現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「あとは任せろ」
奮闘したエルヴィに代わり、カナタが前に出た。
見上げた先には、一匹の魔物『クロタカ』がいる。
「クワァ……」
クロタカはカナタの能力【重力操作】を持っている。
これはカナタが異世界の“後半の旅”で得た力であり、今までの能力と比べてもより強力だ。
それでも、カナタのやる事は変わらない。
「まずは一発! ──【空間断絶】!」
「クワッ!」
「……! さすがに当たらないか」
【空間断絶】は空間そのものを
それは【重力操作】の範囲空間すら一刀両断するが、斬撃自体が
クロタカは自ら回避し、再び重力空間を展開した。
(やっぱ能力を攻略しないと無理かなー)
動きも素早いクロタカを仕留めるには、より近距離で攻撃しなければならない。
やはり【重力操作】の攻略は
それを確かめられたことで、カナタは真っ直ぐ向かう
「ま、すぐに取り戻してやるよ!」
《カナタ君いけえ!》
《主様の出番や!》
《信じてるぞ魔王様ー!》
《エルヴィちゃんの
《あとは任せろがフラグにならないように頼む》
カナタが到着したことで、エルヴィは配慮して自身の配信を切っている。
両チャンネルの視聴者が見守る中、カナタは【重力操作】の範囲内に突っ込んだ。
「クワッ!」
「おっと! ──【反射領域】」
クロタカが重力を強めると、カナタも能力で対抗する。
反射の恩恵で大きな重力は受けないが、それ以上体が進まない。
体の周囲にまとうだけの【反射領域】に対して、【重力操作】の方が効果範囲は広いからだ。
(懐かしく思えるな。だったら……!)
しかし、これはあくまで探り合い。
【反射領域】を回収した時と同じく、カナタは対【重力操作】を
カナタが自分の能力と戦うのは、初めて
「こんなのはどうだ? 【共奏】」
「カナタ様……!」
カナタは、味方から能力の一部を借りる【共奏】を発動させる。
それにはエルヴィが反応を示した。
借りた能力がエルヴィのものだったからだ。
さらには、それを“パワーアップ”させる。
「【血染めの夜】に【空間断絶】を
「……!」
カナタが両手を広げると、小さな斬撃が無数に浮かび上がる。
エルヴィが扱う赤い
これは一つ一つ、全てが【空間断絶】と同じ性質を持つ。
「名付けて【空間断絶の夜】なんてな!」
「クワアッ!?」
つまり、空間を貫通する無数の斬撃が、豪雨のように襲いかかる。
《あれ全部貫通してくんのか!?》
《やばすぎだろ!》
《エルヴィちゃんの技理解してるな》
《かわせるわけなくて草》
《急に別ゲー始まったwww》
《クロタカさん逃げてぇ!》
《そんな夜嫌すぎるwww》
クロタカもなんとか逃げようと飛び回る。
だが、無数の弾幕をいつまでも
「クァッ……!」
「ヒットしたあ!」
数発の斬撃がクロタカを
ダメージを負い、クロタカの意識は能力の制御から
カナタはその
「おりゃあっ!」
「クアアッ……!」
上から迫ったカナタは、クロタカの頭を叩きつけるようにかかとを落とす。
クロタカはクラっと
あとはもう、勝負を決めるだけでいい。
「終わりだ──【空間断絶】」
「クア、アア……」
巨大な斬撃はクロタカを真っ二つにした。
それぞれの能力を生かした、
ヴァレリアも含め、周囲は改めてカナタの強さを思い知らされる。
「まったく、師匠の立場がないな」
「これがカナタ様ですよ」
《うおおおおおお!!》
《まじかよ圧倒じゃねえか!》
《やっぱりカナタ君が最強!》
《エグいわ魔王様》
《エルヴィも十分最強なのに!》
《ただのツッコミキャラじゃなかったんだ》
《↑カナタ君の強さ知らないにわかはアーカイブ全部見直せ》
《過激派も見てます》
《つえええええええ!!》
そうして、崩れ去るクロタカから、カナタへ光が移る。
「よし」
五つ目の能力【重力操作】を取り戻したのだ。
これにて一件落着。
──かと思いきや、辺りから騒々しい声が聞こえてくる。
「「「グオオオッ!!」」」
「「「……!」」」
途端に群がってきたのは、ダンジョンの魔物たちだ。
戦闘音が静まり、エサを求めてやってきたのだろう。
しかも、ここはA級ダンジョンの下層。
どれもA級を下らない強力な魔物ばかりだ。
突然の事態に、エルヴィとヴァレリアは臨戦態勢を取る。
「んもー、こんな時に!」
「やるしかないようだな」
「大丈夫だよ、二人とも」
しかし、カナタが二人を制止させた。
そのまま二人の盾になるよう前に立つと、右手に力を込める。
「久しぶりの感覚だな」
「「……!」」
カナタは半透明の球体を浮かばせると、それがぶぅんっと辺りに広がる。
先程の戦闘で既視感のある空間だ。
空間が辺り一面を
「【重力操作】」
「「「グオッ……!?」」」
その瞬間、空間内の魔物は全て地面にひれ
大きな重力に、上からのしかかられたように。
だが、クロタカが使用した時よりも重力は何倍も大きい。
「疲れた仲間を襲うなんて野暮じゃないか」
「「「グオ、オ……」」」
【重力操作】の強さ・範囲は使い手によって変化する。
元の持ち主であるカナタの【重力操作】は、クロタカが使うそれとはまるで違う。
ひれ伏した魔物は、指一本動かすことができない。
《全員土下座してらwww》
《土下座ってかひれ伏してるww》
《これってさっきの技!?》
《この光景怖すぎて草》
《まじで魔王じゃねえかwww》
《これで人間って主張する方が無理あるって!》
《恐ろしや恐ろしや》
《名実ともに魔王になられたのですな》
しかし、賢い魔物は何かを察知し、【重力操作】の範囲外から見守っている。
「「「グオオ……」」」
「うーん、倒すのも面倒だな」
すると、カナタは振り返った。
「んじゃエルヴィ、行くぞ」
「はい!」
異世界でも最後まで一緒だったエルヴィは、何をするか分かったのだろう。
首を傾げるヴァレリアには、カナタが声をかけた。
「師匠は俺がだっこします」
「ちょっ、はあ!?」
「初めてだとちょっと怖いですから」
「な、なにを──って、おわっ!?」
カナタが再び力を込めると、三人の体がふわりと浮く。
回収した能力は【重力
重力を“操れる”能力だ。
すなわち、重くするだけではない。
「うし、地上まで一直線だ!」
「はいカナタ様っ!」
「う、うわああっ!」
カナタは【重力操作】により、周囲を“無重力”にした。
相手には大きな重力を与え、味方の重力は小さくする。
この“弱体化”と“強化”の両性質を生かして初めて、この能力は真価が発揮される。
これが、旅の後半で得たスキルたる
《操作ってそういうことかよ!》
《味方の体は軽くできるんか……》
《このスキルえっぐwww》
《クロタカは使いこなせてなかったんやな》
《空間内で戦ったら無敵じゃんwww》
《あーあまた魔王が壊しちゃった》
《もう手がつけられんくて草》
「ひゃっほーい!」
「ひゅーんっ!」
「ぎょええええっ!」
こうして、カナタ達は五つ目の能力【重力操作】を回収し、ダンジョンを後にしたのだった──。
★
その日の夜。
「今回もお疲れ様でした」
ギルド本部の会議室で、
どう考えても立場が逆だが、集まった従魔たちは満足げだ。
会長もほっと安心すると、早速本題に入る。
「それにしても、魔王の魂とやらは見つかりませんね」
会長には色々と手を回してもらっているので、ある程度の情報を共有している。
一応カナタの能力回収という進展はあったが、一番の目的は達成していない。
しかし、カナタは首を横に振った。
「それについてなんですが、今回の探索で思ったことがあります」
「え?」
「境界までいくと、違うダンジョンへ飛ぶと判明しましたよね」
「そうですね。私もびっくりでしたが」
今回、カナタ達は現代ダンジョンの概念をひっくり返した。
ダンジョン同士は繋がっていて、境界まで進むとダンジョン間を移動できたのだ。
とはいえ、壁を壊すなど他の誰にもできないため、ほとんどカナタ達専用の通路と言えるが。
その件を共有しながら、カナタは仮設を立てる。
「だったら、まだ探していないところもあるかと」
「そ、それって……!」
「はい」
会長も勘づいた場所を、カナタに口にする。
「ダンジョンの下の境界です」