現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「お前を倒してチェックメイトだ」
深淵ダンジョン、最下層付近。
カナタは前方に剣を向けた。
目の前に佇んでいるのは、一人の魔人だ。
「ほう。またも
長い金髪に、魔人を象徴するような褐色の肌。
三メートル以上もの
黒に染まった翼を生やす様は、まさに覇王のごとく。
魔人の名は、ゼブル。
最後にして“最強”の四天王だ。
その勇ましい姿に、カナタは懐かしさを覚える。
「……変わらないな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
《なんだあいつは!?》
《やばいクソ強そう》
《体デケエなおい!》
《オーラえっぐ》
《今までの魔人と明らかに違えな》
《でもカナタ君なら!》
《頼むぞ魔王様!》
そのオーラは画面超しにも伝わるほど。
それでも、カナタは立ち止まるわけにはいかない。
何としても魔王の復活を阻止するべく、すぐに攻撃へ移った。
「いくぞ──【重力操作】!」
カナタは前進しながら“重力場”を形成する。
相手の重力は極限まで大きく、自分の重力は皆無に。
弱体化と強化を併せ持った五つ目の能力だ。
しかし、ゼブルは難なく動いた。
「ぬるい──【
「ぐっ……!?」
ゼブルは腕を組んだまま、辺りに衝撃波を放出した。
それに吹き飛ばされる形で、カナタは元の位置に戻る。
カナタは体勢を整えながら苦笑いを浮かべた。
「やっぱそうなるか」
「当然だ」
今のは【絶無の波紋】。
周囲に衝撃波を放出し、全ての能力を打ち消す技だ。
カナタの【重力操作】は無効化されたのだ。
「我に恐れをなすか?
「まさか」
そう答えるも、カナタは脅威を感じていた。
ゼブルは今までの魔人とは訳が違う。
加えて、以前戦った時とはカナタの条件も異なっていた。
(前は七つ持ってたからな……)
異世界でゼブルと対峙したのは、『七つの能力』が揃った状態の時。
規格外の能力をさらに二つ所持していた。
それでようやく勝てた相手に、今回は五つで挑まなければならない。
前回の戦いより困難にはなるのは間違いない。
それでも、カナタは仕掛け続ける。
「言い訳するつもりはないけどな! ──【
「む」
カナタは味方の能力を借りる【共奏】を発動。
それぞれの手に“氷”と“炎”を宿した。
「【
──ボガアッ!!
カナタは
二つは密接に絡まり合い、爆撃がゼブルに向かった。
なお、ネーミングセンスはご
「効かぬ──【絶無の波紋】」
しかし、爆撃はゼブルの衝撃波に簡単に打ち消される。
ただしそれでも構わない。
これは単なる時間稼ぎだ。
「おらあああっ!」
「……!」
爆撃に身を隠し、カナタは剣を振るっていた。
気がつけば、四方八方に【空間断絶】の斬撃が飛び交っている。
滅茶苦茶に放っているように見えるが、【超感覚】で全ての軌道を計算済みだ。
《く、くる!》
《これはまさか!》
《マイミイ姉妹の時の!》
《きたあああああああ!》
《うおおおいけえええ!》
「くらいやがれ」
【反射領域】も組み合わせ、やがて斬撃がまとまり始める。
すると、数十もの巨大な斬撃が一斉にゼブルに向かった。
「【空間断絶・集約】」
──ドガガガガガアッ!!
斬撃の嵐がゼブルを襲う。
同時に
対して、ゼブルはまたも【絶無の波紋】を発動する。
「フン」
それにより、一瞬で斬撃や瓦礫が消え去った。
《これもダメなのかよ!?》
《あれ強すぎだろ!?》
《カナタ君の技が効いてない!?》
《嘘だろ……》
《フンチート技やん!》
《フンやめてね》
《フン禁止しろ!》
《こんなことなかったのに!》
しかし、ゼブルはカナタの姿を見失う。
「む」
ゼブルは気配を察知し、上に視線を移した。
そこから【重力操作】を用いたカナタが、凄まじい速さで迫ってきている。
【空間断絶・集約】すらも陽動だったわけだ。
いくつも能力を重ね合わせ、カナタはようやく間合いに入った。
「うおおおお!」
「ほう」
カナタの剣と、ゼブルの腕。
二つが交わり、ガキィンッと甲高い音が鳴り響く。
両者の力は
二つの力がじりじりと押し合う中、カナタはニッと笑う。
「なんで【
「フッ、こざかしい!」
「ぐっ!」
ゼブルの腕に押し返され、カナタは後方に着地。
ダメージは与えられなかったが、一つ情報を得ることができた。
「【
「……!」
今の攻防で、ゼブルは三度目の【絶無の波紋】を発動できなかった。
カナタを視認してから使えば間に合うはずだったのにだ。
つまり、再発動には二秒かかると判明した。
どれだけ打ち消しても、カナタは一手ずつ詰めてくる。
その強さにゼブルは
「フハハハ! さすがだな、腐っても同胞を殺っただけはある」
「そりゃどうも」
しかし、ゼブルは大して余裕を崩さない。
カナタを褒めるものの、それだけでは及ばないと理解しているのだ。
「だが、見抜いたところでどうなる。我の防御は破れぬ」
「……ムキムキすぎんだろ」
カナタは能力をいくつも使い、ようやく間合いに入り込める。
それで得られる時間がたったの二秒だ。
しかも、同じ能力の組み合わせは通用しないだろう。
加えて、そもそもゼブル自体が堅い。
接近することで、強靭な肉体の攻撃をもらうリスクまであるのだ。
(回数制限も特に無さそうだしな……)
考えれば考える程、前回勝利したカナタが化け物だ。
しかし、今は能力が足りない。
それでも策はある。
「ま、前回はそっちの
「何の話だ?」
「こっちには文明の
「む?」
カナタは浮遊カメラを指差す。
チラっと覗いたコメント欄に他地点の様子が書かれていたのだ。
《大丈夫だぞカナタ君!》
《もう少し持ち堪えろ!》
《みんなやってくるはずだ!》
《【朗報】西地点、勝ち》
《おい奴らが来るぞ!》
《大軍勢が到着する!》
「聞こえてくるだろ? もうすぐ着くはずだ」
「……!」
カナタとゼブルは耳を澄ます。
すると、聞こえてきたのだ。
上から
ドドドド──ドガアアアアアアアッ!!
「ほらな」
「……!」
爆発のような音と共に、派手に壁がぶっ壊れる。
すると、見覚えのある者が姿を現した。
「お待たせ、カナタちゃん!」
「遅れたな!」
ミカとヴァレリアだ。
《きたあああああああ!!》
《ママー!》
《お師匠も!》
《激アツ演出ー!!》
《待ってました!》
《負けるわけねえよな!》
《ママが負けるわけないんだよなあ》
すると、カナタは安心したように左右に首を振る。
「いや、ちょうどだよ」
対して、ゼブルは目を見開いていた。
「なっ、あれは……!」
現れたのはミカとヴァレリアだけでない。
その後方に大量の魔人がいたのだ。
参謀とその仲間達である。
「「「「ママ様あーーー!」」」
ミカが“