現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「あなたが試験官ですね」
波乱の序盤を超えたカナタ達に、おじいちゃんが立ち
彼は本試験の試験官。
“特級探索者”の資格を持つ実力者だ。
「いかにも」
こくりと
(俺たちの前に挑んだのか……)
彼らのデバイスには、赤色の×印がついていた。
おじいちゃんに敗れて失格となったのだろう。
さすがの相手を前に、エルヴィが口を開く。
「面白くなってきたじゃない」
対して、おじちゃんも笑みで返した。
「ふっ。お主らなど一秒も必要ないわ」
「……へえ?」
おじいちゃんは後ろで組んでいた腕を解く。
その瞬間、ものすごいオーラが
「「「……!」」」
曲がっていた背筋は伸び、拳法のような構えを見せる。
その流れるような動きのまま──頭を下げた。
「参りました」
「はい?」
カナタは勝利した。
《おじいちゃーん!w》
《まじで一秒もかかってねえじゃんwww》
《有言実行で草》
《特級探索者は嘘つかねえなあ()》
《その前の無駄な動きなんなんだよww》
《カナタ君の真似か?笑》
《頭下げ界隈》
おじいちゃんは再び顔を上げると、ペラペラ話し始めた。
「わしは『
《敗北してから名乗るのかよww》
《新しいなあw》
《てか、あのジジヤ!?》
《昔からいる超ベテランじゃん!》
《でも顔はNGだったような……?》
《なんで今になって出てきたんだ?》
──黄昏のジジヤ。
ダンジョン
全盛期を過ぎても、未だに特級の資格を持つ実力者である。
ただし配信者ではなく、姿も公開していない。
超上級ダンジョンしか潜らないため、配信者に見つかる可能性も極めて低く、メディア出演なども
そんなジジヤが、初めて
その重大な理由とは──
「サインください」
「ん?」
「孫がお主のファンでの。試験官をしてくれたら接触していいよって協会に言われたんじゃ」
孫を喜ばせたいからだった。
《おじいちゃんwww》
《孫のためで草》
《かわいいじゃねえか!》
《いいおじいちゃんで好感持てる( ;ㅿ; )》
《ジジヤの印象変わったわw》
《もっと怖いかと思ってた!》
《孫のために頑張るおじいちゃんの
ジジヤは四十年、非公開を
だが、孫のためならば簡単にプライドを捨てることができる。
偉大なおじいちゃんだ。
カナタはサインを渡しながらも、若干戸惑う。
「本当に勝ちでいいんですか? ……サインどうぞ」
「うむ、異論はない。……ありがとう」
すると、背を向けたジジヤは語り始めた。
「カナタ君。上級探索者に必要なのは“強さ”だけではない」
「!」
「危険を前にした時、適切な対応を取れる“判断力”じゃ」
《何か語り始めたぞw》
《背中で語ってる……》
《それっぽいこと言ってるの草》
《サイン色紙持ったまま語るの笑うw》
「
「ジジヤ、さん……」
超ベテランならではの言葉だろう。
ジジヤはカナタ達を改めて眺め、ふっと笑った。
「結果、ここは
《だから退いたのかよwww》
《死を予感してて草》
《すごい探索者なんだけどなあ……》
《それだけ魔王様たちが強いんだな》
《まあ正しくはある笑》
《相手を見抜く力はさすがベテランだなww》
そして、最後にカナタに告げた。
「引き際を
「え?」
「老いぼれの言葉じゃ。頭の片隅にでも入れておくがいい。はっはっは」
それから、ジジヤはポケットから物を取り出す。
「ほれ。これが一つ目の指定素材【シケンストーン】じゃ」
「わっとっと」
「先に進むがよい」
「は、はい!」
そうして、カナタ達はジジヤを突破する。
しかし、カナタは走る中で少し思い返していた。
(“引き際”って言った時、
「主様? どうしました?」
「い、いや、なんでもないよ!」
「……?」
深い言葉なのか、浅い言葉のか。
今は分からないが、カナタは言葉を胸に刻んだ。
いつか、その意味が分かるような気がして──。
さらに進んだ先。
「やはり貴様らも
シャツ一枚の豪快な男が、腕を組んで待っていた。
彼も特級資格を持つ試験官だろう。
「上級資格を持てば、活動の幅が大きく広がる。簡単には進ませないぞ」
「……っ」
彼の言う通り、上級探索者には様々な権限が与えられる。
・B~A級ダンジョンの探索権限
・事務所、ギルドの設立権限
・緊急時の地上での能力行使権限
色々な恩恵があるからこそ、責任も
ゆえに一般資格と違い、
カナタがそれに値するかどうか、男は計るつもりなのだろう。
男は特級探索者の誇りを以て、指を立てながら語り始めた。
「いいか。上級資格を持つということは立派な──ごぱぁっ!?」
「「「話が長い」」」
しかし、飽きた従魔たちが瞬殺。
男はワンパンで沈められる。
カナタも真顔で見つめていた。
「ひでえな……あ、素材落ちた」
すると、男のシャツからポロっと指定素材が落ちる。
カナタもそれを拾い、従魔たちと先に進んだ。
「あ、ありがとうございましたー」
「まだ名乗ってもいないのに……グハ」
《従魔たち容赦ねえ……w》
《おじいちゃんの話は聞いたのにw》
《マッチョはお好みじゃなかったか》
《名前すら聞いてもらえないw》
《素材ドロップしてて草》
《ドロップアイテムって魔物かよwww》
《カナタ君もちゃっかり拾う笑》
《さす魔王》
以降、カナタ達の進撃は止まらなかった。
「俺は決してどかぬ。先に進みたければ俺を倒して──ぐはあっ!?」
「「「どけ」」」
《“動かざるケンゴ”がぶっとばされたぞ!?》
「我に隙など無い。ゆえに完全無欠──どへぇえっ!!」
「「「隙だらけ」」」
《まじかよ、“完全無欠のジュンペイ”が!》
「……ここで斬る──ひぃやああああっ!!」
「「「女は倒す」」」
《“沈黙のカレン”が絶叫して逃げた!?》
魔王ご一行の無双ぶりには、コメント欄が湧き続けた。
《試験官圧倒してて草》
《こいつら特級以上ってこと?w》
《化け物すぎんだろwww》
《やっぱり
《あーあ試験壊れちゃった……w》
《どっかに対等な奴らいないの?w》
そうして、順調すぎる進行のまま、『上級試験ダンジョン』
「これだあー!」
カナタは最後の指定素材【シケンソウ】を採取する。
「主様!」「カナタ君!」「カナタ様!」
「おう!」
これにて、素材集めは完了。
一時間という制限時間の内、三十分を残して目標を達成した。
すぐさま、カナタの試験用デバイスに通信が送られてくる。
『おめでとうございます。ダンジョンより帰還次第、上級資格を配布いたします』
「やったあ……!」
《魔王様おめでとうー!》
《おめでとうございます!》
《終始余裕だったなww》
《苦戦する要素なし!w》
《三十分って史上最速じゃね?》
《早く特級試験受けてどうぞ》
《あー楽しかった!》
こうして、カナタは上級資格を無事に取得。
公的な試験にもかかわらず、相変わらずの様子だった魔王様ご一行は、またも大きな話題となる。
また、カナタには
従魔たちを見ながら、カナタは口に出す。
「よし、これでようやく──!」
上級資格を得て、カナタは次の行動に移る──。
★
その頃、とあるダンジョンの奥深く。
「グ、グオォ……」
倒れている大型魔物と、それに忍び寄る影があった。
その影が手を伸ばすと、魔物からぽうっと光が移る。
まるでスキルを会得したかのように。
「フッ。ようやく手に入れたぞ」
影の者は、笑みを浮かべた。
「あの