現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「主様、ココネがアタリを引いたみたいです」
ココネが視線を向けた先には──ガルドル。
異世界魔王軍の四天王の一人であり、この騒動の大将だ。
ゆっくり姿を見せたガルドルは、ココネと
「それはこちらのセリフだが?」
「そうでございますか」
異世界四天王 VS カナタの従魔。
ここは激しい戦場になると予想された。
ならばと、ココネは近くのロメンに声をかける。
「邪魔だから消えてください」
「……!」
カナタ以外には、基本的に言葉がきついココネ。
だが、ココネを信仰するロメンは、都合よく
これは“照れているだけ”だと。
「ココネたそ! か、感謝いたしますっ!」
「……本当に邪魔だったんですけど」
ロメンは深く頭を下げながら、戦場から遠ざかって行く。
ココネは言葉の通りだったが、まあいいかと再びガルドルに向き直った。
すると、ガルドルはフッと笑う。
「用は済んだか?」
「元から知らない人ですが」
「では──こうしてもいいんだな?」
「……!」
ガルドルは、走り去るロメンに紫のオーラを放つ。
まだ攻撃範囲内なのだろう。
ココネはとっさに間に入った。
「くっ、【
「ココネたそ……!」
「早く行って!」
「は、はい!」
ココネが攻撃を防いだことで、なんとかロメンは逃げ切った。
ガルドルは再び笑いを上げる。
「はっはっは! やはり知り合いなのではないか!」
「……本当に知りませんけど。ただ、一般人が巻き込まれたら主様が悲しむと思っただけです」
どこまでも存在を知られていないロメンであった。
また、今の攻撃でココネは確信を得る。
(やはり、主様の【
失った勇者カナタのスキル【共奏】。
能力やスキルを仲間と
どのレベルの能力まで共有できるかは、【共奏】の熟練度による。
今の攻撃は、とあるA級魔物の遠距離攻撃だ。
便利な場面のため、共有したのだろう。
「魔物を地上に侵攻できたのも、【共奏】の効果ですね」
「ほう、ここまでの情報だけで理解するとは」
四天王ガルドルは人型のため、地上への耐性を持っていた。
その耐性を魔物たちに共有し、地上へ侵攻させたのだ。
それほどに【共奏】は強力なスキルである。
すると、今度はガルドルの目が紫に光った。
「ならばこれはどうだ? ──【
「……!」
放ったのは“催眠系スキル”だ。
目が合った者を制御することができる。
魔物から共有したのだろう。
ただし、ココネに効くはずもない。
「今さらそんなものが通じるとでも?」
「ふははは! さすがはあの勇者カナタの従魔だ」
「ココネは主様さえいれば、何もいりません」
催眠系スキルは、心の
精神力が弱いと、簡単に思考を制御されてしまう。
だが、ココネは言葉通り“主様が全て”。
その想いは、催眠などはねのけた。
対して、ガルドルは“あるカード”を切る。
「じゃあ、その主様は本当にお前を好んでいるのか?」
「……あ、当たり前です!」
「ほう、大した自信だな」
古傷をえぐるというカードを。
「元奴隷のお前をか?」
「……っ!」
★
紅蓮ダンジョン、南入口付近。
「片付いたな」
「ええ、カナタちゃんっ」
カナタとミカママは、一息つく。
たった今、侵攻した魔物を全て
あまりに速い解決に、人的被害は防がれた。
すると、東方面からも声が聞こえてくる。
「カナタくーん!」
「カナタ様ぁっ!」
「お」
合流したのは、ルーゼリアとエルヴィだ。
ルーゼリアは赤い羽根を広げ、エルヴィは魔物をスケボーにして向かってくる。
東入口付近も解決したのだろう。
続いているカナタの配信も
《うおおおお魔王軍最強!》
《まじで全滅させやがった》
《さすがに早すぎだろ……w》
《絶望さんは消え去った》
《お姉さん達も余裕かよ!》
《エルヴィの移動方法えぐいww》
《魔王軍本当にありがとう;;》
カナタは合流したルーゼリア達に声をかける。
「さすがだな、二人とも」
「ふふん。お姉さんだもんっ」
「……でも、
「そうだね」
魔物が侵攻したのは、紅蓮ダンジョンの東・南・西の入口だ。
その内、四天王ガルドルはどこかにいると予想していた。
二か所は解決したため、残るは西入口付近となる。
「奴はココネの場所にいる。急ぐぞ」
「ええ!」「あは!」「そうね」
三方向に別れる直前、カナタは組分けをした。
だが、従魔四人とも「カナタと組みたい」と
これが、“最も敵にしたくない相手”を生むとは知らず──。
「見えたぞ!」
少し進んだ先に、紅蓮ダンジョンの東入口が見える。
だが、魔物の侵攻は止まっていた。
魔物の軍勢が
そんな芸当ができる者は、一人しかいない。
「さすがだな、ココネ!」
ココネが勝ったのだと、カナタは思った。
だが、その瞬間──カナタの【超感覚】が何かを察知する。
「……! 全員防御!」
「「「……ッ!?」」」
東入口方面から、とてつもない攻撃を感知。
カナタと共に、従魔三人も防御壁を展開した。
しかし、カナタ達は衝撃を吸収し切れない。
「ぐうっ……!?」
「きゃあっ!」
ルーゼリアの炎、エルヴィの血の結界、ミカママの波動。
三つが重なった結界が、押し負ける勢いだ。
ふぶいてきたのは、
(こ、この技……!)
まさかと思ったカナタは、攻撃が止むとゆっくり顔を上げる。
「コ、ココネ……?」
「……」
宙から姿を現したのは、ココネ。
彼女が刃を向けてきたのだった。
《ココネちゃん!?》
《今のはココネたんがやったのか!?》
《なんでだよ!》
《どうしちまったんだ!》
《そこにいるのは主様だぞ!?》
コメント欄はもちろん、カナタも動揺していた。
「何してるんだ、ココネ!」
「……」
「──!」
しかし、ココネの
今のココネに心はない。
すると、ココネの後方からもう一人が姿を現した。
「ごきげんよう」
「お前は……!」
浮いた椅子に乗ったまま登場したのは、四天王ガルドルだ。
一度殺した相手のため、存在は半信半疑だった。
だが、実際に目にしてカナタは確信に至る。
(間違いない。あのガルドルだ……)
カナタの歯を食いしばった表情に、ガルドルは口角を上げた。
「ふははは! まさか貴様にそんな顔をさせられるとはなあ!」
「……っ」
「よっぽどこの従魔がお気に入りらしいな」
「おい!」
ガルドルはココネのあごをそっと
だが、ココネはぴくりとも動かない。
ほぼ反射的にカナタは声を荒げた。
「それ以上、ココネに
その怒りのままに【空間断絶】を放つ。
しかし、ガルドルはパチンと指を鳴らした。
「おっと。ココネ」
「はい」
「……!?」
すると、ココネが間に入った。
カナタの攻撃から、身を
《ココネちゃん!!》
《嘘だ、嘘だと言ってくれ……》
《悪夢じゃねえか》
《うわああああああ!!》
《俺たちのココネたんが……》
《お願いだからドッキリだと言ってくれえ!》
だが、それには周りも黙っていない。
「あらココネ。お姉さんガッカリよ」
「……」
「多少はあなたのこと、認めてたのにね!」
ルーゼリアが炎を放つ。
エルヴィとミカママも続いた。
「カナタ様に手を出すなら、わたしが黙ってないからぁ!」
「ココちゃん、おイタが過ぎるわよ」
従魔三人が
そこらの軍勢など吹き飛ぶレベルである。
しかし、ココネには届かない。
「【
「「「……!」」」
ココネは氷の
三人を合わせた火力に引けを取らない、圧倒的な力だ。
この光景に、カナタは下唇を
(ココネ……っ)
普段はあまり感情を見せず、おとなしめのココネ。
だが、カナタは分かっていた。
潜在能力は
性格ゆえに、常に100%を出せるわけじゃない。
しかし、全力を解放できた
もしかしたら、勇者時代のカナタを唯一倒せる可能性を持つほど、高いポテンシャルを秘めている。
ココネは“最も敵にしたくない相手”だ。
《ココネちゃん、強すぎないか……?》
《これが本当の実力なのか……》
《なあ嘘だろ……》
《魔物侵攻が止まったと思ったのに……》
《こんなのってねえよ!》
《魔王様も本気で斬れねえよ……!》
今まで散々、地獄絵図を見せてきたココネ。
カナタの下についていたから冗談で済んだものの、こうなれば話が違う。
敵に回った時の恐ろしさは、計り知れない。
その上、ガルドル自身もいる。
「ふははは! ぼーっとしてていいのか!」
ガルドルはコオオオと力を溜めた。
手を向ける方向は、ダンジョン街だ。
「このまま絶望を味わえ──」
「断絶」
「……!」
しかし、その攻撃は真っ二つに斬られた。
防いだのはカナタだ。
カナタはそのまま静かに周りへ告げる。
「ルーゼリア、エルヴィ、ミカ。ガルドルを頼めるか」
「「「……!」」」
それには従魔三人も素直にうなずいた。
というより、従魔たちも理解したのだ。
今のカナタは何を言っても止まらないと。
それほどに、カナタは怒りに満ちていた。
「ココネは俺が止める」
そうして、カナタはココネに向き直る。
「クオンカナタ、排除します」
「……そうか。不安を突かれたんだな」
しかし、怒りはあくまでガルドルへ向けてのみ。
氷の槍を向けてくるココネには、ただ真剣に向き合った。
「ごめん、俺が悪かった」
かつての約束を胸に。
「もう二度と君を一人にはしない」