一歩前に足を踏み出した時、そのひとがちらりと振り返ったから、初めて目が合った。創世の渦心の天井にもよく似た、夜空みたいな色の目がキャストリスをはっきり、真っ直ぐに捉えていた。彼女は星と丹恒のすこし後ろに立っていたので、もしアグライアがこの後キャストリスに「2歩前へ」と命ずれば、多分彼女に1番初めに触れることになるだろう、と思った。暗澹たるタナトスの御手……触れればあらゆる生命に死を与える、自分の手が。
天外からやってきた3人の中で、まだ話したことのない女性だった。カーラという名前と、強い光が苦手で昼間は出てこれないということしか、キャストリスは知らなかった。目が合うような距離にいたことも、やはりなかった。なので、正真正銘そのとき初めて、キャストリスは彼女の瞳がどんな色をしているか知ったのだった。それは鮮やかで濃いコバルトブルーをしていた。
(アグライア様が、本当にこの方たちを殺そうと思っているかは分かりませんが……)
少なくとも、アグライアが天外からの客人から『誠実な回答』を引き出そうとしてキャストリスをここへ呼んだことは、星も丹恒もカーラも気づいているだろう。誰だって命の危険がある尋問とない尋問なら、答え方だって変わってくる。文字通りの死が背後で立っている今、彼らはひとつの嘘も偽りもなくアグライアの問いかけに応えなければいけないことを、骨身に沁みて理解しているはず──なのだが。目が合った時、カーラはごく普通に通りすがりの誰かが知り合いにするように、何気ない挨拶のように目を細めてわらった。とても、死を恐れる者のようには見えない、緊張感に欠けた笑い方で。
「──ふたりとも、そこまで身構えなくてもいいよ。このお嬢さんはあなたたちより私に、先に接触することになるんだからね。気にせず、聞かれたことに正直に答えていいと思う」
のんびりとした言葉に、星と丹恒は何かに気付いたかのような顔になり、アグライアは眉を顰め、キャストリスは内心で首を傾げた。額面通り受け取れば自己犠牲による慰めのようにも聞こえるが、その割には自分が先に死ぬから安心しろ!みたいな悲壮感がまるでない。ただ、ごく自然に。ゆるい調子で放たれた言葉は、この場にはあまりにも不釣り合いだった。
それがあまりにも不思議だったから、アグライアの尋問が無事に終わり、客人たちが金糸から解放されて皆がやれやれと出口へ向かう時に、キャストリスは彼女を呼び止めてしまった。少しだけよろしいですか、の声に、カーラは振り向いてから、私?と指さす。頷くと、疑う様子もなく彼女はさっとこちらへ寄ってきた。
「こんにちは、キャストリス。私になにかご用事だった?」
しっかりと話すのは初めてのはずが、長年の友人のように親し気に彼女はそう言った。
「……いえ、先ほどは尋問のためとは言え、あなた方の心身を脅かしてしまったことをお詫びしたかったのです。それと」
「既に私の体質については、お二人からも聞いていらっしゃるかと思っていましたが……カーラ様、あなたはあまりにも死を3歩後ろにして畏れを抱いていないように見えました。怖くは、ありませんでしたか」
死は。あるいは、それをもたらす侍女は。
死ぬことなど怖くない、と口にできる者など多くいる。口だけの虚勢だけのこともあれば、生死よりも優先されることが本当にあって、そのためなら死を前にして躊躇わない者もいる。キャストリスはそのどちらにも数多く出会ってきた。でも、このカーラという女はどちらとも違うように思えてならなかった。恐怖を取り繕った震えも、生命より優先される野望も、この女には縁のないもののように見えた。ただ、自分は死なないだろうという楽観だけが、女の緊張感のない顔には伺えた。
「ああ……」カーラは、あっさりと種明かしをした。
「怖くなかったよ。あなたが触れたひとをそのまま……そう、命を奪うことができるのは知ってたけど。私、ちょっとやそっとでは死なないの。具体的に言うと私を死に至らせる要因は銀河にひとつしかないし、それは『あなたに触れること』ではないからね。アグライアの質問に失敗してあなたに触れたところで、たぶん、死なないだろうと思って」
「えっ」一瞬、キャストリスは目の前の女が何を言っているのか、よく分からなかった。
「だから別に、死ぬのが怖くないとか勇敢だとか、そういうことじゃないよ。普通のひとは弾が装填されていない銃が恐ろしくないのと同じように、自分を傷つけないものを怖がらなかった、というだけ」
キャストリスは、ぽかんと口を開けて自分よりもすこし背の高いカーラを見上げた。死なない。不死。モーディスと同じような、あるいは別の形の、不死。自分が触れても死なないひと。思いもしていなかった回答に、何と答えるべきかよくわからなくなって、視線をうろうろと彷徨わせるばかりの彼女に、カーラは何を思ったのか、もう一歩前に出た。致死性の距離に、迷いなく足を進める。
──そうして、ごく弱い力でキャストリスの手首に触れた。彼女よりずっと体温の低い、骨ばった指先の感触がありありと感じられて、キャストリスは呆然と、自分に触れる指と目の前の女の顔を何度も何度も往復した。人の肉、人の皮膚、人の骨。それが手袋越しに、自分の体に触れている。
「えっ、ちょっと、カーラさん!?キャストリスさん!?一体何を……!」
創世の渦心の入り口で立ち止まって、こちらのやりとりを眺めていたファイノンが、焦ったように声を荒げた。走り寄ってきた彼はしかし、キャストリスと同じような顔で、異邦の女に視線をやることしかできなかった。
早く離させないと、と思った手はまだ、キャストリスに触れている。しかし──しかし、カーラは触れる瞬間にすこし眉をしかめただけで、何時までたっても死出の旅に出る様子もなければ、意識を失う様子もなかった。生きている。当たり前のように。
「ね、ほんとでしょ?というかこれ、どういう仕組みなんだろ。毒とかではないし、そもそも肉体に直接作用してる感じじゃないよね。魂とかそういう分野に干渉してるのかなあ……ぞわぞわする感触はあるし。うーん……なんというか……」
呑気にキャストリスの手を握ったまま何やら興味深そうに考え始めたカーラに、走り寄ってきたファイノンが恐る恐る声をかける。
「その……カーラさん?体はどうともない、のかい……?」
「ないよ。いや、ないは言い過ぎかも。ちょっと体に違和感はあるけど無視できる範囲……あ、キャストリス、勝手に女の子の体を触ってごめんね……キャストリス?」
「……、…………?」
今さらのように妙なところを気にして、カーラはぱっと手を離したがもうその時には遅かった。罪人たちや苦しみのない最期を求める人々以外には、一度も──ほんとうに一度も生きた人間に触られたことのないキャストリスには、無遠慮に手を握ってくる客人の存在は、処理できる容量を超えていた。握り返したほうがいいのだろうかとか、はやく離さなければとか、相反する感情の渦に飲み込まれた彼女は、その美しいアメジストの瞳をぐるぐると回しながら立ったましばらく動かなくなり、カーラは後でアグライアから叱責を受けるはめになったのだった。
そういう、奇妙で恥ずかしいやりとりを脳裏に浮かべながら、キャストリスは隣の席で元気よく話しているカーラを横目で窺った。明るく、よく喋る、死なない女性………その上に、彼女だけではなく、彼女の種族そのものが死と縁遠いのだと言う!モーディスがそうであるように、キャストリスも彼女の話のその部分に驚愕して脳裏でなんども反芻した。
(不死者の暮らす星………いったい、どんな場所なんでしょうか)
キャストリスの長く暮らしたエイジリアは、死が神聖視される都市国家だった。かの土地では死こそが生物の行き着くべき安らかな眠りとして尊ばれ、それを与えることができるキャストリスの両手は冷たく、神聖で、慈悲の象徴のように扱われてきたのだった。そのようなエイジリアで育った彼女にしてみれば、カーラの故郷であるサガルマートという星はまったく未知の、そしてどのような文化が息づく場所であるのかまるで想像ができないものだった。キャストリスを育ててくれた司祭たちが、死からかけ離れたその星のことを聞けばなんといっただろう………安らかな眠りに辿り着けない哀れな生き物だと思っただろうか………。
(不死の種族………死によって断絶することのない、長き生を送るひとびと)
キャストリスが触れても死なない彼女たちが住まうそこはある種の楽土なのだろうか、と彼女は考える。死と極めて近い場所にいるキャストリスにとって、死とはときに「生物にとって、真に必要なのかどうか」という難解な問いを投げかけるものだった。自分が触れて枯れた花にとって、死は安らかなものだったのだろうか?最後に触れたものがキャストリスの手だった罪人にとって、死は神聖で苦痛なきものだっただろうか?その答えはまだ、キャストリス自身にも定まらぬものだった。であれば逆に、不死の生きものならば、その生は一切の苦痛とかけ離れているのだろうか?咲いて散ることのない花のように、満ち足りたまま生きていけるのだろうか。
「………あの、カーラ様」
そうっと隣の彼女を呼ぶと、ファイノンと会話をしていた彼女が視線をこちらに向けて、微笑みながら首を傾げた。
「あなたの種族はみな、不死だと仰いましたが………あなたがたの故郷は一体、どのような世界なのでしょうか。オンパロスの人々も、遥か昔には死の存在しない、永遠の楽園のごとき生を送っていたそうですが………あなたの故郷もそのような場所なのですか?」
「ええっと。オンパロスも昔は不死の人がたくさんいたの?」
いまいちピンときていなそうな顔できょとんとキャストリスを見るカーラに、見かねたファイノンが助け舟を出した。彼のメーレはすっかり干されていたが、彼にはまるで酔った様子もない。
「ほら、カーラさん、この前にタイタンたちの話を聞いただろう?12のタイタンのうちヤーヌスをはじめとした3柱が最初に現れて………ってやつ」
「うん」
「現れたタイタンたちによって世界は少しずつ形づくられていき、9柱のタイタンが揃った頃には世界は平和と繁栄の中にあり、そこで生きる人々もまた死という概念を持たず、永遠にその恵みを享受していたとされているんだ」
「その後、タナトスが生まれたことによりこの世界に死が、ニカドリーが生まれたことで紛争がもたらされたとされているけど……。それまでのオンパロス人は皆不死だったわけだから、確かにカーラさんの種族と似ていると言えるかもしれないね」
ずいぶんとかみ砕かれた説明に、カーラはようやっとわかったような顔でなるほどね、と頷いた。それからちょっと困ったように、キャストリスの目を覗き込む。その拍子に、カーラの長い髪の一房がキャストリスの手につかの間触れ、彼女はぎょっと飛びのこうとして、それからその必要がないことに気付いた。このひとは、死なない。
「どんな風に、かあ。キャストリスはなんだか、私の故郷に対して素敵な想像をしてくれているみたいだけど、あなたの期待を裏切っちゃうかもね。残念ながらサガルマートはかつてのオンパロスみたいな、死の概念すらない人々が永遠の平和や恵みを享受して、生を楽しんでいる…みたいな楽園じゃないもの」
「そう……なのですか?」
キャストリスは意外そうに聞き返し、カーラはしょんぼりと頷いた。
「うん。サガルマートの知的生命体には、私たちアスラと人間の2種類が存在しているんだ。アスラは人を襲ってその血液を栄養としているから、人間側はもちろんそれに反撃する。アスラは不死に極めて近い生き物だけど、恒星の光と特別な鉱石があれば殺すこともできる──手間はかかるけど。私たちはただ死に至る要因がすごく少ないだけで、死の概念そのものがないわけじゃないからね」
そこまで言って、『人間の血液』のくだりに驚いていそうなオンパロス人たちに向かって、カーラは慌てて首を横に振って弁明を図った。鞄の中から輸血用パックを取り出して、これ、と掲げる。
「け、警戒しないで!私は生きた人間を襲ったりしないよ、長いこと絶食もできるし、ときどきの栄養補給もこの輸血パックだけ!害なし、殺人なし、同意なき吸血なし!………同意ありの吸血はもしかしたら、万が一くらいにはやるかもだけど………」
「なんだ、びっくりしたよ。そういうことなら心配いらなさそうだ………アグライア、尋問はなしで頼むよ!」
「ファイノン!」
見えない糸を触るような動作をしながら、恐ろしいことを言い始めたファイノンにカーラは飛び上がった。向かいの丹恒も、笑うには早すぎるタイプの冗談に眉間を押さえている。星は案の定爆笑しているあたり、天外からの客人たちのブラックジョークの適正はばらつきがあるようだった。
「………もう、話の腰が折れた!それで、ええっと……そう、私の故郷はその2種族がもう何千年も戦争を続けている星なの。互いを食糧や仇敵と見なし、憎しみの連鎖を今に至るまで誰にもほどけていない。美しい景色も、歴史のなかで紡がれてきた文化もちゃんとあるけど……それらは全て、争いの中に存在している」
キャストリスは、そっと目を伏せて客人の語るむごくも普遍的な争いについて思いを馳せ、沈黙した。身近な対立する二者と言えばオクヘイマとクレムノスの因縁が思い至ったが、たぶんそれとはまるで異なる種類の争いだろう……クレムノス人はオクヘイマ人を食べたりはしない。
敵に対する向き合い方と、食糧に対する向き合い方は違う。戦いが終わった後に積みあがる死体の山に虫が集って朽ちていくことと、それが食糧として誰かの胃袋に収まることのどちらが残虐であるのかは判別がつかなかったが、それでも彼女の故郷は気が遠くなるほどの年月と死を積み上げる『紛争』の只中にいるのだろうことは容易に察せられた。
サガルマートにニカドリーはおらずとも紛争が生まれ、戦場の中で死出の旅に出るものたちが絶え間なく生み出されているのだろう。オンパロスと同じように。遠く離れた天外の世界に生きる不死の種族と聞いて、真っ先に楽土のような土地を想像した己の思考を、キャストリスは、恥じた。
「ああ、あったあった。こんなところだよ、サガルマート。私がいた頃とは全然ちがうけどね」
何やら石板を操作していたカーラが、画面をひょいとこちらに差し出した。狭い液晶の中には、ごつごつとした険しい山並みを切り開くように、オンパロスとはまるで違う街並みが映っている。装飾の少ない、近代的な高層ビルの群れと、緑青色をしたレンガ造りの素朴な丸屋根が無秩序に入り交じり、混沌とした──かつ、どこかちぐはぐな印象を見るものに与えている。
端末を借りたキャストリスがスクロールするのに従って、検索結果の画面は次々と移り変わった。都市の中を流れるいかにも冷たそうな急流、斜面に作られた段々の畑にはキャストリスが見たこともないような作物が鬱蒼と生い茂り、機械仕掛けの乗り物に乗った人の横をのんびりとした様子の獣が歩いている。よく見ればどの写真も、日中のものが多い。カーラたちの種族は日光に弱いと聞いたから、これは人間が撮影したものなのだろう。
その中に、ひときわ目立つ高山の写真があった。青い空を背景に、反りたつように険しい峰を備えて雪に彩られた山だ。周囲の山脈の中から、その山だけが浮き出るように高く、輪郭を淡く光らせながら荘厳な空気を纏って鎮座している。キャストリスはその山の名前も知らなかったが、さぞ名のある山だろうと思って眺めていると、横から不思議そうに声がかかった。
「あれ。この写真の山、頂上の部分が……透けている?僕の見間違いじゃないよね」
「ファイノン、いいところに目をつけたね。これが一目で分かるなんて!」
カーラはひどく嬉しそうにそう言った。
キャストリスはもその言葉によくよく目を凝らすと、確かに山の一番上の部分が少し欠けていて(彼女は単にそういう形の山なのだと考えていた)、よく晴れた青い空がその背景となっている──に見えるのだが、そのごく一部がガラスを通したときのように色が淡く、その部分の雲は屈折したように歪んでいる。ちょうど、山のてっぺんだけをちょいと切り取って、その上に水晶やガラスでできた三角錐を置いてみたような、そんな風に奇妙で美しい風景だった。自然に任せてできたとは、いささか信じがたいほどに。
「これは……とても美しいですね。人工的に作られたものなのですか?」
「ううん。私たちがここに手を加えたという記録はないから、たぶん自然にできたものなんだって言われてる。もともと、私たちの星の地層には特殊な物質が含まれていて、それが長い年月の間に鉱脈になったり、結晶化して地上に出たりするの。この山もそのひとつ。岩石の中に含まれていたものが、風化や雨で削られて露出している……らしい。原理はあんまり詳しく知らない」
カイラス山、私たちの聖なる山、水晶のいと高き峰……。古い詩編を読み上げるようにつぶやくカーラの顔は楽しげな色を浮かべていた。それから彼女は、その下にあるカイラス山の別の写真を指した。こちらは夜に撮られたであろうものだ。濃紺の帳と星明りを背にして、水晶の頂がきらきらしく光っている。
「……遠い昔、この山を見上げる湖で、いちばん最初のアスラが生まれた。恒星の光と特別な鉱石以外で死ぬことのない、野蛮な不死者たちの祖がね。今もこの山を中心にアスラたちの支配領域は存在してる……私がいた頃は人間側の土地と行き来なんか不可能だったけど……時代が下った今は色々変わってるのかもね」
語る横顔は懐かしそうだった。複雑な色を宿した目で画面を見て、カーラはそれからキャストリスに目をやった。
「もし…再創世が終わって、いつか天外にオンパロスのみんなが旅行に行けるようになったら、サガルマートにもおいでよ、キャストリス。年中戦争をしている危ないところだし、そこまで裕福な星じゃないけど」
「おいしいものもたくさんあるし、首都の方は結構発展してて娯楽もある…はずだし、あなたに触れても死なないやつがたくさんいる!ハグも握手も思いのままだよ」
カーラは呑気にそう言った。黄金裔の使命も、エスカトンもまるですぐに終わる用事みたいな、軽々しい口ぶりだった。一拍遅れて彼女もそれに気付いたのだろう、キャストリスはタナトスを探してるんだっけ、半神?になるんだもんね、色々難しいよねえ……とあれこれ彼女はトンチンカンな言い訳を並べたてはじめたが、キャストリスは気にすることなく「はい。ぜひいつか、訪れてみたいです」と答えた。
嘘ではなかった。嬉しかったのだ。自分の手が触れても、冥界への旅路に出ないものが当たり前のようにいる世界が存在していること、そこへ招いてくれたこと、カーラが気にすることなく詰めてくれた距離が。血を糧とする種族が闊歩し、戦乱に明け暮れる、水晶の山を抱く土地に、自分も訪れてみたいと思った。ほんとうに行けるかどうかは怪しくても、いつかという憧れを抱いたままでいたかった。
「…カーラ様、お写真の中にあなたの故郷の花は映っていますか?」
「花?うーん、ちょっと待ってね…花かあ……」
唐突な問いかけに、一瞬呆気に取られたカーラは、ちょっと考えてまた画面をスクロールしはじめた。
「ふふ、はい。あなたの生まれた土地で、どんな花が咲いて世界を彩っているのか、知りたくて」
キャストリスは左に少し寄って、カーラの画面を覗き込んだ。肩が少しだけ触れる。検索画面にはたくさんの、見知らぬ風景や植物たちの写真が映って、それが瞬く間に流れていく。彼女はそれを見ながら、また後でアンティリン花のことも教えてあげよう、と思った。
カーラ
あんまりデリカシーがない。
キャストリス
デリカシーのない不死者とちょっと仲良くなった。