうかもしれません。しかし、此処は既に戦場です。1秒の遅れで何十人が死にます。この程度の敵相手に、皆がやられるとは思いませんが、病原を切除しない限り病は治りません。早く切除しなければ」
「なんだ彼奴等?俺達なんぞ眼中にないってか?」
「それぐらい、俺だって理解してる。だからこそ、冷静になれって言ってんだ。お前一人が行ったところで、たかが知れてる。木乃伊取りが木乃伊になったら、元も子もないだろ。慎重に動くべきだ」
「少し前まで中坊だった奴等が、舐めやがって」
「私は常に冷静です。その上での判断です。イレイザーヘッドは勿論、13号の方も気になりますしね。彼女は前線に立つヒーローではありませんし、霧の男と個性相性が致命的に悪い。死なせる訳にはいきません」
「分かっちゃいたが、頑固な奴だな。こっちの話なんて聞く耳持たずか。俺としちゃ無謀としか思えねぇけどな。つーか、彼女?……13号、女性だったのか」
「もう我慢ならねぇ!!ふざけんな!!」
「ただで死ねると思うなよガキィ!!」
私と轟君は互いに、溜息を吐いた。
この分だと、納得は得られそうになさにない。
まぁどの道、やるべきをやるだけだが。
そうこうするうちに、眼前に敵が迫っていた。
片方は剛腕を振り上げ、片方は刃を飛ばす。
それぞれ私と轟君を狙っていた。
それに続くように、残りの敵も迫っている。
何やら、怒り心頭の様子らしい。
挑発した覚えなど、欠片も無いが。
「ご心配なさらず。治療をするだけですので」
「ああ、そうかよ。なら、勝手にしろ。死ぬなよ」
「患者より先に死ぬ医者は居ません」
私は迫る剛腕の敵に向かって、拳を放った。
轟君は迫る刃ごと、敵を凍結する。
邪魔な虫をまるで払うように。
これによって両者、戦闘不能になった。
一瞬の出来事に、敵の大群が足を止める。
所詮は数だけのチンピラ。
肝というものが、まるで据わってない。
場の混乱を利用し、私は走り出した。
目指すは中央の広場。
最優先で切除すべき病原体の居る場所だ。
邪魔な敵は、ついさっき同様に殴り飛ばす。
その背後で、凍りつく敵の悲鳴が木霊した。
この様子なら、全く問題ないだろう。
流石は推薦入学者といったところだ。
「命を弄ぶ貴方達を、私は許さない」
そう言って走る速度を、私は上げた。
一方その頃、土砂ゾーンにて。
「うわぁ……流石に同情しちゃう」
↑原作同様、近くに飛ばされてた葉隠。
会話に混ざろうとするも、混ざれなかった。
眼前には凍る敵と、殴られ宙を舞う敵達。
原作よりも、絵面が酷くなってる。
ちなみに2人は、素で気づいてない。
巻き込まれなくて良かったね。