HOUNDS Archive   作:ナガネギ

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アビドス編開幕です。



第4話 これでようやく反撃に移れる

『連邦捜査部の先生へ』

 

アビドス高等学校。シャーレで先生が見せてくれた手紙によると、地域の暴力組織により攻撃を受けているらしく、弾薬などの補給が底をつきそうで学校を占拠されてしまいそうらしい。補給と現状を打破する助けを求めてシャーレに手紙を出したということだ。

シャーレは発足されたばかりとはいえ、昨日整理した書類の束を見るにやることは手が追いついていないと言って差し支えないほどあるように思える。その中からこの一通の差し迫った状況を知らせる手紙を発掘したのだから、先生の手腕はたいしたものだ。私だったら見逃している。

 

そして、アビドス高等学校は便利屋68の事務所がある場所、私達の目が覚めた場所、アビドス自治区を自治区とする学校だったらしい。ある意味これは帰路にもなるわけだ。

 

「"手伝ってくれてありがとうね。"」

 

先生が歩きながらそう言った。

先生の次の依頼とは、アビドス高等学校に運ぶ補給物資を一緒に運んでほしいとのことだった。シャーレの部室がある連邦生徒会直轄区域、D.U.とアビドスは鉄道のおかげで砂漠のサイズを考えると行き来は整備されているとは言え、片手間に往復できるような距離でもない。私達4人で荷物を分担して運ばなければ、そう多くは運べないだろう。

 

アサルトライフル二丁分とハンドガンが二丁、ショットガンの弾薬とミニガンの弾薬、さらにドローン搭載ミサイルまで。いろんな銃の弾薬が私達のカバンに入っている。銃自体の数はさておき、武器種としては申し分ない。

 

「依頼ですから、大丈夫ですよ、先生。」

 

「こっちです。」

 

「"あれ?地図はこっちって?"」

 

「しばらく地図自体が更新されてないのか?」

 

「そう。ついてきて。」

 

まだ目が覚めてそう経っていないとはいえ、多少の道は分かる。ただ、地図が役に立たないというのは私としてもかなり困る。ここは一番道を知っているであろうイチハに道案内をしてもらう。

ここに来るまでの間でもニオも私も何度か道を間違えてイチハに訂正されている。先生一人では確実に遭難していただろう。住宅街が静かで生活感が無く、建物も人が住んでいるのか住んでいないのか分からない。何かの店だったシャッターの閉まっている家も少なくない。しかも広い。

ここに来ている理由が暴力組織が学校を占拠しそうだから、と聞いていたが治安自体は悪くない。治安を悪くするような人も見当たらない状況、ともいえるが。

 

「道のど真ん中でも道に迷いそうだね……。」

 

「同感。」

 

しばらく歩いていると、それらしい校舎が見えて来た。太陽のような紋章、アビドス高等学校の紋章が刻まれている。

 

「見えたよ。」

 

「あれがアビドス高等学校か……。」

 

窓を見ると、メガネの女の子と目が合った。とりあえず手を振ろうかと思ったが、慌てたように奥に引っ込んでしまった。

 

校門を通ると、校舎から何人か女の子が出て来た。さっき目が合ったメガネの子とアサルトライフルを持ったツインテールの女の子が出てくる。

 

「どちら様?ヘルメット団じゃなさそうだけど、」

 

「私達はアビドス廃校対策委員会です。所属をお願いします。」

 

若干警戒したような二人に対し、先生が前に出る。

 

「"「シャーレ」の顧問先生です。よろしくね。"」

 

先生がそう言うと、2人は驚いた表情で続ける。

 

「連邦捜査部「シャーレ」の先生!?」

 

「し、支援要請が受理されたんですね…!」

 

「"こっちは補給物資を運んでもらってる「ハウンズ」の皆。"」

 

「どうも。」

 

先生の紹介に合わせて挨拶をする。

2人に案内してもらい、校舎へと入り、アビドス高等学校…対策委員会の教室へ足を踏み入れる。足を踏み入れて運んでいたカバンやリュックを机の上に置いていると、教室のドアが開き、長髪の女の子に連れられてピンク髪、オッドアイの小さな女の子が入ってくる。

 

「ホシノ先輩、シャーレの先生とお仲間の人達が来てくれましたよ!」

 

「ん~?先生?よろしく~。」

 

ホシノと呼ばれた子からは、緊張感が無いように見えるが、若干の警戒の色が見て取れる。私達よりも、先生に対して、のように見える。

 

安堵の声と共に、4人で持ってきた弾薬の開封をしていると、突如として銃声が響いた。

 

ダダダダダダッ!

 

「じゅ、銃声!?」

 

「ひゃーっはははは!」

 

「攻撃!攻撃だ!奴らは既に弾薬の補給を断たれている!襲撃せよ!学校を占領するのだ!!」

 

開封作業を止め、窓から外を見ると、ヘルメットを被った武装集団が校舎に銃撃をしていた。

先ほどヘルメット団という名前が出ていたが、暴力組織とは彼らのことか。なるほど、ヘルメット団だ。

 

「武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」

 

「全く、おちおち昼寝もできないね~。シロコちゃんは?」

 

「まだ帰って来てません……!」

 

「でも、タイミングが悪かったわね!弾と弾薬は十分よ!!」

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

そう言って対策委員会の3人がそれぞれアサルトライフルやミニガン、ショットガンと開けたての弾薬を手に取り、教室から出て行く。手慣れた動きだ。

メガネの子が教室に残り、インカムを装着した。

 

「私がオペレーターを担当します。先生はこちらでサポートをお願いします!」

 

「"ハウンズ、君たちもお願い。報酬は上乗せしておくよ。"」

 

「了解です。」

 

先生の指示に合わせ、私達もドアを開けて戦場の校庭へと走る。さっきは先生は報酬額を気にしていた気がするが、上乗せはありがたい。思ったより安かったから、ということもあるだろうか。

 

「作戦領域到達。」

 

「射撃開始!」

 

 

***

 

 

『カタカタヘルメット団残党、郊外エリアに撤退中。』

 

結論から言えば楽勝だった。イチクの迫撃砲が敵部隊後方へ着弾し、ホシノと呼ばれた人が攻撃を引きつけつつ進行する。私と長髪のノノミという人は火力支援、イチハとセリカと呼ばれたツインテールの人がライフルで進行、横からニオが牽制した。

対策委員会の連携はとても優れたものだった。

 

「わあ☆私たち、勝ちました!」

 

「任務完了。」

 

「皆さんお疲れさまでした。学校に帰還しましょう。」

 

「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けて来たみたいだけど。」

 

「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……。」

 

教室に戻り、ホシノさんとオペレータを務めていたアヤネと呼ばれていた人が軽口を言い合っている。

手持無沙汰なので途中だった弾薬の開封作業を進めることにする。

 

「先生の指揮とハウンズの皆さんがいてくれたのも良かったですね~。」

 

「うーん、君達、うちの子にならないかな~?」

 

「SRTの学籍取ったばかりなんですけど……。」

 

「つれないなぁ~。」

 

ホシノさんがアビドスの生徒にならないか来たが、それは正直昨日言ってほしかった。SRTの学籍を取ってしまった以上、今から編入手続というのは少し面倒だし、手続きが同じなら先生の手も煩わせることになる。

…アビドス高等学校に直行すればすぐ学籍を取れたのかもしれない。もう手遅れだが。

 

「え、SRTの小隊の方々ですか…!?」

 

「道理で連携が取れてるわけですね☆先生はSRTの人達も動かせるんですか?」

 

「"この子たちはただ雇ってるだけだよ。"」

 

「SRTと言っても、昨日入学したばかりですよ。」

 

「ってことは、傭兵?安くないのに、先生お金持ち~。」

 

連邦生徒会長直属の部隊だったか。私達は別に顔も知らない連邦生徒会長に忠誠を誓うつもりは微塵も無いが、SRTというのはそんなに優秀な部隊なのだろうか。あとでニオに聞いてみよう。

連邦生徒会長直属なら、先生であれば閉鎖されていなければ動かせそうなものだが、実際どうなのだろうか……。

 

「これも"大人のカード"の力ですかね~。」

 

"大人のカード"?クレジットカードの比喩だろうか。それとも、先生には隠した何かがあるのだろうか?

…大人は常に隠し事が多い。それはウォルターでさえ例外ではなかった。ただ、隠し事があろうがなかろうが、ハンドラーはハンドラーだ。

 

「……少し遅れちゃいましたけど、改めてご挨拶します、先生。それとハウンズの皆さん。」

 

アヤネさんが話題を変え、自己紹介をする。

 

「私達はアビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネ……。こちらは同じく1年のセリカ、2年のノノミ先輩とシロコ先輩……シロコ先輩は今は出ていてここにはいません。帰ってきたら紹介します。そして、こちらは委員長の、3年のボシノ先輩です。」

 

「どうも。」

 

「よろしくお願いします~。」

 

「いやぁ~よろしく、皆ー。」

 

対策委員会の人達が1人ずつ紹介される。シロコさんという人がいないらしい。アビドスがお反られている時にいないとはタイミングが悪いと言わざるを得ない。

…向こうが自己紹介をしてくれたのだから、こちらも自己紹介をしておこう。

 

「…私たちはハウンズ。私はイチナ、前衛で小隊長。こっちがイチハ、ライフルマン。イチク、モーターマン。最後がニオ、スカウト。」

 

「よろしく。」

 

「ちょ、ミサイラー…いや、モーターマンで良いのか。お願いします。」

 

「ニオだ。よろしく。」

 

イチク、お前が今持っているのは迫撃砲だろう。確かにミサイラーだったが、それはルビコンでの話だ。モーターマンという肩書には慣れてもらおう。

 

「なんか似たような名前してるね~。姉妹かな~?」

 

「んー……。まあ姉妹みたいなものです。」

 

四分の三がイチから始まっているのでさすがに仕方がない。実際血は繋がってないし、連続して強化手術を受けただけと言えばそうなのだが、同じ屋根の下で暮らしたのでほぼ姉妹のようなものだろう。

…その理屈で言えば、ウォルターはお父さんか?

 

「ご覧になった通り、現在我が校は危機にさらされています……そのため「シャーレ」に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生と皆さんがいなかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません……。」

 

「顔を上げて。私も先生も仕事だから。」

 

「"そうだね。頭を下げる必要はないよ。"」

 

「いえ、流石にそういうわけには……。」

 

「"それより、対策委員会って?"」

 

アビドス廃校対策委員会。アビドス高等学校に存在する部活……ということまでは私も先生も知っているが実際何なのかは良く分からない。連邦生徒会に資料が無いらしく、先生の手元の情報からは分からなかった。

 

「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です。」

 

「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!全校生徒といっても、私たち5人だけなんですけどね。」

 

「他の生徒は転校や退学で町を出て行ってしまい……住んでいる人もほとんどいなくなってしまいました。」

 

それであんな奴らに学校を占領されかけていたわけか。私たち抜きでも対策委員会の実力はカタカタヘルメット団を凌駕している、戦闘中にはそう見えた。

 

「もし「シャーレ」からの支援がなかったら……今度こそ、万事休すってところでしたね。」

 

「だねー。補給品も底をついてたし、さすがに覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ。」

 

「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」

 

「…しかし、諦めが良い奴らには見えません。数も尋常じゃない…というかあの数は何なんです?人がいないはずでは?」

 

これまで会議なのに珍しく黙っていたニオが口を開いた。

確かにその通りだ。カタカタヘルメット団とかいう連中は顔は見えないが背格好は私達や対策委員会の面々とそう変わらない。学校の生徒の数十倍学校を襲う生徒がいるのはどう考えてもおかしい。一体どこから湧いているんだ。

 

「それは……すみません。分かりません。ただ、学校を退学した生徒やその関係者がヘルメット団と化しているという話は聞いてます。」

 

「それはもっともだねー。なんであんな士気があるんだか。でも、それも終わりにしよう。ちょっと計画を練ってみたんだー。」

 

「えっ!?ホシノ先輩が!?」

 

「うそっ……!?」

 

そんな反応をされるレベルに信頼が無いのか?ホシノさんは委員長だった気がするが……。

…私もこんな目線は受けたくないものだ。

 

「いやぁ~その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー。」

 

「……で、どんな計画?」

 

セリカさんが聞くが、かなりの疑惑とともに一抹の好奇心が滲んでいる。

 

「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー。」

 

先ほどの信用の無さとは裏腹に、提示された作戦はかなり冴えていると思う。消耗戦が不利ならば、短期決戦を狙えば良い。私としても、対策委員会なら可能だと思う。

 

「い、今ですか?」

 

「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし。」

 

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし。ただ、シロコちゃんが帰って来てません。」

 

「んー。アヤネちゃん。通信できる?」

 

「は、はい……。」

 

アヤネさんがスマホで電話をかける。置いて行くような真似をしたらどうしようかと思ったが、流石にそうはしないようで安心した。

アヤネさんが電話をかけて3コール目で呼び出し音が切れ、電話が繋がった様で向こうの声が聞こえてきた。

 

「もしもし。」

 

「あー、シロコちゃん?おじさん達、ヘルメット団の前線基地を襲撃しに行こうと思うんだー。帰ってこれそう?」

 

「え。」

 

「さすがに端折りすぎでは?」

 

そりゃ「え。」だ。シロコという人はシャーレが補給に来た時から居ない。カタカタヘルメット団に学校が占領される間近という認識のはずだが……。

 

「戻って来れそう?」

 

「今は郊外の市街地にいる。急ぐけど、10分くらいかかる。」

 

10分。微妙な時間だ。ただ、前線基地に戻って迎撃態勢を整えられるには十分な時間かもしれない。

 

「うーん……。ヘルメット団の前線基地、反対方向だよね……。先始めてて良いかな~?」

 

「ずるい。でもまあ、ホシノ先輩がそう言うなら。急ぐ。」

 

「分かった。ありがと~。」

 

シロコさんのほうは何だかんだ言いつつホシノさんを信頼しているのだろうか。

 

「だってさ。」

 

「シロコ先輩が良いなら良いですが……先生はいかがですか?」

 

アヤネはどうやらストッパー役のように、先生に目を向ける。

 

「"私は構わないよ。ハウンズの皆は?"」

 

この追撃作戦は至極妥当だ。人数で劣る以上、攻撃できるときにしておかなければ消耗戦にもつれ込む。戦力的にも問題はないだろう。

そして何より、猟犬とは、獲物を追うものだ。

 

「ええ、直ぐに出発すべきです。」

 

「待った、先生、報酬、追加でお願いしますね。」

 

「"そうだったね……。"」

 

私がOKを出した横で、ニオが先生に報酬の追加をせびった。…報酬の追加を確認するのを忘れていた。追撃依頼の追加なのだから、報酬を確認しておくべきだ。自分たちで依頼を受ける以上、気を付けておかなければ。

そして、依頼主、先生がOKを出した以上、やる。

 

「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー。」

 

 

***

 

 

「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました。半径15km圏内に、敵のシグナルを多数検知。恐らく敵もこちらが来たことに気付いているでしょう。ここからは実力行使です!」

 

アヤネの通信が入る。確かに目の前に、遠目にだがヘルメットを被った集団が見える。ヘルメットを被っているのが浅い奴もいる。慌てているようだ。本当に攻め込んでくるのは想定外だったのだろう。

接近には気づかれてしまったが、このまま速攻すれば奇襲として十分だ。

 

「ハウンズ、作戦開始!イチク!」

 

「射撃開始!」

 

イチクの4連迫撃砲が4発連続でに飛んでいく。

本来ならこの時点で接近するのは悪手だが、ことハウンズにおいてそれは適用されない。幾度となく協同した仲だ。着弾場所と爆発範囲は手に取るように分かる。それを避ければ良い。

対策委員会より先に盾とマイクロガンを構え、突撃する。イチハとニオも付いてきている。

別にさっきホシノさんに前に出られて縄張り意識を刺激されたとかそういうわけじゃない。多分。

 

「うへ、血気盛んだね~。」

 

『ま、まだ着弾してませんよ!?』

 

「イチク!着弾予測よろしく!」

 

「了解ー。」

 

『"対策委員会の皆、ハウンズの前に出ないようにね。"』

 

迫撃砲の爆発が目の前に来そうなくらいの位置に陣取り、盾を構え、マイクロガンを掃射する。

ニオが私に並ぶ位置の遮蔽物を盾に並び、遮蔽物に隠れ、遮蔽物越しに牽制する。前にいるのでイチハは視界の中に見えないが、リニアライフルがヘルメット団の後ろに着弾しているようだ。ここは閑散としていて今は見る限り誰もいないとはいえ、元市街地なので、どこかしらの高台から撃っているのだろう。

 

ダダダダダダダダダダ!

 

「うおおおおおっ!!」

 

「ガトリングだ!」

 

「怯むな!建物を盾に接近しろ!」

 

「隊列後ろが撃たれてる!」

 

「くっ!突破するぞ!」

 

マイクロガンを回し、命中は一旦考えずに掃射する。ニオも命中は度外視で二丁拳銃を撃ちまくる。

誘い込むように。

 

「お仕置きの時間ですよ~っ!」

 

隣で別のガトリングの掃射音が聞こえた。隣を見ると横にノノミさんがいた。ここは危ないのだが…まあ安全圏ではあるが。

横を見ると、ホシノさんとセリカさんも展開している。あちらはホシノさんが盾になりつつセリカさんが射撃している。

 

『イチナ、聞こえる?あと8秒。近いのは前線より50m奥。』

 

イチクから通信が入る。予想より奥だ。ちょっとずれたか?まあでも、大体計算通りだ。むしろ対策委員会の仲間がいる分好都合でもある。

 

「了解。イチハは伏せ、皆、私の後ろに!」

 

「なるほどね。おじさんの盾でもいいよ~。」

 

盾を構えてマイクロガンを冷却し、ニオに目配して通信を回した。

イチクの通信を聞いてミニガンを止めたノノミさんの前に出て盾を展開し、ニオも遮蔽物にしていた通行止めバリケードから私の後ろにスライディングで滑り込む。ちらりと横を見ると、ホシノさんは既に何をする気か察知していたようで、別に盾を構え、セリカさんを回収していた。こちらに気付いててまで振ってくる。余裕だな。今から私とホシノさんは衝撃と飛んでくるものを防がないといけないのだが。

 

『迫撃砲、来ます!』

 

アヤネさんの通信と共に迫撃砲が着弾した。

 

ズガガガアアアアン!!!

 

寄せ集まったカタカタヘルメット団が吹き飛び、私の盾にも衝撃波と飛んできた銃のグリップやらが当たる。相変わらず重い。だが、イニシャルガード時間が過ぎたパルスシールドより断然頼りになる。十分耐えきれる。

4連続の衝撃が終わったことを確認して盾を解く。目の前に集まったヘルメット団が迫撃砲で軒並み気絶し、一気に綺麗になった目の前を確認し、走って迫撃砲の跡を前進する。出来れば迫撃砲4発の着弾位置より前に出たい。

 

『ヘルメット団第一陣の殲滅を確認!』

 

『"第二陣は前哨基地周辺にいるみたい。実質的に防衛部隊だね。配置を送るよ。"』

 

「うへー。やるじゃん。」

 

アヤネと先生さんの通信と共に、いつの間にか隣を並走していたホシノさんがそう言った。状態は無傷だ。先ほどの銃撃でダメージを負った様子もなく、口調こそ変わっていないものの声のトーンが明らかに戦場慣れして冷静だ。鋭利とさえ言える。

…気にしていなかったが、この人は何者なんだろうか。少なくとも敵には回したくない。

 

だが、迫撃砲の跡を進んでいると、アヤネさんから焦った口調で連絡が入った。

 

『た、大変です!カタカタヘルメット団の別動隊が校舎に接近しています!』

 

皆の足が止まる。

 

「ええ!?何で!?何でそっちにいるの!?」

 

「あちゃー、すれ違いかー……。」

 

『"うーん、困ったね。"』

 

ヘルメット団とすれ違ってしまった。不運としか言いようが無いが、これはかなりマズい。

情報を確認する感じ、ただの別動隊で主力はこちらの今倒した中隊のようだが、それはそれとして今アビドス校舎にいるのはオペレーターのアヤネさんと直接戦闘能力のない先生だけ。

 

『せ、先生は下がっていてください。かくなる上は、わ、私が応戦を……。』

 

『…心配には及ばない。』

 

聞きなれない声がした。だが、これは先ほど電話口で聞いた声だ。

 

「シロコちゃん!」

 

『ちょっと遅れちゃったけど、今帰ってきた。私が倒す。』

 

「シロコちゃん、無理しないでくださいね……!」

 

「……。」

 

『ゆっくり戻ってきて。私も撃ちたかったところ。』

 

ホシノさんの方を見ると、先ほどまでとは全く似つかわないとてもまじめな顔をしていた。

こちらに気付いていつもの顔にすぐ戻ったが、どちらが素なのだろう。私には、今のが素に見えたが、それに言及する前にセリカさんが口を開く。

 

「いや、ゆっくり戻るわけないでしょ!今行くから!!」

 

「そうですよ。シロコちゃんとアヤネちゃんの危機なんですから!」

 

『ん、私にも見せ場を……。』

 

「シロコちゃん、今戻るから、待っててね~。」

 

『……。』

 

通話越しだがふくれているような気がする。面と向かって会ったことは無いのに画面の向こうで不服そうにしている気がするというのは初めてだ。

だが、別動隊とはいえ一人では危険なのは間違いない。

 

「ハウンズの皆、ここは任せちゃっても良いかな~?」

 

「急いで行ってください。」

 

「残りは私達で十分だから。」

 

「分かりました、では、失礼します!」

 

「いや、こっちも負けたら承知しないから!」

 

対策委員会の皆が急いで引き上げ、校舎に走って戻る。セリカさんが不安そうに何回か振り返ったが、特にリアクションは取らなかった。

 

「そういえば、先生は?」

 

『"私は引き続き指揮するよ。"』

 

『"2組指揮するのは初めてだけど、大丈夫。"』

 

ニオの疑問に先生が答えた。頭がパンクしそうなものだが、先生は先生で大丈夫のようだ。こっちも敵に回したくないな。

 

『話終わった?ヘルメット団の方見てるんだけど、態勢を整え始めてる。速くしたほうが良い。』

 

「そうだね。なるべく早く終わらせて私達も向かおう。」

 

通信の間、陣取った高台からヘルメット団の方を見ていたらしいイチハから急かされた。

 

「フェーズ2といこうか。」

 

 




アサルトライフル二丁で2000発、ミニガンで2000発、ショットガン200発と考えると、100kgくらいは行きそうなのですが、本編の先生はどうやって持っていったんでしょうか……?
ゲーム開発部先生だったのかな?
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