現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第二章 魔王降臨
第31話 平穏な日々、そして


 「ギャオオオオオオッ!!」

 

 大きな部屋の中に、咆哮(ほうこう)(ひび)(わた)る。

 対峙(たいじ)したのは、ダンジョンボス『メガトンコング』。

 巨大なゴリラ型の魔物だ。

 

 とてつもない迫力に、思わず気圧(けお)されそうに──ならなかった(・・・・・・)

 

 「【バブみの波動】」

 

 後方のミカママが、黄緑の波動を放出した。

 目に優しい色の波動は、メガトンコングの取り巻き『ミニコング』を包み込む。

 すると、ミカママはふっと笑う。

 

「みんないい子ね」」

「「「ガウウッ!」」」(ママー!)

 

 幼児退行したミニコングたちは、もうミカママの意のままだ。

 ミカママが指示すると、一斉にメガトンコングに(おそ)いかかる。

 

「敵はあっちよー」

「「「ガウウッ!」」」(うおー!)

「ギャオオ!?」(ちょっと!?)

 

 この攻撃は予想できなかっただろう。

 途端に困惑するメガトンコングだが、あの二人(・・・・)から目を離してはいけない。

 

 ダンッと飛び上がったのは、ルーゼリアとエルヴィだ。

 

「お姉さんを忘れないでね──【朱雀(すざく)(えん)()】」

「わたしから目を逸らすとか正気? ──【血染めの夜】」

「ギャアアアアッ!」

 

 “炎”と“赤い(とげ)”に襲われ、メガトンコングは声を上げた。

 そうして足元が(おろそ)かになれば、あの子の餌食(えじき)だ。

 槍を片手に飛び出したのは、ココネ。

 

「──【氷の結晶(クリスタル)】」

「ギャッ……!」

 

 メガトンコングは一瞬で氷漬けとなった。

 すると、ココネはこちらに振り返る。

 

「主様、今です!」

「おう!」

 

 ここまでお膳立てされて、決めないわけにはいかない。

 俺は高く跳び上がり、剣を上方に構える。

 繰り出すのは、取り戻した三つのスキルを元にした攻撃だ。

 

「はあああ! ──【空間断絶・四重奏】」

「ギャアアアアアアアッ!!」

 

 【空間断絶】と【(きょう)(そう)】を合わせた斬撃は、見事にメガトンコングを両断した。

 【超感覚】で弱点を正確に見抜いたのも活きている。

 ちょっとやりすぎたかもしれないけど。

 

「とにかく、これで討伐完了!」

 

 俺は着地し、浮遊するカメラに向き直った。

 一部始終を見ていた視聴者からは、あふれるようにコメントが流れる。

 

《うおおおおおお!》

《さすが魔王様!》

《トイレ行ってたらボス戦終わってた……w》

《楽勝かよ》

《Aランクダンジョンでもこれかあw》

《うん知ってた》

 

 よかった、今回の配信も盛り上がったくれたみたいだ。

 

「じゃ、帰る準備するかー」

「「「はーい」」」

 

 そうして、素材などを回収しながら、俺は思考を巡らせる。

 

 魔王軍での焼肉配信から、約一か月。

 上級資格を取得したので、俺たちはB~Aランクダンジョンを中心に、いつも通り活動を続けていた。

 

 まあ、大体は“(じゅう)(りん)”だけど。

 今日も来たこの場所もAランクだけど、やはり話にならなかった。

 これにも理由がある。

 

 俺はチラリと視線を移すと、ルーゼリアが勝ち誇っていた。

 

「今日はお姉さんが一番活躍したかなあ」

「いいえ、ココネには及びません」

「そーんなことないわよ! じゃあここで直接やるかしら?」

「ココネはいつでも良いですよ」

 

 ココネが混じって対立し始めたので、俺が間に入る。

 

「ダンジョン側の心配をしなきゃいけなくなるから、勘弁してくれ」

「「たしかに」」

「……それで納得すんのも怖えよ」

 

 ココネは『魔物侵攻』を経て、潜在能力を全て引き出した。

 結果、元々最強の才能を持っていたココネは、従魔の中でも一つ抜けた(・・・)んだ。

 だけど、他三人も簡単に認めるタマじゃない。

 

「じゃあ、次はお姉さんが上だと認めさせるわ」

「わたしも日々鍛えているんだよねえ」

「ママ、少し頑張っちゃおうかしら」

 

 ルーゼリア、エルヴィ、ミカママ。

 三人もココネに追いつけ追い越せと、さらに力を付けている。

 でも、視聴者にはツッコミ所があるようで。

 

《その力どこで使うんだよwww》

《あまりにも過剰戦力》

《敵の方がいないんだよなあ……》

《一番相手になるのが従魔同士ww》

《身内だけでインフレしてて草》

 

 うん、どのコメントにも激しく同意だ。

 

 今の戦闘だって、メガトンコングを相手にしてたわけじゃない。

 あくまで、どれだけ活躍できるかの道具(・・)にしかなっていなかった。

 彼にもボスのプライドがあるだろうに……。

 

 そうこうしながら素材を回収し終えると、エルヴィが近づいてきた。

 

「カナタ様、“タダ飯案件(めしあんけん)”はまだぁ?」

「言い方ー!」

 

 変化があったのは、ココネに対抗することだけじゃない。

 

 なんと、俺への案件が増えた(・・・)

 きっかけは魔王軍での焼肉配信だ。

 

 あの日の配信は伝説となり、大将は涙目になっていた。

 だが後日、それは“嬉し涙”に変わったという。

 本店は在庫補充のため数日の営業休止をしたが、チェーン店には翌日から大行列が起こったそうだ。

 

 最終的には、大将はすごく(もう)かったらしい。

 そこで、噂を聞いた他店が話を持ち掛けてきたわけだ。

 

 いくつかの店を思い出したのか、ココネはぼやーっと遠い目を浮かべる。

 

「回転寿司に串の食べ放題、スイーツパラダイスなんてのも。どれも夢のようなお時間でしたね……」

「店によっちゃ悪夢だろ」

 

 しかし、どれもが利益を上げたとは限らず。

 中には、本当に涙を流した店もあるという。

 

 ジェネラルマネージャーの締霧(しめきり)さんによると、俺たちへの案件は「究極の諸刃(もろは)の剣」なんて呼ばれているんだとか。

 

《食べ放題シリーズはガチで神回》

《原価高い店は大体終わるんだよなあwww》

《飲食業界で指名手配されてるだろ》

《カナタ君の食費は大丈夫なのか?》

《こいつら本当はそこまで食べなくても平気らしい》

《前の配信で言ってたな》

《食べ放題の時に本気出すだけなんだって》

《余計にタチ悪いじゃんwww》

《やっぱり泣かせにいってて草》

《焼肉の大将は運が良かったのか……》

 

 でも、視聴者の反応が良いのは確かだ。

 ココネがぷっくらお腹を恥ずかしがったり、若干酔ったミカママが激甘えさせモードになったりなど、数々の名シーンは生まれている。

 

 まあ、時と場合を見て出来る時にやろう。

 

「では探索も終わったので、本日はここまでにしますね! ご視聴ありがとうございました!」

 

 今日の配信も成功したことを振り返り、配信を終える。

 だが、ココネがふとたずねてきた。

 

「今日は少しお早いですね」

「あそこに行かないといけないから」

「はっ、そうでした!」

 

 俺はスマホを取り出して、スケジュールを確認する。

 夕方からは、一つ面倒な目的が入っていた。

 

「探索協会からの“お呼び出し”だ」

 

 そして、なんとなく抱いた嫌な予感は、後に的中する。

 この件をきっかけに、また波乱の日々が始まることによって──。




今回から第二章『魔王降臨』が開始です!
文量は第一章と同程度、規模はさらに大きくなっていきますので、ぜひお楽しみに!
第一章と同じく、毎日7:06、19:06の2回更新です!
今後ともよろしくお願いします!
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