現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「ごめん、俺が悪かった」
意識を
そのまま剣を抜いた。
「もう二度と君を一人にはしない」
ココネと一対一でやる気だ。
だが、当然ガルドルも動く。
「ふはは! くだらん友情ごっこは──ぐあっ!?」
「邪魔はさせないわよ」
それにはカナタの周りが対処した。
ルーゼリア、エルヴィ、ミカの従魔三人だ。
三人はカナタの指示を忠実に守り、ガルドルとココネを分断させる。
「お姉さん、空気読めない人は嫌いなのよね!」
「カナタ様の邪魔はさせないっ!」
「ゆっくりといたぶってあげるわ」
「チィッ!」
カナタは必ずココネを取り返すと信じて。
そうして、カナタとココネは
今からは二人だけの戦いだ。
「待ってろ。ココネ」
「排除します」
「……! ぐうぅっ!」
その瞬間、ココネが
今までにない火力だ。
ココネのポテンシャルは、従魔で最も高い。
普段は性格から、全力を解放できないだけだ。
もし100%のココネが相手となると、誰よりも強敵と言える。
それでも、カナタは前に踏み出した。
「うあああ! ──断絶!」
「!」
吹雪の隙間を見つけ、【空間断絶】で道を切り
ほんの一瞬生まれた隙に、カナタはココネに向かって跳んだ。
しかし、これは誘い込まれた罠だ。
「終わりです」
「……!」
大きな氷の槍が、カナタの装備を貫く。
これには従魔三人も声を上げた。
「カナタ君!」
「カナタ様!」
「カナタちゃん!」
体ごと貫通したように見えたのだろう。
だが、カナタは口を開いた。
「心の無い単調な攻撃にやられるかよ」
「……!」
ほんの数ミリ、体を
【超感覚】はここまで全てを読み切っていたのだ。
すると、カナタはぎゅっとココネを抱きしめる。
「返ってきてくれ、ココネ」
「……っ!」
「俺には君が必要だ」
その言葉はココネの心の奥底に届く──。
★
「こ、ここは……?」
ココネがふと目を覚ますと、暗い空間。
周囲には何も見当たらない。
催眠によって、ココネの意識は心の奥底に沈んでしまっていた。
そんな時、上から光が差し込むように声が聞こえた。
『返ってきてくれ、ココネ。俺には君が必要だ』
「あ、主様……!」
すると、先程のガルドルとの攻防を思い出す。
『元奴隷のお前をか?』
ガルドルの言葉に
しかし、これはその時にできた隙ではない。
ココネが元より、奥底に隠し持っていた不安が浮き彫りになっただけだった。
「主様、ココネは……」
ココネの頭を巡ったのは、カナタとの異世界での日々だ。
────
異世界。
「おら、さっさと歩け!」
「きゃっ!」
ココネは
ここは亜人の奴隷市場。
ココネは売られる存在として、この場所で生まれた。
かつての大戦で竜は人間に敗れ、ココネたち竜人族は、先祖代々より奴隷取引の対象とされていたのだ。
「こいつ変だな。妙に翼が長え」
「うぐっ」
竜人族は、竜の特徴を残しつつも、力が弱まるよう制御される。
人間に反抗できなくするために。
竜人族は力も奪われ、ただ
ただ一つの救いは、両親と三人で市場にいたことだろう。
「ごめんね、今日も守れなくて」
「ううん……」
ただし、この時のココネに名前は無い。
自ら名乗ることも許されず、ただ顔で認識されているのみ。
そんな中でココネ達は、とある大富豪に買われることになる。
「これが竜人族か。なんとも素晴らしい!」
太った男の権力者だ。
とても逆らえる存在ではない。
男は早速、割り振りを始めた。
「男は
父は力仕事、母は
だが、ココネに非道な行いはされなかった。
今よりさらに幼い見た目であり、権力者の対象にならなかったのだ。
しかし、月日が経つと、いよいよ母の後続となる日が訪れる。
「さーて、じっくりお楽しみといくか」
「な、なにをするんですか……」
ココネは何をされるか分からなかった。
母が日々受ける仕打ちを知らされてなかったのだ。
この時に特大の絶望を味わわせるために。
そんな時、ココネの母は初めて抵抗した。
「お願いします! 娘にはそういうことはしない約束では!」
「黙れ奴隷が」
「……っ!!」
すると、母は目の前で殺された。
権力者は続けて父にも発砲する。
「あとは娘だけでよい。力も使えないしなあ?」
「がはぁっ!」
「……!!」
目の前で倒れた両親に、ココネは膝から崩れ落ちた。
「おかあさん? おとうさん……?」
そんなココネに、権力者は舌打ちする。
「おい娘。早く汚い死体をどけろ。興奮が冷めん内にな」
「──ッ!」
「ん?」
その瞬間、ココネは自我を失った。
「「「うわあああああああっ!!」」」
辺りは一瞬で凍り付き、屋敷の者たちを次々に刺す。
破滅的な氷は、領土全てを巻き込む勢いで広がった。
大戦時代、猛威を振るった氷竜のように。
先祖返りだ。
かつての竜の力が
自分でも制御ができず、自らの体も滅ぼす勢いで力を行使する。
そして、次に意識を取り戻した時には──
「もう大丈夫だよ」
「……うっ」
カナタに保護されていた。
勇者としてココネの暴走を止めたのだ。
だが、ココネには深く傷が残った。
両親のことも、自分自身の力のことも。
「……私は、なんなのですか」
生まれた時から
ココネは大戦時代のことなど知るはずもないのだから。
すると、カナタはココネを
「大丈夫。君は一人の人だ」
「え?」
「両親のために怒った。優しい心の持ち主じゃないか」
「……っ」
袖をぎゅっと握ってきたココネに、カナタは口にした。
「優しい“心”の持ち主。君の名前はココネだ」
「ココネ……」
「ひとまず君は俺が保護する。もう二度と君を一人にはしない」
「……はいっ」
カナタがくれた大切な名前だ。
だからココネは、自分をココネと呼ぶ。
一度でも多く、その名前を使いたくて。
そして、共に旅を始めてしばらく。
「ココネを従魔にしてください」
「なっ、でも……」
従魔と言われれば、どうしても奴隷を連想してしまう。
そのためカナタは、一度も言い出したことはなかった。
しかし、ココネが従魔になりたかったのだ。
「これからはしたいことをしよう。そう言ってくださったのは、あなたです」
「そうだけど……」
「だからお願いします。これはココネがしたいことです」
「……わ、わかった」
もう他の誰のものにもなりたくない。
そんな想いから、ココネは自ら従魔を志願した。
カナタは何度も聞き返し、やがて
「これからは主様ですね!」
「ははっ。ったく」
それからも二人は旅を続ける。
朱雀女に会ったり、吸血鬼に出会ったり、魔族を倒したり。
幸せな日々を送っていた。
だが、ココネはどこかでずっと引け目を感じていた。
(ココネなんかが主様にふさわしいのでしょうか)
共に旅をするほど、カナタは立派な勇者だと感じる。
彼が一つ成し遂げるごとに、ココネは自分はふさわしいのかと疑ってしまった。
幼少期に根付いた奴隷精神は、簡単に消えるものではない。
「どうした? ココネ」
「い、いえ! なんでもございません!」
従魔契約を願ったのは、そんな不安からでもあった。
だからココネは日々くっついた。
「主様っ!」
「おいおい、くっつきすぎだろ」
どれだけ引き
心の奥底では、離れ離れになることへの不安を持っていた。
そんな想いが、ココネを動かしていたのかもしれない。
しかし、終わりは訪れる。
「戦いの日々は終わった。これからはみんなの道を生きてほしい」
魔王討伐は成された。
カナタは従魔に最初で最後のお願いをした。
もう自分に付いてくる必要はないと。
後になって思えば、カナタは処刑を予感していたのかもしれない。
また、従魔たちはもう独り立ちできるだろうと。
これはカナタの優しさだ。
だが、従魔たちは想像以上に依存していた
「ココネは一生付いていきます」
ココネはカナタが生きていると信じた。
方法を探して探して、元の世界に飛んだのではと仮定した。
だから、すぐに行動を起こした。
しかし、自信の無さはここまで表れていた。
自分一人ではカナタに嫌な顔をされるかもと、偶然居合わせたルーゼリアにも世界を渡る方法を伝えたのだ。
だけど、一番先は自分がいい。
そうして、ココネは真っ先に世界を渡った。
────
そんな日々を思い出し、ココネは思い直す。
「主様を信じ切れていなかったのは、ココネの方でした……」
カナタはいつだって自分を見てくれた。
言葉では嫌がりつつも、自分を離さないでいてくれた。
幼き頃の奴隷のトラウマゆえ、仕方ない思考とも言える。
だが、カナタは決してひどいことはしない。
現代まで付いてきた自分すら、仲間として受け入れてくれる。
「主様、ココネは……!」
今一度、あの頃を見つめ直したココネ。
今ならカナタを信じることができる。
その想いは、心の
★
再び、現代。
「主様……!」
「ココネ……!」
ココネの
催眠が解け、心が戻ってきたのだ。
カナタはココネを抱きしめたまま謝る。
「ごめん、俺が離してしまったばかりに!」
「いいえ。催眠にかかったのはココネの弱さです」
「そんなことはない!」
お互いに思いを打ち明け合う。
どちらも悪いとこがあったと。
再び相まみえたココネに、カナタは再び言葉にした。
「こんな俺でもよければ、そばにいてくれ」
「……!」
「今度こそ離しはしない」
「~~~っ! はいっ!」
ココネが返ってきた瞬間だった。
その光景には、ルーゼリア達もふっと笑う。
「なーんだ、帰ってきたのね」
「ライバルが一人減ると思ったのになあ」
「ココちゃん、おかえりなさい」
こうは言いつつも、三人とも喜びを隠せていない。
みんなココネを仲間だと思っているのだ。
すると、ココネはキリッと目を切り替える。
「主様、ココネは前に進みました」
「……!」
その瞬間、周囲に猛吹雪が広がった。
この火力、
全てが先ほどのココネと同等、もしくはそれ以上だ。
「おいおい、まじかよ……」
ココネは乗り越えた。
今ならば100%の力を解放できる。
従魔でも最も高いという“最強のポテンシャル”を。
《ココネちゃんが返ってきたああ!》
《うわああああココネたーーーーん!!》
《よくやった魔王様!》
《ありがとう、本当にありがとう;;》
《しかも普段より強くなってねえか!?》
《覚醒ココネちゃんきたあああ!!》
《うおおおおおやってまええ!!》
そして、ココネはガルドルに目を向けた。
「お覚悟を」
「だってよ、ガルドルさん」
「……っ!」
ここからは反撃の時間だ──。