現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「お邪魔しまーす」
カナタは探索協会会長の部屋を訪れた。
中にいたのは、二人。
カナタはその片方である会長に声をかけた。
「お疲れ様です。“手続き”は終わりましたか?」
「ええ。とりあえず普通に生活を送れるようにはしておいたわ」
「助かります」
二人は軽く会話をすると、部屋の奥へ目を向ける。
そこにいるのは一人の少女。
会長の大きな椅子に偉そうに座っている、銀髪の少女だ。
「手続きとやらは長すぎであろう! どれだけわらわの時間を使うつもりじゃ!」
「帰ってもやることないくせに……」
魔王軍決戦から数日。
カナタは
会長には
ちなみに、少女の名は──。
「ほら帰るぞ、“ムオウ”」
「うむ!」
ムオウだ。
カナタは
────
「わらわは何者じゃ?」
カナタ達は魔王の魂を浄化した。
だが、その場所から謎の少女が現れる。
これにはカナタも戸惑う。
「…………え?」
しかし、戸惑っているのは少女についてだけじゃない。
『面倒を見たら?』というコメントが
カナタは迷いながらも、後方の従魔に助けを求めた。
「み、みんなはどう思う?」
「「「……」」」
ただし、従魔はじーっとカナタを見つめるばかり。
カナタに判断を
すると、少女が口を開いた。
「む。わらわの名を思い出したぞ!」
「お?」
「わらわの名は──ムオウじゃ!」
「…………」
対して、カナタを含めた全員が確信する。
(((絶対魔王だ……)))
ムオウは記憶が
なんとか元の名前に近いものをひねり出したのだろう。
つまり、少女の正体は“魔王”である。
それでも、カナタは救いたくなった。
(悪さする気配はないしなあ)
最終奥義【
ムオウは、魔王から邪悪な側面が排除された存在だ。
邪念も無ければ、人を害する力も無い。
かつて戦った
そんなムオウを、ここに放置すれば待つのは死のみ。
すると、カナタはムオウに手を差し伸べる。
「俺はカナタ。とりあえず一緒に来るか? ここは危ないから」
「しょうがないのう。ではカナタよ、わらわを連れて行くがよい!」
「なんで上から目線なんだ」
こうして、カナタはムオウを連れて帰った。
────
数日前を思い返しながら、カナタはふっと笑う。
(やっぱりムオウは安全だったな。お荷物が一つ増えたけど)
連れ帰ってからのムオウは、完全なペットだ。
昼頃に目を覚まし、ゴソゴソと冷蔵庫を漁っては、カナタにひっ付いてくる。
遊べ遊べとうるさいだけで、特に害はない。
おかげで、多少従魔からの
そんな中、会長は心配そうに尋ねた。
「あの、久遠くんの方は大丈夫なの?」
「あー、もうだいぶ騒ぎも収まりましたよ」
そして、数日の間にもう一つ大きな出来事があった。
カナタは自分の事情を配信で公表したのだ。
話した内容は、異世界や従魔のこと、魔人についてなど。
処刑された件などのネガティブな事柄は話さず、視聴者が最低限カナタ達の行動を理解できるように。
理由は、カナタに関する憶測が広がっていたからだ。
「尾ひれがついた噂もほとんど消えました」
今やカナタは日本中から注目を集めている。
すると、カナタ一行について色んな話が飛び交ったのだ。
能力は自作自演だとか、魔人は役者を用意してるだとか。
中には、カナタの偉業に嫉妬してわざと嘘を広めた者もいたのだろう。
元から多少あった流れだが、魔王軍決戦の後にそれが爆発した。
その状況を断ち切るため、カナタは弁明したのだ。
結果、騒動は起きつつも、良い方向に向かった。
「今はむしろ応援してくれる人が増えました」
「それなら安心ね」
カナタ自身、そろそろ
今回は良い機会だったのかもしれない。
カナタは笑みを浮かべるも、ムオウに
「カナタ! 難しい話はやめて早く帰るのじゃ! わらわには待っている仲間がおる!」
「はいはい、ゲームの話ね。今日こそ一時間までだからな」
「き、昨日も一時間しかしておらぬが?」
「嘘つけ」
ムオウは
あろうことか、勇者が魔王を倒す物語だ。
カナタは妙に感じながらも、会長に
「では、ありがとうございました」
「気を付けて帰ってね」
なんだかんだ面倒見がよかった会長には、ムオウも手を振る。
「さらばじゃ、おばさん!」
「おばっ!?」
「こら!」
そうして、カナタとムオウは帰宅した。
◆
「こんばんはー。世間をお騒がせしてすみません、カナタです!」
帰宅して夕方。
魔王軍の事務所から、カナタは普段の
目の前の大きなテーブルには、あらゆる料理が置かれている。
「本日は決戦勝利を祝って、事務所でパーティーです!」
「「「わーい!」」」
「だから料理消すなってえ!」
しかし、飛びついた従魔たちによって、いきなり半分が消滅する。
いつも通りの光景だ。
《カナタ君こんばんは!》
《おおー豪華だねえ!》
《従魔たちは相変わらずだなww》
《すぐ見にきたのに料理消えてる……?》
《勝利記念きたあ!》
《すげえ戦いだったもんなあ》
《今回は外食じゃないんだ?》
テーブルに並べられているのは、ピザや弁当、オードブルなど。
全て配達で注文した品だ。
カナタはその悲しき理由を口にする。
「外食したかったのに全部断られました。なんか飲食店で指名手配されてるみたいです」
カナタは細めた視線を横に移す。
すると、従魔たちは揃って首を傾げた。
「「「なんでだろう……」」」
「お前らのせいだよ」
従魔たちは自覚がないようだ。
《自覚しろwww》
《従魔のせいなんだよなあ……w》
《コントすんな笑》
《いつも通りで安心》
《事務所にシェフ呼べばいいのにw》
「シェフを……呼ぶ?」
すると、カナタは最後のコメントに目を付ける。
だが、そのままヘナっと
「その発想はなかった……」
《カナタ君らしいw》
《庶民的で好き》
《庶民派魔王》
《もう金持ってるだろうにw》
《成金感なくてすこ》
《カナタ君は変わらんな笑》
そんな中、以前までには無かったコメントも見られる。
カナタが公表した内容についてだ。
《異世界でもこんな事してたのかな》
《この従魔たちと旅とかお前……》
《寝食も共にしてたんだよな?》
《えっちすぎんだろ!》
《普段何してたんだよ》
その話題にはルーゼリアが飛びつく。
「それはもう……ね? あんなことやこんなことをしたわよねえ」
「してねーよ! 誤解されるだろ!」
ルーゼリアはうふっと魅惑的に近づき、カナタにウインクする。
《はあああああああ!?》
《まさかお姉さんと!?》
《カナタ許さねえ》
《¥5000 ふざけんなこれでも食らえ》
《↑ツンデレでわらう》
《従魔を引き連れて何もないはずがなく……》
その話題はヴァレリアにも飛び火した。
《もしかして師匠とも!?》
《おいおいおい》
《お師匠はまずいって!》
《それだったらガチで許さねえわ》
《何を教えてもらったんだよ!》
せっかくお上品に味わっていたヴァレリアは、ゴホッとむせる。
「な、なぜワタシにも……!」
「師匠も人気だからね」
「カナタも否定せんかあ!」
ヴァレリアはすっかりいじられキャラとして定着している。
これも愛されている証拠だ。
すると、事務所の階段からカンカンと降りる音が聞こえてくる。
「あーっ! カナタ貴様、わらわを差し置いてー!」
「またうるさいのが来たよ……」
三階で寝ていたムオウだ。
カナタも気遣って声をかけなかったのだろう。
しかし、ムオウはすぐそこまで
「わらわの分もあるんじゃろうなー!」
「まだまだ追加で来るから大丈夫」
「今すぐ食べたいのじゃー!」
「はいはい。ということで、ムオウでーす」
引き取った翌日に続き、ムオウは二度目の配信出演だ。
《二回目から紹介雑ww》
《クマさんのパジャマかよw》
《ムオウちゃんかわいい》
《今日も元気だなあ》
《のじゃロリありがとう》
《ちょうどロリ枠補充できたね》
《お師匠が成長したからな》
《魔王軍の癒し枠》
しかし、流れるコメントにココネがムッとした。
「癒し枠はココネです」
「あら、ママも負けていないわよ」
「ふーんだ! わらわに決まっておろう!」
ココネ達も半分冗談だろう(半分本気だが)。
この通り、ムオウも数日ですっかりメンバーに
また
(無事に戻ってこられて良かったな)
魔王軍決戦の前、ここの雰囲気はピリついていた。
従魔たちも顔に出さないようにしていたが、全員感じていたことだろう。
それほど“魔王の復活”には警戒していたのだ。
(なんかそこにいるけど)
ムオウは拾うことになったが、魔王問題は解決はした。
決戦も完全勝利で終え、こちらは何も失っていない。
むしろ、団結力が増したとすら思える。
カナタはふと見上げた。
(これからも、この日常を守っていこう)
それにはエルヴィが声をかけてくる。
「カナタ様。なーんか油断してるけど、これからも勝負挑むからね」
「えー、もういいじゃん」
「ダーメ。それに、
「「「……!」」」
それには、従魔たちの視線がバチっと交差する。
カナタはふうと息をついた。
「やっぱこうなるかあ」
カナタのほのぼのライフはまだ先のようだ。
心の中では、全員が仲間だと思っているだろうが。
すると、コメントはカナタの話へ。
《カナタ君はどういうポジション?》
《異世界では魔王を倒したんだよね》
《じゃあ勇者側なのか?》
「あー、そうですね……」
カナタは勇者として選ばれたことは公言していない。
最後に処刑された話につがなると思ったからだ。
カナタはふむと悩むが、代わりに周りが答えた。
ココネも、
「主様は魔王ですよ」
「は?」
ルーゼリアも、
「むしろこれで真の魔王になったわね」
「は!?」
エルヴィも、
「魔王の方が倒し甲斐あるしっ」
「はあ!?」
ミカも。
「魔王でも甘えていいからね」
「ママぁ──じゃなくて!」
一瞬おぎゃるも正気を取り戻し、カナタは抗議する。
「俺ってまだ魔王なの!?」
「「「うん」」」
それにはコメントも全同意だ。
《魔王様!》
《やっぱカナタ君は魔王様だな!》
《決戦も勝利したし!》
《真の魔王になられましたな》
《これからも配下として付いていきます》
《まさに魔王降臨》
「だから勘違いって言ってるだろーーー!」
第二章 完
ご愛読ありがとうございました。
これにて『第二章 魔王降臨』は完結です。
少しでも面白いと思ってもらえましたら、このタイミングでご評価をお願いします!
☆はご自身の基準で構いません。
頂けると嬉しいのはもちろん、作品づくりの参考にもさせていただきます!
第三章はできれば書きたいと思っています。
ただ、他の作業などもあり、中々手が回らない状況です。
感想や評価も参考にしますので、よろしくお願いします。
では、改めて第二章完結までお読み下さり、ありがとうございました!