現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第29話 絆の結晶

 「俺が教えてやるよ。【(きょう)(そう)】の使い方ってものを」

 

 スキル【共奏】を取り戻したカナタ。

 本来の持ち主としての力を見せるべく、再びガルドルへ剣を向ける。

 対して、ガルドルはニヤリと笑う。

 

「もうそんなのは必要ないわ!」

「!」

 

 ガルドルは宙を()ると、カナタへと迫った。

 カナタもなんとか剣を交差させるが、肌で感じる。

 先程までとは段違いの速さだと。

 

 ガルドルは【共奏】の残り火により、魔物たちから魔力を強奪(ごうだつ)した。

 もはや別人と言えるほど、身体が強化されている。

 その力を存分に発揮し始めた。

 

「ふははは! 初めからこうしておけばよかった!」

「……」

 

 ガルドルの猛攻だ。

 

 手足に尻尾、空中攻撃など。

 一つ一つは荒いが、圧倒的な身体スペックでゴリ押してくる。

 カナタは地上でひたすら防御するしかない。

 

《魔王様あああ!》

《大丈夫か!?》

《あいつめちゃくちゃ速えぞ!》

《攻撃も重たそうだ……》

《これちょっとやばすぎるな》

《あんな化け物見たことねえよ》

《がんばれカナタ君ー!》

 

 魔人とは、知能を持った魔物という存在。

 人間に勝る“身体能力”を、これでもかと押し付けてくる。

 剣一本では防御も間に合わない。

 

「どうした、血が出ているぞ!? ──なあっ!」

「……っ!」

 

 ガルドルが尻尾の振り回しを浴びせ、両者の位置が離れる。

 カナタの体には、すでに複数の傷ができていた。

 その姿に、ガルドルはとことん調子に乗る。

 

「なにが教えてやるだ! 私の方が使いこなしているではないか!」

 

 魔力を強奪したのは【共奏】の効果だ。

 こう言いたくなるのも仕方がない。

 しかし、カナタはようやく口を開いた。

 

「そろそろか」

「あん? ……!」

 

 カナタが剣を振り下ろすと、流れていた血が一点に収束していく。

 血はやがて赤いトゲトゲとなり、カナタを(まと)うよう周回する。

 鋭利なそれらは、一つ一つが剣のように殺傷力を持つ。

 

 これは血を力に変える能力。

 

「借りたよ。エルヴィ」

「あはっ、カナタ様!」

 

 【共奏】の効果でエルヴィの力を共有したのだ。

 だが、それだけでは終わらない。

 

「【母なる恵み】」

「カナタちゃん!」

 

 ミカが持つ治癒(ちゆ)能力だ。

 血を力に変えた後は、傷を回復する。

 ミカほどの力はないが、腕の一本や二本なら生えてくるレベルの治癒だ。

 

「さあ、第二ラウンドといこうか」

「貴様……!」

 

 カナタが浮かべた笑みに、ガルドルもようやく理解した。

 

 カナタはあえてダメージを食らっていたのだ。

 致命傷はもらわず、ただ血だけを流す方向で。

 結果、エルヴィの恩恵は得た上で、傷は全快した。

 

 あの猛攻に対しても、これほどコントロールしてしまう。

 これも【超感覚】とカナタの戦闘センスゆえだろう。

 

《まじかよ魔王様!》

《ここまで計算済みなのかよ!?》

《信じるべきは魔王》

《ヒヤヒヤして損したあw》

《自ら血を流して強化するメンヘラムーブ》

《ちゃっかり全回復してら》

《死角なしじゃねえか……》

《やっぱり彼が魔王でした》

 

「次はこちらからいくぞ」

「……ッ!」

 

 これで準備は整った。

 そう言わんばかりに、カナタは飛び立つ(・・・・)

 剣を下方に振るうと、ブオンッと炎で舞い上がったのだ。

 

 まるで朱雀(すざく)が羽ばたいたかのように。

 

「あら。お姉さんみたいだねっ」

「だろ?」

 

 ルーゼリアの能力だ。

 

 この機動力も攻勢に転じるまで隠していた。

 全てはカナタの手の平の上だ。

 カナタは勢いのまま、宙のガルドルと剣を重ねる。

 

「空中がお前だけのものだと思ったか」

「ぐぬぉ!」

 

 炎の推進力により、今のカナタは空中すらも自在だ。

 また、もちろん炎は移動に使えるだけではない。

 

「生身で受けると火傷(やけど)するぞ」

「……!」

 

 カナタは剣に炎を(まと)わせる。

 ルーゼリアの力は扱いやすく、応用も効く。

 攻撃にはぴったりの能力だ。

 

「完全な思い付きだけど──【()王《おう》(えん)()】!」

「ぐがああぁっ!」

 

 カナタは炎を纏った剣で舞った。

 ルーゼリアのように誘惑的ではないが、ただ敵を斬り刻むように。

 抜群の破壊力だ。

 

 ガルドルも一度距離を取らざるを得ない。

 

「ハァハァ、クソがぁ!」

 

 すると、ガルドルは両腕を前に突き出す。

 離れればこちらのものだと思ったのだろう。

 そのまま遠距離攻撃を放つが──カナタには届かない。

 

(こお)れ」

「バカな!?」

 

 空中でガルドルの魔力を凍らせたのだ。

 ココネのように完全な静止とはいかないものの、速度がガクッと落ちる。

 そうなれば()けるのも訳ない。

 

「主様!」

「さっき見たやつだ。助かったよ」

 

 さらには、その()(きゅう)効果まで。

 

「ボーっとしていいのか?」

「なっ、しまっ……!」

 

 凍らせた技を(つた)い、ガルドル自身にも氷が及んだ。

 鈍足になったガルドルへ、カナタは再び炎の推進力で迫る。

 もう逃げ場は無い。

 

「これが【共奏】だ」

 

 カナタが共有しているのは、知らぬ魔物ではない。

 かけがえのない仲間──従魔だ。

 

 日頃より、よく眺め、よく付きまとわれ。

 カナタは従魔のことを誰よりも理解している。

 その力も、力の使い方も。

 

 すなわち──。

 

(ねん)()が違う」

「ぐあああああああっ……!」

 

 カナタは、ガルドルへ炎の爆風を浴びせた。

 あまりの衝撃に、辺りには煙が立ち込める。

 配信カメラはザザーッと砂嵐状態だ。

 

《爆発した!?》

《魔王様が攻撃したよな!?》

《なんも見えねえ!》

《カナタ君どこ;;》

《どんな衝撃なんだよ!》

《カメラさんお願いしますよ!?》

《なんか分からんけど勝ってくれえ!》

 

 だが、これもカナタの計算の内だ。

 煙の中でカナタは剣を突き立て、上空からガルドルを()としていく。

 二人だけの空間で、カナタは問いかけた。

 

「お前たちの目的はなんだ」

「だ、誰がそんなことを話すか!」

「そうか。なら──【バブみの波動】」

「!?」

 

 反抗する態度にはお仕置きだ。

 ミカから【バブみの波動】を共有し、カナタは再度問う。

 

「なぜ現代(こちら)に渡ってきた」

「魔王の復活のためだよ!」

「なるほど」

「なっ、私は何を話して……!?」

 

 しかし、幼児退行したのは一瞬。

 能力を共有したとはいえ、カナタの母性が足りなかったようだ。

 それでも十分な情報を得た。

 

「現代の何かしらを使って魔王を復活させる。その先遣隊(せんけんたい)がお前なんだな?」

「ぐっ……!」

 

 図星だ。

 もうバブみは効かないだろうが、【超感覚】で真偽は見抜ける。

 一番重要な情報を得られれば、あとは倒すのみ。

 

 しかし、ガルドルはどうしても納得いかなかった。

 

「なぜだ、貴様は人に処刑されたのだろう!? なぜまた、人のために立ち上がれる!」

「……たしかにそうだな」

 

 異世界でもカナタは身を粉にして尽くした。

 だが、正当な評価は受けられなかった。

 それが処刑という結果だ。

 

「けど、俺は魔王らしいからな」

「は?」

 

 しかし、現代では正当な評価をしてくれる。

 多くの人が認めてくれて、多くの人が助けてくれて。

 たとえ魔王だと呼ばれていたとしても、称賛されていることには変わりない。

 

 カナタが立ち上がるには十分な理由だ。

 

「だから、お前のとこの魔王にも言っとけ」

「……!」

 

 カナタが煙を突き抜け、二人の姿が(あら)わになる。

 それを捉えるように、配信カメラも再び映像を映した。

 

《つながった!》

《魔王様どこだ!?》

《煙の下の方だ!》

《敵を墜としてる!》

《これ勝負が決まるぞ!》

《うおおおおおおおお!》

《頼む!》

《魔王様いけえええええええ!!》

 

 300万人もの視聴者が見守る中、カナタは言い放つ。

 

現代(こっち)の魔王は俺一人で十分だ」

 

 同時に発動する。

 その最後の一撃を。

 

「【共奏】」

 

 宙でガルドルを()り落とし、カナタは剣を掲げた。

 

 すると、剣には光が集まってくる。

 氷、炎、血、波動。

 それぞれの光が混ざり合い、一つの力として調和していく。

 

 やがてできたのは、天にも昇る巨大な剣閃(けんせん)だ。

 ガルドルも呆気(あっけ)に取られるしかない。

 

「こ、これは……!?」

 

 これこそが【共奏】の真骨頂だ。

 

 ただ仲間と能力を共有するわけではない。

 仲間を理解し、特性を生かし、共に(かな)でる。

 全てをコントロールし、一つの力として使って初めて【共奏】なのだ。

 

 カナタはその“絆の結晶”を振り下ろした。

 

「【空間断絶・四重奏】」

「ぐあああああああああああああっ!」

 

 ガルドルの体は真っ二つだ。

 光の剣身には、従魔たちの能力効果も含まれており、再生など不可能。

 今度こそ決着がついた瞬間だった。

 

 ガルドルは、滅びゆく体で最後につぶやいた。

 

「なぜ、ここまでの差が……」

 

 同じ【共奏】のはずだった。

 むしろ共有した力は、自分の方が多いはずだった。

 しかし、カナタには敗れた。

 

 それには従魔たちが代わりに答える。

 ルーゼリア、エルヴィ、ミカだ。

 

「その力はカナタ君が自らの努力で得た力よ」

上辺(うわべ)だけで真価を発揮できるはずもない」

「それに頼った時点であなたの負けね」

 

 そして、最後はココネが答えた。

 

「これが主様です」

「フッ、そうか……」

 

 ガルドルの体が消えていく。

 

 それと共に、カメラは全体の光景を映した。

 カナタの一撃により、(くも)った空が割れ、光が差し込んだ街を。

 

「俺たちの勝ちだ」

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