HOUNDS Archive   作:ナガネギ

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ストーリートレーラーを見ていない?
是非見に行きましょう。小説化(?)されたストーリートレーラーから始まります。



第1話 強化人間部隊「ハウンズ」、生体反応確認

『ハウンズ、作戦領域到達。フェーズ2移行。』

 

聞きなれたCOMの声がコックピットに鳴り響く。

銃声が鳴り響く迎撃射撃の中、作戦段階のフェーズ1、作戦領域への接近が終了。フェーズ2、惑星封鎖機構の高出力レーザー砲台への接近と周囲戦力の掃討を開始する。

 

──ハウンズ、仕事の時間だ。

 

ウォルターの声が頭の中で反響する。ハンドラー・ウォルター。私達を旧世代型強化人間のブローカーから買い上げ、拾ってくれた恩人であり、ハウンズの指導者。

今回の作戦の目標は惑星封鎖機構のルビコン3を周回する衛星上、ルビコン3A上の調査拠点の襲撃。ルビコン3は俺たちの求めるものがあるだけはあり、星系の他惑星や今いる衛星と比較しても惑星封鎖機構の監視が段違いで厳重であり、衛星砲以外にもルビコン3の衛星上に調査拠点がいくつも設置されている。この拠点はその中の一つだ。

密航には惑星の自転だか公転だかで適したタイミングがあるらしい。私たちがルビコン3へ密航するための直近の最良の密航タイミングにおいて、障害となるのはどうやら衛星砲が一つとこの調査拠点。計算上航行中にこの調査拠点の付近を通過するため、監視に引っ掛かる可能性があるらしい。だから、密航のためにこの調査拠点を機能不全にしておく必要がある…らしい。今のがただ作戦前に告げられた概要。全部理解できた気はしないが、選択の意味、それを理解しておくことが必要らしい。

残る衛星砲は調査拠点の操作なしでも自動稼働するらしいが、そこはウォルターの友人たちが対処してくれるらしい。何者なんだろうか。

 

──この星でコーラルを手にすれば、お前達のような脳を焼かれた独立傭兵でも、人生を買い戻すだけの大金を得られるはずだ。

 

…私たちの人生。ウォルターの猟犬としての暮らしに文句はない。むしろウォルターには借りが増えるばかりだとさえ思っている。…それでも、可能性があるなら、それを除いてみたい。私、C4-617はそう思っている。

 

『フェーズ2以降では……拠点のECMメーカーの…響で広域レー…による情報支援は出来ん…。自分達…自身の感覚に従え。』

 

ウォルターからの甲高いノイズ交じりの通信が聞こえた。電波妨害を行うECMメーカーによってウォルターの支援がない状態の作戦行動。何回かやってもあまり慣れたものではない。気を引き締め、scav617MGのスロットルを上げる。

 

「こちら620、フェーズ2移行。あと3秒でレーザー砲台の射程圏内に到達。」

 

現地の情報支援を担う620から通信が入った。レーザー砲台は衛星砲ほどの威力ではないが、カタログスペックを見る限りACどころか四脚MTでも近くを通っただけでラジエーターが緊急冷却に入るほどの化け物だ。精度も並大抵のものではない。

 

「617、レーザー砲台射程に到達」

 

戦闘を走る私が620達に通信を入れる。

瞬間、丘陵をジャンプし、空中で機体を右に揺らすようにしてから左へ移動し、回避運動を取って着地する。レーザー砲台の砲撃が機体の右を通り過ぎた。偏差射撃の予測を揺らすことで精度の高い砲撃ほど外れやすくなる。しかし、この回避でもラジエーターが一瞬唸りを上げた。恐ろしい砲撃だ。

このまま私がレーザー砲台の砲撃を引きつけ、その隙に619が12連垂直ミサイル2基の一斉射撃で調査拠点の防壁を切り崩し、突入する。

 

「619、射撃開始。」

 

619がP07VTCの一斉掃射を開始し、一斉にミサイルが打ち上げられていく。

 

「何だ…?レーザー砲台の射角が…?」

 

「…!619、射撃中止!回…」

 

620から通信が入った私は背筋に嫌なものが走り、通信を入れたが、言い切る前に砲撃が619のコアを通り過ぎた。

砲台が熱源を発射した619に目標を変更したのだ。619のscav619MSLの反応は少し前に進んだ後、消滅した。

 

「619!」

 

「620!進むんだ!619のミサイルが着弾するぞ!」

 

620の悲痛な声が響き、私も振り返って619を救助したい衝動に襲われるが、上空の熱源反応で気を取り戻した。619が発射した垂直ミサイルだ対地攻撃は完了していたらしい。ミサイルが拠点の防壁に着弾し、防壁を切り崩す。

後ろを絶対に振り返らないようにしつつ、620との陣形を維持して崩れ、炎を上げる防壁の残骸の上空を通過、拠点内に侵入した。

 

『619,生体反応ロスト』

 

「……っ!」

 

COMの無機質な声が心のどこかで619の無事を願っていた私たちの心を打ち砕いた。619は、618と同じところへ、先に行ってしまったらしい。

 

死ぬかもしれない。

 

視界が歪みつつ、EN切れになる前に620に先行して着地してパルスシールドを展開する。

厳しい迎撃射撃の中、パルスシールドを展開していてもパルスシールドに当たる一発の弾丸が私を撃ち抜いて終わるのではないかという光景が頭の中を支配する。

 

「……。」

 

バキィン!ガァン!

 

「っ!」

 

馬鹿か私は!戦場で妄想にふける傭兵があるか!

私の意識を撃ち抜くように、展開しすぎてイニシャルガード時間を過ぎ、出力が低下したパルスシールドを迎撃射撃が毟り取った。そして罰とでも言うように左腕がパルスブレードごと射撃に持っていかれた。切り札を一つ失った。

 

「っクソ!」

 

「援護する、前に出るぞ!全速!」

 

『突入ルート再計算開始』

 

620の激励が飛び、620のscav620RFが被弾した私に代わって前に出る。私の被弾により突入ルートにズレが生じ、COMが620を前にした突入ルートを再度算出する。

再計算された突入ルートを元に620を前に進行していく。レーザー砲台の足元に入り、砲撃はもうできないはずという場所まで到達する。

 

「…!11時に熱源!」

 

「なっ!?」

 

620の通信直後、私のscavを地中から飛び出した巨大な黒い影と赤い一つ目が覆う。

特務機体カタフラクト重装型。この調査拠点に配備された惑星封鎖機構の巨大兵器。レーザー砲台破壊の最大の障害—。

 

「617!」

 

「生きてる!」

 

クイックターンにより反転し、回避に成功した。クイックターンのGで心肺に負荷がかかったのか、緊張か恐怖か、心拍が上がる。右肩部に懸架した拡散バズーカがカタフラクトに飲み込まれたが、命に比べれば安い代償だ。カタフラクトの死神のような赤い一つ目と静かに目が合った。

呑まれるわけにはいかない。619のためにも、ウォルターのためにも。雄叫びを上げ、唯一残った武装のガトリングガンをカタフラクトの脆弱なコア、MT部分に発射するが、遠く狙いが甘い上、MT部分にも装甲が追加された重装型相手には有効打にはならない。

 

「武装を温存しろ!援護する!」

 

620がそう叫び、カタフラクトの右から二丁拳銃で牽制を試みるが、カタフラクトの側面部からはやはり有効打にならない。右に展開する620とは逆に左に展開し、カタフラクトを挟み込むように動く。カタフラクトは履帯を広げつつ、620の方へ旋回し、拡散ビームの砲口が光る。

620のスピードよりカタフラクトの砲塔の旋回の方が速い。再び背筋に嫌なものが走り、叫んだ。

 

「レーザー砲塔!620!」

 

「っ!」

 

その言葉と同時にカタフラクトは拡散ビーム砲を620に掃射し、左腕を持っていく。そして620が回避しようとしたクイックブーストのタイミングを開け、落ちつき払ったように二射目を放った。拡散ビーム砲を二射被弾したscav620RFが分解する。

 

「620!」

 

『620、反応ロスト』

 

私の声を見計らったかのようにCOMが残酷にロストを告げた。残ったのは私だけだ。どうすれば良い?どうすればこの怪物を…

待て。今、カタフラクトは履帯を広げ、履帯の隙間のコアMTをむき出しにしている。そしてビーム砲塔は620の方向、つまり私の真反対を向いている。

 

──自分達自身の感覚に従え。

 

そうだ。難しく考える必要は必要ない。食らいつけ。喉元を見せた相手に。

それこそが猟犬だ。

 

何も考えず直感でカタフラクトのガトリングを死に物狂いで避けて突進する。被弾を告げるアラートが鳴ったかもしれないが、聞こえなかった。

 

「おおおおおおお!!!」

 

アサルトブーストを吹かし、もはやどうでも良い左肩を盾にカタフラクトのコアMTに全力で突進する。カタフラクトの装甲とぶつかり、scavから嫌な音が鳴り響く。慣性で投げ出されそうになりながら右腕を動かす。

 

カタフラクトの装甲にガトリングの銃身を差し込んだ。

 

「ぶっ壊れろォオオオオ!!」

 

ガトリングガンが回転し、コアMTに弾丸を叩き込んだ。銃身が文字通り赤熱し、警告音が響くが、辞めない。獲物が暴れても、牙を離さない。

さらにガトリングを押し付け、トリガーを引く。顎の力を強めるように。食らいつけ、もっとだ。

ガトリングの轟音と共にカタフラクトのコアMTから光が漏れる。

轟音と共に、私は光に包まれた。

 

「……う…。」

 

光が引いた目の前には、カタフラクトの残骸があった。カタフラクトを、倒したのだ。

連射可能時間を大きく超えて連射し、銃身が変形したガトリングガンが鉄屑となって転がる。

爆風に飲み込まれたことで朦朧とした私とscavを叩き起こすように、レーザー砲台が光を放ち始める。どこを狙っているのかは分からない。

私かもしれない。ウォルターのヘリが来ているのかもしれない。別の襲撃者かもしれない。

 

…どれにせよ、私には関係ないことだ。

 

仕事の時間はまだ終わっていない。

 

集中を切らすな。

 

もう一仕事だ。

 

衝撃で赤く染まった私の手を動かし、警告音を無視してscavを立ち上がらせる。

 

武器はもう無い。

 

……普通の武器は。

 

赤く染まった視界と接続の遮断を示す武装群の中で、煌々と輝く"1"。

 

アサルトアーマー。この状態で使ったことは無いが、どちらにせよ意識が朦朧とし始めている。結果は変わらないだろう。なら、進むべきだ。

 

『ターゲット情報更新』

 

COMがレーザー砲台の根元にマーカーを示した。

相変わらず、気が利くじゃないか。

ジェネレーターの出力を最大まで上げ、アサルトアーマーのパルスが走り始める。生きていた冷却機構が露出する。

 

『フェーズ3、パターンE』

 

前を向く。暗くなっていく視界の中には砲台を指すのであろうマーカーしか見えないが、それで十分だ。

 

ウォルター、私の意味は、ここにあるよ。

 

scavと共に砲台へ全速力で接近し、轟音と共に、意識を手放した。

 

『617、ロスト』

 

『ハンドラー・ウォルターに報告』

 

『ミッション完了』

 

 

***

 

 

アビドス砂漠。学園都市キヴォトスの辺縁部に位置し、油断したら仮にここの地理に精通していても遭難してしまいそうなほどのあまりにも広大な砂漠であり、足を踏み入れるものは少ない。

昔はここを自治区とする学園、アビドス高等学校が繁栄を謳歌していたらしいが、砂にまみれてその栄華は見る影も無い。当事者がいない以上、それは偽情報や誤情報の類ではないかと疑ってしまうほどに。

こんな砂漠にも住宅街があるというのだから驚きだ。……似たような場所に住んでいた上、今もその住宅街の中の"事務所"に住まわせてもらっているのだから驚くようなことでもないかもしれないけれど。

 

電車の窓から外に広がる砂しかないような景色を眺めながら暇な思考を遊ばせる。電車のエンジンが古いのか、それほど速度は出ていない。ACがブースターなしでも歩くほうがこの電車よりまだ速いかもしれない。

運行企業は何故こんな電車をまだ稼働させているのだろうか。最新技術には明るくないが少なくともこの電車が時代遅れともいえるものであることは想像に難くない。客が私しかいないことを踏まえるととても採算が取れているようには思えない。何か運行を続けたいような理由でもあるのだろうか。

…時代遅れというのは、ある意味私も同じだったが。第四世代強化人間。コーラル技術によって生み出された強化人間であり、第八世代によるコーラル代替技術の確率と第十世代までの技術進歩により時代に置いて行かれた遺物。最も、それがここまで私を連れて来てくれたのだが。

 

強化人間に思考が脱線したところで、電車の到着のベルが鳴った。目的地の駅だ。

 

「イチハちゃん。いつも乗ってくれてありがとね。また探し物かい?」

 

「まあ、そんなところ。」

 

「気を付けてねー。」

 

唯一の客が下りることに反応して運転手がいつも通り話しかけてくる。適当に返事をして手を振りつつ、電車を降りる。閑古鳥が鳴いている以上、客の一人一人が嬉しいらしい。

次に来る戻りの電車は1時間後。本数が少ない以上乗り遅れると洒落にならない。仕事の時間に遅れることは避けたい。

 

ホームを出て砂漠を歩き回る。相変わらず何も無い砂漠だ。

私の探し物は単純明快。人だ。私のような人を毎日この砂漠に探しに来ている。この砂漠で目が覚めてから数週間、毎日朝にこの砂漠に来ているが風で砂の山の形が変わっていること以外に変化は無い。

…また、ここで皆に会えるんじゃないかと期待しているのだ。皆の中の、誰か一人でも。

 

──また犬を飼ったようだが、何度でも殺してやろう。

 

「……チッ。」

 

頭の中にフラッシュバックした声に舌打ちし、頭の中から追い出す。一人でいると今でも頭に声が残る。

独立傭兵スッラ。私達がデータ回収のために惑星封鎖機構の拠点を襲撃した時にあいつが現れた。データを回収した620を617が先導して撤退し、私が殿としてスッラと向き合った。

ハウンズの中で戦闘スコアは一番高かったし、自信はあった。声からしてかなりの老兵。撃破まではいかなくとも撃退か、最悪でも痛み分けで引けると思って残った。

…結論から言えば、奴の力は想像以上だった。リニアライフルをチャージしようとすれば当たれば連鎖爆発でただでは済まないバズーカ、こちらのミサイルは当たらないくせに向こうは避けきれないプラズマミサイルにパルス、気付かないうちに後ろから迫ってきて爆発する連鎖ミサイルにACSが負荷限界になったら嬲るように蹴りまで入れてくる。

何とかパルスブレードでスッラのACの頭部を破壊し、620達への追撃は防いだものの、私は、スッラに殺された。

 

ウォルターは最初から警戒しろと言っていた。ACの警告音と617達の声が反響する。

 

まだ、皆と一緒にいたかった。

 

砂嵐で口の中に砂が入ったのか、ただの錯覚か、耐えられなくて唾を吐き出した。

 

畜生。

 

しばらく歩き回ったが、相変わらず誰もいなければ、何も落ちていない。今日も収穫無しで帰ろうとしていたその時、何かに反射した光が目に飛び込んだ。

この砂漠に反射するものなんて、普通は無い。

何となく反射した場所に向かって走った。砂に足を取られて走るのは難しい上、後で考えると方角が分からなくなる危険もあったが、構わず走った。

 

「はぁ、はぁ……。」

 

走るのは得意だったのだが、砂漠の砂の上ではさすがに息が切れる。

何かが反射した方向に走ると、反射光が見えてきた。見間違いではなかった。

 

灼けるような砂の上には、ドッグタグがあった。

そして、意識を失った3人の女の子が。

 

 

***

 

 

アビドス自治区の一角、アビドスの中ではかなり良い賃貸の家屋の中で、滅多に鳴らない黒電話がチリリンと鳴った。

 

赤い髪の女の子が受話器を取り、受け答えをした。

 

「はい、便利屋68。陸八魔です。」

 

 

***

 

 

「うう…何とか運べたわね……。」

 

「アルちゃんへとへとじゃ~ん。あんなに息巻いて出てったくせに~。」

 

「う、うるさいわね!」

 

「手伝ってくれてありがとうございます、皆さん…。」

 

「当然よ!うちの新入社員の頼みですもの!」

 

「…まあ、どっちにしろアビドス砂漠であのまま寝てたら死んじゃうし。」

 

誰かの話し声が聞こえる。そのうちの一つはひどく懐かしいような覚えさえする。

あの状態のACでアサルトアーマーを発動して聴覚が無事であるはずがない。いや、そもそも生きているはずもない。なのに聞こえる。

死の間際に今までの人生を映す走馬灯が見えるというが、走馬灯が見えるにしてはタイミングが遅すぎる。そもそも人生のうち走馬灯として映し出す価値のある部分なんてごく限られた部分しかないだろう。走馬灯を見たとしても、多分こんなことを考えている間に終わってしまうような長さだと思う。

 

…状況把握を行うために重い瞼を動かし、ゆっくり目を開ける。

瞼?何故瞼がある?しかし、ある以上は開けなければ話は進まない。

 

「次はベッドに運ばないとね……。」

 

「いや、その必要はないみたいだよ。社長。」

 

ぼやけた視界の焦点を合わせ、意識を覚醒させる。そういえばCOMの声が聞こえないのもおかしい。聞こえてくる声はとても無機質なCOMの声とは似ていない。

視界に入ってきたのは数人の子供。1人は角まで生えている。赤髪の女の子に白と黒の髪、白いポニーテールと紫髪、そして茶髪。全員の頭の上に天使のような輪っかがついている。そして、銃を持って……

 

「!?」

 

銃!?状況は分からないが銃を持っている!

私は生身、素手で、相手は銃を持っている。惑星封鎖機構の捕虜になったのだろうか、それともアーキバスの再教育センターか。なんにせよこの状況はマズい。

反射的に飛び上がるようにして立った私に誰かが飛び掛かった。

立ち上がったばかりでふらついていたのもあって簡単に押し倒される。背中を床に打ち付けられ、なんにせよもがこうとした私に、飛び掛かった茶髪が声を出した。

 

「617…617だよね……!」

 

617?もがくのをやめ、飛び掛かってきた茶髪の顔を見た。

 

彼女は泣いていた。そして顔は違う上に輪っかがあるながらも、その面影には覚えがあった。

 

「61…8……?」

 

彼女は強く頷いた。彼女は618らしい。しかし618は…封鎖機構のデータベース施設で死んだはずだ。

これは一体どういうことだ?さらに状況が分からなくなった。

天国なのだろうか?ハウンズが撃墜した有人MTの数など数えきれないだろう。天国には行けないと思っていたのだが……。

 

それとも、これは夢なのだろうか?触れたら覚めてしまうかもしれない。覚めないでほしい、そう思いながら恐る恐る618を抱き返す。

 

618の心臓の鼓動、そして体温を感じる。ACの金属とも、遺体とも違う、体温だ。

 

「生きてる……のか?」

 

「…うん、生きてる。私も、貴方も。」

 

C4-618。ハウンズの中で単体戦闘力は最も高く、それは言い訳だと自分でも思うが、封鎖機構の施設を去る時、私は彼女を置いて、撤退してしまった。

私が残ってともに戦っていれば、過去は変わったかもしれない。

 

「あの時、置いて行って、ごめん。」

 

「……馬鹿。」

 

抱きしめている手の握り方が強くなった。苦しい。

 

「置いて行ったのは私よ。」

 

「……ごめん。」

 

「イチハ、感動の再会っぽいところ悪いけど、説明してもらおうか。この子たちは誰?」

 

「そもそも、いったいどういう関係なんでしょうか……?」

 

白と黒の髪の人がぶっきらぼうに告げ、紫髪の人が困惑しながら聞いてくる。銃は向けられていないが、私も説明してほしい。この人達は誰で、ここはどこなのだろう。私達は何故生きているのだろう。

 

618が強く握りしめていた手を離し、銃を持った人達の方へ向く。イチハとは、618の新しい名前だろうか。しかし、まずはこの状況の方が先決だ。

 

「今説明する。でも、まず619と20を……。」

 

「620、起きてるだろ。」

 

言い淀んだ618も気付いたらしいが、620が既に目を覚ましていた。傍目には寝ているようにしか見えないが、一緒に暮らしてきたのだからさすがに分かる。

大方、先に目を覚まして周りを見て、一人ではどうしようもないと察して寝たふりで様子見していたのだろう。

それを聞いた620はやはり今さっき起きたわけではないようですぐに身体を起こした。

 

「…どこから起きてたのさ。」

 

「肩車でこの家に運び込まれるところからかな。」

 

「何、じゃあ最初からってこと?」

 

「ああ。」

 

「…恥ずかしいじゃん。」

 

「何だって?」

 

「いいから!隣のそいつを起こして!」

 

小声で口にした618は聞き返す620を遮るように未だ寝ている619を起こすように言った。

619を揺する620を横に、私も618に状況を聞きたい。

 

「618、私からも聞きたい。ここは…?」

 

「言いたいことは分かるわ。まず初めに、ここは安全よ。銃を持ってるけど、それは私もだから、安心して。皆の銃も回収してある。」

 

私の最も大きいともいえる疑問に618はひとまず答えるが、私の銃と言ったか?ACに乗っていたはずなのだが、ACの武器がここにあるようには見えない。そもそもACどころかこの部屋にはパルスブレード一つも入らないような気がする。

 

「ろ、620!?私は…!」

 

「619、起きがけに悪いけど、ブリーフィングの時間だ。」

 

620に対して驚いた声と共に619が起きたようだ。私は混乱しそうな619に告げた。

イチハが口を開く。

 

「ここはキヴォトス。そして、この人達は、便利屋68。」

 




いかがでしたでしょうか。
621が私達の脳内で様々な姿をしているように、617達も様々な姿をしています。一度生まれた、あるいは残ったコーラルは一種の群体のように寄り集まり、増殖し、その密度によって指数関数的に成長速度を増していきます。妄想も同じです。一度生まれたら最期、増殖し、その妄想は深まれば深まるほど頭の中を埋めていきます。パチパチはじけて脳みそ幸せだぜ。

今回はストーリートレーラー部分がメインになっていますが、プロローグということでお許しいただければ幸いです。
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