現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「こんにちはー。世間をお騒がせしてさーせん。魔王でーす」
カナタはSNSで告知していた時間になると、配信を開始した。
いつもより砕けた口調には、早速ツッコミが入る。
《魔王様こんにちは!》
《なんか今日変じゃない?w》
《あいさつが浮ついてる笑》
《カナタ君がチャラくなっちゃった》
《顔もニヤけてるし》
「え、バレました?」
浮かれ気味だったことが見抜かれたようだ。
カナタはその理由を、手招きを添えて説明する。
「本日はゲストがいますので! ではどうぞ!」
「こ、こんにちは。……これでいいのか?」
配信の画角に入ってきたのは、ヴァレリアだ。
突然の金髪美人の姿に、配信はいきなり盛り上がる。
《ゲスト!?》
《なんだこのお姉さんは!》
《き、綺麗だ……》
《外国人さんか!?》
《あまりにも美人》
《スタイルすげー!》
《めっちゃ日本語うまいな》
ヴァレリアの観光から数日。
ダンジョンに行きたいと言う師匠のため、装備などを調達して、今日ついに二人で訪れていた。
その中で、「せっかくならカナタの活動も見たい」とのことだったため、配信で共演することになったのだ。
いきなりのゲストに配信は盛り上がるが、カナタはさらに驚くべきことを伝える。
「この方はヴァレリア。俺の師匠です!」
《なにいいいいい!?》
《魔王様の師匠だと!?》
《嘘だろ……?》
《あまりにも衝撃の事実》
《カナタ君より強いってこと!?》
《こんな綺麗な人がかよ!》
《うらやま案件ですなあ》
《魔王の師匠とか想像もつかねえ!》
だが、コメントが加速する一方で、ヴァレリアはあたふたしていた。
「ま、待て! そんなに期待するな! 確かにワタシは基礎を教えたが、今ではカナタには敵わんぞ!?」
「師匠、残念ながらもう遅いよ」
「こちらはこちらでプレッシャーが重い世界なのだな……」
早速、配信の洗礼を浴びるヴァレリアであった。
また、そんなやり取りを
カメラがそちらを向くと、一気に殺気が伝わってきた。
「「「ふうぅ……」」」
わざとらしく息を吐くのは、従魔たち。
楽しげにカナタと話すヴァレリアに、敵対心を持っているようだ。
《こいつらさあ……w》
《どこまでも変わらんなあww》
《あまりにも予想通りで草》
《見なくても知ってたwww》
《強力なライバルの出現だからなあ》
《属性:師匠は強いぞ》
しかし、カナタはそこまで注意をしない。
(これでも収まった方だからな……)
観光をした日からも、カナタはギルドの保護下にあるヴァレリアと、毎日顔を合わせていた。
ヴァレリアがこちらの世界に不慣れというのもあるが、やはり死んだはずの師匠に会えるのは嬉しいのだろう。
その事には
カナタとヴァレリアは、あくまで“師弟関係”だと。
それを感じ取ったことで、従魔たちは矛を収めつつある。
そのため、今回の共演も認めてくれたのだ(かなり渋々ながら)。
しかし、だからと言って、完全に敵対心がなくなったわけではない。
むしろ対抗心から、従魔たちはいつも以上に燃えていた。
(((あの女には活躍させない……!)))
従魔たちはアイコンタクトのみで意思疎通していた。
それには呆れながらも、カナタは配信を進行する。
「じゃ、進んでいこうか。師匠」
「ああ! 楽しみだ!」
こうして、カナタは師匠とのダンジョン配信を開始した。
「みんな、止まれ」
カナタが【超感覚】で察知し、周りにハンドサインを送る。
ずっと奥の方から魔物の集団がやってきたのだ。
「「「グオオ!」」」
まだ従魔たちの攻撃範囲内ではないが、こちらへ向かってくるのが見える。
すると、ルーゼリアがズイッと前に出た。
「うふふっ、ここはお姉さんが!」
ルーゼリアは片翼を生やすと共に右腕を振るい、炎の壁を張った。
攻撃が届かなくても、出来ることはあると。
「これで魔物は近寄れないわね!」
「あー、絶対やると思った」
つまり、ヴァレリアの“出番潰し”だ。
《先に出番なくすなww》
《お姉さん大人げねえ笑》
《どんだけ活躍させたくねえんだよww》
《ちょっと残念ではあるけどw》
《師匠って従魔より強くないのかな?》
《カナタ君には全然敵わないって言ってたけど》
「はは、これは困ったな」
これには苦笑いを浮かべるヴァレリアだが、何もしないわけではない。
むしろ面白いと言わんばかりに、剣を上段に構えた。
「でも、ワタシも久しぶりに体を動かしたいんだ」
「「「……!」」」
ヴァレリアはブオンッと剣を縦に振るうと、勢いよく斬撃が飛び出す。
斬撃は炎の壁を破壊するまではいかないものの、一部分を貫通。
その先では「ギョエエ!」と魔物の断末魔が聞こえた。
ふうと息を整えたヴァレリアは、ニッと口角を上げる。
「やはり剣は楽しいな」
《うおおー!》
《炎の壁を貫通した!?》
《師匠すげえ!》
《一点突破なら可能なのか!》
《カナタ君のやつに似てたな》
《これが本家ってことか!?》
その
(やっぱり美しいなあ)
今の斬撃は、ヴァレリアを象徴する技だ。
自ら先頭を切る斬撃は、王国では『
何人かが気づいている通り、カナタの【空間断絶】の元になった技である。
すると、ヴァレリアも楽しくなってきたのか、かつてのように剣を掲げる。
「どんどん進もうではないか!」
やはり戦いが性に合っているのだろう。
だが、その裏でルーゼリアは顔を引きつらせていた。
「ぐぬぬぬ……」
「ぐぬる相手違えよ」
そんな調子で、カナタの配信は進んでいく。
「はあッ!」
「「「ギャオオ!」」」
ヴァレリアが派手に剣を振るい、魔物を次々に倒す。
従魔たちの邪魔を押し退けながら。
「クソッ、わたしの
「頼むから魔物に敵意向けてくれ」
その結果、どんどん調子を取り戻すヴァレリアに、従魔たちが顔をしかめる展開が続いていた。
《いつまで邪魔してんだよww》
《師匠がよく折れねえな》
《力量差はありそうなんだけど》
《師匠は強いというか
《やっぱり基本動作はカナタ君と似てる》
《斬り方とか
ヴァレリアと従魔が直接対決をすれば、間違いなく従魔に軍配が上がるだろう。
だが、一点突破や、一瞬の隙を付く行動など、ヴァレリアは巧みな動きで活躍を見せていたのだ。
しかし、そんな現状もあり、お昼の雰囲気は良いとは言えない。
「はあ~! パクパク、ガツガツ」
「やけ食いやめろよ……」
特にルーゼリアとエルヴィは、食べ放題の時のように昼ご飯を
すると、なんとヴァレリアの方から声をかけにいく。
「あの、ルーゼリア……さん」
「なにかしら? てか、さん付けいらないけど」
「そ、そうか。ではルーゼリア」
コホンと一息ついたヴァレリアは、手を広げて話を始める。
「キミの範囲攻撃はすごいな。あれだけの数を一度に倒せるのは、脅威でしかない」
「……! ふ、ふーん。別に知ってますけど?」
「はは、そうか。炎の壁は防御にも使えるし素晴らしい技だ」
「何が言いたいわけ?」
ヴァレリアはニヤリと続ける。
「ワタシにはそんな事が出来ない。だから相手の攻撃が来る方向にのみ、防御を厚くしている。現状、あなたにその心配はいらないかもしれないが、あの子はそれが出来ているな」
「……!」
ヴァレリアが手を向けたのは、ココネだ。
お昼を食べて眠くなったのか、ミカの膝の上ですやすやお昼寝している。
「それだけだ。すまない、余計なお世話だったな」
「……えないさよ」
「ん?」
その言葉に、ルーゼリアは意外にも食いついた。
「お、お姉さんに足りないこと、もっと教えなさいって言ったのよ!」
「……! ああ、もちろんだ」
ルーゼリアは、100%を解放したココネを強く意識している。
それも見抜いた上での、ヴァレリアの助言だったのだろう。
騎士団の団長を務めていた器は、やはり並ではない。
すると、近くでチラチラ見ていたエルヴィも、下手な口笛を吹きながら近づいてくる。
「……べ、別にわたしも聞いてあげなくもないけど?」
「ははっ。ワタシの考えでよければ、どれだけでも!」
《まじか雰囲気が変わったぞ》
《これは師匠だわ》
《女性なのに従魔と和解しただと……?》
《そんな人間が存在したのか!》
《人間力たけえ》
《念願の常識枠きたあ》
《カナタ君がようやく救われた》
《ツッコミも世話も大変そうだったからなあ》
そんな光景には、カナタはまたもうなずいている。
(すごいなあ)
基本的に従魔たちはちょろい。
ヴァレリアの褒めながら指導するやり方には、思わず距離を縮めてしまったようだ。
「さすがですね、師匠」
「はは、なんのことだ?」
「またまた~」
従魔たちの嫉妬でどうなるかと思われた配信だったが、ヴァレリアのおかげで和やかな雰囲気へと変わる。
そうしてお昼も終え、カナタは嬉しそうに探索を再開した
この後に、予想だにしない事態が迫っているとも知らず──。