現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第23話 ママさん従魔

 「えー皆さん、世間をお騒がせしてすみません。魔王カナタです」

 

 俺は恒例の謝罪風挨拶(あいさつ)から、配信を開始する。

 でも、最近では一番深々(ふかぶか)と頭を下げた。

 

《ガチっぽい謝罪来たw》

《久しぶりのガチ謝罪きたあ!》

《本当に世間を騒がせているタイプの挨拶》

 

「本日は、B級の『渓谷(けいこく)ダンジョン』に来てます。まあ例の場所(・・・・)ですね」

 

 ガチ謝罪なのは、話題になっている事があるから。

 

 昨日、上級探索者のパーティーがここで全滅。

 命の危険は無かったが、“幼児退行した姿を配信で(さら)す”という、とんでもない事態になっていた。

 また、その映像の最後には言葉が残っている。

 

『カナタちゃ~ん。どこに行っちゃったの~』

 

 もちろん俺は心当たりがある。

 俺は早速、従魔三人と一緒に足を進め始めた。

 

「よし、いくぞ」

「はい」「ええ」「うん」

 

 みんなも真剣な面持ちだ。

 正体が分かっているからか、警戒(けいかい)しているんだろう。

 周りの風景は、名前のまんま“渓谷”だ。

 

 すると、少し進んだ先で何か(・・)が迫ってきた。

 

「……! あれは!」

 

 ふわっとした柔らかな波動だ。

 目に優しい黄緑色をしている。

 だが速い(・・)

 

《なんだ!?》

《誰かの攻撃!?》

《いや、あれってまさか!?》

 

 俺は迫真の表情で従魔たちに叫ぶ。

 

「まずい、()み込まれるな!」

「「「……!」」」

「ここは俺が食い止める! お前たちは下がれぇ!!」

 

 俺は剣を取り出し、波動を受け止めた。

 

「う、うおおおおおお……!」

 

 だけど、とても抑えきれない。

 勢いが(すご)いというよりは、体が(あらが)えないんだ。

 どこからか感じる温もりも、(ただよ)ってくる柔らかい香りも。

 

「ぐっ、うあああああああああ!」

「主様ーーー!」

 

 限界が訪れ、俺はふわりと波動に包まれる。

 同時にだらんと体の力が抜け、頭がぼーっとした。

 俺は口は勝手に動く。

 

「──ばぶぅ」

 

《カナタ君!?w》

《どうした魔王様!?》

《ばぶぅは草》

《幼児退行したwww》

《やっぱ例の波動だったのかw》

《必死に抑えてたのクソワロタ》

 

 すると、奥の方から声が聞こえてきた。

 

「カナタちゃ~ん!」

「ハッ、この声は!」

 

 俺は正気を取り戻し、走ってきた人に目を向ける。

 

 黄緑色のミディアムヘアに、温かい目。

 見た目は従魔三人よりも年上に見える。

 セーターの上から揺れている少しふくよかな体型も、包容力と言うべきかな。

 

「ミカ!」

 

 彼女はミカ。

 俺の従魔の一人だ。

 だけど、その呼び方にミカは(ほお)を膨らませた。

 

「もーカナタちゃんったら。いつもみたいに呼んでいいのよ。ほら、ミカママって」

「いや恥ずいわ」

「ふふっ、照れちゃって」

 

《ミカママ!?》

《ママさん従魔きたああああああ!!》

《全人類待望の瞬間》

《ミカママこんにちは!》

《やっぱり魔王様の従魔かよwww》

《色々とおっきい……》

《すでに母性がすっごい》

 

 コメント欄は大盛り上がりだ。

 話題になっていたからか、すでに30万人が視聴している。

 そんな中で、ミカは俺の頭をなで始めた。

 

「ママって呼んでくれなくなるほど、成長したんだね」

「ちょっ、やめてって」

「頑張った子にはご褒美です」

「……!」

 

 柔らかい声と共に、ミカの胸に抱き寄せられる。

 まずい、今は配信中なのに。

 ミカにそんなことをされたら──。

 

「ふふっ、いい子いい子」

「……ママぁ」

 

《おぎゃったああwww》

《魔王が()ちたwww》

《あの魔王が成す術なしだと!?》

《なんて包容力なんだ!》

《このママ強すぎるだろ!》

《ミカママあーーー!!》

《やはりママには勝てないのか》

《僕もよしよしして;;》

《あやされたいです;;》

《癒しをください;;》

《早速ファンが大量発生してんじゃねえかww》

 

 そんな時、ココネがつんつんとミカを突く。

 

「ミカママ、久しぶり」

「あらココちゃん! 元気にしてた? ほーら、よしよし──」

「やめて」

 

 だが、ココネはミカの手を()らす。

 そのままムッと反抗の目を向けた。

 

「いくらミカママでも、主様にべったりし過ぎ」

「あら、ごめんなさい! なにもカナタちゃんを取る気はなかったの」

「そ、そういうことじゃないです!」

「でも……そうね。ココちゃんも大変だったのね」

 

 ミカママはすっと両手を広げる。

 

「ココちゃんもほら、おいで」

「べ、別にココネは……」

「久しぶりじゃない。遠慮しなくていいのよ」

「……」

 

 つーんとしていたココネも、すすっとミカに寄った。

 

「す、少しだけなら、あやされてあげます」

「ふふっ。そうそう」

 

 するとミカママは、ココネの背中をトントン優しく叩き始める。

 

「ココちゃん。ずーっとカナタちゃんを守ってくれてたんだね」

「あ、当たり前だもん」

「ううん、それってココちゃんが頑張り屋さんだからだよ。えらいえらーい」

「…………」

 

 ココネはミカママの(すそ)をぎゅっと握った。

 

「ママぁ」

 

《ココネちゃーーーん!w》

《また堕ちてて草》

《母性には抗えないwww》

《甘えた顔かわいい^^》

《ママぁ!》

《ミカママ強すぎるな……》

《兄を取られた妹みたい》

《そういう気分だったのかw》

《どっちもかわええええ》

 

 そんな中、ついに二人が(おど)り出る。

 

「「ちょ待てーい!」」

 

 ルーゼリアとエルヴィだ。

 二人は鬼の(ぎょう)(そう)でミカママに迫る。

 

「よくもカナタ君を誘惑してくれたわね」

「そうよ、わたしのカナタ様なのに!」

「……」

 

 対して、ミカママはふわっと波動を放つ。

 先程と同じ技だ。

 

「【バブみの波動】」

「「……!」」

 

 その瞬間──おぎゃった。

 

「「ミカママぁ」」

「ふふっ、二人ともいい子にしてたのね」

「「うんっ!」」

 

《よっわwww》

《お姉さんもかよ!?》

《こんな優しそうなエルヴィ見たことねえw》

《あの従魔たちがあっさり!?》

《特級探索者でも瞬殺だったのに……》

《まだ上がいたとは……》

《戦闘力はともかく正面からじゃ勝てないな》

《予想外の強さだろこれwww》

 

 すると、ミカママは両手を頬の横で合わせた。

 

「みんな久しぶりだし、ゴロンしてお話ししましょうね」

「「「うんーっ!」」」

 

 こうして、俺たちはミカママと再会した。

 相変わらずの破壊力に驚くばかりだけど、従魔たちはさすがに弱すぎだな。

 ったく、しょうがない奴らだ──ばぶぅ。

 

 

 

 

 少し経ち。

 

「カナタちゃんは配信というのをやってるのね」

「そうだよ」

 

 俺はミカママに現代の話を共有していた。

 配信やダンジョン関連のことだ。

 

「頑張り屋さんなのね。よしよししてあげる」

「えへへ」

 

 (ひざ)(まくら)をされながら。

 

《膝枕で会話すんのやめてくれwww》

《その態勢どうにかしろ笑》

《ずっとこの光景で草》

《膝枕って一回いくらですか?;;》

《こっちも癒される~》

《今日はもうずっとこれでいいぞw》

 

 俺はコメントにも答えていく。

 

「今日はこれでいいって? ははっ、もちろんですよ。もう離れられません」

「ふふっ、カナタちゃんったら」

 

 ミカママの膝枕は、言うならば“大自然”。

 広く穏やかな草原の中央で、お昼寝している気分になる。

 朝のお布団より強い重力だ。

 

《開き直んなww》

《なんか言葉優しいんだよなあw》

《ミカママが魔王を手懐けてやがるww》

《ダメだ、あまりの包容力に(しゅう)()(しん)を失ってる》

《後で配信見返して赤面パターンだな笑》

《穏やかな表情ガチでオモロイw》

 

 それから、俺は横に視線を移した。

 

「ほら、他の従魔三人も見て下さいよ」

「「「ごろーん」」」

 

 ココネ、ルーゼリア、エルヴィ。

 三人は能力でシートを()き、その辺に寝転がっている。

 ミカママが甘やかすから、すっかりダラけていた。

 

《リビングかよwww》

《緊張感なさすぎて草》

《※ここダンジョン内です》

《甘やかされてダメになってらww》

 

 すると、質問コメントも流れてくる。

 

《ミカママって本当に血が(つな)がってるわけじゃないよね?》

 

「従魔ですから(つな)がってませんよ。ほら、契約紋もあります」

 

 ミカママは答えながら、ちらっとセーターをめくる。

 出したお腹には契約紋が刻まれていた。

 ミカママは優しい目で続ける。

 

「でもね。母のような愛情を持って接する。それだけでママと呼んでいいと思うの」

 

《ばぶばぶ!(そう思う!)》

《ばぶぅ!(俺も!)》

《ばぶぅー(わかるー)》

《おぎゃあ!(そうだね!))

《コメ欄がどんどん幼児退行していくwww》

 

 俺たちは主従の関係だ。

 でも、ミカママの愛情は本物だと思う……ばぶ。

 

「カナタちゃん、よしよし」

「うん! ──って、これは!」

 

 そんな時、ぴくっと魔物の気配を感じ取る。

 俺は死に物狂いで母性を振り切り、なんとか体を起こした。

 

「ママ、あっちから魔物が来るよ!」

「ギャオッ!」

 

 現れたのはA級の『ボアグリズリー』。

 さすがはB級ダンジョン、平均レベルが高い。

 俺はすぐさま立ち上がろうとするも、後方から優しい声が聞こえた。

 

「大丈夫よ、カナタちゃん。もう済んでる(・・・・・・)から」

「あ、そうなんだ」

「ええ。ボアちゃん、いらっしゃーい」

 

 ミカママは手を広げると、ボアグリズリーは嬉しそうに寄ってきた。

 

「ギャウッ、ギャウッ!」

「ふふっ、いい子ねー」

 

 ミカママがすでに【バブみの波動】で懐かせていたんだ。

 

《魔物相手でも通用すんのかよ!?》

《A級魔物を手懐けてて草》

《なんでもアリかよwww》

《どんな母性してんだよww》

《僕も体験してみたいです;;》

《ばぶばぶー!(ママ僕もー!)》

 

 ミカママの母性には、敵も味方も、人も魔物も関係ない(・・・・)

 誰これ構わず、幼児退行させて甘えさせてしまう。

 そして何より、ミカママ自身が無類の世話好きだ。

 

「カナタちゃんがいない間、みんなのお世話をしていたの」

「ママは相変わらずだなあ」

 

 自らお世話できる者を求め、自ら甘やかしにいく。

 まさに“歩くバブみ兵器”だ。

 

《ママぁ》

《強すぎるwww》

《誰が勝てんだよこれww》

《このままじゃ世界がバブみに染まってしまう……》

《それもまた良い世界じゃないか?》

《ああ、疲れた現代社会にはぴったりだ》

《僕もばぶばぶしたいです》

 

 まあ、ミカママの母性には二面性(・・・)があるんだけどな。

 なんて思った時、ミカママは魔物から話を聞いていた。

 

「ギャウギャウ」

「なんですって? 下層にいじめてくる奴がいる?」

「!」

 

 ミカママの優しい目つきが一瞬で変わる。

 これはまずい、もう一つ(・・・・)の母性が出てきそうだ。

 すると──

 

「子どもを傷つける奴は許さないわよ?」

 

 ミカママの背後から、ズズズっと黒い波動が出始めた。

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