現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「
カナタは前方から来る魔物と
現れたのは、大きなグリズリー。
A級『グレートズリー』だ。
「グルオオオオオッ!」
通常の個体でも、凶悪な魔物として有名である。
さらに、カナタの『七つの能力』の一つを宿しているようだ。
先程のマイコの『魔力結晶』のレーザーが物語っている。
(一体なんだったの……?)
貯金をはたいて特注したアイテムだった。
A級魔物でも倒せると思っていた。
しかし、多属性のレーザーは命中するどころか、跳ね返ってきたのだ。
その脅威は視聴者にも伝わっている。
《さっきは何が起こったんだ!?》
《レーザーが返ってきたぞ!?》
《反射されたように見えたけど……》
《やばいスキル持ってるんじゃ》
《これが異変の正体か!》
そんな中、エルヴィがすっと前に出た。
「カナタ様、わたしが行っていい?」
「わかった。気を付けろよ」
「ええ!」
エルヴィ含め、カナタ達は能力の見当がついている。
だが、久しぶりに
戦闘狂のエルヴィは我慢できなかったのだろう。
狂気の笑みを浮かべたエルヴィは、紫の翼を広げて飛び上がった。
「──【
そのまま、無数に展開した赤い
全てが鋭利な刃物のような棘だ。
対して、グレートズリーは
「ギャオオ!」
「……! あはっ!」
すると、赤い棘は全て
エルヴィは再度展開した棘で
能力の確信は得られたようだ。
「やっぱりすごいね、カナタ様の能力」
「なんで嬉しそうなんだ……」
エルヴィの変わらぬ狂気にぞっとしつつも、カナタは目を細めた。
(やはり【反射領域】か)
──【反射領域】。
自身の行動で、相手の攻撃を反射する領域を展開する。
カナタの能力の中でも防御に
《やっぱり反射じゃねえか!》
《うっそだろ》
《これどうすんだ!》
《え、まじで最強の能力じゃない!?》
《なんかエルヴィは嬉しそうなんだけどw》
《今の攻撃が返されるかよ……》
エルヴィの技は、多方面から放たれた。
だが、それを全て反射してきたのだ。
全方位を【反射領域】で囲っているようにも思える。
「こ、こんなの……!」
「魔王様……!」
後方で見守るマイミイ姉妹も、脅威の能力を実感したようだ。
相変わらずチートじみたカナタの能力だが、これで
次は自分がと言わんばかりに、二人が飛び出した。
「主様、ここはココネが」
「お姉さんもいこうかな」
「二人とも!」
ココネとルーゼリアだ。
頼もしい背中だが、カナタはじっとした目を向けた。
「……仲良くやれよ」
元々、従魔の中でも、二人は特にライバル意識が高かった。
現代に来てからは抑え気味(?)だったが、ココネの覚醒により、ルーゼリアの意識が再燃。
最近では、ちょいちょい争うことも増えていた。
また二人は、氷と炎という正反対の性質を持つ。
二つの大きな力がぶつかり合えば、周辺を爆破させる恐れがあるのだ。
それらを考えて、最近カナタは二人に「喧嘩禁止令」を出した。
カナタの言葉に、二人はこくりとうなずく。
「もちろんです、主様」
「お姉さんだもん」
言葉を言い残し、ココネとルーゼリアは同時に飛び立った。
すぐさま宙から放ったのは、それぞれの得意技だ。
「はああ! ──【
「ふふっ! ──【
左右上空から、氷と炎の技が放出される。
しかし、やはり二つの技は反射された。
鏡面反射のように、ココネの技はルーゼリアへ、ルーゼリアの技はココネへと跳ね返ったのだ。
「「くううううっ!」」
「ココネ! ルーゼリア!」
これは相性の問題だ。
二人は圧倒的な強さを持つが、技は威力に特化している。
小細工なしの技は、簡単に跳ね返されてしまうのだ。
何発撃とうとも、互いの攻撃が互いに飛んでしまう。
その光景に、カナタは声を上げた。
「二人とも! もうその辺で──ん?」
しかし、よく見れば二人の表情がおかしい。
どこか
しかも、二人は一切グレートズリーを向いていない。
「はあああ!」
「うふふっ!」
「あ、あいつらまさか……!」
カナタの違和感は確信に変わった。
「反射を利用して互いに攻撃してやがる!」
「「あはははっ!」」
技を反射して、間接的に攻撃し合っていた。
「喧嘩禁止令」の抜け穴をついた、合法的な争いだ。
もはやグレートズリーを“反射する壁”にしか思っておらず、二人は密かに闘争本能を満たしていた。
せっかく力を手にしたグレートズリーも、これにはしょんぼり。
「ギャウ……」(相手にして……)
《この二人マジでww》
《どこまでも対抗し合うんだよなあ》
《そんなに争いたいのかよww》
《クマさん「無視しないで」》
《利用されてるだけで草》
《あのー他所でやってもらっていいですか?w》
《ピンチかと思ったら相変わらずで草》
《クマさん眼中にねえじゃんww》
そんな攻防がいくつか続き、ココネとルーゼリアは肩で息をする。
「やるわね、ココネ」
「そちらこそ、ルーゼリア」
「……」
戦っているという“設定”を忘れたのか、二人はすでに名を呼び合っていた。
呆れるほどのライバル意識に、カナタも真顔だ。
すると、パンパンと手を叩く音が聞こえた。
「はーい、みんなそこまでよー。そろそろ真面目に戦うわよー」
「ミカママぁ!」
従魔がふざけ倒す中、ミカママが仕切るように声を張った。
さすがの“ママ力”に、カナタもぱあっと顔を晴らす。
すると、ミカママ自らが前に出た。
「じゃ、ママがやっちゃおうかな──【バブみの波動】」
ふわっと浮かび上がらせたのは、髪色とよく似た黄緑色の波動。
物理攻撃ではないため、効くだろうと踏んだのだ。
しかし、相手が悪すぎた。
「グオオッ!」
「はっ……!」
さすがはカナタの能力と言うべきか、波動すらも反射する。
グレートズリーに当たる前に、反射領域で波動が跳ね返ってしまったのだ。
すると、ミカママ
「あぁっ……!」
「ミカママーッ!」
カナタの迫真の声と同時に、視聴者が一気にざわついた。
《ミカママが呑み込まれたぞ!?》
《大丈夫か!?》
《いや痛みは無いから大丈夫だろうけど……》
《これどうなっちまうんだ!?》
《まさかミカママがバブみに……?》
《なんかドキドキします!》
変な期待が寄せられているようだ。
こんな展開はカナタですら見たことがない。
(こ、これは……!?)
何が起きるか心配になる中、ミカママは
「うぐっ……バ、バブ──いいえ、耐えてみせる!」
「!?」
「でも波動が強くて……おぎゃ──いや負けない!」
「ミカママ!?」
ミカママは時々おぎゃりつつも、歯を食いしばって耐える。
“母性”と“幼児性”がせめぎ合っているのだ。
《対抗してる?www》
《若干おぎゃってるぞ!?》
《これミカママの貴重映像だろww》
《こんなの一生見られないってえ!》
《うっひょおおおおおお》
《バブってもええんやで^^》
《楽になろうミカママ》
視聴者も応援(?)しているが、ミカにもママとしてのプライドがある。
「おぎゃらない! 私はおぎゃらないわ!」
「ミカママ、もういいんだ! 苦しむぐらいなら楽になってくれ!」
「カナタちゃん……!」
カナタが駆けつけると、
数秒後、ミカママは閉じた目を再び開く。
「ミカ、ママ?」
「……あっちいって」
「ん?」
カナタが心配で声をかける。
対して、ミカママはむすっとした表情でカナタを押した。
「あっちいってって言ったの!」
「うわっ!」
少し反抗的な態度……否、“恥ずかしげな態度”だ。
カナタを離し、すっと立ち上がったミカは、前髪をいじりながら視線を逸らした。
「ち、近づかないでよね……」
「「「……!」」」
その姿に、従魔三人が目を見開いた。
亜人とはいえ、みんなも乙女心は理解できる。
今のミカママの状態を直感したのだ。
(((思春期になっちゃった……!)))
母性と幼児性が中和され、ミカはちょうど中間の精神年齢となった。
年で言えば、小学生高学年~中学生。
つまり、“思春期ママ”の
ミカは横髪をくるくるといじりながら、チラッとカナタを見る。
「別に、カナタちゃんなんて好きじゃないんだから……っ」
「!?」
思春期で「好き」という感情を持ち始める頃だ。
反抗期ではないが、ミカの思春期にはツンデレが入っていた。
普段は絶対見られないミカの姿に、視聴者は湧きあがる。
特に、ミカのファンからは熱烈なコメントが送られた。
《かわいいいいいい!!》
《カナタ君のことチラチラ見てるww》
《絶対好きじゃんwww》
《思春期ママかわいすぎだろ!》
《髪いじいじするの好き》
《おいおい神回か!?》
《ガチ神回きたああああああ!》
《こんなの見れると思ってないって!!》
《ワイの新たな推し爆誕》
《ミカかわいいぞ!》
もう一生
しかし、収集がつかなくなっているの事実。
そろそろ決着を着けるかと、最後はカナタが立ち上がった。
「やっぱり自分で取り返さないとな」
「グルル……」
再び剣を向けるカナタだが、周囲の不安は
反射をしてくる相手にどう戦うのかと。
後方のミイコは思わず声を上げる。
「ま、魔王様! どういう作戦で!」
「……そうだな」
だが、元の持ち主はカナタだ。
ふっとドヤ顔を浮かべて、それっぽい答えを口にした。
「裏の裏は──表だ」
「「「?」」」
誰もピンときていないようだが。