現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
<カナタ視点>
「この度、
俺が両手を広げると、カメラが引きで
配信画面には、事務所全体が映し出されているだろう。
「こちらが事務所になります!」
黒と赤を基調にした、
入口はダンジョン産素材の
横側には謎の紋章風デザイン、上部は
ここは、
イメージは魔王城。(怒られない程度に)
そして──。
「事務所名は『魔王軍』です!」
《新事務所きたあああ!!》
《うおおおおおおお!!》
《おめでとうございます!!》
《忙しそうにしてると思ったら!》
《やっぱどっかに収まる器じゃないよな》
《噂にはなってたけど!》
《見た目が魔王城じゃねえかwww》
《ガチで魔王の覇道歩んでる》
《魔王軍バンザーイ!》
《建物も事務所名も物騒すぎて草》
「名前が物騒なのはそうですね。俺も色々考えたんですけど……」
新しく事務所を作るんだ、俺も張り切って提案していた。
『ニュー時代』とか『
でも却下された。
普段は全肯定してくれる従魔たちでさえ。
まあ、それほど“魔王”を気に入ってくれているのかな。
俺のネーミングセンスがダサいってことはないだろ。
なんて思いつつ、説明をしながら事務所内へ入っていく。
「今時の事務所なので、探索ギルドも
これは事務所設立の申請をする際、協会の人から
『お願いだからギルドも兼ねてください。どうか手をお貸しください』って。
始めからそのつもりだったけど、土下座までされてちょっと大げさだったな。
ついでに、ようやく狭い家ともおさらばできた。
すごくお世話になったけどね。
ありがとう大家さん。
そうして、事務所内への扉を開ける。
「中もすごく綺麗になってて──は!?」
だが、俺は思わず声を上げてしまう。
入ってすぐの壁が、とんでもないことになっていたんだ。
『主様ラブ』や『喧嘩募集』などの装飾。
あとは、特に上手くもない俺の似顔絵(?)がクレヨンで書かれていた。
俺は近くの従魔三人に目を移す。
「誰だよ、これやったの」
「「「しーん……」」」
「しらばっくれてる!? 言っとくけどバレバレたからな!?」
犯人は100%こいつらだ。
《早速荒らされてるじゃんwww》
《お誕生日会の装飾みたい笑》
《保育園児の落書きで草》
《従魔さんさあ……w》
《自分たちの事務所だからってww》
《新事務所でテンション上がっちゃった?》
《いきなりやってくれるわww》
《ここ聖地化しそう》
でも、今は配信中だ。
俺は気を取り直して、もう少し進んだ。
「コホン。続いてオフィスです。奥まではちょっと見せられませんが、こんな感じ。……よかった、ここは荒らされてない」
《ほっとしてんじゃねえかw》
《よかったで草》
《従魔のお目付け役いるだろこれ》
《そんなの誰がなりたがるんだよ》
《それ一番のブラック役職だろw》
「とにかく、今日からこの『魔王軍』で活動していきます。皆さん応援よろしくお願いします!」
《応援してるぞー!!》
《¥5000 設立記念です!》
《¥1000 魔王様おめでとう》
《¥3000 これからの活躍も期待!》
《¥4000 グッズ展開希望です!!》
《¥50000 ココネちゃんの絵買い取るお^^》
「皆さんこんなに! ありがとうございます……!」
俺はスパチャに感謝しながら、『配信ルーム』へ場所を移す。
ここは自由に配信ができる部屋。
ダンジョン産素材で完全防音となっていて、スペースも広い。
これからの雑談などは、この配信ルームで行うつもりだ。
「では、質問などはありますか?」
《現状の配信者はカナタ君だけですか?》
「……! フッ、聞かれると思ってました」
ドンピシャな質問に、思わずかっこつけた口調になってしまう。
俺はそのまま部屋の隅に視線を移した。
配信の画角に入っていない場所だ。
「実は、もう何人かメンバーがいます」
《えええ!?》
《まじかよ!?》
《あれ、あの噂本当なんじゃ……》
俺は手招きをすると、考えてきた演出をした。
「では登場してもらいましょう。どうぞ!」
「配下の皆さん、こんにちは!
《うわあリラちゃん!?》
《本物じゃねえか!!》
《リラちゃんきたあああ!!》
《先日退所してたから!》
《ありえねえって言われてたのに!》
《まじかよ本当に実現すんのかよ!》
一人目のメンバーはリラさん。
リラさんはニコっと笑うと、簡潔に言葉を
「前事務所とは色々ありましたが、心機一転、こちらでも頑張ります!」
《うおおおまじか!》
《応援してるぞ!》
《リラ速報からきました》
《SNSから来たけどまじでいる!?》
《従魔がいるのにようやるw》
《新事務所発表でコラボ叶うの嬉しい!》
リラさんの笑顔を見て、プロだなあと思う。
というのも、前事務所『メルティーン』では社長と
俺がリラさんを助けてから、社長がしつこく企画を持ってきたらしい。
内容は、“従魔と手合わせしてみた”とか、“従魔をおちょくってみた”とか。
とにかくバズり目的のみで、リラさんを
社長からは、マネージャーの
そして、我慢の限界がきて退所したと。
それから、締霧さんはどこからか『魔王軍』の噂を聞きつけ、俺に話をしにきた。
今ではリラさんは配信部門、締霧さんは事務所の
リラさんはもちろん、締霧さんもすごい人だ。
おかげで、設立の話はずっと早く進んだ。
……だから、
それから、俺はもう一人に視線を移した。
「まだ続きます。どうぞ」
「わしじゃよ」
二人目は、
「孫がどうしてもと言うんでな。これを機に、ダンジョン配信とやらも始めていこうかの」
《黄昏のジジヤ!?》
《ええええガチで!?》
《絶対どこにも付かないと思ってた!!》
《日本トップクラスの探索者だぞ》
《ここにきて配信者デビューかよ!》
《相変わらず孫に弱いwww》
《孫想いで優しい》
《ジジヤが配信なんて考えられないな》
《これも魔王の器か》
特級探索者のジジヤさん。
上級試験で
一度断られたけど、「孫に殴られた」とか言って加入した。
また、施設を頂いた
ジジヤさんの倉庫を改造して、この事務所が出来上がった。
ちなみに無償で。
さすがにローンで買い取ろうとしたけど、ジジヤさんは「孫のため」と譲らず。
ジジヤさんがいなければ事務所は作れていないので、本当に感謝しかない。
そして、最後にもう一人。
長身金髪のイケメンが現れた。
「クリエイター部門に所属しました、ロメンと言います。普段はココネたんの推し活の
装備職人のロメンさん。
俺の装備“ロメンシリーズ”を手掛けてくれている人だ。
《え、あのロメン!?》
《メディアに出るの激レアじゃね!?》
《推し活が本業で草》
《ココネオタクなのにこんな爽やかなのかよ》
《前も大金スパチャしてたなwww》
《従魔の装備、大変役立たせていただいてます》
《↑ナニに役立てるんでしょうねえ……》
《クリエイター部門って普通は配信者じゃないのか》
《一番クリエイターではあるけどw》
「専属ではありませんが、魔王様をはじめ、魔王軍の方々の装備を積極的に作っていきたいですね。あとココネたんと同じ空気を吸いたかった。すーはー」
《ロメンってこういう感じなんだw》
《キモくて草》
《これイメージダウンだろww》
《イケメンだから余計オモロイ》
《¥50000 ロメン神よ、どうかこれでココネちゃんの新装備を》
《↑早速献上してて草》
これが現在のメンバーだ。
ロメンさん以外は、全員“配信部門”になる。
「以上になります。では──」
「「「そして最後に」」」
「は?」
そんな時、従魔三人がずいっと前に出た。
「主様の
「正式にカナタ君の姉になりました。ルーゼリアですっ」
「カナタ様の吸血係になりました。どうもエルヴィです」
「はい全員嘘です。ただの従魔でーす」
《嘘かよwww》
《まあおかしいわな笑》
《急に前出てきて草》
《こいつら変わらねえなww》
《魔王に軽くあしらわれてら》
他のメンバーに
まったくかわいい奴らだ。
三人を一度
「事務所のコンセプトは“自由に楽しく”です」
わざわざ自分で事務所を作ったのは、何かに
なので、同じ所属になった配信者とも積極的にコラボする気はない。
あくまで今まで通りに出来ればと思う。
まあ、設立の一番大きな理由は──。
「ココネの目標は世界征服です」
「国民全員をカナタ君の配下にします」
「殺し合いの相手を募集中です」
「そこまで自由とは言ってないが?」
恐ろしくてとても
もはや使命感みたいなものだった。
何はともあれ、設立まではできた。
俺は今後への言葉を加えて、配信を締めることにする。
「これからは新事務所で頑張っていきますので、改めて『魔王軍』の応援をよろしくお願いします!」
「「「よろしくお願いしまーす!」」」
《うおおお応援してるぞー!!》
《改めて見たらとんでもねえメンツwww》
《こんなメンバー今まであったか!?》
《各界隈のトップが勢揃いじゃねえか!》
《ガチでオールスター》
《これマジで天下狙えるぞ!?》
《もう新事務所は無理とか言われたのに!》
《真の王には人が集まるんだよなあ》
こうして、新事務所『魔王軍』のお披露目配信は大成功となった──。
★
その日の夜。
「はあ~食った食った」
『魔王軍』メンバーで夕食を食べ、事務所に帰ってくる。
ここの三階が今日から俺たちの家だ。
そうして、階段を昇っている時、電話がかかってきた。
相手はチーフの締霧さん。
「もしもし、どうされたんです──」
『家に着いたかしら!? 映像を送るからすぐに見てちょうだい!』
「え、はい」
締霧さんにしては珍しく動揺した声だ。
俺はすぐさま、送られてきた配信の切り抜きを確認する。
『た、助けてくれ! パーティーが全員おかしくなっちまった!』
ダンジョン内で、男が声を上げている。
胸のバッジから上級探索者のパーティーだ。
だが、彼の仲間に異変が起きていた。
なんと──
「「「……ばぶぅ」」」
全員、幼児化している。
姿形はそのままのはずが、横に寝そべり、
そして、最後は残った彼も。
『あの波動に
パーティーは全滅した。
その後、彼の配信の終わり際に声が聞こえてきた。
『カナタちゃ~ん。どこに行っちゃったの~』
「……」
切り抜きを見終えて真顔になっていると、再び締霧さんの声が聞こえる。
『
「……わかりました。こちらで解決します」
俺は上を向きながら、決意を固めた。
「世界が“バブみ”に染まってしまう前に」