現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
<リラ視点>
私は音羽リラ、ピチピチの十六歳っ。
ラブコメなんて信じてなかった、令和の女子高生。
でも、ある人に助けられてから、世界が変わったの。
朝起きた時からドキドキしてて、一日中その人のこと考えちゃうっ。
ああ、また早く会いたいなあ──なんて思っていたら。
「集中しなさい」
「いてっ」
隣のマネージャーから叩かれちゃった。てへへっ。
「てへへじゃないわよ」
「心読めるの!?」
と、冗談はここまでにして、私は改めて周りを見渡す。
場所は会議室。
私が所属する事務所『メルティーン』のオフィス内だ。
ここでマネージャーと話していたところだった。
「で、どうするのリラ。次の企画は」
「そうですねー」
カナタさんに救出されたのが、昨日。
今日は大事をとって配信を休みにして、企画を考える日にした。
企画と言えば、もちろん一つ浮かんでいる。
「カナタさんとコラボはどうでしょう!」
「ダメよ」
「えーなんでですか!」
でも、マネージャーの『
「今すぐコラボすると、久遠くんの人気にあやかったみたいに思われるわ」
「あー、まあ」
「普段のリラならすぐ気づくのに。本当に恋は盲目ね」
「……むう」
締霧さんはすごく優秀だ。
私も頼りにさせてもらっている。
ビシっと決めたスーツを正しながら、締霧さんは続けた。
「それに、従魔さん達はどうするのよ」
「!」
「あらかじめコラボ申請するならまだしも、急に言ってもリラを近づけてくれなさそうに見えるわ」
「……うっ」
確かにその通りだ。
カナタさんを
でも、ドクンと胸の中から
「その時は何をしても近づきますよ」
「……!?」
締霧さんは驚いたように目を見開く。
すると、そのままボソっとつぶやいた。
「彼は人を
「なにか言いました?」
「……! いえ、なんでもないわよ!」
「そうですか」
気を取り直して、話を戻す。
近づくと言えば、そうだ。
「カナタさん、事務所には入らないのかな」
「狙ってるところはたくさんあるでしょうね。けれど、
「メルティーンでも無理なんですか?」
「手に負えない可能性が高いわ。……特にあの従魔が」
ははっと苦笑いを浮かべる締霧さん。
メルティーンは業界でも一番大きな事務所だ。
ここでも難しいなら、他に取られる可能性も低いかな。
なんて思っていると、締霧さんは大量のデータを見せてくる。
「てことで、いつにも増してリラへコラボ依頼が
「私に?」
「久遠くん絡みで注目されたからでしょうね。従魔に近づくのは怖いから、リラにって感じでしょうけれど」
「ふーん……」
なんとなく予想できるけど、一応データに目を通す。
でも、やっぱりだめだ。
「全部却下で。用意してくれた締霧さんには悪いけど……」
「でしょうね。むしろ断ってくれて私も一安心よ」
「なら良かったです」
そうして、締霧さんはすっと立ち上がる。
「では今後の企画は、さっき挙がったものを採用する形でいいわね」
「わかりました」
妄想に入る前にも、いくつか企画を考えていた。
ひとまずはそれでオッケーということに。
「では明日からもよろしくね。お疲れ様」
「お疲れ様でした!」
締霧さんに一礼しながら、事務所を後にする。
帰路につく中で、軽くSNSをチェックした。
「……ふふっ」
トレンドには、まだいくつもカナタさんの話題が残っている。
『魔王』『#魔王の始まり』『#破壊』など。
でも、トレンド下位に並ぶ言葉に、すぐ真顔になった。
「は?」
『#何が魔王だよ』
『#俺の方が強い』
『#かかってこいよ魔王』
「ぶん殴りますわよ?」
思わず荒い言葉遣いになってしまいながらも、私はその話題を探る。
どうやら話題の発信元は『
大物にあやかって注目を集めるスタイルのようで、やっていることはどれも炎上スレスレだ。
いわゆる“迷惑系”というやつらしい。
「気に食わないわね」
ふと思い出すと、先ほどのコラボ依頼の中にこいつもいた。
私は動向を確認するため、配信を見ることにする。
★
<三人称視点>
同時刻。
「よう。リスナー共」
図体が大きな男が、配信を開始した。
彼が『孤高のゴウマ』である。
《お、始まったw》
《こいつが話題の人?》
《魔王様の悪口言ったよな?》
彼の元々の視聴者もいれば、SNSから来た者もいるようだ。
配信開始前に、挑発的な文言を拡散させたからである。
それが良くも悪くも波紋を呼び、話題になっていた。
すると、ゴウマは当てつけのように言い放つ。
「ここはC級の『
それで気づく視聴者もいるだろう。
ゴウマはニヤリとして続けた。
「なんだっけ、久遠カナタだったかあ? あいつが行ったのって所詮D級だろ? ったく、そんなとこでイキってもらっても困るんだよなあ!」
《やっぱりカナタ君の話かよ!》
《SNSでバカにしてたよな?》
《人気にあやかるスタイルどうなの?》
《魔王様に嫉妬してらwww》
《早く断絶されてどうぞ》
《おう言ってやれ!》
《あいつ人気になってウザかったからちょうどいいわ》
《お前が上なわけねえだろwww》
中には、カナタを気に入らない者もいる。
人気になるとは得てしてそういうものだ。
ゴウマは最後のコメントに答えた。
「ほう。んじゃ、試してみるか?」
取り出したのは、紫色の玉『興奮ボム』だ。
周辺の魔物を興奮させ、疑似的なイレギュラーを起こすことができる。
「C級のイレギュラーから生還したら、久遠カナタより俺の方が上だよなあ?」
ただし、これは“緊急用アイテム”に分類され、非常時以外では使用を控えるよう警告されている。
だが、ゴウマは明らかに意図的に使おうとしていた。
《は?》
《何しようとしてんだ!》
《それダメだろ!》
《緊急時以外に使うなよ!》
《周りに探索者いるかもしれねえだろ!》
これを使うと周囲を巻き込むことになる。
近くの探索者からすれば大迷惑だ。
さらに、ゴウマには考えがあった。
(くっくっく、昨日【俊足】を会得してきたんだよなあ)
スキルは、同じ動きを繰り返し行ったりすることで習得できる。
今回のために、ゴウマは移動系スキルを身に着けていた。
つまり、疑似イレギュラーを起こし、自分だけは逃げ切る算段だ。
そして、コメントに構わず興奮剤を放った。
「はははっ、魔王信者はせいぜい黙って見てろよバーカ!」
ぼふんっ!
放った興奮ボムが爆発し、魔物の好きな匂いが広がる。
すると、辺りからドドドドドドと
「はははっ! 来た来たぁ!」
《こいつマジでやりやがった!》
《通報したわ》
《おいふざけんな!》
《周りに探索者いるだろ!》
《ここ割と人気のダンジョンじゃねえか!》
《やべえ推しが同じ階層にいるんだけど!》
「さーて、俺はそろそろ準備をっと」
ゴウマは退避の準備に入る。
見せかけの戦闘の後、すぐに逃走するつもりだ。
しかし──ドドドドド……シーン。
「あん?」
ものの数秒で、魔物が迫る音が止まった。
さらに数秒後、今度は魔物の
「「「ギャアアアアアアッ!!」」」
「……!?」
《え!?》
《何が起きた!?》
《今のって断末魔か!?》
ゴウマを含め、誰も状況を把握できない。
そんな中、魔物の方向から一人の少女が歩いてくる。
「ふふふふふ……」
「は、はあ!?」
笑みを浮かべる少女は、返り血で染まっている。
彼女が魔物を
カメラはすでに映像を
だが、ゴウマは自分の目で少女を見ている。
ぺたぺたと歩いてくる少女は、口にした。
「次はあなた?」
「……! ひ、ひぃっ!」
その笑顔は、ゴウマを恐怖させるに十分だった。
「うああああああああああああああっ!!」
ゴウマは一目散に逃げ出す。
もはや目的など忘れ、ただひたすらに。
今ほど【俊足】を会得して良かったと思った瞬間は無い。
だが──
「それで全力?」
「ぎょえええええええええっ!?!?」
少女は何食わぬ顔で隣を並走していた。
《何が起こってるんだ!?》
《なんかイレギュラーが防がれた!ついでにゴウマがピンチ!》
《バーーーーーーカ!》
《ざまあねえぜ!》
《やられてらwww》
《悪い事するからだよ!》
逃げることは不可能だと感じ、ゴウマはすぐさま土下座した。
「も、もう許してぐだざいいいいいい! 二度とじまぜんがらああああああ!」
「なーんだつまんない。もう消えていいよ」
「──ぐはっ! ごばばばっ!?」
少女は、瞬時に複数のパンチを放つ。
最初は腹パン、その後は全て顔に。
「……ぐ、ぐえっ」
ゴウマは豪快にぶっ飛び、気絶。
ただし、その顔にモザイクはかかってない。
つまり、その
《だっせええええ!!》
《ぶっさwwww》
《腫れあがってて草》
《逃げきれてませんけど???ww》
《みんな見てるー?これが孤高のゴウマだよー》
《切り抜いとこっと》
《因果応報で草ぁ!》
しかし、当然疑問は生まれる。
《この子は誰……?》
《モザイクかかっててわかんねえ》
《モザイクあっても怖すぎるけど?》
《動きがもう怖い……》
《本物はどんだけ恐ろしいんだよ!?》
《てかイレギュラーを瞬殺したんだろ!?》
《イレギュラーを瞬殺って、最近どっかで聞いたフレーズだな……》
すると、未だモザイクの少女は、壊れかけのカメラに寄った。
「んー? へえ、これで他人と景色を共有してるんだ」
不思議そうにしながらも、なんとなく配信の要旨を理解する。
ザザーと配信が切れそうな中、少女は最後に言い残す。
その聞いたことのある名前を。
「わたしも参りましたよ、カナタ様っ♡」
そこでカメラは破損し、配信はブツ切りされた──。
★
同時刻、カナタの家。
「「……」」」
カナタ達は、ちょうどゴウマの配信を見ていた。
コメントがたくさん寄せられたからだ。
しかし、予想外の情報を得ることになる。
「主様、今のって」
「……うん、絶対にそうだね」
モザイクはかけられていたが、三人は正体を認識していた。
カナタは昨日の夢について思考を巡らす。
(やっぱりあいつだったのか……)
このまま放っておけば、誰もあのダンジョンに潜れない。
それは“
カナタは息をつきながらも、決めた。
「仕方ない。明日にでも迎えに行くかあ」
その少女は、カナタの従魔だ。
「あのヤンデレ吸血鬼を」