現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
「では配信を始めたいと思います」
ダンジョン配信者になる決意をして、翌日。
俺は早速配信を開始した。
訪れたのは、昨日と同じ青玉ダンジョンだ。
各所で大きな話題を集めているらしく、すでに多くのコメントが流れる。
《こんにちは》
《きたあああああ!》
《さすがに見に来たわ》
《これが噂の魔王君か……》
《見た目は普通のガキなのな》
「今回はタイトルにもある通り──」
従魔二人が暴走して、ネット上では魔王とまで言われているらしい。
対して、俺はまず頭を下げた。
「世間をお騒がせしている件について」
《なんだ!?》
《いきなり謝ったぞw》
《初手謝罪配信は新しいwww》
《よく見たら怖くないかも》
《バカ騙されるな》
《見た目は普通な人が一番怖いパターンだぞ》
《そうは言っても何するんだ?》
一晩を経て、チャンネル登録者は15万人に達した。
現在の同接(同時接続数)も、すでに5万人。
昨日作ったアカウントにしては脅威の数字だ。
コメントの勢いにびっくりしながらも、最後のコメントに答えるように続けた。
「きょ、今日はですね、弁明をしにきました!」
《弁明?》
《今更なにを……》
「まずは俺、良い人なんです! 世界を滅ぼしたりしませんよー、ほら!」
両手を広げて、笑みを浮かべる。
でも、上手く笑えてる気はしない。
敵じゃないアピールのつもりだけど、効果は無し。
《魔王なのに?》
《良い人は自分で言わないんだよなあ》
「ぐっ……あ、そうだ。あの二人を見てもらえたら分かると思います!」
すると、俺は後方の従魔達へ手を向けた。
この流れのきっかけは、従魔の二人が暴走したこと。
家できつーく言っておいたので、一緒に弁明してくれるはずだ。
「ほら、あそこに──え?」
しかし、そこには地獄絵図が広がっていた。
「主様! 魔物で主様の像を作りました!」
「は?」
「こんなに美しく仕上がって──あ、腕が折れた」
「……!?」
ココネは俺の巨大な氷像を作っていた。
素材は、凍り付かせたその辺の魔物達。
魔物を引きちぎり、他の部位とつなぎ合わせて作られている。
はじめから敵としては眼中になく、ただパズルのピースに使えるかどうかのみで無差別に討伐されていた。
《ココネちゃん!?》
《あれ全部魔物か!?》
《凍らせてパズルにしてんのか……》
《こっわwww》
《サイコパスで草》
《あれ全部C級クラスの魔物じゃ……?》
《素材としか思われてないww》
《どんだけ強えんだよ》
《恐怖映像じゃねえか!》
「ココネ、弁明配信って言ったよな……?」
「はい! ですから、この機会に主様を一緒に
「みんな怖がってんだよー!」
俺は途端に頭を抱える。
確かにココネはちょっとズレているところがある。
ならばと、頼りになるお姉さんに視線を移した。
「こんな時ルーゼリアなら──」
「よく燃えるわあ、この魔物達。うふふふふっ」
「あ、あぁ……」
だが、そこにも
「あ、カナタ君、火が
「いや大火事ですやん……」
ぼおおおおおと燃え上がる一帯。
燃料は現地調達の魔物達だ。
「ほら早く早く~。ふーっ」
「「「ギャアアアアアア!!」」」
「…………」
ルーゼリアが息を吹きかけると、炎は激しさを増す。
彼女の美しい容姿とは裏腹に、衝撃映像となっていた。
高性能なカメラはすでにモザイクをかけている。
《だから怖えってwwww》
《やっぱ恐怖映像で草》
《モザイク貫通してるよww》
《なんなんだよこのサイコ集団》
《人と感覚がズレてんのかな》
《ふーじゃねえのよww》
《ちょっと面白くなってきたかも》
「あーもー!」
配信の準備中に、二人は行動を起こしていたようだ。
俺は好き勝手する二人を手拍子で呼びかける。
「ちょっと二人、集合!」
「はいっ」
「はーい」
「……なんで隣。近いし」
タッタッと寄ってきた二人は、両サイドから俺を挟んだ。
むぎゅりと聞こえそうな程に感触は柔らかい。
《なんか距離近くね?》
《ココネちゃんかわいい》
《ちょこんとしてる》
《お姉さんの胸でっっっ》
《ルーゼリアさんえっど》
《両手に花》
《ちょっと羨ましい》
《なんだこの美女二人は!》
《良い匂いしそう》
《でも恐ろしいんだよなあ……》
人間離れした二人の圧倒的ビジュアルに、コメントが加速する。
でも、完全に恐怖は
俺は弁明するべく問いかけた。
「なんでそんなことしたの! はい、ココネさん!」
「主様の素晴らしさを全世界に伝えようと……」
「伝わってない! 恐怖映像だからあれ!」
「ごめんなさい」
《先生かよww》
《しゅんとしちゃった》
《かわいい》
《主様の為だもんね》
《かわいいから許した》
《いや、やってることおかしいからな?w》
《お前ら冷静になれw》
ココネの可愛さも相まり、コメントは鎮火。
良い調子だ、と俺は続ける。
「では次、ルーゼリアさん!」
「カナタ君、緊張してたから。火を見ると落ち着くかなって」
「あー確かに緊張ぶっ飛んだわ。衝撃的すぎてな」
《そりゃそうw》
《意外と役に立ってて草》
《漫才してんじゃねえよw》
《お姉さんも大概なんだよなあ》
《カナタ君を想うばかりに》
《いちいち激しいけどな》
《ちょっとおもろい》
《なんか怖くない?》
「お、おお?」
話をする内に、段々と視聴者の恐怖が薄れてきたようだ。
ぶっ飛んではいるが、悪意は見られないからだろう。
だけど、結局一番気になるポイントはこれだ。
《二人って何者なんですか?》
俺はちらりと二人を覗き見る。
三人でうなずき合い、話すことを決心した。
「俺の従魔です」
《えええ!?》
《カナタ君に従ってるってこと!?》
《うっそだろwww》
《だからこんなに慕ってるのか》
《やっぱ魔王じゃん》
《この二人の主はやばいな》
《てことは一番強いのか……》
驚きの事実だったのか、コメントに動揺が広がる。
また、すぐに妄想を始める者も。
《じゃあ、まさか……》
《あんなことやこんなことも!?》
《エッチな命令もできちゃうんですか!?》
それは慌てて否定する。
「そ、そんなことしませんよ!」
「えーしてもいいんだよ?」
「ルーゼリアは黙ってて」
「やん」
《くそっ》
《なんなんだこいつ》
《羨ましいぜ》
《ずっる》
そうなれば、まだ質問は出てくる。
《二人とはどこで出会ったんですか?》
「それは、その……どっかです」
しかし、これには口を
三人で話した結果、異世界のことは明かさない方が良いと結論に至った。
《はい黒幕決定》
《やはり魔王か》
《異世界とかだったりしてな》
《それは無いだろうけど怪しいな》
「うぐっ……」
若干の魔王コメントが見られるも、配信開始前ほどの勢いはなかった。
もしかしたら、敵意がないのが伝わったのかな。
好意的なコメントが増えてきたのが、何よりの証拠だ。
《けど、こいつら面白いわ》
《ああ滅茶苦茶すぎてな》
《ここまでぶっ飛んでるのは見た事ない》
《高評価押しました!》
《ココネちゃんのグッズはまだですか?》
《お姉さんに燃やされたいです》
《カナタ君怖くなくてよかった》
「え、え! 本当ですか!」
《嬉しそうw》
《かわいい》
《弁明できて良かったね》
さらに、チラリと同接に目を向けた。
そこには
「うわあ、同接10万人!?」
《すげえ!》
《配信二回目でかよ!》
《おめでとう!》
《前回の何万倍だ!?》
《0だったらしいから計算できねえw》
《とにかくおめ!》
「あ、ありがとうございます! 嬉しいなあ……!」
小学生並の感想しか言えないけど、それが素直な気持ちだ。
なんだかんだで二人のおかげだな。
俺は従魔二人に振り返る。
「ありがとうな」
「あ、主様……!」
「カナタ君……!」
「──って、おい!?」
──ドガアアアアアアアアアア!
俺が感謝した瞬間、周囲に爆音が響き渡る。
氷の世界と、炎の海が一気に広がったんだ。
感情を抑えきれず爆発したらしい。
《……!?》
《わあっ!?》
《びっくりしたあww》
《こいつらやっぱ危険人物で草》
《心臓に悪いってwww》
《どんだけ嬉しかったんだよww》
《感情激しくてかわいい》
《照れててかわいい》
「は、はは……」
他人がいたら危なかったな。
ここは現代だから気を付けた方が良いかもしれない。
そんな事を思いつつ、俺は前方に目を向けた。
「では、そろそろ進んでいきますか」
《お》
《まさか!》
《弁明だけかと思いきや!》
「はい。せっかくダンジョンに来たので、探索していこうと思います」
《やったあああ!》
《きたああああ!》
《ココネちゃんもっと見れる^^》
《お姉さんこっち向いてー!》
《普通に探索者として楽しみ》
《苦戦する未来が見えねえw》
長くなったオープングを終え、前に向き直る。
弁明がうまくいけば、攻略に移ろうと考えていた。
そのためにダンジョンで始めたんだ。
「じゃあ行こう!」
「はい主様!」
「うんカナタ君っ♡」
「……探索しにくいから離れてね」
そうして、俺たちは奥へと進んで行く。
この後、伝説が生まれるとは知らず──。