現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
<三人称視点>
「こ、これは……!」
ヴァレリアは視線を上に向けると、思わず言葉を詰まらせる。
隣でニヤッとするカナタは、師匠のヴァレリアに改めて紹介した。
「ここが日本、そして東京の街並みだよ」
「まさか、これほどとは……!」
少し前、カナタは師匠のヴァレリアと再会した。
死んだはずの彼女が復活したことは謎だが、せっかくの機会だからと、彼女をギルドから連れ出したのだ。
異世界から来たばかりのヴァレリアは、見知らぬ大都会の風景に
しかし、カナタは首を横に振った。
「まだまだこんなものじゃないよ。実際に色々体験してみないと!」
「あ、ああ!」
ヴァレリアを連れて行きたい所があるようだ。
先導するカナタに、ヴァレリアも
今だけは、懐かしき二人だけの空間だ。
──だが、一方その頃。
「こちらC(ココネ)。目標を
ココネは建物の屋上に張り付き、双眼鏡で二人を覗いていた。
カナタに「師匠が緊張するから」と付いて来ないよう言われたが、はいそうですかと引き下がるタマではない。
カナタとヴァレリアの関係をより探るため、ストーカーしていたのだ。
「主様と女の距離、28……いえ、27cmです」
その細かすぎる報告をしながら、トランシーバー
「みなさんはどうですか」
『はーい、こちらR(ルーゼリア)。街を焼き払う準備はできてるわ』
「……距離が
もちろんココネ以外の三人もストーキング中だ。
ルーゼリアに続いて、エルヴィとミカも報告をした。
『手なんか近づけたら、わたしの刃物が刺さるよ』
『んー、いつ“バブみ部隊”を投入させようかしら』
「了解です。二人もひとまず待機で」
ここまで息の合った四人は見たことがない。
どんなダンジョンの時よりも、四人はコンビネーションを発揮していた。
ちなみに、カナタはそんな従魔たちに気づいている。
(……まあ、だよなぁ)
能力【超感覚】の効果だ。
予想通りすぎる行動に、カナタは呆れたため息を
しかし、隣のヴァレリアは笑みを浮かべていた。
「中々に頼もしい仲間じゃないか」
「え、
「これだけ殺気を向けられていればな」
「あぁ……もう何もかもすいません」
ヴァレリアの背中には、遠くから殺気が刺さりまくっている。
カナタのような能力は持っていないが、騎士の勘でさすがに気づいたようだ。
それでも、ヴァレリアは堂々としていた。
「なに、やましい事をするわけではないんだ。ワタシは構わないさ」
「だったら良いけど……」
「それより面白い場所へ連れてってくれるのだろう?」
「……! うん!」
すると、今度はヴァレリアから駆け出す。
同時に、街には特大の舌打ちが響き渡った。
「「「「ちっ!」」」」
「「「……!?」」」
それには周辺の人達がビビったという。
「すごくいいよ、師匠!」
試着室から出てきたヴァレリアに、カナタは思わず手を叩く。
それほどに彼女の姿は様変わりしていた。
「カ、カナタ、これはなんなんだ……?」
「これは和服だよ」
カナタが早速連れて来たのは、着物屋さん。
サラサラの金髪はまとめてもらい、より上品さを増している。
綺麗なスカイブルーの瞳に似た色の着物は、背の高いヴァレリアにぴったりだ。
騎士譲りの姿勢も相まって、華麗な和服外国人のようになっていた。
着物屋の店主も、ヴァレリアの姿をよく褒めている。
「本当に綺麗ですよ。ここまで似合う人は中々いません!」
決まり文句ではあるものの、それが冗談とは思えないほど、ヴァレリアの格好は目立っていた。
カナタもうんうんうんと首がもげるほど頷いている。
「こういうのも悪くないでしょう?」
「ワ、ワタシには可愛すぎないか……?」
「そんなことないよ! ここは日本なんだから思いっきり楽しんで!」
「……っ」
その言葉に安堵したのか、ヴァレリアも口元を緩める。
騎士道一筋だったとは言え、他国で見かける可憐な女性には思うこともあった。
そんな姿になれたことが嬉しいのだろう。
「ありがとう、カナタ」
「じゃあテンションも上がった所で次に行こう」
「ああ!」
ヴァレリアの声は、聞いた事もないほど上ずっていた。
ちなみに、この一分後にさらに着物が四着売れたという。
「ここは何というか……すごいな」
道中で入った場所に、ヴァレリアの目は
少し耳も抑えている。
「ここはゲーセンだね。俺もたまに来るよ」
「ゲー、セン?」
入ったのは、街中のゲームセンター。
ヴァレリアが途中で興味を示し、案内してあげたようだ。
行きつけの場所に、カナタは順に指をさしていく。
「クレーンゲームとか、コインゲームとか」
「ワ、ワタシには何が何だか……」
「あ。これとかならいいかも」
そんな中で、一つヴァレリアが楽しめそうなものを見つける。
パンチングマシーンだ。
「ここを殴って、どれだけ拳が強いかを計るゲームだよ」
「……ほう?」
ヴァレリアは火がついたように微笑む。
早速腕まくりをした手にグローブをはめ、カナタがゲームを開始した。
──忠告を交えて。
「あの、壊さないようにね?」
「わかっているさ」
「ほんとかなあ……」
そんな時、ふと後方から声がかけられる。
複数人のヤンチャそうな男達だ。
「ははっ、姉ちゃんかわいいねえ」
「そんなことせずに俺たちと遊ぼうよ」
和服美人のヴァレリアが目についたのだろう。
だが、すでにゲームに夢中なヴァレリアは──ドガアアアアアッ!
「「「……!?」」」
強力なパンチを見せた後で、ヤンチャそうな男達に振り返る。
「ん、ワタシに何か用か?」
「「「な、なんでもありませーん!」」」
プシュウウと煙が上がっているマシーンには、エラーの表示がされていた。
今までの最高が「306」の中、これは999以上の数値。
元騎士団長の力を遺憾なく発揮していた。
「む、軽く殴ったのに数字が出なかったな。故障か?」
「ははは……やっぱり」
カナタには予想通りだったようだ。
その後も、二人はいくつかのゲームで遊んだ。
エアホッケーやバスケットマシーンなど、身体能力が生かされるゲームでは、ヴァレリアがことごとく記録を更新していった。
そうする内に、ただでさえ目立つヴァレリアもいては、カナタの存在は周囲に気づかれる。
「え、あれ魔王じゃね?」
「本当だ。隣の外国人は彼女か!?」
「サインくださーい!」
「ま、まずい……!」
元々気づいていた者もいたのだろう。
誰かが声をかければ、自分も自分もと騒ぎは大きくなる。
カナタはヴァレリアを連れて、ゲーセンを抜け出した。
「ここは一旦抜けよう!」
「お、おお?」
そうして、カナタとヴァレリアはゲーセンを
夕暮れ。
「カナタはこちらでも有名人なのだな」
しばらく移動し、二人はベンチに座っていた。
人通りが少ないこの場所で、ヴァレリアは微笑んでいる。
「うん。なんか成り行きで……」
「魔王と聞いた時は何のことかと思ったぞ?」
「それも成り行きとしか言えない……」
「ははは、こちらの魔王は尊敬の対象なのだな」
カナタが配信者としてのことを話すと、ヴァレリアは喜んでくれたようだ。
過去のことも含めると、なおさら。
「それに上層部──探索協会にも認められているだろう。王国の二の舞にならなかったことが、ワタシはこの上なく嬉しい」
「師匠……」
加えて、今のカナタについても。
「カナタがこの世界に戻れて良かった。今の楽しそうな表情を見てるとワタシも安心するよ」
ヴァレリアは日頃から、カナタへ言っていた。
キミにこんな世界は似合わない、キミを一刻も早く戻したいと。
異世界に来たばかりで、現代に思いを
そして、現代の良さも身をもって体験したようだ。
「この世界は魔族──いや、魔物は地上には出られない。だからこそ、平和が保てるのだな」
「そうだね。でも、
「ふふっ、そうだったな」
すると、ヴァレリアはすくっと立ち上がった。
「今日は楽しかったぞ。そろそろ帰るとしようか」
「そうだね」
「だが、一つだけ頼まれてくれないか。やっぱりワタシは、あちらの方が肌に合うみたいだ」
「うん?」
視線を移したのは、ダンジョン配信が流れているモニターだ。
「ワタシもダンジョンというものに行ってみたくてな」