現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「師匠。はい、あーん」
カナタはご飯をすくったスプーンを差し出す。
師匠のヴァレリアに向かって。
だが、ヴァレリアは顔を真っ赤にして拒否する。
「子どもじゃなーいっ!」
「すみません、つい」
「まったく……」
異世界の魔王軍四天王マウロを倒し、数日後。
ミカの奥義【
だが、この世界ではミカの魔力が足りず、少女(ロリ)の姿で止まっている。
ミカが魔力を足すことで、毎日少しずつ成長はしているが。
「はいヴァレリアちゃん。成長の時間ですよー」
「うんママ! ──って、だから違ーう!」
ミカに魔力を流してもらい、ヴァレリアはまた少し年齢を加速させる。
今回の成長で高校生ぐらいにはなった。
いつもの和気あいあいとした空間だが、ふとヴァレリアが口を開く。
「カナタ、みんな。話がある」
「ん?」
「体が成長しているからか、昨日から記憶が戻り始めてな。報告しなければならないことがあるんだ」
ヴァレリアは真剣な面持ちで続けた。
これからの行動に関わる重大な話を。
「ワタシは、魂が眠っている墓を掘り起こされて死者蘇生された。ワタシの魂に、復活できるほどの
「そんなことが……」
「その上で、
ヴァレリア復活の真実、そして今までの相手についても明らかになる。
すると、カナタには自然に疑問が浮かぶ。
「それじゃ、他の四天王二人も復活しているのか?」
「だろうな」
「待てよ! じゃあまさか魔王も……!」
カナタの顔が
「いや、おそらくそれはない」
「え?」
「奴ら四天王が復活したのに、どうしてこちらの世界に来ているか分かるか?」
「た、たしかに不思議だ……」
カナタには敗れたが、四天王は強い。
あの強さがあるなら、普通にあちらの世界を征服すればいいのだ。
しかし、彼らはそうしていない。
「それほどの理由がこちらの世界にはあるんだ。向こうの世界を征服するよりも、優先すべき事項がな」
「そ、それって?」
「これはワタシの推測に過ぎないが──」
ヴァレリアは取り戻した記憶も辿りながら、言葉にする。
「こちらの世界に“魔王の魂”が迷い込んでいる」
「……!」
基本は本能で動く魔族だが、魔王への忠誠は本物だった。
こちらの世界へ来るにはリスクもあるが、それが王のためであれば納得できる。
「死者は、元の魂に生贄を捧げて復活させている。だが、そもそも元の魂が無ければ話は始まらない」
「じゃあ奴らは、この現代で魔王の魂を探しているのか」
「そうなる」
ヴァレリアは操られる直前、異世界魔王軍の様子を確認していた。
それからはマウロに記憶を阻害されていたが、今は
その時の状況や会話から、この推測にたどり着いたのだ。
「魔王の魂か……」
カナタを含め、みんなが考え込む。
一度倒した相手とはいえ、魔王の脅威は理解している。
あの最後の死闘が頭を
だが、ココネがふと口を開いた。
「ということは、復活自体はしていないのですね」
「……! そうか!」
「はい。では
考えが共有できたのか、ルーゼリアが言葉にする。
「お姉さん達が先に魔王の魂を見つけて、破壊すればいいのね」
「うっひょー、テンション上がってきたね!」
「ふふっ、可愛がってあげようかしら」
それにはエルヴィとミカも乗っかった。
さらに、ヴァレリアが推測を付け加える。
「しかも、聞けば魔人はこのニホンにしか出現していないのだろう?」
「そうだ、ということは!」
話をまとめ、カナタは推測を結論付けた。
「魔王の魂はここ──日本のダンジョンのどこかにある」
★
異世界、とある暗い場所。
「我らが魔王の魂は見つかったか」
大きな椅子に腰かけた者が、口を開いた。
この男は魔王軍の参謀。
かつてカナタに倒されたが、ヴァレリアや四天王と同じ方法で復活を果たしていた。
参謀にたずねられた部下は、頭を下げながら答える。
「申し訳ございません。まだ確定には至っておらず……」
「遅い、何をしている!」
「しかし、かなり割り出すことには成功しています」
部下の背後では、煮えた大鍋に魔族が次々に投入されている。
ここで得た
すると、部下は続けて言葉にした。
「それから、気になる情報が一つ」
「なんだ。私は忙し──」
「あの勇者カナタらしき人物が、向こうの世界で確認されました」
「なんだと!?」
カナタが処刑された事は、参謀の耳にも届いている。
人間は愚かだと思ったが、魔族にすればラッキーだ。
そうなれば、今までの事態にも予想が付く。
「では、送り込んだ四天王のガルドル様、マウロ様が帰還されないのは!」
「はい。おそらく勇者カナタに倒されたものかと」
「あの憎き勇者め!」
怒りを抑えられない参謀だが、部下はある物を差し出す。
「そして、魔族の一名が命からがら取得したものがこちらです。向こうの世界では、スマホだとか、なんだとか……」
「さっさと見せんか!」
ロックが解除されたスマホだ。
参謀は乱暴にそれを奪い取ると、部下が開いていた画面を触る。
そこにはオフライン保存した、カナタの配信の切り抜きが映った。
『こんにちは、世間をお騒がせしてすみません』
『えー、焼肉屋さんは出禁になりました』
『お前ら何やってんだー!? あーもうめちゃくちゃだよ』
「「…………」」
勝手に流れていく映像を見ながら、二人は黙りこくる。
出てくるのは、カナタとその仲間達。
どれも見たことある連中だが、やはり最大の敵であるカナタに着目する。
だが、そこには彼の見たこともない姿が映っていた。
やがて、参謀は声を上げる。
「貴様ふざけているのか! こんな
「ですが、顔は一致します。従魔もいますし……」
「あの恐ろしき男が、こんな平和ボケした顔をするものか! ……ハァ、ハァ」
参謀は興奮のあまり呼吸を荒くさせる。
魔族からすれば、同胞を壊滅させられた脅威だ。
こう思うのも仕方がない。
しかし、事前に映像を全て確認した部下は、さらに情報を追加する。
「しかも、あちらでは『魔王軍』を名乗っているんだとか」
「はあ!? ますます意味不明だ! では“そっくりさん”だ! よく見たら顔も思ってたのと違ったし!」
「そんな、フラれた思春期男子みたいな事言われましても……」
参謀の混乱には、部下も若干呆れる。
それほど、現代で
ちなみに、カナタは世界を超えてくしゃみをしていた。
「へぷしっ! ……誰か噂してる?」
と、そんな事は知る
その心には、魔王に忠誠を誓った想いを秘めている。
カナタらしき人物もいるとなれば、ますます“計画”を急ぐ必要があるのだろう。
「まあよい! 引き続き、魔王様の魂の在りかを割り出せ!」
「はっ」
カナタ達の推測は的中していた。
異世界魔王軍の目的は、魔王復活のため魂を捜索すること。
そのために現代へ魔人を送り込んでいたのだ。
「現在掴んでいる情報は!」
「ニホンのトウキョーと呼ばれる場所にあらせられるかと」
「わかった」
判明している情報は、カナタ達と大して変わらない。
ここからは行動の速さが鍵を握るだろう。
加えて、まだ魔族側にも希望はあった。
「近い将来、再び勇者の軍団と戦うかもしれんが……」
「はい。かつてほどの力はないかと」
映像から、カナタが勇者時代ほどの力は持っていないことは分かった。
なぜか『七つの能力』は欠けているのだ。
参謀はそこに勝機を見出し、計画を進める。
「私は戦力を集める。情報が分かり次第、逐一報告せよ!」
「はっ!
そうして、参謀はスマホをポケットにしまう。
「このスマホとやらは私が預かる。彼らの情報、特に従魔のミカは確認しておかなければならないからな!」
「……はっ」
小さめの返事をしながら、部下はふと思い至る。
(そういえば、参謀が死に際に食らったのは【バブみの波動】だったな……)
それに関係するかは分からないが、参謀は早速“歩きスマホ”をしながら部屋に帰っていった。
カナタ達『現代魔王軍』と『異世界魔王軍』の決戦は、着実に近づいている──。