現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第24話 ママ誕生の日

<三人称視点>

 

「下層にいじめてくる奴がいる?」

 

 甘やかした魔物から、話を聞いたミカママ。

 優しい目つきは、一瞬にして恐ろしいものへと変わる。

 

「子どもを傷つける者は許さないわよ?」

 

 同時に、背後からズズズっと黒い波動がにじみ出た。

 (いや)しの波動とは真逆。

 “怒り”に染まった色である。

 

《うわあ!?》

《なんだ!?》

《ばぶぅ!?(ママぁ!?)》

《母を怒らせたら怖いよ!》

《一番怒らせちゃいけない人だよ!》

 

 立ち上がったミカママは、パチンと指を鳴らす。

 すると、周囲からは魔物たちが出てきた。

 全て“(いや)され済み”だ。

 

「そいつに言いつけにいくわよ。うちの子に何するんですかって」

「「「ギャウ!」」」(ママ!)

 

《ママの(とりこ)がわらわら出てきたww》

《クレームに行くママで草》

《どこまでもママなんだよなあw》

《子どもがいじめられたらな》

《まさにお母さん》

《ママ頼もしい;;》

 

 ミカママは魔物にまたがると、後方にも(うなが)す。

 

「さあ、カナタちゃん達も乗って!」

「「「ばぶぅ!」」」

 

 カナタ達はすぐさま下層へ向かった。

 

 

 

 

 少し経ち、下層。

 

「あいつは!」 

 

 正気を取り戻したカナタが、ハッと声を上げる。

 そこにいたのは“魔人”だ。

 

「ひゃっひゃっひゃ! 地上へ行く前に殺しまくるぜえ!」

「「「グギャア……!」」」

 

 いじめてくる奴というのは、こいつだろう。

 闘争を求めているのか、ミカママが甘やかした魔物を(かた)(ぱし)から殺し回っているようだ。

 

「やはり魔人はひとりじゃなかったか」

「あん? て、てめえは……!」

 

 魔人もカナタ達に気づく。

 彼らの(おさ)である魔王を討伐したカナタには、恨みを持っているだろう。

 魔人はターゲットをカナタへと変更する。

 

「ここが会ったが百年目ぇ! 今度こそ貴様を──アヒャッ!?」

「……あ」

 

 しかし、魔人は宙で黒い波動に包まれた。

 波動の出所を辿(たど)っていくと、ミカママだ。

 その拳はわなわなと震わせている。

 

「うちの子に続いて、カナタちゃんにも手を出そうとした……?」

「!?」

「親の顔が見てみたいものねぇ……?」

「ヒ、ヒィッ!?」

 

 これはもう一つの母性だ。

 ミカママは黒い波動をにじみ出しながら、ふと思い出していた。

 

(カナタちゃんを傷つける奴は許さない)

 

 異世界でのカナタとの日々を──。

 

 

────

 異世界、とある日。

 

(しくしく……)

 

 (だい)()は泣いていた。

 正確には、この大地に宿る“魂”が泣いていた。

 

(私はこのまま果てるのね……)

 

 ここは人と魔が争い合い、焼け野原となった場所。

 建物はおろか、木々すら一つとして見当たらない。

 捨てられた地だ。

 

 そんな地に、すっと一つの花が()えられる。

 

「よっと」

(……え?)

 

 すると、花を添えた少年と仲間の会話が聞こえてきた。

 

「主様、これは一体?」

「俺の故郷に『八百万(やおよろず)の神』って思想があってさ。案外、土地にも魂が宿ってるかもって思って」

 

 少年は、添えた花に水をやる。

 

「もし魂があったら、なんか寂しそうじゃん」

「なるほど。ではココネ達で明るくしましょう」

「ああ、そのつもり!」

 

 それから、カナタという少年は毎日この地を訪れた。

 雨の日も、風の日も。

 この地に語りかけるように。

 

「お、花が増えてきたな」

 

「今日は朱雀(すざく)女と出会ってな。あっついけど、いい子そうだ」

 

「頼りになる吸血鬼が仲間になったよ。怖えけど」

 

 ただの気まぐれか、“スピリチュアルな俺かっけー”と()っていたか。

 カナタの考えは定かではないが、この日々は大地に元気をくれた。

 

 そうして月日が経つと、大地は息を吹き返していた。

 一面に花々が咲き誇り、豊かな自然が(よみがえ)るまで。

 まさに“母なる大地”と言えるほどに。

 

 すると、大地は想う。

 

(少年にお礼をしたい。あと──どうしても甘やかしたいっ!!)

 

 その原点となる想いを。

 

(あのあどけない顔も、優しいところも、ちょっとイタいところも! あーもう甘やかしたくてしょうがないのっ!)

 

 その強すぎる想いは、形となって現れた。

 

「やっと会えたわ」

「うわあっ!?」

 

 母なる大地の力が集約し、“精霊”として具現化した。

 ミカ誕生の瞬間である。

 

「私は“母なる大地”の具現化。つまりママよ」

「ちょっと何言ってるかわかんない」

「よろしくね。カナタちゃんっ」

「だから誰ぇ!?」

 

 いきなり出現したミカに、カナタは動揺した。

 ──しかし、ほんの数十秒後。

 

「これから一緒に冒険しましょうねえ」

「ママぁ」(いいよぉ)

 

 カナタは余裕で()ちた。

 ミカママ誕生の瞬間である。

 こうして、ミカママはパーティーに参加、後にカナタの従魔となるのであった。

 

 

 

 そして、カナタが処刑された後。

 

「カナタちゃん。待っててね」

 

 処刑に怒り狂ったミカママだが、ココネ達の話を聞く。

 それに続こうと、エルヴィが革命が起こした国へ向かった。

 国はすでに勇者カナタの名誉を復活させ、良い方向へ進んでいる。

 

「ミカ様、こちらでございます」

「ありがとう」

 

 勇者の従魔であるミカママも、召喚回路へ辿(たど)り着いた。

 あとは召喚を発動させる魔力を込めるのみだ。

 ミカママが取った手段は──おねだり。

 

「【バブみの波動】」

「「「……!」」」

 

 万物を幼児退行させる波動を広げ、国民を巻き込んでいく。

 幼児退行の流れは伝播(でんぱ)し、一時的に全国民がおぎゃった。

 そこで、ミカママは呼びかける。

 

「少ーしだけ、ママのお手伝いしてくれる?」

「「「ばぶぅ!」」」(いいよぉ!)

 

 ミカカマは、全国民から魔力を少しずつもらった。

 また、具現化した大地の魔力を合わせる。

 それだけで十分すぎる魔力が集まった。

 

「ママが迎えに行くからね。カナタちゃん」

 

 そうして、ミカママは世界を渡った。

────

 

 

 異世界の出来事を思い出し、ミカママは想いを強める。

 

(もう二度とカナタちゃんを失わない……!)

 

 ミカママの種族に名前を付けるなら『地母(ちぼ)(しん)』。

 (じん)(じょう)じゃない“甘やかしたい欲”により、母なる大地が具現化した唯一の種族だ。

 

 そして、自然は時に“牙を向く”。

 

「【怒りの波動】」

「……ッ!?」

 

 黒く禍々(まがまが)しい波動だ。

 我が子を傷つける者に牙を向けた、ミカママのもう一つの母性である。

 これに包まれた者は、自然の(さば)きを受ける。

 

「ぎゃあああああああっ!!」

 

 何百年もの間、波動の中で嵐に()まれ、豪雨にさらされ、干からびるまで太陽に当てられる。

 正確には、それと同等の精神ダメージを受けるのだ。

 

「がはぁっ……ず、ずみませんでしたぁ」

 

 黒い波動から解放された魔人は、廃人のように地面に伏した。

 

《精神的に殺すのかよ!!》

《怖すぎるだろwww》

《これが本気のマッマ(;゚Д゚)》

《怖すぎておぎゃあ!》

《ママを怒らせちゃいけない……》

《良い教訓になりました》

《素直に従うから癒されたい;;》

 

 それには、従魔三人すらもドン引きする。

 

(((ママこわい……)))

 

 戦闘力では三人が勝っているだろう。

 それでも、ミカママは決して敵に回したくない相手だ。

 すると、カナタは魔人を持ち上げた。

 

「さっき地上がどうとか言ってなかったか? あれは何の話だ」

「シテ……コロシテ……」

「精神が壊れたか。ミカママ」

「えぇ!」

 

 受け答えができない魔人に、ミカママは【バブみの波動】を当てる。

 すると、おぎゃった魔人はペラペラと話し始めた。

 

「魔人ちゃん、地上がどうしたのかな?」

「うん、えっとねー!」

 

 幼児退行により、警戒心が消えたのだ。

 

《廃人と幼児を自在に操るのかよ!?》

《これは中々にエグい……》

《究極のアメとムチだなww》

《やっぱり恐怖映像で草》

拷問(ごうもん)どころの騒ぎじゃねえよww》

《ママもサイコパスだった;;》

《精神系の能力怖え……》

 

 だが、言い放ったのは衝撃的な言葉だった。

 

「俺のアニキが、他の魔物を連れて地上に行くんだって!」

「「「……!?」」」

 

 これにはカナタ達も顔を見合わせる。

 

「なっ、地上だって!?」

「ですが主様、魔物は地上に出られないはずでは!」

「ああ、検証したはずだ」

 

 魔物にとっては、現代の大気が有毒のようだ。

 先日、エルヴィが強制的に魔物を連れ出そうとしたところ、討伐時のようにサラサラと灰になって消えた。

 すると、魔人から回答を得られた。

 

「なんかー、人型になると耐性ができるんだって」

「「「……!」」」

 

 そこで辻褄(つじつま)が合う。

 同じ異世界出身でも、従魔たちは人型だから地上で生きられたのだ。

 ならば魔人も同様であり、予想もつく。

 

(俺のあのスキル(・・・・・)があれば可能か……?)

 

 そうして、魔人は死期が近づいたのか、最後に正気を取り戻した。

 

「フッ、もう遅いぜえ?」

「なんだと?」

「あの方はすでに動き出している」

 

 魔人はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 同時刻、地上。

 

──ドガアアアアアアアッ!!

 

「「「……!?」」」

 

 ダンジョンの入口付近から、大量の魔物があふれ出した。

 本来は地上で生きられないはずの魔物が。

 三か所もの場所から同時に。

 

「「「グオオオオオオオオッ!!」」」

「「「きゃああああああああ!!」」」

 

 魔物が地上に出現すれば、一般人も巻き込まれる。

 人々が大騒ぎになるまで、一秒もかからなかった。

 

 そして、どこかの潜む、ひとりの魔人。

 

「フハハハ、さすがは勇者カナタのスキルだ! こうも簡単にいくとは!」

 

 彼は、“異世界の魔王軍”で四天王の一人だった者だ。

 彼が仕掛けを(ほどこ)しているのだろう。

 結果、魔物は地上を侵攻し始めた。

 

「始めようか。この世界の(じゅう)(りん)を」

 

 

 

 

 再び、カナタ達の場所。

 

「なっ、なんだって……!?」

 

 カナタの配信画面に緊急速報が流れていた。

 たった今、魔物が地上に出現したというのだ。

 今までにない事態に、コメント欄も激しくなっている。

 

《え、これ現実なの?》

《フェイクとかじゃなくて?》

《いや現実だぞ!ガチで起こってるんだよ!》

《他の配信でとんでもないことなってるぞ!》

《マジでやばいって!》

《なんで魔物が地上に出てんの!?》

《嘘だろ、俺の実家の近くじゃん!》

《ちょっと止めなきゃまずくね!?》

 

 ダンジョンの入口付近は関連施設が並び、探索者たちがいるだろう。

 それでも、全てに対処できる保証はない。

 人々が恐怖するには十分すぎる事態だ。

 

 すると、死にかけの魔人は言葉を残す。

 

「始まったみてえだな!」

「お前、これはどういうことだ!」

「さあな。あとは地獄で見守らせてもらうぜ。ガルドル様の勇姿をな」

 

 そうして、魔人はサラサラと消え去った。

 

「カ、カナタちゃん……!」

「ああ、決まってる」

 

 対するカナタは、すっと立ち上がる。

 

現代(こっち)では、好き勝手にはさせない」

 

 現代の魔王の誇りにかけて。




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