現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「どうも皆さん、カナタです! 今緊急で配信を回しているんですけども!」
カナタは浮遊カメラを起動し、配信を開始した。
しかし、背景がすでに普通じゃない。
「いま空から降ってます!」
ここは深淵ダンジョンの上空。
カナタ達は、ぼふんぼふんと雲を突き抜けている。
今まさに【重力操作】で速度を調整しながら落下しているところだ。
《は!?》
《なんでそうなる!?》
《まじで緊急でワロタwww》
《かつてない緊急》
《え、これ今始まったよね!?》
《だから道のりを配信しろてww》
深淵ダンジョンに潜るのは、二回目。
前回は
それを装備で対策し、いよいよ本攻略というわけだ。
「ロメンさんの装備も機能していそうです!」
また、カメラは他にも複数用意している。
従魔たちがそれぞれ配信をするためだ。
「ココネちゃんねる開始しました」
「お姉さんも始めたわよ」
「わたしも開始っ!」
「ミカママのよしよしチャンネル、起動したわ~」
《一気に通知きた!》
《うわあどれを見ればいいんだ!》
《なんでそれぞれで配信?》
《別れて攻略するとなったら便利じゃん》
《ミカママいくわ》
《集まってる内はカナタ君でいいな》
それから、もう一つ。
ヴァレリアが完全体となって帰ってきた。
「待たせたな、体は戻った」
ヴァレリアはキリッと鋭い眼差しを浮かばせる。
長く伸びたサラサラの金髪は後ろで結び、再会した時のような姿だ。
ミカの成長促進によってロリを卒業し、ヴァレリアは完全復活した。
《師匠復活!!》
《強い師匠戻ってきたああ!》
《おかえりなさい》
《あの姿も良かったけど(ボソっ)》
《ロリ師匠が恋しい泣》
《本人的にはこれが一番なんだろうけど》
《ここを攻略するなら必要な戦力だよな》
これで戦力は整ったと言って良いだろう。
それぞれ準備をしながら、カナタ達は雲が浮かぶ層を抜ける。
すると、地上の異変に気づいた。
「またあんな数の魔物が!?」
前回、真っ直ぐ降りた地点の魔物は一掃したはず。
しかし、同じ場所にまたも多くの魔物が見える。
あの巨体の数々がここまで早く
すると、地中から
「「「……ッ!?」」」
全員腕でガードしたが、波動自体にダメージは無い。
しかし、体を通過する時に強い不快感を覚えた。
カナタは感じたことをそのまま口にする。
「今のは、魔王の鼓動だ」
「「「!」」」
地中にある魔王の魂が、鼓動しているのだ。
鼓動の度にダンジョン全域に波動をもたらしている。
さらに、波動は地上にも影響を与えていた。
「「「グオオオオオッ!!」」」
「「「……!」」」
波動が通り過ぎた地上から、巨大な魔物が多数発生する。
魔王の魂による波動は、負のエネルギーの
カナタ達にとっては毒だが、魔物にとっては生命の
魔物が湧く速度が異常に速いのは、これが原因だろう。
この現象を前に、ココネが声を張る。
「主様、急がなければ!」
「ああ!」
前回の鼓動は、カナタしか感じ取れないほどに小さかった。
それが大きくなっているということは、復活が近い証拠だ。
カナタは【重力操作】を使い、多少無理をしてでも早く地表に向かう。
その中で、ふとルーゼリアが口を開いた。
「じゃあお姉さんは地上に残るわ」
「ちょっ、あんたこの人数を一人で止める気!?」
「ええ。どうせ誰かが残らないといけないでしょ」
「だからって……!」
それにはエルヴィが慌てて声をかける。
普段なら言わないだろうが、ここの魔物は格が違う。
どれもA級は下らず、S級もゴロゴロといる魔境なのだ。
しかし、カナタはルーゼリアに答えた。
「わかった、頼む」
「カナタ様!?」
「ルーゼリアの言う通りだ。ここで誰かが魔物を食い止めていなければ、俺たちの後を追って侵入してくる。それは避けたい」
リーダーとしての判断なのだろう。
だが、カナタは無責任なわけではない。
「それに、力を試したいんだろ? ルーゼリア」
「あら。なんのことかしら」
「ははっ、誤魔化すのもルーゼリアらしいな」
カナタは、ルーゼリアが陰で特訓を行っていたのを知っていた。
ルーゼリアはこう見えて人一倍負けず嫌いだ。
ココネが一番の潜在能力を持つことは認めても、実力では負けたくなかった。
日々こっそり出かけては、能力に磨きをかけていたのだ。
だが、カナタ達と一緒に行動する限り、その成果を発揮する場が無かった。
ルーゼリアは全力で暴れられる機会を待っていたのだ。
地上に近づいたところで、ルーゼリアは両手を広げる。
「【地獄の業火】」
「「「ギャオオッ!?」」」
その瞬間、世界が一変した。
辺りは炎に包まれ、地表からはマグマが
ルーゼリア自身も炎の両翼を生やし、火の化身のごとく姿に変わる。
パワーアップした本気形態だ。
《うおおおお!?》
《なんだこの火力!?》
《地獄絵図じゃねえか!》
《やばすぎんだろ……!》
《まだ力を隠してたのか!?》
《いや明らかに火力上がってるって!》
《裏で努力してたのか!》
すると、ルーゼリアは真下に炎の隙間を作る。
「カナタ君、今の内に」
「ああ──【空間断絶】!」
カナタはそこに剣を振るい、大きな穴を作り出す。
地下にダンジョンが続くことを確認して、全員で一斉に飛び込んだ。
不敵な笑みを浮かべるルーゼリアを残して。
「さあ、あとはお姉さんと遊びましょ♡」
「「「ギャオオッ!!」」」
ルーゼリアはさらに火力を上げる──。
★
「さて、どうするか」
地中に進んだカナタ達は、一度足を止める。
辺りは、一面の岩壁。
ダンジョンの壁を掘り進めたような景色で、特に初見感はない。
ただし、所々に穴が空いているようだ。
そう様子を探っている時、カナタ達は気配を察知した。
「「「──!」」」
だが、振り向いた方向はそれぞれ違う。
大きな気配は複数あったのだ。
顔を見合わせたカナタ達は、意思を合致させる。
「それぞれ別れよう。俺はこのまま下へ行く」
カナタは魔王の魂がある可能性が一番高い下へ。
「ではココネは左側へ行きます」
「わたしもそっち行こうかなあ」
ココネとエルヴィは西へ。
「じゃ、私はこっちね」
「ワタシも付いていこう」
残ったミカとヴァレリアが東へ進む。
ここからは魔族の警戒もしなければならない。
気配があった方向はどこも
さすがのチームワークで迅速に方向が決まり、カナタはうなずく。
「全員、健闘を祈る」
「「「はい!」」」
カナタ達は三方向に別れて調査を開始した。
★
「あら、懐かしい顔だわ」
ふとミカがつぶやく
壁を破壊しながら進み、大きな空間に出たところだ。
視線の先には、マントを
「ぬおっ!?」
異世界魔王軍の
彼の背後には、邪悪な色をしたゲートも見える。
あそこから世界を渡ってきたのだろう。
すると、ヴァレリアは剣を構えながら尋ねる。
「知り合いか? ミカ」
「ええ。ちょっとね」
深淵ダンジョンを進んで少し。
早くも異世界と現代の魔王軍がぶつかろうとしていた──。