現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
月末、某所。
──ざわざわ、ざわざわ。
ここは『上級探索者試験』会場。
上級探索者資格を志願する者たちが、会する場だ。
集まっているのは、およそ三百人。
ただし、その中でも異彩を放つ集団がいた。
「おい、あれって……」
「ああ本物だ……」
「まじで来たのかよ……」
視線が集まる先には──四人。
「なんかじろじろ見られてるような……」
「主様を
「お姉さんに
「強そうな奴はいないかなぁ」
カナタとその従魔たちである。
彼らは現在、世間で最も注目を集める者達だ(色んな意味で)。
当然、強者たちの間にも噂は広まっている。
そんな中、とある青年が近づいてきた。
「あの! 魔王カナタさんですよね!」
「は、はい」
「先日の配信も見てました。よければサインをくれませんか!」
「俺なんかのですか!?」
青年はカナタのファンだったようだ。
「じゃ、じゃあ……どうぞ」
「やった! ありがとうございます!」
カナタが照れながらもサインをあげると、青年は嬉しそうに戻っていく。
その光景には従魔たちもニコニコだ。
「「「ふふっ」」」
すると、次は女性ファンがやってきた。
「あの、よければ私にも!」
「「「女が近づくんじゃねえ!」」」
「ひゃあっ!?」
しかし、従魔たちは鬼の
女性には厳しいようだ。
さすがにかわいそうだと思ったのか、カナタがフォローする。
「うちの者がすみません。これ、サインです」
「いえ、受け取れません! 命が危ないのでー!」
「あぁ……」
女性ファンは青ざめた顔で走り去った。
カナタが手を伸ばす中、従魔たちはガッツポーズをしている。
「「「よし」」」
「何もよくねえわ」
そうこうする中、カナタは改めて周りを見渡した。
(それにしても、みんな強そうだな……)
今の二人も含め、探索者のレベルが普段とは違う。
ここに来るのは皆、一般資格で潜れるC級ダンジョンでは満足できない者たちだ。
探索者でも一握りの強者と言える。
すると、会場に声が
「えー、皆さんお集まりのようですね」
スーツ姿(と疲れた顔)から、探索協会の者だろう。
本試験の進行役のようだ。
「では改めて、簡単にルールをおさらいします。まずはこちらを」
おじさんが指を鳴らすと、大量のドローンが流れてくる。
ドローンは探索者たちを
「えー、国は配信者を推進しているため、本試験も配信されることになっています。チャンネルは事前にお伝えした通り、『探索協会公式』ですね」
おじさんの合図と共に、配信が開始されたようだ。
《お、始まった!》
《きたきたあ!》
《やっぱこの時期は上級試験だよな》
《今年はどんな奴らが来るかな》
《魔王が受けると言ってたので見に来ました》
《クソ、公式だからスパチャ送れねえのかよ!》
《ココネちゃん見てるよー^^》
探索協会公式にもかかわらず、配下(カナタの視聴者)と思われるコメントがたくさん見られる。
同接もすでに脅威の25万人。
毎年盛り上がる行事ではあるが、すでに例年の三倍以上の視聴者数だ。
これも、数日前にカナタが参加表明をしたからだろう。
くたびれた協会のおじさんは続ける。
「皆さんにはこれから、ダンジョン内で課題をこなしてもらいます。指定された素材を全て持ってくれば合格です。その素材はー、スマホにある通りです」
受付の際、探索者は試験専用スマホを受け取っていた。
不正防止のため、探索者自身の機器は預けている。
持ち込みが許されるのは、事前に申請した装備のみだ。
すると、一人の探索者が声を上げる。
「異議あり!」
「ん?」
受験者の一人だろう。
おじさんも「仕事増やすなよ……」と目を細めながら、一応耳を貸す。
「装備の持ち込みについては聞いています。ですが、彼らはどうするんですか!」
探索者が人差し指を向けたのは、カナタ一行。
「助っ人は無しのはずです。ならば、久遠カナタ一人で来るべきでは!」
「うーん……」
対して、おじさんは紙を取り出す。
「久遠氏に関しては、事前申請を頂いています。内容を読み上げますね」
「え?」
だが、当のカナタが首を傾げた。
(え、申請なんてしてないぞ?)
カナタは身に覚えがない。
送られてきた受験票に「従魔OK」とあったため、連れて来ただけだ。
心当たりがない中、申請内容が読み上げられる。
「その一『主様とは一心同体です。ひと時も離れることができません』」
「!?」
「その二『カナタ君とは愛で繋がっています。離すことは不可能です』」
「……!?」
「その三『カナタ様と離したら、腹いせに協会をぶった斬ります』
「……!?!?」
名前は出てないが、犯人は明確。
上から、ココネ、ルーゼリア、エルヴィだ。
(何やってんだよ、おまえらはー!?)
三百人が一斉に振り返ると、カナタは思わず顔を抑えた。
《公開ラブレターじゃねえかwww》
《全世界に告白が配信されてて草》
《世界中の外堀でも埋めるつもりか?笑》
《相変わらず重いぜ》
《カナタ君の顔が真っ赤www》
《魔王様照れててかわいい》
《これは恥ずい!》
《申請でもなんでもない笑》
《エルヴィはもはや脅迫文だろw》
《公式でイチャつくな(いいぞもっとやれ)》
《魔王様ご一行は普段通りだなw》
そうして、進行係は内容を締める。
「以上を踏まえ、従魔は久遠氏の“装備の一部”と見なします。テイマーが魔物を連れるのと同じという見解です」
「わ、わかりました……」
質問者は納得したようだが、カナタは強く思った。
(最初からそれだけ言えば良くない!?)
何はともあれ、従魔の参加は認められた。
すると、進行係の合図で大きな門が開いた。
「では早速始めていきましょう。こちらが試験専用ダンジョンです」
「「「……!」」」
ここは協会
協会が手を加え、上級試験用に魔物や罠が調整されている。
この中で指定の物を集めるのが合格条件だ。
「制限時間は一時間です。それでは始めてください」
「「「うおおおおっ!」」」
探索者たちは一斉に走り始める。
周りの勢いに呑まれない様、カナタ達も足を動かした。
──しかし、ダンジョンに入ってすぐ。
「おわっ!?」
突如、カナタの足元に武器が刺さる。
【超感覚】で回避したが、
そこにいたのは、多くの探索者たち。
「悪く思うなよ? 久遠カナタ」
「従魔なんてズルは許さねえぞ」
「まずはここで敗退してもらおうか」
従魔のルールに不満を持った者たちが、
この試験では、相手を
いずれ
試験の特殊ルールを使って。
「この人数でかかれば、失格させられるだろ」
各探索者はデバイスによって、“防具の
どれだけダメージを負ったかの指標で、HPみたいなものだ。
本試験では、損耗率(ダメージ)が70%を超えると強制失格となる。
本来このルールは、試験の安全面から作られたもの。
だが彼らは、これを利用してカナタを失格にさせるつもりだ。
《はああ!?》
《何してんだよこいつら!》
《結託とかアリかよ!》
《けど、ぶっちゃけ合理的ではある》
《終盤に一人でカナタと対峙するよりはな》
《先に落とした方が生き残れるってか》
《でもこれって……》
“強い者をマークして好き勝手させない”。
勝負事ではよくある光景だ。
すると、カナタはボソっと口にした。
「や、やばいな……」
「はっ! 今更怖気づいても遅えぞ?」
「いや、そうじゃなくて」
「ああん?」
強気な探索者に対して、カナタはちらりと視線を向けた。
隣には、やる気の満ちあふれた従魔たち。
「主様、やっちゃっていいんですよね」
「お姉さん、手加減って苦手なんだ~」
「あははっ、パーティーの始まりだ!」
「「「……っ!!」」」
ココネは腕を回し、ルーゼリアはコキコキと指を鳴らす。
エルヴィは狂気の笑顔を浮かべている。
先ほどの公開ラブレターがあったからか、普段より気分が
そんな様子に、カナタは息をつく。
“やばい”と言ったのは、三人の様子についてだ。
「やけに張り切っちゃってるよ」
《きたああああああ!!》
《怖すぎるwww》
《むしろやる気満々で草》
《探索者さんたち絶望!w》
《あーあ張り切らせちゃったね^^》
《大量大量っ!》
《本日の
《しょうもない奴らぶっ倒してくれ!》
とはいえ、カナタもただ任せっきりのつもりはない。
「ここで全員倒せば、一気に受験者が減るな」
ブオンっと剣を振るい、戦闘態勢を取る。
身に付けているのは、新調した装備。
「じゃ、やるか」
「はい!」「ええ!」「あはっ!」
こうして、カナタ達の上級探索者試験は、いきなり波乱の始まりとなった──。