現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「ショータイムの始まりです」
異世界魔王軍、四天王の一人マウロは両手を広げた。
死んだはずの師匠ヴァレリアは、
つまり、ヴァレリアはマウロの意のままだ。
結果的に、カナタは最も傷つけたくないヴァレリアと
《師匠どうしたんだ!?》
《あれに操られてるのか!?》
《そんな……》
《嘘だろししょー!》
《魔人ってこんな奴ばっかなのかよ!》
《正々堂々と戦えよ!》
カナタは表情を
「師匠とは俺がやる。
「「「……!」」」
従魔たちも無言でうなずいた。
相手はヴァレリアだけでなく、マウロが召喚した複数の魔物もいる。
「「「ギャオオオッ!」」」
全身が黒ずんだ巨大な
“古代魔族”と呼ばれる種族である。
異世界でかつて存在した強大な存在だが、今回のために用意してきたのだろう。
従魔たちも役目を
「【
「【
「「「グギャアアアッ!!」」」
ルーゼリアとエルヴィの先制攻撃だ。
超威力を誇る上、ヴァレリアから習ったことも実践している。
魔物はあっけなく倒れるが、マウロが手持ちのランタンを操作した。
「さすがですねえ。ですが──【
「「「……!」」」
すると、倒したはずの魔物は体を再構築され、再び起き上がる。
マウロの
この挙動を見るに、おそらく“不死身”だ。
《うああああああ!?》
《よみがえっただと!?》
《あの魔人の能力か!?》
《まじかよ強すぎるな……》
《じゃあもうこれって……》
ならば、勝つ方法は一つしかない。
カナタはマウロに視線を向けた。
「お前を倒すしかないということか」
「その通りです」
同じ四天王のガルドル
一度正面から戦って敗れているカナタ一行には、とことん非道な策を用いてくる。
人の弱点である“仲間“を突いてくるのだ。
対して、そんな相手には屈しないと、カナタは跳び上がった。
「うおお!」
「これはお早い。しかし──」
「!」
マウロへ確実に一撃を与えられるタイミングだ。
だが、手を止めたカナタは後退する。
すぐ近くから気配を感じたからだ。
「カナタ!」
「くっ……!」
ヴァレリアがマウロに引き寄せられていたのだ。
ほんの一瞬でも反応が遅れていれば、カナタの剣はヴァレリアを斬っていた。
その光景に、マウロはニタアッと笑う。
「惜しかったですねえ。もう少しで面白いものが見られたのですが」
「この……!」
しかし、ヴァレリアはカナタに声を上げる。
「何をしている! そのまま攻撃せんか!」
「師匠!?」
「ワタシなどどうでもいい! それよりもこいつを倒せ! キミなら出来るだろう!」
「で、でも……!」
ヴァレリアの言う通りだ。
カナタが全力を出せば、マウロは倒せる。
だが、カナタは全力を出せない。
「無駄ですよ。彼は甘すぎる」
「くっ、カナタ……!」
派手すぎる攻撃は、ヴァレリアを傷つけかねない。
【空間断絶】、【反射領域】はほとんど封じられたと言える。
決め手に欠けるカナタだが、マウロも待ってはくれない。
「来ないのなら、こちらからいきますよ」
「カナタ受けろ!」
「……! ぐっ!」
マウロのランタンに操られ、ヴァレリアがカナタに向かってくる。
なんとか応戦するカナタだが、ヴァレリアは
「この
「……っ!」
優しいヴァレリアのことだ。
あえて
だが、そんなことはカナタも理解している。
それでも、カナタは本気で剣を振れない。
(し、師匠……!)
ヴァレリアと剣を交える度、様々な記憶が
異世界での日々、修行の日々、かけてくれた声など。
そんな思い出がカナタの剣を鈍らせる。
『キミは剣の筋がいいな!』
『特製の即席スープだ。おっと、味は期待するなよ?』
『キミを元の世界に戻してみせる。必ずな』
そして、最後の瞬間も鮮明に覚えていた。
『生きろよ、カナタ。キミは幸せになるんだ』
その言葉を残し、ヴァレリアは魔族に斬られたのだ。
あの時救えなかった事を、カナタはずっと後悔していた。
そんな師匠と再会できた今、剣を向けることなど出来るはずもなかった。
「俺には、できない……」
「カナタ……!」
交差しているカナタの剣が、徐々に下がっていく。
手に力を入れられていないのだ。
すると、マウロはウヒッと笑った。
「まさかここまで
「……! カナタぁ!」
マウロはヴァレリアの魂を操る。
カナタにとどめを刺すように。
だが、その一振りは──寸前で止まった。
「ぐああっ!」
「師匠……!?」
ヴァレリアは右腕に小刀を刺すことで、物理的に剣を手放した。
力が入らなければ、剣を持つこともできない。
だが同時に、これは剣を持てないほどのケガを自ら負ったということだ。
それでも、ヴァレリアは何一つ痛そうにせず笑った。
「聞けカナタ。この数日は、ワタシにとって夢のような時間だったんだ」
「……!」
「キミの今の姿を見られて、楽しそうな姿を見られて。師としてこれ以上の幸せはない」
「そ、そんな……」
しかし、その表情の中にも思い残しは見られる。
「願わくば、キミと従魔ともっといたかったが……これ以上は見過ごせない」
「……っ!」
ヴァレリアが視線を移した周りでは、従魔たちも苦戦している。
「【
「「「ギャオオオッ!」」」
相手にしているのは、決して倒れない不死身の魔物集団だ。
《まじで無限復活なのかよ!?》
《燃やしても凍らせてもダメなのか》
《バラバラにしても再構築するしな……》
《感情がないからバブみも効いてないぞ》
《ガチで天敵じゃねえか!》
《どうしたらいいんだこれ……》
「ココネはどれだけでも……!」
「でも、ちょっとお姉さんでも大変かもねえ」
今は圧倒しているが、ずっと続けば従魔たちの体力も尽きる。
そうなってからでは遅いのだ。
そして、もう罵倒は効かないと考えたヴァレリアは、カナタにただ一言告げた。
「師として最後の願いだ。
「師匠……っ!」
弟子ならば聞かないわけにはいかない。
だが、やはり一歩が踏み出せない。
そんなカナタの体に、一つの能力が
(……! これは!?)
仲間の能力を借りる【共奏】を通して、強く主張してきたのだ。
しかし、カナタは見たことがない能力だ。
カナタが勢いよく振り返った先には──ミカ。
(信じて、いいのか……?)
(ええ)
(わかった!)
二人はアイコンタクトを交わすと、カナタの目に炎が灯った。
覚悟を決めた目で、再び強く剣を握る。
「師匠、待ってて」
「カナタ!?」
その瞬間、カナタが消える──否、本気で跳び上がったのだ。
真っ直ぐ向かった先は、マウロの方向。
「なっ……!?」
マウロは反応が遅れながらも、とっさに防御態勢を取る。
同時に、先程と同じくヴァレリアを引き寄せた。
しかし、今のカナタには関係ない。
「断絶」
「がはあっ……!」
ヴァレリアのすれすれを通るように、カナタは【空間断絶】を放った。
【超感覚】で
「お前は初めから取るに足らない」
「さすがだ……だがいいのか!?」
死に際のマウロは、ニヤリと笑った。
「
「……っ!」
言葉通り、隣のヴァレリアの体も分解され始めた。
己の死を察したヴァレリアは、そっとカナタに手を向ける。
しかし、そこに暗い顔は無い。
「カナタ、ありがとう」
心からそう思っている表情だ。
自分の願いが届いたこと、これ以上カナタを傷つけずに済んだこと、そしてカナタが勝ったことに喜びを感じているのだろう。
最後に師匠の役目を果たせたヴァレリアは、ふっと笑った。
「元気でな、カナタ」
「いや、まだだ!」
「……!?」
だが、カナタは諦めていない。
「ミカ!」
「ええ。ママに任せて」
カナタが振り返ると、両手を包んだミカが祈るように立っていた。
(本当はカナタちゃんに取っておいたんだけどね)
異世界でカナタの処刑を知らされた後、ミカは何か出来ないかと必死に考えた。
そこで至ったのが、この“奥義”である。
(いいんだね、カナタちゃん)
(ああ、頼む)
もう二度と使えないため、カナタ用に取っておいた。
【共奏】とアイコンタクトにより、カナタもそのことを理解したが、迷わず首を縦に振る。
ミカも主の判断ならばと解放した。
「【大地の
辺りを包み込むよう、ミカから優しい黄緑色の光が広がった──。