現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「皆様こんばんは。ココネです」
ココネはぺこりと頭を下げると、浮遊するカメラに向き直る。
配信開始直後だが、プレビュー画面にはすでに多くのコメントが流れていた。
《うおおおきたあああ!!》
《ココネたーん!》
《今日もココネちゃんのソロ配信嬉しい!》
《毎日ありがたすぎる》
ココネが配信しているのは、自身の
数日前に突如開設され、
そして連日配信を行っており、注目を集めていた。
「また
《かわいい》
《ココネたん応援してます!》
《がんばれ~!!》
《久遠カナタ:見てるぞー!》
《↑主様いるじゃねえかww》
《お前は配信しろwww》
《ちゃんと本名でネットやっててウケるw》
ココネのソロ配信はカナタ本人も見守っている。
そんなカナタはというと──。
「ココネの配信も始まったな」
とある場所にて、カナタはココネの配信を確認した。
すると、ココネがソロ配信に至る経緯を思い出す。
「これが一番効率が良いはず」
先日、カナタは師匠ヴァレリアの推測を聞いた。
そこで魔王の魂の在りかを見つけるべく、手分けして捜索することにしたのだ。
ココネがカナタと別れて配信をしているのは、そのためである。
従魔は一人でもダンジョンを攻略できるので、それぞれ配信で情報を集めながら探索するというわけだ。
「……まあ、趣味も混じってるだろうけど」
そう言いながら、カナタは別の配信を覗く。
開いたのはルーゼリアの個人チャンネル『お姉さんのお優雅なお料理ちゃんねる』だ。
ココネと同じく、ルーゼリアも連日別れてソロ配信をしていた。
『3分クッキングというのがあるらしいわね。お姉さんもやってみようかしら』
ダンジョンに潜っているルーゼリアは、呑気にコメントと会話をしている。
チャンネル名にふさわしく料理を始めるらしい。
だが、目の前にはすでに魔物が迫っている。
『ギャオオッ!』
『ではまずは、このクマを瞬殺します』
『ギャウンッ!』
ルーゼリアが指を鳴らすと、クマの魔物は燃えた。
『下ごしらえは済んだわね。あと2分59秒残るので鍋にブチ込みます♡』
《瞬殺したのBランク魔物ですけど!?》
《倒すとこからカウントするのかよw》
《まずはじゃねえんだよなあ》
《何も参考にならなくて草》
《お優雅とは》
《またしても不憫なクマさん》
《ぶっちゃけ美味そう》
ルーゼリアは相変わらずのようだ。
軽く様子を確認したカナタは、そっと配信を閉じた。
「よし、変わらないな」
ルーゼリアが個人配信は、連日話題になっている。
いつも通りの破天荒ぶりに、もはや安心感すら覚えた。
それでも、捜索はしっかり
従魔達の配信を確認して、カナタは自分のカメラを起動する。
「じゃあ配信開始するよ、師匠」
「ああ」
師匠のヴァレリアはカナタに帯同していた。
彼女は日々成長を促進してもらい、大学生ほどの見た目になっている。
だが、完全に力を取り戻してはいないので、一人にさせるのは不安だったようだ。
カナタはいつもの挨拶から配信を開始した。
「どうも、世間をお騒がせしてすみません。魔王です」
《こんばんはー!》
《魔王様もきたあ!》
《やばいどこの配信見ればいいんだ!?》
《さすがに五窓するわ》
《こっちには師匠もいる!》
《ヴァレリアさんまた大きくなりましたね》
雑談の種として、カナタは最後のコメントに反応する。
「ですよねー。師匠には、この前まであーんして食べさせてあげてたのに──ごはっ!」
「言うなと忠告しただろう!」
「うぐっ、つい……」
顔を真っ赤にしたヴァレリアは、カナタにげんこつを浴びせた。
いつもの師弟のやり取りに、配信は早速盛り上がる。
《お師匠かわいいw》
《師匠にあーんだって!?》
《相変わらずズルいことしてやがる!》
《てかまじで成長早いな》
《成長促進ってよく考えたらすげえわw》
ヴァレリアの成長具合も、カナタの配信の見どころになっているようだ。
彼女自身は恥ずかしがっているだが。
「くっ、なんたる
そんなヴァレリアは、従魔達と同等の人気を獲得している。
配信事務所『魔王軍』によるグッズ化はもうすぐかもしれない。
と、簡単なやり取りを終え、カナタは早速配信を進める。
「今日来たのはA級『青水晶ダンジョン』です」
A級と言うだけあり、都内でも屈指の難易度を誇るダンジョンだ。
ここを二人だけで探索するというだけで、カナタとヴァレリアの規格外さが理解できる。
しかし、さらに驚くべき事があった。
《こいつらもA級ダンジョンかよww》
《従魔達もそれぐらいの所行ってない!?》
《まじでどうなってんだww》
《A級で遊ぶな笑》
《都内のダンジョンが
現在違うダンジョンを探索する従魔達も、同等の難易度のダンジョンに潜っていたのだ。
それぞれがソロ配信を始めた時はC級程度から始まったが、しらみ潰しに探索していると、ついにA級まで辿り着いてしまった。
聞いた事のない事態に視聴者はざわつく。
否、視聴者だけでなく、全探索者が口をあんぐりさせていることだろう。
しかし、逆に言えば、カナタ達もそれほど急いでいるのだ。
(魔人に先を越されるわけにはいかない……!)
魔人側が先に魔王の魂を見つければ、そのまま復活されてしまう。
現代に魔王が蘇った時の事など想像もしたくない。
これをなんとしても防ぐべく、カナタ達は動いていた。
だからこそ、存分に力を振るう。
「じゃ、行くよ師匠」
「ああ」
カナタはスキル【超感覚】を発揮させ、ダンジョンの大まかな構造を掴む。
そのまま剣を掲げると、下に向けて【空間断絶】を数回放った。
「ショートカットだ!」
カナタの複数の斬撃によって床は崩れ、一点に収束するようになだれ込む。
あらかじめ探索協会会長に相談していたため、他の探索者はいない。
堂々とダンジョンを荒らすと、カナタとヴァレリアは
「よっ!」
「ほっ!」
今なお雪崩は起きているが、カナタは周囲に【反射領域】を展開。
領域が勝手に
反射する空間をまといながら、二人はスイーとダンジョンを降りていく。
『七つの能力』の内三つを使い、巨大なすべり台の完成というわけだ。
「とりあえず下層まで行こっか」
「そうだな」
《なんなんだよこれw》
《攻略RTAで草》
《改めてチート能力すぎ》
《たまに魔物の悲鳴聞こえてくるw》
《魔物さんは巻き込まれてるのか……》
《魔王の所業すぎるwww》
そうして、カナタとヴァレリアは下層まで進んでいく。
「特に気配は感じないな」
下層まで辿り着いたカナタは、そのままダンジョンを進行していた。
時々魔物を倒しつつ歩いているが、目的の物は見つからない。
(そろそろ何か収穫があると良いんだけど……)
カナタ達が手分けするようになってから、それなりに日が経つ。
魔人の動きは無いようだが、こちら側の成果が欲しい頃だ。
すると、後方のヴァレリアが口を開いた。
「カナタ! エルヴィから通信だ!」
「本当か!」
反応したカナタは、すぐにスマホを受け取った。
「エルヴィ、どうした!」
『見つかったよー、優先事項
「……!」
手分けして捜索する中で、カナタ達にはいくつか目的がある。
もちろん優先事項の第一位は、“魔王の魂”。
そして、第二位は
『ちょい余裕がないから切るね。けど、カナタ様のために回収してみせるから』
「エルヴィ──!」
通信が切れ、カナタはすぐにエルヴィの配信を確認する。
そこでは、エルヴィがある魔物と向き合っている。
『あははっ、キミは
『クルゥ……』
優先事項第二位とは、カナタの『七つの能力』を宿す魔物だ。
カナタの魂の気配を感じられるエルヴィならば、間違いない。
すると、ヴァレリアがカナタへ尋ねる。
「どうする。一度引き返して、エルヴィのダンジョンに向かうか?」
「でも、それじゃ……」
エルヴィが潜っているダンジョンは割と近くに存在する。
だが、一度地上を介すると、時間がかかるのは明白だった。
そう思考を巡らせていると、カナタは突然ハッとする。
「──って、これは!」
そのまま目を見開き、奥へ視線を向けた。
自身に宿る【超感覚】に導かれるように、カナタは直感したのだ。
「師匠、先に進もう」
「いいのか!?」
「大丈夫」
現代ダンジョンにおける新たな概念を──。