現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「なっ、あれは……!」
異世界魔王軍、最強四天王のゼブル。
彼はここまで能力が不足するカナタに優勢を築いていたが、状況が一気に変わる。
カナタ陣営の援軍が到着したのだ。
「お待たせ、カナタちゃん!」
「遅れたな!」
ミカとヴァレリアである。
その後方には魔人の集団を従えていた。
「「「ママ様あーーー!」」」
異世界魔王軍、参謀とその仲間達だ。
ミカ・ヴァレリアと対峙していた彼らだが、ミカに
すでに従順な“
すると、カナタは苦笑いを浮かべた。
「最初は【バブみの波動】が効かなかったみたいだけど……まさか
「ふふっ。帰ったらカナタちゃんにもやってあげようかしら?」
「やめてくれ。一生戻ってこれないから」
カナタはここに来る前、コメントからミカの戦況を知っていた。
しかし、それも序盤まで。
その後は情報を追えていなかったが、参謀達の様子からミカの行動を理解した。
「あの──【バブみ
時は少しさかのぼる。
────
深淵ダンジョン、西地点。
「ありがとうね。準備が整ったわ」
時間を稼いだヴァレリアに、ミカは感謝を伝える。
地獄の特訓で【バブみの波動】が効かなかった参謀達に対し、ミカは次の策を用意した。
「使うのは初めてだけどね」
「そ、それは……!?」
ミカの両手には、それぞれ違う色の波動が灯っている。
片方は【バブみの波動】、もう片方は【怒りの波動】だ。
ミカはその
「【バブみ
ミカが包んだ両手に
黄緑と黒が混ざり合い、
ふっと笑ったミカは、それを魔人達に差し向ける。
「沼に
「「「……!?」」」
ミカの手から波状に広がったそれを避ける術はない。
参謀を含めた全魔人が混沌の光に包まれた。
その直後に起こるのは──幻覚症状だ。
「「「う、うわあああああああああ!」」」
【怒りの波動】の効果により、まずは悪夢を見せられる。
悲哀、絶望、根源的恐怖。
ありとあらゆる負の疑似体験をさせ、心をえぐる。
そして、
【バブみの波動】の効果だ。
魔人達が見ている幻覚の空間では、天から母神となったミカが降りてきた。
「苦しかったですか? ママを信じれば全てが救われます」
「「「……!」」」
もう二度とあの地獄を味わいたくない。
その想いから、半数の魔人がすぐに墜ちた。
だが、参謀をはじめとする上位陣はぐっと
「わ、私は地獄の修行に耐えてきたのだ! この程度で!」
「ではもう一度いってらっしゃい」
「え?」
耐えた者に待っているのは、再びの悪夢。
幻覚の母神は、笑顔でもう一度悪夢へ送った。
「後でまた来るわね」
「ま、待って! うわああああああっ!」
以降は、その繰り返し。
幻覚で“悪夢と救済”を交互に見せ、弱みを見せた者から心身を掌握していく。
混沌の光に一度包まれてしまえば、幻覚空間を抜け出す方法は存在しない。
正と負の感情を
これがミカの最終奥義──【バブみ
そんな光景を
「な、なんなんだこれは……」
ヴァレリアの前では、魔人達が幻覚に襲われている。
悪夢で病む者、救われた者、あるいは狭間で苦しむ者など、様々なリアクションがあるが、総じて“異常”だ。
幻覚の内容を想像するだけでも恐ろしい。
ミカは次々に堕ちる魔人を見ながら、笑みを浮かべる。
「ヴァレリアちゃんにもやってあげましょうか?」
「い、いや結構だ! 今度こそ私が私でなくなってしまう!」
「ふふっ、冗談よ」
そうして話す内に、全ての魔人がミカに
全てが救済の道を選んだのだ。
つまり──ミカに堕ちた。
「あら良い子たちね。じゃあカナタちゃんの元へ向かうわよ」
「「「ママ様あ!」」」
ミカの指示に従い、魔人達は意気揚々と地面を掘り始める。
ヴァレリアは呆然としながら改めて誓う。
(ママ……じゃなくて、ミカには逆らわないようにしよ)
こうして、ミカ達は援軍に駆けつけるのであった。
────
なんとなく状況を察して、カナタはゼブルへ剣を向ける。
「てことで形勢逆転だな」
「……ほう」
戦力は整った。
【
あとは的確に詰めていくのみ。
カナタは地面を
「ミカ、俺に合わせて魔人を動かしてくれ!」
「ええ」
「師匠は俺のサポートを頼む!」
「任せろ!」
カナタの反撃開始だ。
《よっしゃあやったれ!!》
《逆襲の時間だあああああ!!》
《フンニキ倒してくれえーーー!》
《これは総力戦なんだよなあ!》
《戦力差えっぐwww》
《さすがに勝ち申した》
《カナタ君いけええええええ!!》
カナタはミカ
「まずは特攻!」
「ええ、魔人ちゃん達!」
「「「はーい!」」」
ミカが指を向けると、魔人達はドドドドと全力でゼブルに向かっていく。
《はーいで笑うwww》
《全力の進軍で草》
《ドドドドでワロたww》
《なんて素直な魔人たちなんだ!》
《俺も昔は素直だったのかなあ……》
《この数の進撃こわすぎるww》
しかし、対するゼブルは焦りが見えない。
余裕の態度を崩さぬまま、カナタに視線を移した。
「残念だな、貴様ほどの者が。これは悪手ではないか?」
「!」
「今に目覚めさせてやろう──【絶無の波紋】」
ゼブルは周囲に衝撃波をもたらした。
能力を無効化する最強の技だ
ズオッと広がった衝撃波は、魔人たちに波及する。
「「「うああっ!」」」
「さあ、かえってくるがよい」
彼らがミカの能力で操られているなら、それを無効化すれば良いと考えたのだ。
そうなれば戦力差は
ゼブルはむしろ、魔人を送り届けてくれたことに感謝しているほどだ。
──しかし、その思惑通りにはならない。
「「「うおおおお!」」」
「なっ……!?」
魔人達は再び進撃を始め、ゼブルに全力疾走で向かう。
なんならその勢いは増している。
すると、ミカは口角を上げた。
「ふふっ、無駄ね」
「!?」
「彼らは操られているんじゃない。
「バカな……!?」
これは能力うんぬんの話ではない。
魔人達は心の底からミカを信仰している。
完全なる信者を生み出す、ミカの恐ろしい力だ。
その隙に、ゼブルの背後から剣が差し迫る。
「こっちだ」
「……! くっ──【絶無の波紋】!」
焦ったゼブルは周囲を吹き飛ばした。
だが、迫ったのはカナタではない。
「残念、私だ」
「……ッ!?」
仕掛けたのはヴァレリアだった。
師匠だけあり、カナタとあまりに似た動きだったのだ。
焦りと師弟関係がゼブルを狂わせた。
そして、間髪入れずに
「いけカナタ」
「ああ!」
「……ッ!」
ゼブルの死角からの攻撃だ。
すでに防御は間に合わず、対抗手段も持ち合わせていない。
ゼブルは時間がゆっくりと進む感覚の中、カナタの周囲のものが視界に入った。
(まだ【絶無の波紋】がないというのに──!)
カナタの周りに、複数の巨大な斬撃が浮かんでいた。
準備に時間のかかる【空間断絶・集約】ではない。
最近得た【重力操作】を用いた合わせ技だ。
「来い!」
カナタが剣を振り下ろすと共に、複数の斬撃が
【空間断絶】の弱点は斬撃が速くないことだった。
それを解決したのが【重力操作】である。
「うおおお!」
「……ッ!」
カナタは重力を操り、複数の斬撃を一時的に留めておいた。
それを今度はゼブルへ重力を集める。
すると、斬撃は本来の速さを超え、ゼブルをめがけて飛んでいく。
「【空間断絶・
「ごはあッ……!!」
複数の方向から斬撃を浴び、ゼブルは血を噴き出す。
《うおおおおおおおお!!》
《決まったああ!!》
《新技じゃねえか!》
《重力の能力使ったのか!》
《かっけええええ!!》
《やったか!?》
《これはいったやろ!》
しかし、直後にゼブルは衝撃波をぶっ放した。
「【絶無の波紋】……!!」
「ぐっ!」
クールタイムの二秒が経ったのだ。
カナタは勢いに飛ばされつつ、一度後退。
それでも、剣に確かな感触を覚えていた。
「今のは致命傷のはずだ」
「ぐっ……ハァ、ハァ……」
もう一度攻撃を与えれば間違いなく倒せるだろう。
だが、ゼブルは最後まで抗う姿勢を見せる。
「我が最後の砦なのだ。我が負けるわけには──……!!」
「「「……!?」」
その瞬間、場にいる全員が下層から強力な気配を察知する。
ゼブルのものではない。
それよりも
カナタはとっさに叫んだ。
「全員衝撃に備えろ!」
「「「……!」」」
──ドガアアアアアアアアアア!!
カナタ達が察知してまもなく地面が崩壊する。
下から禍々しい力が噴火したかのように。
カナタは思わず下に視線を移すと、その目を大きく見開く。
「ま、まさか……!」
深淵ダンジョン、最下層。
そこに見えたのは、漆黒の炎を膨れ上がるように宿す“巨大な魂”だった──。