現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

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第51話 因縁の相手

 「知り合いか? ミカ」

「ええ。ちょっとね」

 

 ヴァレリアが尋ねると、ミカはふっと笑みをこぼす。

 二人の前に現れたのは、異世界魔王軍の参謀(さんぼう)だ。

 

「ぬおっ!?」

 

 彼は以前、ミカの【バブみの波動】に敗北している。

 因縁の相手を前に戸惑っているようだ。

 しかし、その間にも戦力は補充されている。

 

「ひゃっはー!」

「暴れるぜえ!」

 

 参謀の背後には邪悪なゲートが空けられている。

 そこから世界を渡り、次々に魔人が送られてくるのだ。

 このままでは時間が経つごとにミカ側が不利になる。

 

 ミカはすぐさま勝負を決めにいった。

 

「せっかくの再会だけど、ご退場願おうかしら。──【バブみの波動】」

「「「ぐわああああっ!」」」

 

 ミカの両手から黄緑色のオーラが放たれた。

 毎度おなじみ、心を幼児化させる精神攻撃だ。

 

《容赦ねえwww》

《そりゃ敵だしな》

《あの数の魔人は厄介そうだし》

《そんなママも良い》

《バブ~!》

《ママ~!》

《コメントにも効いてる奴いて草》

 

 ミカの配信を見ている視聴者も勝利を確信。

 ミカ自身も着弾を確認し、保育士のように手拍子した。

 

「さ、みんな行くわよ~」

「「「…………」」」

「あら?」

 

 だが、魔族側の反応がない。

 少しした後、先頭にいる参謀は(わら)った。

 

「ふはははは! 我らには効か──ばぶ……効かぬわ!」

「!」

 

 なんと魔族が耐えている。

 一瞬怪しかったものの、正気を保っていた。

 これにはミカとヴァレリアも驚きだ。

 

「へえ、やるじゃない」

「あ、あれに耐えられる者がいるのか……!?」

 

《まじかよ!?》

《あのミカママの波動が!?》

《師匠が一番(きょう)(がく)してて草》

《身を以て体感してたからな》

《あの師匠でも甘えてたのに!》

《師匠でも耐えられなかったのに!》 

 

「ワタシの事ばかり言うなあ!」

 

 顔を赤くさせたヴァレリアは、コメントにツッコむ。

 恥ずかしいが、バブみに支配された過去は事実だ。

 だからこそ、余計に疑問を抱く。

 

(奴らは一体どうやって……!)

 

 対して、参謀はフッと口角を上げた。

 

「我らも遊んでいたわけではないのだ!」

 

 彼らはこの時のために修行してきたのだ。

 参謀は地獄の日々を語る。

 

────

 

 異世界、とある大部屋。

 

「準備はいいな」

 

 参謀は魔人を集合させていた。

 魔人はそれぞれ椅子に座り、前のシアターを向いている。

 体はきつく固定され、耳にはヘッドホンが付けられていた。

 

 すると、参謀はシアターに映像を流し始める。

 内容は“ミカ特集”だ。

 

「はい──【バブみの波動】っ!」

「「「バブう!」」」

 

 映像と音声、それっぽい香りや食事も用意され、魔人たちはバブみに支配される。

 それでも、しばらく時間が経てば様子は戻る。

 しかし、視聴をやめることは許されない。

 

 何度も幼児化と正常を行き来しながら、参謀は叫び続けた。

 

「耐性が付くまで見続けるのだ!」

 

 それに従い、魔人たちの地獄の日々は続く。

 

 正常に戻った時、幼児化した自分を思い出して自己嫌悪に(おちい)る。

 だが、五感をバブみに支配され、また幼児化してしまう。

 それらを繰り返し、徐々に耐性を付けていった。

 

 そうして、決戦の日を迎えたのだ──。

 

────

 

「ハァ、ハァ……あの日々は辛かった」

 

 参謀はぶるっと身を震わせ、事の顛末(てんまつ)を打ち明けた。

 そしてミカに堂々と宣言する。

 

「我らにバブみは効かぬ!」

「……っ」

 

 ミカは参謀の“推し”だった。

 

 こんな事はやりたくなかった。

 それでも、魔王の魂を探すために身を(けず)った。

 魔族の強い忠誠がうかがえる。

 

 参謀は涙ながらに指示を出した。

 

「さあ行け、我らが魔人ども!」

「「「はい!」」」

 

 参謀の指示に従い、魔人たちが一斉に襲いかかってくる。

 

《なんて奴らだ!》

《こいつは手ごわい》

《そこまでやるかよ!》

《参謀ちょっと辛そう》

《そこまでする目的があるのか》

《これちょっとヤバんじゃね!?》

 

 対して、ヴァレリアが前に出た。

 

「ミカ下がれ! はああああッ──【断斬(だんざん)】!」

 

 ヴァレリアは斬撃を飛ばして応戦する。

 カナタの【空間断絶】の元になった技だ。

 しかし、魔族の接近は止められない。

 

(くっ! 数人ならまだしも、数が多すぎる……!)

 

 ただでさえ、魔人は魔物の数倍強い。

 一人でも脅威なのに、二十人以上の軍になっている。

 ヴァレリアだけで戦うのは困難だ。

 

(ミカの波動で終わりだと思ったが、これは……!)

 

 まさかミカの代名詞を封じられるとは思っていなかった。

 参謀も脳筋の対策をしてきたものだ。

 形勢が一気に傾き、参謀は嗤った。

 

「ふははは! これで奴らの一角を落としたぞ!」

「「「ひゃっはー!」」」

「くっ!」

 

 ヴァレリアの斬撃をかいくぐり、魔人が目の前まで迫る。

 そんな時、後方のミカが口を開いた。

 

「ありがとうね。準備が整ったわ」

「ミカ……!」

 

 ミカはただ引っ込んだわけではなかった。

 ヴァレリアに時間稼ぎをしてもらい、次なる策を用意していたのだ。

 

「使うのは初めてだけどね」

「そ、それは……!?」

 

 ミカはそれぞれの手に、違う色のオーラを宿していた。

 片方は黄緑、もう片方は漆黒だ。

 

 ミカの力は一つではない。

 しばらく使っていなかったが、【バブみの波動】ともう一つ。

 【怒りの波動】を持っている。

 

 ミカは二つの波動を組み合わせた(・・・・・・)

 

「【バブみ乱高下(ジェットコースター)】」

 

 

 

 

 その頃、深淵ダンジョン西方面。

 

「止まって、ココネ」

「……!」

 

 エルヴィが手を出し、ココネも足を止める。

 二人の前方から、強力な気配を感じ取ったのだ。

 (なま)めかしいピチピチスーツが見えると、その者がつぶやいた。

 

「うふっ。また会えて嬉しいわ」

「「……!」」

 

 彼女は、異世界魔王軍の四天王の一人。

 そして、エルヴィの親的存在だ。

 エルヴィは目を見開いてその名を呼ぶ。

 

「ピエラ……!」

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