現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第20話 VS特級探索者

 「あなたが試験官ですね」

 

 波乱の序盤を超えたカナタ達に、おじいちゃんが立ち(ふさ)がる。

 彼は本試験の試験官。

 “特級探索者”の資格を持つ実力者だ。

 

「いかにも」

 

 こくりと(うなず)いたおじいちゃんの周りには、何人もの受験生が倒れている。

 

(俺たちの前に挑んだのか……)

 

 彼らのデバイスには、赤色の×印がついていた。

 おじいちゃんに敗れて失格となったのだろう。

 さすがの相手を前に、エルヴィが口を開く。

 

「面白くなってきたじゃない」

 

 対して、おじちゃんも笑みで返した。

 

「ふっ。お主らなど一秒も必要ないわ」

「……へえ?」

 

 おじいちゃんは後ろで組んでいた腕を解く。

 その瞬間、ものすごいオーラが(あふ)れ出した。

 

「「「……!」」」

 

 曲がっていた背筋は伸び、拳法のような構えを見せる。

 その流れるような動きのまま──頭を下げた。

 

「参りました」

「はい?」

 

 カナタは勝利した。

 

《おじいちゃーん!w》

《まじで一秒もかかってねえじゃんwww》

《有言実行で草》

《特級探索者は嘘つかねえなあ()》

《その前の無駄な動きなんなんだよww》

《カナタ君の真似か?笑》

《頭下げ界隈》

 

 おじいちゃんは再び顔を上げると、ペラペラ話し始めた。

 

「わしは『黄昏(たそがれ)のジジヤ』。特級探索者じゃ」

 

《敗北してから名乗るのかよww》

《新しいなあw》

《てか、あのジジヤ!?》

《昔からいる超ベテランじゃん!》

《でも顔はNGだったような……?》

《なんで今になって出てきたんだ?》

 

 ──黄昏のジジヤ。

 ダンジョン黎明(れいめい)()から活動してきた、最古参の探索者だ。

 全盛期を過ぎても、未だに特級の資格を持つ実力者である。

 

 ただし配信者ではなく、姿も公開していない。

 超上級ダンジョンしか潜らないため、配信者に見つかる可能性も極めて低く、メディア出演なども()けている。

 

 そんなジジヤが、初めて(おおやけ)に姿を見せた。

 その重大な理由とは──

 

「サインください」

「ん?」

「孫がお主のファンでの。試験官をしてくれたら接触していいよって協会に言われたんじゃ」

 

 孫を喜ばせたいからだった。

 

《おじいちゃんwww》

《孫のためで草》

《かわいいじゃねえか!》

《いいおじいちゃんで好感持てる( ;ㅿ; )》

《ジジヤの印象変わったわw》

《もっと怖いかと思ってた!》

《孫のために頑張るおじいちゃんの(かがみ)

 

 ジジヤは四十年、非公開を(つらぬ)いた。

 だが、孫のためならば簡単にプライドを捨てることができる。

 偉大なおじいちゃんだ。

 

 カナタはサインを渡しながらも、若干戸惑う。

 

「本当に勝ちでいいんですか? ……サインどうぞ」

「うむ、異論はない。……ありがとう」

 

 すると、背を向けたジジヤは語り始めた。

 

「カナタ君。上級探索者に必要なのは“強さ”だけではない」

「!」

「危険を前にした時、適切な対応を取れる“判断力”じゃ」

 

《何か語り始めたぞw》

《背中で語ってる……》

《それっぽいこと言ってるの草》

《サイン色紙持ったまま語るの笑うw》

 

退()くことは負けではない。死ぬ事こそが負けなのじゃ」

「ジジヤ、さん……」

 

 超ベテランならではの言葉だろう。

 ジジヤはカナタ達を改めて眺め、ふっと笑った。

 

「結果、ここは退()くべきだと判断した」

 

《だから退いたのかよwww》

《死を予感してて草》

《すごい探索者なんだけどなあ……》

《それだけ魔王様たちが強いんだな》

《まあ正しくはある笑》

《相手を見抜く力はさすがベテランだなww》

 

 そして、最後にカナタに告げた。

 

「引き際を(あやま)るんじゃないぞ。色々とな」

「え?」

「老いぼれの言葉じゃ。頭の片隅にでも入れておくがいい。はっはっは」

 

 それから、ジジヤはポケットから物を取り出す。

 

「ほれ。これが一つ目の指定素材【シケンストーン】じゃ」

「わっとっと」

「先に進むがよい」

「は、はい!」

 

 そうして、カナタ達はジジヤを突破する。

 しかし、カナタは走る中で少し思い返していた。

 

(“引き際”って言った時、従魔たち(みんな)を見ていたような……)

 

「主様? どうしました?」

「い、いや、なんでもないよ!」

「……?」

 

 深い言葉なのか、浅い言葉のか。

 今は分からないが、カナタは言葉を胸に刻んだ。

 いつか、その意味が分かるような気がして──。

 

 

 

 

 さらに進んだ先。

 

「やはり貴様らも辿(たど)り着いたか」

 

 シャツ一枚の豪快な男が、腕を組んで待っていた。

 彼も特級資格を持つ試験官だろう。

 

「上級資格を持てば、活動の幅が大きく広がる。簡単には進ませないぞ」

「……っ」

 

 彼の言う通り、上級探索者には様々な権限が与えられる。

 

 ・B~A級ダンジョンの探索権限

 ・事務所、ギルドの設立権限

 ・緊急時の地上での能力行使権限

 

 色々な恩恵があるからこそ、責任も(ともな)う。

 ゆえに一般資格と違い、易々(やすやす)と上級資格は与えられない。

 カナタがそれに値するかどうか、男は計るつもりなのだろう。

 

 男は特級探索者の誇りを以て、指を立てながら語り始めた。

 

「いいか。上級資格を持つということは立派な──ごぱぁっ!?」

「「「話が長い」」」

 

 しかし、飽きた従魔たちが瞬殺。

 男はワンパンで沈められる。

 カナタも真顔で見つめていた。

 

「ひでえな……あ、素材落ちた」

 

 すると、男のシャツからポロっと指定素材が落ちる。

 カナタもそれを拾い、従魔たちと先に進んだ。

 

「あ、ありがとうございましたー」

「まだ名乗ってもいないのに……グハ」

 

《従魔たち容赦ねえ……w》

《おじいちゃんの話は聞いたのにw》

《マッチョはお好みじゃなかったか》

《名前すら聞いてもらえないw》

《素材ドロップしてて草》

《ドロップアイテムって魔物かよwww》

《カナタ君もちゃっかり拾う笑》

《さす魔王》

 

 以降、カナタ達の進撃は止まらなかった。

 

「俺は決してどかぬ。先に進みたければ俺を倒して──ぐはあっ!?」

「「「どけ」」」

 

《“動かざるケンゴ”がぶっとばされたぞ!?》

 

 

「我に隙など無い。ゆえに完全無欠──どへぇえっ!!」

「「「隙だらけ」」」

 

《まじかよ、“完全無欠のジュンペイ”が!》

 

 

「……ここで斬る──ひぃやああああっ!!」

「「「女は倒す」」」

 

《“沈黙のカレン”が絶叫して逃げた!?》

 

 魔王ご一行の無双ぶりには、コメント欄が湧き続けた。

 

《試験官圧倒してて草》

《こいつら特級以上ってこと?w》

《化け物すぎんだろwww》

《やっぱり(じゅう)(りん)配信で草なんよ》

《あーあ試験壊れちゃった……w》

《どっかに対等な奴らいないの?w》

 

 そうして、順調すぎる進行のまま、『上級試験ダンジョン』最奥(さいおう)

 

「これだあー!」

 

 カナタは最後の指定素材【シケンソウ】を採取する。

 

「主様!」「カナタ君!」「カナタ様!」

「おう!」

 

 これにて、素材集めは完了。

 一時間という制限時間の内、三十分を残して目標を達成した。

 すぐさま、カナタの試験用デバイスに通信が送られてくる。

 

『おめでとうございます。ダンジョンより帰還次第、上級資格を配布いたします』

「やったあ……!」

 

《魔王様おめでとうー!》

《おめでとうございます!》

《終始余裕だったなww》

《苦戦する要素なし!w》

《三十分って史上最速じゃね?》

《早く特級試験受けてどうぞ》

《あー楽しかった!》

 

 こうして、カナタは上級資格を無事に取得。

 公的な試験にもかかわらず、相変わらずの様子だった魔王様ご一行は、またも大きな話題となる。

 

 また、カナタにはある目的(・・・・)もあった。

 従魔たちを見ながら、カナタは口に出す。

 

「よし、これでようやく──!」

 

 上級資格を得て、カナタは次の行動に移る──。

 

 

 

 

 その頃、とあるダンジョンの奥深く。

 

「グ、グオォ……」

 

 倒れている大型魔物と、それに忍び寄る影があった。

 その影が手を伸ばすと、魔物からぽうっと光が移る。

 まるでスキルを会得したかのように。

 

「フッ。ようやく手に入れたぞ」

 

 影の者は、笑みを浮かべた。

 

「あの忌々(いまいま)しき、勇者(・・)カナタのスキルを」

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