現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「裏の裏は──表だ」
ようやく前に出たカナタは、グレートズリーへ剣を向ける。
従魔たちが苦戦(?)しているため、自分が決着を着けようと言うのだ。
しかし、その言葉には後方は首を
「「「?」」」
浅いのか、深いのか……おそらく浅いが、カナタなりの作戦があるのだろう。
それを有言実行するように、まずは一発。
カナタはあいさつ代わりの
「【空間断絶】……!」
「グオオッ!」
カナタが剣を振るうと、曲線型の斬撃が飛んで行く。
しかし、【反射領域】を宿すグレートズリーの
それには
斬撃は壁へと直撃し、ぽっかりと形通りの跡が残る。
「グオッ」
「……」
グレートズリーは、ふんすと鼻息を鳴らした。
壁の跡も確認し、あれほどの攻撃を反射したことに得意げになっているのだろう。
対してカナタは、段々と口角が上がっていく。
「そうそう。これだよ、これ」
「グオッ!?」
やがて浮かべたのは、楽しい“遊び”を思い出したような邪悪な笑みだ。
この表情は魔王と言わざるを得ない。
《カナタ君!?》
《どうしたんだ急にニヤッとして!》
《反射されておかしくなったか!?》
《いや解決法を見つけたんじゃないか?》
《これは魔王》
《新しいおもちゃ見つけちゃった》
《なんか分からんけどいけえ!》
コメント通り、おもちゃを見つけたようにカナタは前に飛び出した。
「よっしゃいくぜえ!」
さっきの初撃は“確認”だ。
相手の反射が思った通りに機能するか、確かめただけに過ぎない。
そして、予想通りの挙動を示したため、カナタは本格的に攻略に入った。
「断絶!」
「グオオッ!」
カナタのメイン火力は【空間断絶】。
もう一度斬撃を飛ばすが、やはり反射されてしまう。
しかし、今度は角度を変えて放っていた。
より接近して下から放ったため、斬撃はカァンッと斜め上に反射したのだ。
──それに向けてカナタは斬撃を放つ。
「はあッ!」
すると、チッと
一発目の斬撃は【反射領域】へ向かい、もう一度反射されたのだ。
まるで壁打ちでもしているかのように。
カナタはそれを
「うりゃああああああ! 断絶、断絶ぅ!」
「グ、グオオオッ!?」
反射された斬撃は、次の斬撃と掠り合い、再び反射されにいく。
掠って角度が変わった斬撃は、次の斬撃で軌道を修正される。
それが繰り返されれば、反射する斬撃はどんどん増えていく。
すなわち、カナタと反射領域の間では、玉(斬撃)が増え続ける“無限のラリー”が始まっていた。
「まだまだぁ!」
「グ、グオオ……」
目の前で勝手に攻撃が反射される、グレートズリーくんを差し置いて。
《うおおおお!?》
《なんだこれえええええ!?》
《めちゃくちゃ斬撃が飛び交ってる!?》
《互いに反射し合ってんのか!》
《これって計算して放ってんの!?》
《魔王様やばすぎだろwww》
《しかもまだ増えていくぞ!》
《どこまでいっちまうんだ!》
《でも巻き込まれたら大変だぞ!?》
しかし、それぞれの斬撃が一撃必殺クラスの威力だ。
カナタ自身も食らえば致命傷だろう。
加えて、反射パターンは、斬撃一つごとに指数関数的に増加していく。
それを全てコントロールし、今なお数を増やし続けるのは、正気の沙汰じゃない。
それでも、カナタは剣を振り続ける。
「おらおらおらぁ!」
「グ、グオオッ!?」
【超感覚】により、全ての軌道・反射パターンを予測しているというのもある。
だがそれ以上に、カナタはこれを楽しんでいた。
(
異世界では、よく行っていた遊びのようだ。
もう一つの能力を使い、一人で断絶ラリーをやっていたのも今では懐かしい。
そちらの能力は取り戻していないため、今までは出来なかったが、久しい光景にカナタは心を躍らせていた。
その姿に、ココネは両手を合わせている。
「主様……っ」
異世界ではよく見た光景だったのだろう。
カナタは努力によって、最終的に七つの能力を使いこなした。
その過酷な特訓は、ただ頑張るだけで乗り越えられるものじゃない。
カナタは、スキルを極めることに関しては、人一倍情熱を持っているのだ。
つまり、能力で遊ぶのが好きだった。
「そろそろかな」
「グオオッ!?」
やがて反射する斬撃は、数えきれない程に至る。
しかし、斬撃の数々は美しく対称的になっていた。
カナタは全ての反射を計算し尽くしていたのだ。
「こい!」
そして、同時にカァンッと反射した全方位からの斬撃は、一点に集約する。
カナタの元へと。
あとはそれを──打ち返す。
「うおりゃあああああああ!」
カナタは体を回転させ、勢いを付けて【空間断絶】を放った。
多くが重なり合い、集約された斬撃は、一つの巨大な斬撃へと変わる。
これを正面からぶっ放した。
「【空間断絶・集約】……!」
「グギャアアアアアアッ!!」
バリィンッっと反射領域がぶっ壊れ、カナタの攻撃が貫通する。
グレートズリー本体は成す術もなく、後方のダンジョンごと両断された。
無敵に思える【反射領域】にも限度は存在する。
従魔が手を焼くほどの耐久力だが、カナタの強大な技はそれをも上回ったのだ。
裏の裏は表、これはすなわち──
「正面突破ぁ!」
超火力で脳筋解決という意味だ。
《うおおおおおおおおっ!!》
《貫通したあああああ!》
《無敵じゃなかったんか!》
《でも従魔でも壊せなかっただろ!?》
《魔王様やべえええ!!》
《これでこそ脳筋集団の主だ》
《すげーもん見せてもらった》
《やはり力は全てを解決する》
《さすがだぜ魔王様!》
最後は圧倒的火力でぶっ放した
カナタもさすがに疲れたのか、
すると、カナタにぽうっと光が灯った。
(お、【反射領域】回収っ!)
これで目的は達成。
ついでに調査の依頼対決も勝利である。
そんなカナタを称えるように、後方から従魔たちが駆けつけた。
ココネ、ルーゼリア、エルヴィだ。
「さすがです、主様」
「やっぱりカナタ君ね」
「わたしももうちょいやりたかったけどなー」
しかし、あと一人がいない。
カナタが振り返ると、ミカは髪をいじりながら恥ずかしげに口にした。
「ま、まあ、あんたにしては頑張ったんじゃない。別に、どうでもいいけど……ごにょごよ」
「はははっ」
まだ特有のツンデレを発揮していた。
思春期ママの効果は切れてなかったようだ。
《ミカママあああああ!》
《ツンデレまじで良いぜ》
《かわいいwww》
《お前ら最後にこの姿を拝んどけよ!》
《波動の効果切れないでええええ!》
《いつまでも見ていたい……》
《アホ、普段がママだからこそギャップが活きるんだろ。この素人どもが》
《ガチ勢わいてて草》
《それだけのインパクトだったなww》
そうして、対決相手のマイミイ姉妹も寄ってくる。
先に口を開いたのはマイコだ。
「久遠カナタ……さん、私が愚かでした。あなた達と張り合おうだなんて」
「いえ、気にしてませんよ。むしろこれぐらいじゃないと、探索者なんてやってられませんよ!」
「ふふっ。そう言ってもらえると助かります」
それから、妹のミイコも。
「魔王様、すごかった」
「あはは、ありがとうございます。今度はまた、協力して探索でも行きましょう」
「……! はいっ!」
おとなしめのミイコが、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、ぼちぼち撤退でも──ん?」
しかし、これで対決は終幕とはならず。
【超感覚】で前方を見たカナタは、すぐさま声を上げた。
「やばい! ダンジョンが崩れるぞ!」
「「「え……!?」」」
カナタの【空間断絶・集約】により、前方が
形を保てなくなったダンジョンは、今にも崩落しようとしている。
さーっと青ざめたカナタ達は、急いで反転した。
「に、逃げろおおおおおお!」
「「「うわあああああああ!」」」
カナタ達が道を作り、マイミイ姉妹はソリに乗る。
とにかく上へ上へと。
さっきとは別人のような無様な姿を晒しながら、カナタ達は走り抜けていく。
「「「わー、ぎゃー!」」」
《結局こうなるのかよwww》
《あんなにかっこよかったのにww》
《こいつらせわしないなあ笑》
《さっきまでのが台無しで草》
《顔が必死過ぎるwww》
《魔王様らしいわ》
《最後はわちゃわちゃします》
《なんか緊張感ねえんだよなあ……w》
その後、ダンジョン崩落からなんとか逃げ切り、調査の対決を終える。
これほど異変調査の危険と、カナタ達の力を見せれば、クレームも減るだろう。
カナタ達は、これからは
★
後日、探索協会の会長室。
「すみませんでした、会長」
そこには頭を下げるマイコの姿があった。
隣ではミイコも同じ姿勢である。
「ミイコはともかく、私では異変調査は力不足です。
対決を経て、自身の力を顧みたのだろう。
すると、会長は口を開いた。
「顔を上げて、マイコさん」
「え?」
「たしかに探索者としてのあなたは、異変調査には不向きかもしれない」
「……はい」
これも対決を見ての正直な感想だろう。
しかし、この後の言葉も本音には変わりない。
「でも、あなたの知識や予習の執念には驚かされた。あれは認めざるを得ない」
「え?」
「依頼は異変調査だけではない。あなたにもいくつか協力してほしい依頼があるわ。きっと最適だと思う」
「……!」
それから、ミイコに対しても。
「ミイコさんも、手伝いをしてくれる? 上級者向けの依頼もあるの」
「は、はいっ!」
「よし」
そうして、会長は手を叩いた。
「仕事はたくさんあるわよ。あなた達のせいで、俺たちも私たちもって苦情がたくさん届いたんだから!」
「「……」」
「返事は?」
「「は、はいっ!」」
返事をしながら再び謝る二人だが、顔はどこか晴れやかに見える。
二人──特にマイコの目的は、協会から認めてもらうことだったからだ。
これからはやる気に満ちて依頼をこなすだろう。
こうして、カナタ達とマイミイ姉妹の対決は、幕を閉じたのだった──。