現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~   作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中

56 / 57
第56話 最終奥義

 「ここで存在ごと消すぞ」

 

 魔王の魂が魔人たちを喰らい、大きなモヤへと肥大化する。

 対して、カナタはここで決着をつけるつもりだ。

 

「みんな構えてくれ」

「「「……!」」」

 

 それは、最後の策の合図だ。

 顔を見合わせた従魔たちは、カナタの元へ集まる。

 

 ココネ、ルーゼリア、エルヴィ、ミカ。

 四人の従魔がカナタと手を重ねる。

 気持ちを一つにするかのように。

 

「主様」

「カナタ君」

「カナタ様」

「カナタちゃん」

 

「ああ」

 

 カナタは深く息をつくと、目をつむった。

 

(今の俺たちなら可能なはずだ)

 

 すると、カナタの手に力が集まってくる。

 氷・炎・血・波動。

 四つの力が重なり、交わり合っていく。

 

 最後の策は、カナタと従魔たちの力を合わせた現代魔王軍の奥義だ。

 

「ったく、個性が強いな」

 

 だが、それぞれの主張が激しい。

 カナタは【共奏】と【超感覚】を発動させる。

 【共奏】で特性を混ぜ合わせ、【超感覚】で整えていくのだ。

 

 そして、それを【重力操作】で無理やり一つに固めようとする

 しかし、魔王の魂も傍観(ぼうかん)しているわけではない。

 

「ヴオオオオオオオオオ!」

 

 魔王の魂はうめき声を上げ、闇の触手を伸ばしてくる。

 

「主様!」

「まだ持ち(こた)えられる」

 

 背中は【反射領域】に任せていた。

 ヴァレリアも助力してくれている。

 だが、闇の触手にはいつ防御が破られてもおかしくない。

 

「技の完成に集中するんだ」

「……! はい」

 

 だからこそ、技の完成を急ぐ。

 しかし、カナタの能力をもってしても、従魔たちの力は一つになろうとしない。

 ルーゼリア達は苦笑いを浮かべる。

 

「ここまで揃わないなんてね」

「これでよくやってこれたなあ」

「ちゃんとまとまるのかしら」

 

 すると、カナタが口を開いた。

 

「大丈夫」

「「「……!」」」

「みんなとなら出来る。いや、これはみんなとしか出来ないんだ」

 

 カナタの頭には、数々の光景が浮かび上がっていた。

 従魔たちの力を介して、みんなの気持ちが伝わってくるのだ。

 カナタはその一つ一つを摘み取るように、現代での日々を思い返す。

 

 現代で、改めて従魔たちの事を知った。

 

 どれだけ強いのか。

 どんな気持ちを抱いているのか。

 そして、自分にとってどれだけ大切な存在なのか。

 

 今思えば、異世界の自分は今よりは笑わなかった。

 人とのいざこざに、魔族との戦いもあり、心身が疲れていたのだろう。

 

 それでも従魔たちは付いてきてくれた。

 だから現代では、異世界で出来なかったことを実践しようとした。

 好きな事、やりたかった事、何より従魔たちが望んだ事を。

 

 その結果が現状だ。

 日常、配信、焼肉、様々な場所で思い出ができた。

 カナタは異世界の時よりも、従魔たちと距離が近くなったことを実感していた。

 

 そんな今だからこそ、この技は完成する。

 心を通い合わせた今だからこそ。

 

「できた」

「「「……!」」」

 

 カナタと従魔たち。

 五人が重ねた手の上に、大きな球が浮かび上がる。

 巨大なエネルギーの塊だ。

 

「なんだかんだ形になっただろ?」

「「「はい!」」」

 

 この球は、“負の力”を駆逐(くちく)する。

 負の力とは、魔人が宿すエネルギーのようなもの。

 それが瘴気を起こし、魔物や魔人を発生させるのだ。

 

 そして、魔王は負の力の集合体である。

 

「これで魔王の魂を消し去る」

 

 それに対抗するのは、正の力。

 楽しい、喜び、好き。

 カナタ達は、それぞれの能力に正の感情を込めたエネルギーを作り出した。

 

 つまり、これは対魔王の最終奥義だ。

 

《なんだこれえ!?》

《まぶしい光の塊ができたぞ!?》

《みんなで力合わせてる!》

《最終奥義だああああ!!》

《魔王軍の集大成じゃん!》

《うおおいけえええええええ!!》

 

「くらえ──【()(こん)(じょう)(めつ)】」

 

 五人は巨大な球をそっと手放す。

 まばゆい光を放つ魂は、ゆっくりと魔王の魂へと向かう。

 抵抗する闇の触手を消し去りながら。

 

「ヴオオオオオオオ……!」

 

 球の接近を止める術は無い。

 球が近づくにつれ、魔王の魂は徐々に浄化されていく。

 禍々しいモヤが消えていくのだ。

 

《あの触手が効かねえ!》

《従魔たちの色が混ざってる!》

《きれいだ……》

《黒いのが消えていくぞ》

《俺も浄化されていく……》

《↑視聴者に魔族いてワロタ》

《これはいったか》

 

 やがて、巨大な球は魔王の魂と接触。

 巨大な球は役目を終えたように、魔王の魂は浄化されたように、お互いに消滅した。

 

「……っ」

 

 まばゆい光が薄れ、カナタは目を開く。

 同時に【超感覚】が察知した。

 

「終わったな」

「!」

 

 カナタは従魔たちに振り返り、笑みを浮かべた。

 

「魂は消滅した。俺たちの勝利だ!」

「「「やったあ!」」」

 

カナタは従魔たちと称え合う。

 異世界魔王軍との決戦も決着し、魔王の魂も消し去った。

 カナタ達の完全勝利だ。

 

《うおおおおお!》

《よっしゃああ!!》

《勝ったあああああ!!》

《魔人も全員倒したし!》

《カナタ最強!従魔最強!》

《カナタ君たちに逆らうからだよなあ!》

《やっぱり最後は勝つ!》

 

 しばらく興奮は収まりそうにない。

 ──と思った時、魔王の魂があった場所から声が聞こえた。

 

「む」

「!?」

 

 少女のような高い声だ。

 だが、正体は掴めない。

 すると、声の主が瓦礫(がれき)をよかした。

 

「なんじゃここは」

「……!」

 

 銀髪が長く伸びた少女だ。

 紫の目立つ瞳を宿し、辺りをうかがう表情を浮かべている。

 布は羽織っていたので、チャンネルBANは(まぬが)れた。

 

 しかし、カナタは違和感を抱く。

 

(負の力を感じない。魔人ではない……?)

 

 見た目は人から大きく外れている。

 だが、魔人なら持つはずの負の力を微塵(みじん)も察知できない。

 カナタは警戒を解かず尋ねた。

 

「き、君は……?」

「“わらわ”のことか? んー、思い出せぬ」

「!」

 

 少女は記憶喪失のようだ。

 

「わらわは何者じゃ?」

「……っ」

 

 状況的に考えれば、魔王だろう。

 ならば倒す以外の選択肢はない。

 

 しかし、カナタは【超感覚】を持っているからこそ疑ってしまう。

 

(全く邪気を感じない……)

 

 少なくとも、力があったり襲ってくるようには思えなかった。

 そうして戸惑っていると、コメント欄が妙な空気になっている。

 

《こんな子放っておけないよな》

《魔人かもしれないぞ》

《でも大丈夫そうなんだろ?》

《保護した方がいいんじゃ》

《のじゃロリ!?》

《銀髪のじゃロリきた!?》

《いっそ面倒見る?》

 

「…………え?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。