現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「「「きゃああああああっ!!」」」
ここはB級『
B級ともなると、入口付近には装備屋や素材屋などの商業施設が立ち並び、一つの街のようになっている。
有名探索者が訪れ、それを見に来るファンも多くいるからだ。
“ダンジョン
現在は休日の昼下がり。
いつも通り
「「「グオオオオオオオオッ!」」」
少し前、魔物が地上に侵攻を始めたのだ。
初めての緊急事態に、人々はパニックに
さらに、出現したのは『紅蓮ダンジョン』の魔物たちだ。
「逃げろおおお!」
「あんたは探索者でしょ!?」
「バカ、あんなの相手にできるか!」
そのレベルと戦える者など、探索者でも上位のみ。
ダンジョン街にいた探索者たちも、一般人と同様に逃げ
そんな中でも、立ち上がる者はいる。
「ぬうんっ! ──【山カチ割り】」
「「「グオオオッ!?」」」
魔物の一部を食い止めていたのは、“
先日、新事務所『魔王軍』に所属した特級探索者だ。
上級以上の資格に与えられる、“緊急時の能力行使権限”を使用し、その名に恥じない働きをしていた。
しかし、魔物の数が多すぎる。
「「「ギャオオッ!!」」」
「ぐぬ……!」
視認できる限りでも、三百を超える魔物の軍勢だ。
また、そのどれもが平均B級。
いくらジジヤとは言え、抑えられる数ではない。
「年は取りたくないものじゃのう……!」
また、魔物が出現したのは全三カ所。
紅蓮ダンジョンの他二つの入口からも、侵攻が始まっている。
一か所すら抑え切れないのに、かなり絶望的な状況と言えた。
これには、コメント欄も騒がしさを増す一方だ。
今日はジジヤの初配信の日だったのだ。
《ジジヤあーーー!》
《頼む、なんとかしてくれえ!!》
《この人でも止められないのか!?》
《伝説の特級探索者なんだろ!?》
《数が多すぎるんだよ!》
《戦いになってねえよ……!》
《他の探索者は何してんだ!?》
《このままじゃジジヤも……》
元々の密かな人気に加え、最近は特に話題になっていたジジヤ。
彼の初配信が、こんな形になるとは誰も思わなかっただろう。
ジジヤも踏ん張るが、限界は近い。
「「シャアアッ!!」」
「ぐ、ぐおぉっ……!」
力を解放し、ムキムキとなった自慢のボディも悲鳴を上げている。
この数を一人で抑えることは不可能だったのだ。
──“災厄”でも起こらない限りは。
「【
「……!?」
「「「グアアアアッ……!」」」
突如、大量の魔物が激しく燃え上がる。
真っ赤で綺麗な炎だ。
さらに、飛び散った魔物の血は一点に集約された。
手を広げる少女の元へ。
「あはっ、大量だぁ! ──【血染めの夜】」
「「「ギャアアアッ……!」」」
すると、赤く大きな
魔物たちは串刺しになり、バタバタと倒れていった。
その際の血も回収され、周りは一切汚れない。
「ちょーっとやりすぎちゃったかしら」
「いいんじゃない? 急いでるし」
「お、お主たちは……」
聞こえてきた声に、ジジヤはゆっくりと振り返る。
駆けつけたのは、カナタの従魔二人。
ルーゼリアとエルヴィだ。
途端に、ジジヤの配信は湧き上がった。
《ルーゼリアお姉さん!?》
《エルヴィもいるぞ!?》
《うおおおおおきたあああああ!》
《間に合ったのか!?》
《途中でカナタ君と別れてたけど!》
《それにしても速すぎだろ!!》
《こいつらなら……!》
この二人を含め、カナタ達は別のダンジョンにいた。
だが、そこを脱出し、駆けつけるまで約十分。
同じ市内とはいえ、ありえない速さだった。
「ま、お姉さんの炎なら余裕よね」
「わたしのブーストも使ってたじゃん」
カナタが上級探索者資格を取得したことで、従魔にも“緊急時の地上での能力行使権限”は付与される。
彼女たちの能力ならば、この移動も可能だ。
その姿に、ジジヤは乾いた笑いを浮かべる。
「た、頼もしい限りじゃわい」
上級試験では、ジジヤは彼女たちに降参した。
その判断は、改めて間違っていなかったと思い直す。
従魔一人にさえ、自分など足元にも及ばない。
不思議な安心感と同時に、肩の荷が下りた。
「なんとか、この地点の被害者は出なかったかの」
これはジジヤの功労のおかげだろう。
だが、辺りを見渡したエルヴィは少し残念そうにした。
「んー、ルーゼ。こっちは
「ええ、お姉さんちょっとガッカリ」
残っている魔物はもはや眼中にない。
ルーゼリアは、別地点へと視線を向けた。
「じゃ、どちらかにいるわね」
★
紅蓮ダンジョン、南入口付近。
「くうううう……!」
リラは仲間と共に、魔物に立ち向かっていた。
実力を
だが、侵攻を遅らせることはできても、抑えることはできない。
「も、もう限界かも……!」
「「「グオオオッ!」」」
リラは、このダンジョン街でイベントを行っていた。
その途中で事態が起こり、地続きで配信をしている。
自身のためではなく、現場の状況を伝えるために。
《リラちゃんもう退こう!》
《十分よくやったよ!》
《それ以上はダメだ!》
《お願いだから!》
《取り返しがつかなくなるよ!》
上級探索者の仲間共々、すでに限界は近かった。
しかし、コメントが心配の声で埋まるも、リラは退かない。
「私だって『魔王軍』だもん……!」
その胸に思い描くは、意中の人だ。
「カナタさんなら、きっとこうするはずだから!」
『魔王軍』の一員。
その誇りが、リラを奮い立たせていた。
ただカナタと同事務所に入りたいだけでなく、肩を並べられるようにと。
それには、仲間も意気も上がる。
「リラちゃん!」
「最後まで付き合うわよ!」
「ええ、ありがとう……!」
リラは上級資格を持っていない。
地上ではサポートしか出来ないが、陽動に作戦立案と、大いに役に立っていた。
しかし、リラ達の力は及ばない。
「グオオッ!」
「はっ……!?」
足が武器のB級魔物だ。
とてもリラには
死を予感したリラは、目を
王子様の名を。
(カ、カナタさん……!)
その叶うはずのない願いは──届く。
「断絶」
「グアアッ!」
「……ッ!」
リラに迫った魔物が、宙で真っ二つにされた。
すると、リラの前に少年が降り立つ。
「ありがとうリラさん。侵攻を止めてくれて」
「カナタさん……!?」
「後は任せて」
この地点にはカナタが駆けつけた。
リラの配信はコメントであふれる。
《魔王様ああああああ!!》
《来てくれると思ったああ!》
《ありがとう;;》
《やっぱお前は王子様だよ!》
《魔王様はこっちに向かってたか!》
《カナタ君の配信は速すぎて分からなかったからw》
カナタも先程のダンジョンから配信を続けている。
しかし従魔を含め、カナタ達の本気にはカメラが追いつかなかった。
すると、カナタの隣にもう一人が並ぶ。
共にきたミカママだ。
「カナタちゃん、
「……いや、いない」
【超感覚】で探知するも、敵の大将は見当たらない。
カナタは確信を得た。
(やっぱり【超感覚】との戦い方を知ってるな)
魔人によれば、敵の大将の名は『ガルドル』。
異世界の魔王軍で、“四天王”の一人だった男だ。
当然カナタも知っている。
異世界で倒した相手なのだから。
(なんであいつが生きてるんだ……)
四天王と魔王は、カナタが直接手を下したはず。
となれば、様々な疑問は浮かんでくる。
だが、今は先にやることがある。
「ミカママ、片付けよう」
「そうね」
ミカママは優しくうなずくと、宙に飛び立った。
そのまま前方へ柔らかい波動を放つ。
「【バブみの波動】」
「「「……ッ!」」」
軍勢の大半が波動に包まれる。
そうなれば、起こることは一つ。
「「「ギャブゥ」」」
幼児退行だ。
素直になった魔物たちは、ミカママの言う事を聞く。
「みんな~、後ろに悪い子たちがいるわよ~」
「「「ギャブゥッ!」」」
「「「グオオッ!?」」」
甘やかした前方の魔物を、波動範囲外の後方へ向かわせたのだ。
二分された魔物の軍勢は、お互いに争い合う。
「うふふっ、いい子いい子」
《ママぁ!》
《いやママやってることエグいてww》
《やっぱりミカママも大概だわ》
《強すぎんだろ……》
《そうやって壊滅させるのか……》
《ママぁ?》
《今だけは笑顔が怖く見えるぜ》
しかし、全てが上手くいくわけではない。
「ギャウウ……」
「あらま」
【バブみの波動】に
そういう種族か、あちら側が何らかの対策をしているのか。
だが、残った魔物は倒せばいい。
「【空間断絶】」
「「「ギャウウウッ!」」」
カナタが【超感覚】で複数のターゲットを視認。
連続の【空間断絶】を放ち、大半を
《うわああああああ!》
《さすが魔王様だ!》
《瞬殺ぅ!》
《かっけえええええ!!》
《リラちゃん達もよく守ったぞ!》
《魔王様の安心感やべえ!》
《魔王様バンザーイ!》
すでに事態を収めた空気感だ。
だが、カナタは違う地点へ目を向けた。
「残るは、あっちか」
★
紅蓮ダンジョン、西入口付近。
「これ以上は難しいかもしれませんね」
「「「グオオッ!!」」」
魔物の侵攻を止めているのは、ロメン。
先日『魔王軍』に所属したイケメン装備職人だ。
アイテム製作もしている彼は、試作品を確認しようと隣のダンジョンに来ていた。
その最中で事態が起こったのだ。
「これで最後のアイテムか」
手に持つのは、強力な爆弾。
これ以外にも、ロメンは頭のネジが外れたとしか思えないアイテムで、なんとか場を対処していた。
スライムでヌメヌメにする爆弾。
魔物が服を着てないことに
しかし、それらも尽きてしまった。
「私もここまでのようだな」
「「「グオオッ!」」」
様々な爆弾を受け、魔物の軍勢は怒り狂っている。
ならば、少しでも魔物を減らそうとロメンは決意した。
自爆特攻だ。
ロメンに後悔があるとすれば、一つだけ。
(
思い浮かべるのは、水色の少女。
その信仰心は──現実となった。
「【
「「「ギャアアアッ!」
「……!?」
ロメンの前方の魔物たちが、一斉に凍り付いたのだ。
カナタの配信を、舐めまわすように繰り返し見ているロメンはすぐに気づいた。
「まさか──我が神!?」
「……うわ」
現れたのは、ココネだ。
ロメンの態度に嫌な顔を浮かべるも、ロメンは構わない。
「ココネたそおおおおお!」
「邪魔です」
「ごはっ! ……フッ、これもご褒美か」
ココネは近づいてきたロメンを
その先から来たのは──四天王ガルドル。
「ふふっ。主様、ココネが
ガルドルは宙を移動しながら、ゆっくりと姿を見せた。
そのままフッと笑みを浮かべる。
「アタリか。それはこちらのセリフだが?」
「そうでございますか」
ココネはくるくるっと氷の槍を回し、ガルドルと