現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~ 作:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中
<三人称視点>
「できたわよ~」
笑顔のルーゼリアさん。
素手で持つのは、熱々のお鍋だ。
その中には、ぐつぐつと煮られたお肉が入っている。
「おお」
「わあ」
お肉は、さっき
名前は『フォアグマ』。
異世界でも高級肉として有名だった。
《あれクマさんどこいった!?》
《すでに鍋の中だぞ》
《瞬殺→調理》
《トイレ行ってたら見逃したわ》
《お姉さん「どう調理してやろうかしら」》
《本当に調理するとは思わんやんwww》
《熱耐性あるから素手で草》
《美味しそう》
《高級肉だもんなあ》
「こういうのも悪くないなあ」
「そうだね」
三人は火を囲いながら、お食事休憩を挟む。
ルーゼリアは料理の腕もピカイチだ。
なぜか調味料も持参しており、存分にお鍋を味わった。
すると、ココネはカナタの腕にひっつき、ウトウトし始める。
「主様ぁ」
「ははっ、お腹いっぱいになったのか」
《今日ってキャンプ配信だっけ》
《リラックスし過ぎで草》
《ここって一応下層だよな……?》
《緊張感ねえwww》
《警戒心仕事しろ》
《ココネちゃんの寝顔拝むお^^》
《かわいいねえ(ニチャア)》
のんびりしているとは言え、
広い範囲をルーゼリアの炎で囲っているのだ。
その安心感もあり、カナタは続けた。
「ちょうど良いので雑談でも挟みますか」
《ちょうどいい(下層)》
《実はカナタ君も常識ないんよなw》
《かすんでるけど、こいつも大概だぞw》
《常識人面した異常人》
《周りが周りだしな……》
「なんかひどい事を言われてるような……お、質問を読み上げますね」
《結局、従魔ってなんやねん》
異世界には、三つの種族が存在した。
人間、魔族、亜人だ。
魔族は現代の魔物に
そして、亜人は基本的に中立。
ココネとルーゼリアはこの亜人に属する。
中でも、従魔というのは──。
「俺と契約を結んだ亜人、ですかね」
《へーすげえ》
《亜人ってのがいるのか》
《ダンジョンもまだ知らねえことばかりだな》
《ていうか契約!?》
《命令できちゃうの!?》
《えっっっ》
《それってやっぱり……》
後半の何かを妄想したコメントに、ルーゼリアは
「そうなの。カナタ君ったらえっちな命令ばっかり」
「したことないだろ!?」
《こいつ!》
《カナタてめえ!》
《けしからん奴だな!》
さらに、ルーゼリアはふっと笑みを浮かべた。
「契約を結んだ亜人には、“
ルーゼリアは服のボタンを一つ外す。
そのチラ見えする胸の上部に、紋章が浮かび上がっていた。
カナタとの契約を示す契約紋だ。
刺激が強い映像に、コメント欄は大歓喜。
《おっふ》
《お姉さん!?》
《と、とんでもない場所に契約紋が!》
《なんてこった》
《素直に感謝です》
《えっど》
《えっちすぎんだろ!》
《でっか》
《OMG》
《↑これには外国人ニキもオーマイガー》
だが、カナタは焦りながら彼女のボタンを閉める。
「そ、そんなの見せなくていいって!」
「えー、みんなにも見てほしいのに。カナタ君との証っ♡」
「頼むから自分を大切にしろ。あとチャンネルBANされるから!」
すると、隣のココネがむくりと起き上がる。
対抗心を燃やすような目だ。
「ココネもございますよ、ほら」
「おい!?」
ココネは背中のファスナーに手をかけた。
じーと下げていくと、同じく紋章が現れる。
契約紋が浮かぶ場所は、ランダムのようだ。
「ココネと主様が
「君達、俺をBANさせたいの!? 上げろ上げろ!」
《従魔によって違うのかよ!》
《なんてえっ、いや良いシステムなんだ!》
《ココネちゃんは背中か……》
《ふう……》
《契約紋自慢助かる》
《素敵な配信をありがとうございます》
《もう少し下げられませんか?》
《対抗心燃やしててかわいい》
《上級探索者から分析させてもらうと素晴らしい背中ですね》
こうなれば、気になる事も出てくるようで。
《契約ってことは、縛りでもあるんですか》
「あー、あるにはあるんですが……」
契約とは、主が目的達成まで従魔を従わせるもの。
カナタの契約は『魔王討伐』だった。
目的は達成されているため、契約は終了できる。
しかし、
「そろそろ二人の契約紋も消そうか──」
「嫌です」「ダメ」
「……ですよね」
契約紋は従魔を縛り付ける。
だが、二人はあくまで“誇り”に思っていた。
カナタの為なら全てを尽くす覚悟で。
「主様。もう一度言ったら泣きますからね」
「カナタ君はお姉さんと一生一緒なんだよ?」
「分かった、分かったから! ただの確認だから!」
病んだ目で寄ってくる二人に、カナタは慌てて訂正する。
「「ふふふふっ」」
《愛が重てえw》
《二人は自ら縛られてるのかww》
《むしろカナタ君が束縛されてて草》
《主従逆転》
《こっわ》
《ヤンデレやん》
《怖いけど羨ましい……怖いけど》
《目がガチなんだよなあ》
《重たくて良いぜ》
「じゃあ今日は、お姉さんと“夜の契約”ねっ」
「だからしないってー!」
「やん」
ちなみに、カナタは背徳的な命令も行使できる。
結んでいるのは、最も重い『
それでも、一度もしたことがない。
思春期らしく興味はある。
だが、どうしても頭を
(亜人にひどい扱いをするクズもいたからな……)
異世界の人間には、契約を悪用する者がいた。
立場などを利用し、亜人に強制的に契約を結ばせるのだ。
その結末は、男なら労働力、女なら
そんな光景も目にし、カナタは手を出していない。
「んもぅ、カナタ君のけちっ」
「はいはい言っててねー」
ルーゼリアもそれを理解し、半分冗談で言っている。
ただし、命令されれば大喜びで受け入れることだろう。
それほどカナタを
(そう思えるぐらい、お姉さんは救われたんだよ)
ふと彼女の頭を巡ったのは、カナタと出会った時の記憶だ。
────
異世界、とある日。
「う、うぅ……」
赤髪の少女は、暗い森の中で倒れていた。
かつてのルーゼリアだ。
まだ顔は幼く、体も小さい。
「お腹、空いた……」
もう一週間は何も食べていない。
体はすでに衰弱しきっていた。
だが、ルーゼリアはようやく決心できた。
(でも、これで迷惑をかけないよね……)
一週間前、ルーゼリアは
理由は、周りの者を傷つけてしまうから。
この頃のルーゼリアは、自身の強すぎる火を制御できなかった。
母は、自分を産むと同時に腹が焼けた。
父は、彼女の力を恐れて逃げた。
村人は、誰一人近寄らなかった。
優しすぎたルーゼリアは、周りに迷惑をかけるならと里を抜け出した。
自分一人が死ねば良いと考えたのだ。
しかし、後悔してないわけではない。
「私は何の為に生まれたのかな……」
生まれた時から恐れられ、迫害され。
自分の人生に意味を見出せなかった。
そして何より、単純に死ぬのが怖かった。
──そんな時、少年が現れた。
「大丈夫?」
「──え?」
「お腹空いてるでしょ。ほら、これ」
「……っ!」
パンを差し出したのは、見知らぬ少年だ。
怪しいかもしれないが、極限状態の食欲には
幼きルーゼリアは、パンをがっつく。
「お、おいしい……!」
「そっか、良かった~」
少年はルーゼリアに手を伸ばす。
だが、彼女は手を取ってから気づいた。
少年の手に耐性が付与されてないと。
「アチチチチっ!」
「あ、あ……! ごめんなさい!」
しかし、これはわざと。
少年は身を
手をふーふーしながら、少年は笑った。
「ははっ、噂通りすごい力だな!」
「え?」
「君を探していたんだ。この力は活かせるよ!」
「……!」
少年は、近くの里でルーゼリアの噂を耳にした。
それを聞き、わざわざ探しに来たのだ。
「俺は
「~~~っ!」
初めて“すごい力”だと言われた。
まさに、ルーゼリアが希望を見出した瞬間だった。
「はいっ!」
そして、カナタの手を取って知った。
人肌の“温かさ”を。
それから、ルーゼリアは厳しい鍛錬を重ねる。
熱い炎ではなく、温かい炎へと制御するべく。
もちろん全てカナタの為だ。
いつか心から触れられるように。
いつか思いっきり抱き着けるように。
そして、カナタへの脅威を全て排除できるような、“お姉さん"になれるように。
その強い想いは、ルーゼリアの身も心も大きく成長させ、才能を開花させた。
「カナタ君、今日から私がお姉さんだよ!」
「亜人の成長速度すごっ!?」
熱い炎と、温かい炎を完璧に制御し。
誰も寄せ付けない“不可侵の炎”と呼ばれるほどに──。
────
「ふふふっ」
そんな出会いを、ルーゼリアは一日たりとも忘れたことがない。
だからこそ、カナタに一生かけて付き従う。
魔王を討伐しようと、主が現代に帰還しようと。
「な、なんだよ。俺の顔に何かついてる?」
「ううん。なーんでもないっ」
「えぇ……ま、いつも通りか」
すると、カナタは立ち上がった。
腹も満たし、休息は十分のようだ。
「さて、次はどこに──んん!?」
そんな時、コメント欄に速報が流れる。
『青玉ダンジョン下層にて、大量の魔物が出現中。数分前のダンジョンシフトの影響と推測されます』
緊急ダンジョン速報だ。
場所はカナタ達がいる階層。
速報はさらに続いた。
『複数の探索者・配信者の被害が確認されています』
「なにぃ!?」
ルーゼリアの炎が安全なあまり、気づかなかったようだ。
この配信との温度差で
「俺たちも行こ──え?」
「「うおおおおおおおお!」」
「ちょっ、二人とも!?」
だが、ココネとルーゼリアはすでに駆け出している。
下層の奥へと向かうようだ。
カナタは追いかけながらも、二人の姿勢に感動していた。
「見直したよ! すぐに助けに行くなんて!」
「「待てええええええええ!」」
「ん?」
しかし、何か違和感がある。
「主様のスキルぅ!」
「カナタ君のスキルぅ!」
「……!?」
不吉な事を口にしながら、二人は爆走していった。