現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
<カナタ視点>
「えー、皆さんこんばんは」
俺は配信を開始して、カメラに向かって話す。
青玉ダンジョンでの配信から、二日。
一日
だけど、何やら話題になっている事があるらしい。
「早速なんですが」
そこで俺は──ひとまず頭を下げることにした。
「この度は世間をお騒がせしてすみません」
《またかよww》
《今回も頭下げて始まったぞw》
《恒例の謝罪スタートで草》
《このオープニング唯一無二だろww》
《さすがに面白すぎる》
《謝る必要ないけどオモロイからやってほしい》
《もうこれ挨拶にしろw》
騒がせた件というのは、昨日のとある配信。
迷惑系のゴウマの配信で、放送事故があったんだ。
俺の従魔の一人が彼に絡み、ボコボコにし、最後に言葉を残した。
『わたしも参りましたよ、カナタ様っ♡』
その様子は、すでにホラー映像として出回っている。
放置しておけるはずもなく、俺は迎えにやってきたわけだ。
──でもその前に。
コメントにずっと気になる単語が流れている。
さすがにこれ以上のスルーは限界だった。
「ていうか、まだこの呼び名なんですか!?」
《魔王様こんばんは!》
《見に来ました魔王様》
《むしろ定着したんですよ》
《魔王の配信のために早退しました》
《会社やめてきました》
どうやら二度目の配信を経て、“魔王”の呼び名が定着したらしい。
そんな……弁明は成功したんじゃなかったのか。
しかも
人気配信者の視聴者には、呼び名が付くことがある。
リラさんなら、“リラ民”。
不屈のアツシさんなら、“不屈の者”とか。
そして、知らないところで俺のも決まっていたようだ。
《昨日から配下になりました》
《新参の配下です。よろしくお願いします》
《遅刻だぞお前ら、配下なら五分前に集合しとけ!》
《配下登録させていただきました》
「
そう、俺の視聴者の呼び名は“配下”。
どこからか話題になり、ネットで広がったらしい。
すでに多くの視聴者が自ら名乗る事態だ。
《行きましょう魔王》
《配下として本日の活躍も見届けます》
《下っ端の配下ですが応援してます》
「……ぐっ」
こんな流れになれば、俺も覚悟を決めるしかない。
視聴者に応えるのが一流の配信者らしい。
俺は今までのプライドを捨てて名乗った。
「ど、どうも魔王でーす。今日も配信やっていきまーす」
《うおおお公認きたあ!》
《嬉しいです魔王様!》
《魔王が正式に爆誕!!》
《改めて聞くとおもろいww》
《どうも魔王ですのパワーワード感やばい》
《なんだかんだノリよくて好き》
《どこまでも付いていきますぞ!》
「ふ、ふふっ」
反応が良かったから、思いの
思わず笑みも
──そう思いながらも、俺は後ろを振り返る。
「主様、ココネは
「カナタ君も立派になって!」
「お前らはせめて否定しろよ」
仮にも元勇者の従魔じゃないのか。
と、ここまで話したところで本題に戻る。
「コホン。では改めて、ここは俺の従魔が
《出たで草》
《もうホラー的な扱いやんw》
《やっぱり従魔だったのか》
黒樹ダンジョンはC級。
前回の青玉ダンジョンよりもランクは一つ上だ。
ついでに、一般探索資格で潜れる最上位の難易度でもある。
「じゃあ、気を引き締めて──ん?」
そんな時、前方にうっすらと人影が見える。
程なくして、奇妙な笑みも聞こえてきた。
「ふふふふふっ」
「……っ」
何か嫌な予感がして、俺は一応剣を抜く。
「カーナータ──」
「……」
「様ぁ!」
「おわっ!?」
次の瞬間、遠くにいた人影が目の前に現れる。
俺は構えていた剣でなんとか受け、攻撃を弾き返す。
少女は宙がえりの後、俺の前方にスタっと着地した。
「あははっ! やっぱりカナタ様なのね!」
「……はは、相変わらず逆に安心したよ」
すると、人影の姿が
俺と同程度の身長。
薄紫色のストレートロングに、真っ赤な瞳。
背中からは紫の翼が生えている。
「──エルヴィ」
「えへっ」
彼女は『エルヴィ』。
吸血鬼の従魔だ。
《エルヴィちゃん!?》
《この子がホラー映像の子か!?》
《三人目の従魔か!》
《今のビビったあ……》
《いきなり襲ってくるとか怖すぎだろww》
《モザイク無しで見れた!》
《吸血鬼じゃん!》
《かわいいな……怖いけど》
《特に目が怖い》
《もう病んでる》
《めっちゃ容姿整ってる……怖いけど》
でも、少し意外だった。
「今の一太刀でいいのか? “戦闘狂”のお前が」
「えぇ。だって、カナタ様は
「! ……なるほどな」
戻ってないとは、七つの能力のことだろう。
今の打ち合いだけで把握するとは。
本当に怖いぐらい俺のことを見抜いてくるな。
すると、エルヴィは右手に持つ武器をかざした。
「さっき良いものが作れて満足したし」
「……相変わらずやってたのか、
「もちろん」
鮮やかな赤色の剣だ。
ただし、端から端までまで色濃く染まっている。
《なんだあれ?》
《エルヴィちゃんの持ち武器?》
《それにしては違和感あるような》
《まさか……》
気づいた者もいるだろう。
それに答えるように、エルヴィは包丁みたいに剣を持った。
目の光を失わせて。
「魔物の血で作った剣だよ」
《ぎょえええええ!》
《きゃーーー!》
《完全にホラー映像じゃねえか!》
《全部が魔物の血でできてんの!?》
《恐ろしい子!》
《戦闘狂って言ってたもんな……》
《迷惑系のゴウマを襲ったのもそういうことか》
《ただ戦いたかっただけってこと?》
《一番病んでそう》
《怖いよお……》
配下は予想通りの反応だ。
俺は雰囲気なんとかしようと、焦って話題を変えた。
「じゃ、じゃあ、倒した魔物はどうしたんだ?」
「それならあっちに!」
「ん? ……っ!」
だが、その瞬間に「しまった」と自覚した。
後方に振り返ったエルヴィは、手から複数本の赤い線を伸ばす。
それで遠くの何かを掴み、背負い投げのようにドシーンと俺の前に置いた。
「お土産だよ。カナタ様!」
「いらねえよ! あー絶対こうなると思った!」
置かれたのは、倒された魔物の山だった。
《だからこええよww》
《やっぱり恐怖映像で草》
《従魔って恐怖映像製造機なの?w》
《た、たた、大量だね!》
《やっぱ他二人並に強いんだなww》
「ま、能力も大丈夫みたいだな」
「ええ!」
今の赤い線は、血から生成されたものだ。
吸血鬼のエルヴィ、彼女は“血を操る”。
その能力を使えば、血で剣を生成するのも
「ココネは好きじゃないですけどねー」
「お姉さんもー」
「おいおい」
こうは言いつつも、二人とも仲悪くはない。
たまに衝突するだけで。
だけど、エルヴィは突如しゃがみ込んだ。
「……だって、わたし寂しかったんだもん」
「ん?」
「カナタ様と別れて、ずっと一人ぼっちで」
「そ、それは……ごめん」
さっきまでとは態度が一変。
急にダウナーになり始める。
エルヴィはうっとりとした目で、下からこちらを覗く。
「だから
「な、なにを?」
「……この──」
たずねると、エルヴィは服の手首部分を下げる。
感情の起伏が激しい彼女に、嫌な想像をしてしまった。
そこから出てきたのは──魔物の骨。
「魔物を」
「もういいって!」
俺はカランと骨を投げつけた。
《魔物かよwww》
《またしても
《魔物「解せぬ」》
《しかもA級のセイントウルフじゃねえか!》
《そんなヤバイ奴を骨で出すなww》
《これ以上魔物を倒すのやめたげてえ!w》
《魔物の数はもうゼロよ!》
でも、このまま放っておくのも可哀想だ。
思わずツッコんでしまったけど、俺はふと聞いた。
「じゃあ、
「……! いいの?」
「まあ、しょうがないな」
「やったぁ」
エルヴィは立ち上がると、俺にじりじり寄ってきた。
「こっちではカナタ様のを最初に口にしたかったの」
「はいはい、早くやってくれ」
「えへへ。じゃあ~」
そのまま、エルヴィの顔は俺の首元に近づいていく。
《おいおい!?》
《これってもしかして……!》
《生で見れるのか!?》
そうして、エルヴィは俺の首に口を付ける。
「カプっ」
吸血鬼の吸血だ。
《吸血だあ!!》
《えっっっ!》
《うほーーーー》
《これBANされない!?》
《ありがとうございます魔王。一生ついていきます》
《僕のも吸っていいですよ^^》
《僕の首元も空いてるよー^^》
痛みはほとんど無い、甘噛みだ。
少し俺の血を吸ったエルヴィは、ふわああと満足そうな顔を浮かべた。
「やっぱりカナタ様の血が最上級ぅ!」
「それは良かった」
「ほらほらカナタ様ぁ! 早く魔物を〇しに行こうよぉ!」
「おい引っ張るなって!」
エルヴィは、急に調子を取り戻したように明るくなる。
そう、エルヴィは血を吸うと明るく戦闘狂に。
血が足りなくなると、暗くダウナーになる。
ちなみに、俺の血が大好物。
「あぁ、カナタ様が好き過ぎて、血を全部吸っちゃいたい!」
「普通に死ぬから」
まさにヤンデレ吸血鬼だ。
《まためんどくせえのきたあwww》
《重たい、重たいよ!》
《キャラ濃いなあww》
《愛されてますな魔王様》
《従魔は病んでなきゃいけないルールなの?笑》
《これは狂気》
《病んでますねえ……( ̄▽ ̄)》
《病み超えてもはや闇》
まあ、初見からしたら怖いのも分かる。
それでも共に異世界を戦い抜いた仲間だ。
すごく力を貸してくれたし放っておけない。
「「めんどくせー女」」
とは思いつつ、俺はエルヴィに視線を戻す。
「ていうか、どこに行くんだ?」
「なんかすっごい下に
「さらっと怖いって」
それにしても、変な気配か。
ココネ達と対等なエルヴィが言うなら、少し気になるな。
ならばと、俺はみんなに呼びかけた。
「よし。下層まで一気に滑り落ちよう」
「滑りって、主様それは……!」
「ああ、壁を崩す」
【超感覚】で壁の
前回の配信で起きた、ダンジョンシフトの要領で。
「でもカナタ君、他の探索者は?」
「探知したけど、いないみたいだ。協会に電話しておいて正解だったな」
「電話?」
「そう。ここのダンジョンは危ないから、探索者を入れないでくださいって」
昨日、ゴウマの配信を見てすぐに連絡した。
協会の人も慌てて(恐怖して?)了承してくれたんだ。
だが、エルヴィがパアっと顔を晴らす。
「カナタ様! それはわたしの事を心配して!?」
「君に
そうして、準備が整う。
俺は下に向けてスキルを放った。
「いくぞ──【空間断絶】」