百式観音を背負いて。   作:ルール

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 百式観音が登場する作品が少ないから書きました。
 もっと百式観音を広めよう。
 

 


プロローグ

 

 気を整え、

 拝み、

 祈り、

 構えて、

 突く。

 その一連の動作を毎日一万回。

 

 それが千手狭間の前世から続けてきた日課。

【感謝の正拳突き】。

 前世に読んだHUNTER×HUNTERという漫画の登場人物であるハンター協会会長にして心源流師範アイザック・ネテロが己の限界を突破するために行った修行。

 彼を在野の一武闘家から人類最強の念能力者まで至らしめた狂気ともいえる荒行。

 それに、そのシンプルな己を高める鍛錬に、たかだか漫画に記載された修行法に、前世では武術とは無縁の喧嘩すらしたことのないただのサラリーマンだった俺は憧れた。

 毎日働かねば生きていけぬ一般人であるがゆえに山籠りなどできない。

 それでも一万回の感謝の正拳突きを始めた。

 できる範囲でもやりたかったからだ。

 アイザック・ネテロのようにただそれのみに没頭などできないが、日常の雑事を終えた後はひたすら正拳突きを繰り返した。

 その行為に意味などないことは理解している。

 運動にはなるが健康を保つ最適なエクササイズではないし、正拳突きが音速を超えるようになるわけでもない、やったからなにか得があるわけでもない。漫画のHUNTER×HUNTERのように念能力に目覚めたりもしないし、作中で最も好きだった念能力【百式観音】ができるようになるわけでもない。

 でもやった。

 ひたすらやった。

 ただただやった。

 無意味でもやった。

 理解していてもやった。

 だって格好良かったから。

 やり遂げたあの漢の姿に憧れてしまったから。

 あんな風に一つのことに打ち込んでみたいと思ってしまったのだから。

 そうした日々を何年、何十年過ごしたのか。

 気がつけば俺は死んでいて、

【NARUTO】の世界に転生していた。

 ・・・・・・・・・・・・HUNTER×HUNTERじゃないんですね。

 掲載誌は一緒ですけど。

 

 

 NARUTO。

 かつて日本に存在した特殊工作員及び諜報員及び暗殺者の一種とも源流とも言える【忍者】を異能力操る存在として描いた漫画作品。

 当然、ジャンプ愛読者である俺はその作品のことを(HUNTER×HUNTERのついでだが)よく知っていた。

 大まかなストーリーは忍びの集落の一つである木の葉隠れの里に生まれたイタズラ小僧うずまきナルトを主人公とした成長活劇。

 不遇な境遇だったナルトが大乱を乗り越え里の人々や世界中から認められて火影に到る物語。

 独特な世界観、見栄え良く派手な忍術、スタイリッシュな戦闘、細やかな伏線、深い人間関係、濃密な人物描写と設定、合間に挟まるエロス。

 と賛辞の言葉の尽きぬ名作である。

 

 しかしこの世界。

 実際に生きるとなれば前世の現代社会とは比較にならぬほど危険だ。忍者をメインとしているだけあって死が身近にあるのだ。

 それこそ、ただ生きてるだけではなんかの巻き添えになって死にかねないほどに。

 事実、忍びの里屈指の規模である木の葉隠れの里であっても作中で二度、或いは三度の崩壊を迎えているのだから。

 砂隠れ、音隠れの侵攻。

 ペイン襲来。

 無限月読。

 一般人であれば特に描写なく死んでいてもおかしくはない防ぎようのない騒乱。

 ただの一般人でもコレなのに、さらに特殊な血統や名家に特異体質であればその危険はさらに跳ね上がる。

 そういった際立つ存在は、迫害対象であったり、忍者になることが当然であったり、研究実験目的で拉致されたり、里の戦力低下を狙い始末されたりするからだ。

 まあそうでなくとも忍者になれば殉職当たり前の職業なので普通に死ぬ可能性があるが。

 実際に今生の父親は任務中に落命した(なお母は出産時にとのこと。転生者といえどその瞬間の記憶はない)。

 4歳までしか接したことはなく、口を開けば胸の話しかしない人物であったが、殉職を火影様から伝えられた時の喪失感は筆舌に尽くしがたいものだった。

 

 さて、

 記憶の整理を兼ねた思考はここまでにしよう。

 そろそろ物語を始めよう。

 なにせ原作は眼の前で始まっているのだから。

 木の葉隠れの里のシンボル、岩壁に歴代火影様の尊顔を彫った顔岩。

 そこに命綱一つでぶら下がりペンキで落書きする少年。

 うずまきナルトは、他者と関わりたいがために今日もイタズラを繰り返す。

 

(見てて痛々しいけどな)

 

 前世と合わせて半世紀を超える精神年齢を持ち、その境遇や事情を漫画で読み知っている俺はうずまきナルトの行動を内心でただ哀れんでいた。

 

 

 千手 狭間。

 NARUTO主人公うずまきナルトらと同期(ナルトは卒業試験に三度落ちているので微妙)。

 特技は正拳突きと、HUNTER×HUNTERの四大行を元にしたチャクラコントロール。

 そして、

 前世を含めた半世紀以上もの感謝の正拳突きで辿り着いた最強の力。

 

 百式観音。

 

 

 彼の物語はここから始まる。

 なお彼に友人はいない。

 

 





 補足、説明。

 主人公。
 千手 狭間。
 NARUTOの世界に転生した元オッサン。
 HUNTER×HUNTERのファンであり、特にアイザック・ネテロが好きだった。
 生前は毎日1日一万回の感謝の正拳突きを繰り返し、気がついたら生涯童貞のまま死去。
 転生後もその日課は変わらないが、前世よりも動けて、さらにチャクラというエネルギーがあることに興奮してのめり込んでいる。
 容姿は黒髪の幼い柱間に似た顔立ち。
 柱間の血縁ではないが、千手一族の末。
 感謝の正拳突き、チャクラ、忍界の勉強が楽し過ぎてのめり込んだため、人付き合いは絶無。
 周囲から見たら、父親の死に奮起している可哀想な孤児だったりする。

 千手 谷間。
 主人公の父親、オリキャラ。
 名前の通りの性癖の持ち主で暗部所属。
 血継限界はないが、千手一族の頑強な肉体と膨大なチャクラ量を持っていた。
 主人公が生活に困らないくらいの財産を残した。
 
 千手 ミネ。
 主人公の母でオリキャラ。
 出産時に死去。
 重吾と同郷で木の葉隠れ出身ではない。
 なんかデカかったらしい。


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