現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第49話 下の境界の先

 「今日はダンジョンを下に掘っていきたいと思いまーす!」

 

 配信開始直後、カナタが声高々に宣言する。

 衝撃的な発言に加えて、久しぶりに従魔が勢ぞろいしていることもあり、配信は早速大盛り上がりだ。

 

《ダンジョンを“掘る”!?》

《探索で聞いたことない述語で草》

《相変わらず意味わからん事言ってらw》

《アホなこと言い出したwww》

《こいつらなら可能なのもオモロい》

《ぶっちゃけ気になる》

 

 先日、現代ダンジョンは繋がっている事が判明した。

 壁を壊し、横の境界まで進むことで隣のダンジョンにワープできるのだ。

 

 ならば、下の境界まで行くとどうなっているか。

 そんな疑問から考えついたのが今回の行動である。

 さらに、ダンジョンは下に進むほど難易度が高くなるのが常識だ。

 

「何が待ってるのかな~」

 

 これは前代未聞の試みである。

 そもそも壁を壊せるほどの破壊力はカナタ達しか持っていない。

 彼らは今、現代ダンジョンの深淵(しんえん)に触れようとしていた。

 

 すると、カナタは号令をかける。

 

「全員装着!」

 

 その号令の元、カナタ達は工事用ヘルメットを被った。

 見た目から入るため、わざわざ購入してきたのだろう。

 

「でははじめ!」

「「「はいっ!」」」

 

 気合いを入れ、カナタ達はダンジョンの掘削(くっさく)工事を始めた。

 ちなみに、ここはすでにA級ダンジョンの下層だ。

 

《ダンジョンで何やってんだwww》

《相変わらず緊張感なくて草》

《ここ下層ってまじ?》

《下層までの道のりを配信しろよw》

《もう普通のダンジョンは楽勝すぎてカットしてるwww》

《こいつら見てたら常識忘れるわ》

 

 しかし、ダンジョンの壁や床は非常に強固だ。

 カナタ達の登場までは“破壊不能オブジェクト”と思われていたほどに。

 ならば、掘削の仕方も独自の方法になる。

 

 地面に手を付いていたココネは、こくりとうなずいた。

 

「相当深くまで凍らせました」

「じゃあ次はお姉さんが。3.2.1──ファイア」

 

 ──ボガガガアアアアッ!

 

 凍らせた地面に炎を注ぎ、床は大爆発を起こす。

 ココネとルーゼリアの相反(あいはん)する属性同士を合わせ、床は一気に破壊していく。

 

 一方で、カナタとエルヴィは楽しげに掘っていた。

 

「断絶っ」

「トゲトゲっ」

「断絶っ」

「トゲトゲっ」

 

 二人は(もち)つきのように、交互に床を破壊していく。

 その呑気(のんき)な声とは裏腹に、辺りに(ひび)(わた)るのはドガッ、ボガッとした轟音(ごうおん)だ。

 

 そうして、どんどん下へ進む四人の様子を、ミカとヴァレリアは見守っていた。

 

「みんな~、疲れたら戻ってくるのよ~」

「わ、私も癒してやらんこともないぞ?」

 

《掘る速度半端ないって!》

《え、これって普通壊せないんだよね??》

《こいつらやっぱバケモンだわww》

《ココネちゃん張り切ってグラサンしてるのかわいい》

《お姉さんノリノリで草》

《断絶っじゃねえんだよなあ》

《あそこ怖いw》

《ガチママさんいるじゃんw》

《師匠もすっかり癒し枠》

《カオスすぎんだろこの配信www》

 

 すると、それなりの時間をかけて下の境界が見えてくる。

 この先に床が存在しないと、カナタの【超感覚】が感知したのだ。

 カナタは集合をかけ、渾身の一振りをする。

 

「みんないくぞ──【空間断絶】」

 

 最後の床をぶっ壊すと、壁の先に真っ暗な空間が見えた。

 

「ワープできる! やっぱり下にも続いてるんだ!」

 

 あれがどこかと繋がる境界だ。

 カナタ達はそれぞれ顔を見合わせて、覚悟を決める。

 全員と体を寄せ合い、その境界へ飛び込んだ。

 

 その先にあったのは──。

 

「こ、これは……!?」

 

 暗闇から視界が開けると、空に浮いていた。

 ダンジョンの上空に飛んだのだろう。

 カナタ達は次々に雲を突き抜け、スカイダイビングのように絶賛落下中だ。

 

「やばいってえ! だ、誰か! この中に解決できる能力をお持ちの方はいらっしゃいませんか!?」

 

《空に出たあー!?》

《新たなダンジョンなのか!?》

《周り普通に明るくね!?》

《どうなってんだこりゃ!》

《境界線を移動するだけでも前代未聞なのに!》

《歴史的大発見だろ!》

《お医者様を探す言い方やめろww》

 

 視聴者は景色に釘付けだが、カナタ達は大ピンチだ。

 しかし、この状況を打破できる能力を持つ者はいない。

 このまま落ちて死亡……かと思いきや、カナタはふと思い出した。

 

「いやあったわ──【重力操作】」

「「「だあっ!」」」

 

 従魔たちが空中でずっこける中、カナタ達の落下速度は緩やかになる。

 最近取り戻した能力のため、頭から抜け落ちていたのだろう。

 おかげでカナタ達は、ゆっくりと雲が浮遊する高度を抜けた。

 

 冷静になって下を眺めると、地上の様子が見えてくる。

 

「魔物! それも大量の……!」

 

 地平線まで広がるのは、(にご)った色の草原だ。

 その上には、数えるのも億劫(おっくう)なほど大量の魔物が跋扈(ばっこ)している。

 魔物はお互いに争い合い、地獄絵図になっていた。

 

 さらに、驚くべきことはまだある。

 

(現代では見たことない奴らばかりだな……)

 

 目に付くあらゆる魔物が、現代では未発見のものばかり。

 巨大で凶暴な姿は、異世界でも“魔界”に住んでいた種族だ。

 すなわち、現代では“未確認魔物”である。

 

「工事用ヘルメットなんて、ふざけてる場合じゃなかったか」

 

《そりゃそうwww》

《あの魔物なんだ!?》

《見たことない奴ばっかりだぞ!?》

《これも歴史を変える発見じゃ!?》

《どれも巨大じゃねえか!》

《今までとはレベルが違いそう……》

《ここヤバイんじゃね!?》

《魔物博士から言わせてもらうとココネちゃんは素晴らしい可愛さですね》

 

 歴史を()()えまくる今配信は、200万を超える同接となっている。

 ただの視聴者の他にも、世界中から同業者や研究者が見ているだろうが、配信に映る全てが新しいものだった。

 そんな()(もん)も広がる中、ココネは口にする。

 

「主様、まずは殲滅(せんめつ)します」

「ああ、頼む」

 

 とにかく、カナタ達は降り立つ場所を確保しなければならない。 

 そう意思を一致させると、従魔はそれぞれ飛び立った。

 すでに地上付近まで迫っているので、重力操作も必要ない。

 

「凍れ──【静止世界(アブソリュート・ゼロ)】」

「燃えなさい──【朱雀(すざく)炎舞(えんぶ)】」

「あははっ! ──【闇の舞踏(ナイト・パレード)

「良い子はあっちに行きなさいね~──【バブみの波動】」

 

「「「ギャオオッ!?」」」

 

 魔物からすれば、突如空から破滅的な攻撃が降り注いだことだろう。

 種族同士で争っていたのに、謎の第三勢力が乱入してきたのだ。

 

 魔物たちはパニックに(おちい)ると、蜘蛛(くも)の子を散らすように消え去る。

 

《いや楽勝なんかーい!》

《そりゃ負けるとは思ってなかったけどw》

《未確認魔物も余裕とは……》

《いかにもヤバそうだったのに》

《謎の第三勢力強すぎてワロタ》

《まあ他にもいるんだろうな》

《魔物「なんじゃあいつら!?」》

《上から魔王たちが降臨するの怖すぎ》

 

「よーし、安全地帯確保」

 

 周囲数百メートルは魔物がいなくなり、カナタ達は着地する。

 すると、すぐに気づくことがある。

 

(……! この感じ、魔界特有の“(しょう)()”か!?)

 

 地面から不快な空気が()れ出ているのだ。

 異世界の魔界を思い出すような、嫌な空気が体にまとわりつく。

 妙に体が重く、常にめまいを起こすような感覚だ。

 

(久しぶりだとかなりの不快感だな……。さらに下へ行くには、専用の対策が必要か)

 

 カナタの【超感覚】はダンジョンが下に続くことを認識している。

 ただし、おそらく瘴気は下に進むほど濃くなる。

 それを感じ取っている従魔たちも気が進まないようだ。

 

「カナタ君、これは……」

「うん、一度退こう。情報は十分得られた」

 

 今日の目的は、ダンジョンの下の境界を確認すること。

 さらに下にダンジョンが続き、瘴気が発生していることが分かれば、目的は十分達成できたと言える。

 

「ということで、次回は本格攻略編! あとは帰るだけなんで配信切りますね~」

 

《もうそんな時間かー!》

《情報ゲットしたから対策するのかな》

《今日は色々ありすぎたしな》

《世界中のSNSが混乱してらwww》

《歴史的発見がアホほど出てきたからな》

《これは研究が大変そうだなあ》

《普通は帰りも魔物いるから配信するのにw》

《まあ魔王様は死なんやろ》

《おつ!》

《今日も楽しかった!》

 

 そうして、配信を切ったカナタは【重力操作】を発動。

 みんなでスイ~と空を昇っていく。

 その中で一度地上方向を振り返ると、カナタはハッと目を見開いた。

 

「……ッ!」

 

 一瞬、【超感覚】が奥底から何かを(とら)えたのだ。

 正確な正体は分からない。

 だが、何かがドクンと鼓動したような、とてつもない存在感だった。

 

「主様、どうかしましたか?」

「い、いや……」

 

 首を傾げたココネと同様に、周りは感知できていないようだ。

 カナタも確信が得られない事は口にしない。

 しかし、カナタは強い眼差しで答えた。

 

「なるべく早く戻ってくるぞ」

 

 

 

 

 数日後、異世界のとある一室。

 

参謀(さんぼう)!」

 

 『異世界魔王軍』参謀の元に、部下が入ってくる。

 部下はそのまま慌てた様子で報告した。

 

「ついに一際大きな反応を捉えました!」

「……!」

 

 参謀はミカの映像を見ていたスマホをさっと隠し、巨大な椅子から立ち上がる。

 それを見て見ぬふりをしながら、部下は続けた。

 

「おそらく我らが魔王のものかと!」

「左様か!」

 

 彼らは辿り着いたのだ。

 ずっと探し求めていた、魔王の魂の在りかに。

 参謀はこれでもかというほどに口角を上げた。

 

「はっはっは! なんとタイミングの良いことよ!」

 

 彼らは戦力を整えていた。

 上位魔人はもちろん、残り二人の四天王も復活させて。

 参謀は満を持して宣言した。

 

「整えた戦力を全て投入せよ!」

 

 

 

 

 その頃、ギルド会議室。

 

「ついに出発されるのですね。あの『深淵ダンジョン』に」

 

 会長はどこか緊張した声色で口を開いた。

 

 深淵ダンジョンとは、数日前にカナタ達が発見した、下の境界を越えた先にあるダンジョンのこと。

 世界中で話題になっているため、会長が命名した。

 

 会長の対面に座っているのは、カナタにヴァレリア、従魔たちだ。

 彼女らを代表して、カナタがうなずく。

 

「はい、準備は整いましたから」

 

 カナタは会長に答えながら、ふと隣に視線を移す。

 そこには、魔王軍お抱えの装備職人ロメンが倒れている。

 

「ココネたんの装備を作って死ぬなら本望……がくっ」

「ありがとうございます。早急に作って下さって」

 

 ロメンは瘴気対策をした新装備を製作してくれた。

 カナタのノウハウもあったとはいえ、異世界の職人が一か月かかったものを彼はたった数日で完成させたのだ。

 ロメンの技術(とココネ愛)がうかがえる。

 

 瘴気も対策したところで、カナタは改めて言葉にした。

 

「みんな、あの下にはおそらく魔王の魂がある」

「「「……!」」」

 

 あの日、カナタが感じ取った謎の鼓動。

 数日間考えた後、カナタはあれが魔王の魂だったと確信した。

 あとは見つけ出して破壊するだけだ。

 

 目標は目前だが、油断はできない。

 

「魔族もバカじゃない。そろそろ辿り着いてもおかしくない」

「ということは……」

「ああ。決戦になると思っておいた方が良い」

 

 異世界の魔王軍は一度勝利した相手だが、カナタはその脅威を誰より知っている。

 従魔たちも分かっているだろうが、カナタはあえて言葉にした。

 

 そして、拳を掲げる。

 魔王の恐怖を(よみがえ)らせないために。

 

「魔王の魂をぶっ壊しに行こう」

「「「はい!」」」

 

 『現代魔王軍』カナタ達は、『異世界魔王軍』との決戦に挑む──。

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