現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第14話 三人目の従魔

<カナタ視点>

 

「えー、皆さんこんばんは」

 

 俺は配信を開始して、カメラに向かって話す。

 

 青玉ダンジョンでの配信から、二日。

 一日休息(オフ)を取り、今日から活動再開だ。

 だけど、何やら話題になっている事があるらしい。

 

「早速なんですが」

 

 そこで俺は──ひとまず頭を下げることにした。

 

「この度は世間をお騒がせしてすみません」

 

《またかよww》

《今回も頭下げて始まったぞw》

《恒例の謝罪スタートで草》

《このオープニング唯一無二だろww》

《さすがに面白すぎる》

《謝る必要ないけどオモロイからやってほしい》

《もうこれ挨拶にしろw》

 

 騒がせた件というのは、昨日のとある配信。

 迷惑系のゴウマの配信で、放送事故があったんだ。

 俺の従魔の一人が彼に絡み、ボコボコにし、最後に言葉を残した。

 

『わたしも参りましたよ、カナタ様っ♡』

 

 その様子は、すでにホラー映像として出回っている。

 放置しておけるはずもなく、俺は迎えにやってきたわけだ。

 

 ──でもその前に。

 コメントにずっと気になる単語が流れている。

 さすがにこれ以上のスルーは限界だった。

 

「ていうか、まだこの呼び名なんですか!?」

 

《魔王様こんばんは!》

《見に来ました魔王様》

《むしろ定着したんですよ》

《魔王の配信のために早退しました》

《会社やめてきました》

 

 どうやら二度目の配信を経て、“魔王”の呼び名が定着したらしい。

 そんな……弁明は成功したんじゃなかったのか。

 しかも魔王(これ)だけではない。

 

 人気配信者の視聴者には、呼び名が付くことがある。

 リラさんなら、“リラ民”。

 不屈のアツシさんなら、“不屈の者”とか。

 

 そして、知らないところで俺のも決まっていたようだ。

 

《昨日から配下になりました》

《新参の配下です。よろしくお願いします》

《遅刻だぞお前ら、配下なら五分前に集合しとけ!》

《配下登録させていただきました》

 

随分(ずいぶん)と物騒ですね!?」

 

 そう、俺の視聴者の呼び名は“配下”。

 どこからか話題になり、ネットで広がったらしい。

 すでに多くの視聴者が自ら名乗る事態だ。

 

《行きましょう魔王》

《配下として本日の活躍も見届けます》

《下っ端の配下ですが応援してます》

 

「……ぐっ」

 

 こんな流れになれば、俺も覚悟を決めるしかない。

 視聴者に応えるのが一流の配信者らしい。

 俺は今までのプライドを捨てて名乗った。

 

「ど、どうも魔王でーす。今日も配信やっていきまーす」

 

《うおおお公認きたあ!》

《嬉しいです魔王様!》

《魔王が正式に爆誕!!》

《改めて聞くとおもろいww》

《どうも魔王ですのパワーワード感やばい》

《なんだかんだノリよくて好き》

《どこまでも付いていきますぞ!》

 

「ふ、ふふっ」

 

 反応が良かったから、思いの(ほか)嬉しい。

 思わず笑みも()れてしまった。

 ──そう思いながらも、俺は後ろを振り返る。

 

「主様、ココネは感慨(かんがい)(ぶか)いです!」

「カナタ君も立派になって!」

「お前らはせめて否定しろよ」

 

 仮にも元勇者の従魔じゃないのか。

 と、ここまで話したところで本題に戻る。

 

「コホン。では改めて、ここは俺の従魔が出た(・・)(くろ)(じゅ)ダンジョン』です」

 

《出たで草》

《もうホラー的な扱いやんw》

《やっぱり従魔だったのか》

 

 黒樹ダンジョンはC級。

 前回の青玉ダンジョンよりもランクは一つ上だ。

 ついでに、一般探索資格で潜れる最上位の難易度でもある。

 

「じゃあ、気を引き締めて──ん?」

 

 そんな時、前方にうっすらと人影が見える。

 程なくして、奇妙な笑みも聞こえてきた。

 

「ふふふふふっ」

「……っ」

 

 何か嫌な予感がして、俺は一応剣を抜く。

 

「カーナータ──」

「……」

「様ぁ!」

「おわっ!?」

 

 次の瞬間、遠くにいた人影が目の前に現れる。

 俺は構えていた剣でなんとか受け、攻撃を弾き返す。

 少女は宙がえりの後、俺の前方にスタっと着地した。

 

「あははっ! やっぱりカナタ様なのね!」

「……はは、相変わらず逆に安心したよ」

 

 すると、人影の姿が(あら)わになった。

 

 俺と同程度の身長。

 薄紫色のストレートロングに、真っ赤な瞳。

 背中からは紫の翼が生えている。

 

「──エルヴィ」

「えへっ」

 

 彼女は『エルヴィ』。

 吸血鬼の従魔だ。

 

《エルヴィちゃん!?》

《この子がホラー映像の子か!?》

《三人目の従魔か!》

《今のビビったあ……》

《いきなり襲ってくるとか怖すぎだろww》

《モザイク無しで見れた!》

《吸血鬼じゃん!》

《かわいいな……怖いけど》

《特に目が怖い》

《もう病んでる》

《めっちゃ容姿整ってる……怖いけど》

 

 でも、少し意外だった。

 

「今の一太刀でいいのか? “戦闘狂”のお前が」

「えぇ。だって、カナタ様は戻って(・・・)ないでしょう?」

「! ……なるほどな」

 

 戻ってないとは、七つの能力のことだろう。

 今の打ち合いだけで把握するとは。

 本当に怖いぐらい俺のことを見抜いてくるな。

 

 すると、エルヴィは右手に持つ武器をかざした。

 

「さっき良いものが作れて満足したし」

「……相変わらずやってたのか、工作(・・)

「もちろん」

 

 鮮やかな赤色の剣だ。

 ただし、端から端までまで色濃く染まっている。

 

《なんだあれ?》

《エルヴィちゃんの持ち武器?》

《それにしては違和感あるような》

《まさか……》

 

 気づいた者もいるだろう。

 それに答えるように、エルヴィは包丁みたいに剣を持った。

 目の光を失わせて。

 

「魔物の血で作った剣だよ」

 

《ぎょえええええ!》

《きゃーーー!》

《完全にホラー映像じゃねえか!》

《全部が魔物の血でできてんの!?》

《恐ろしい子!》

《戦闘狂って言ってたもんな……》

《迷惑系のゴウマを襲ったのもそういうことか》

《ただ戦いたかっただけってこと?》

《一番病んでそう》

《怖いよお……》

 

 配下は予想通りの反応だ。

 俺は雰囲気なんとかしようと、焦って話題を変えた。

 

「じゃ、じゃあ、倒した魔物はどうしたんだ?」

「それならあっちに!」

「ん? ……っ!」

 

 だが、その瞬間に「しまった」と自覚した。

 後方に振り返ったエルヴィは、手から複数本の赤い線を伸ばす。

 それで遠くの何かを掴み、背負い投げのようにドシーンと俺の前に置いた。

 

「お土産だよ。カナタ様!」

「いらねえよ! あー絶対こうなると思った!」

 

 置かれたのは、倒された魔物の山だった。

 

《だからこええよww》

《やっぱり恐怖映像で草》

《従魔って恐怖映像製造機なの?w》

《た、たた、大量だね!》

《やっぱ他二人並に強いんだなww》

 

「ま、能力も大丈夫みたいだな」

「ええ!」

 

 今の赤い線は、血から生成されたものだ。

 吸血鬼のエルヴィ、彼女は“血を操る”。

 その能力を使えば、血で剣を生成するのも(わけ)()い。

 

「ココネは好きじゃないですけどねー」

「お姉さんもー」

「おいおい」

 

 こうは言いつつも、二人とも仲悪くはない。

 たまに衝突するだけで。

 

 だけど、エルヴィは突如しゃがみ込んだ。

 

「……だって、わたし寂しかったんだもん」

「ん?」

「カナタ様と別れて、ずっと一人ぼっちで」

「そ、それは……ごめん」

 

 さっきまでとは態度が一変。

 急にダウナーになり始める。

 エルヴィはうっとりとした目で、下からこちらを覗く。

 

「だから傷つけちゃった(・・・・・・・)の」

「な、なにを?」

「……この──」

 

 たずねると、エルヴィは服の手首部分を下げる。

 感情の起伏が激しい彼女に、嫌な想像をしてしまった。

 そこから出てきたのは──魔物の骨。

 

「魔物を」

「もういいって!」

 

 俺はカランと骨を投げつけた。

 

《魔物かよwww》

《またしても(じゅう)(りん)される魔物さん》

《魔物「解せぬ」》

《しかもA級のセイントウルフじゃねえか!》

《そんなヤバイ奴を骨で出すなww》

《これ以上魔物を倒すのやめたげてえ!w》

《魔物の数はもうゼロよ!》

 

 でも、このまま放っておくのも可哀想だ。

 思わずツッコんでしまったけど、俺はふと聞いた。

 

「じゃあ、ほしい(・・・)か?」

「……! いいの?」

「まあ、しょうがないな」

「やったぁ」

 

 エルヴィは立ち上がると、俺にじりじり寄ってきた。

 

「こっちではカナタ様のを最初に口にしたかったの」

「はいはい、早くやってくれ」

「えへへ。じゃあ~」

 

 そのまま、エルヴィの顔は俺の首元に近づいていく。

 

《おいおい!?》

《これってもしかして……!》

《生で見れるのか!?》

 

 そうして、エルヴィは俺の首に口を付ける。

 

「カプっ」

 

 吸血鬼の吸血だ。

 

《吸血だあ!!》

《えっっっ!》

《うほーーーー》

《これBANされない!?》

《ありがとうございます魔王。一生ついていきます》

《僕のも吸っていいですよ^^》

《僕の首元も空いてるよー^^》

 

 痛みはほとんど無い、甘噛みだ。

 少し俺の血を吸ったエルヴィは、ふわああと満足そうな顔を浮かべた。

 

「やっぱりカナタ様の血が最上級ぅ!」

「それは良かった」

「ほらほらカナタ様ぁ! 早く魔物を〇しに行こうよぉ!」

「おい引っ張るなって!」

 

 エルヴィは、急に調子を取り戻したように明るくなる。

 

 そう、エルヴィは血を吸うと明るく戦闘狂に。

 血が足りなくなると、暗くダウナーになる。

 ちなみに、俺の血が大好物。

 

「あぁ、カナタ様が好き過ぎて、血を全部吸っちゃいたい!」

「普通に死ぬから」

 

 まさにヤンデレ吸血鬼だ。

 

《まためんどくせえのきたあwww》

《重たい、重たいよ!》

《キャラ濃いなあww》

《愛されてますな魔王様》

《従魔は病んでなきゃいけないルールなの?笑》

《これは狂気》

《病んでますねえ……( ̄▽ ̄)》

《病み超えてもはや闇》

 

 まあ、初見からしたら怖いのも分かる。

 それでも共に異世界を戦い抜いた仲間だ。

 すごく力を貸してくれたし放っておけない。

 

「「めんどくせー女」」

 

 ココネとルーゼリア(きみたち)が言うな。

 とは思いつつ、俺はエルヴィに視線を戻す。

 

「ていうか、どこに行くんだ?」

「なんかすっごい下に変な(・・)気配があったの。中層ぐらいまでは(ほろ)ぼしたんだけど」

「さらっと怖いって」

 

 それにしても、変な気配か。

 ココネ達と対等なエルヴィが言うなら、少し気になるな。

 ならばと、俺はみんなに呼びかけた。

 

「よし。下層まで一気に滑り落ちよう」

「滑りって、主様それは……!」

「ああ、壁を崩す」

 

 【超感覚】で壁の弱点(ウィークポイント)を感知して、【空間断絶】で壁を斬るんだ。

 前回の配信で起きた、ダンジョンシフトの要領で。

 

「でもカナタ君、他の探索者は?」

「探知したけど、いないみたいだ。協会に電話しておいて正解だったな」

「電話?」

「そう。ここのダンジョンは危ないから、探索者を入れないでくださいって」

 

 昨日、ゴウマの配信を見てすぐに連絡した。

 協会の人も慌てて(恐怖して?)了承してくれたんだ。

 だが、エルヴィがパアっと顔を晴らす。

 

「カナタ様! それはわたしの事を心配して!?」

「君に絡まれる(・・・・)方を心配してだね」

 

 そうして、準備が整う。

 俺は下に向けてスキルを放った。

 

「いくぞ──【空間断絶】」

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