百式観音を背負いて。 作:ルール
感想での百式観音の強化案が魅力的なものばかりでした。
皆さんももっと百式観音の活躍を見たかったのかなと思いました。
一応作者も考えてはいますが、出るのは大分先になりそうです。
なにせこのオリ主は覚醒とは無縁の、積み重ねたことしかできないタイプなので。
「クッ」
両の手を合わせ、百式観音を繰る。
ポタリポタリと溢れる水音は赤く染まった脇腹から滴る血液が原因だ。
かろうじて致命傷は避けたものの軽傷とは呼べぬ傷。これは先程から百式観音の掌に叩かれ弾かれ挟まれ打ちのめされ突き潰されているかぐや一族の君麻呂の手によるもの。
一手のしくじり、ただそれだけでこうなった。
それは手を誤れば死ぬ。
その未来を示す根拠となった。
しくじった要因ははっきりとわかる。
打ち合いの末にではなく、君麻呂に俺の相手を任せて離脱しようとする大蛇丸を逃さぬように攻撃を放ったから。
サスケを狙う大蛇丸を優先し、君麻呂から僅かに意識を逸らしてしまった、それだけのほんの少しの心の隙をNARUTO作中屈指の体術使いである君麻呂は見逃さない。
すぐさま距離を詰め、肉体の各所から鋼鉄以上の硬度の骨を生やし伸ばした状態で狭間の横をすれ違った。
咄嗟の回避とオーラ操作技法の練が間に合わなければ上半身と下半身は別けられていたかもしれない。
それだけの威力があり、それだけの殺意があった。
百式観音は強い。
不可避の速攻は相手より後に攻撃しても先に相手を打ちのめせるほど。
後の先の極みとも言える相手の攻撃を見てから対処できるこの能力は、後年のネテロの相手の攻撃を待つようになった在り方の影響もあるのかもしれない。
しかしこの能力はどうやら百式観音という巨体ゆえにわかりにくいがタイマン戦仕様のようだ。
一手一動という仕様ゆえに複数の百式観音の攻撃に耐えられる強者達との戦闘には向いてない。
大概の敵には一手一動百式一掌で屠れ、百人が相手でも一手を百度繰り出せば問題ないのでわかりにくい、判明しにくい欠点であった(百式観音の技でまとめて一掃できるものもあるが)。
そして傷を負いながらも大蛇丸を逃してしまった理由だが、これは大蛇丸の類稀なる観察眼と人類を超えた感知能力によるもの。
大蛇丸は百式観音の一手一動という操作性と百式観音の腕の駆動範囲をこの短時間で見切っていた。
一部を除き最高位忍術以上の間合いであり、忍術で打ち合おうものなら繰り出す前に叩き潰されるほどの範囲ではあるが逃げに徹すれば距離を取ることは可能。
五大国最大の木ノ葉隠れ、世界最強の傭兵チーム暁、そして大陸全土のあらゆる組織から追われてなお逃げおおせる大蛇丸の逃亡技術は伊達ではない。
戦闘能力は無論最高位でありながら、それ以外の能力の方が高すぎるのが大蛇丸という存在なのかもしれない。
襲いかかり降り注ぐ四十を超える百式観音の腕から逃れた大蛇丸は、新たな器であるサスケに下準備を施すために手足がいくつか千切れてもすぐさま大口開けて内部から這い出て脱皮して、何事もなく再生してから死の森を駆けて行った。
・・・・・・・・・あんなことができるのにさらに不死を望む大蛇丸という生き物が理解できない。
多くの不死身を様々なジャンルで見てきた。
それでも大蛇丸の不死っぷりは穢土転生体と大差ないレベルではないかと思う(身体千切れても蛇で接合、もげても脱皮したら生えるとかなんなんだ?)。
「大蛇丸様は追わせないよ」
大蛇丸の追撃は不可能。
立ちふさがりこちらの命狙う君麻呂は絶対の強者。
影分身の術を使うか悩むが、影分身をしてさらに百式観音を使用できるかはまだ試していない。
百式観音が複数体創り出せる保証もない。
仙法の類で柱間様の明神門のように複数出せる可能性もあるが、今この瞬間は可能性なんて不確かなものに賭ける余裕なんてない。
そもそも俺は自身が大したことのない存在でしかないと理解している。
前世は単なる一般人、今世は経験浅い十二歳の下忍。その程度の俺は自信ある唯一にしか己の命を託せない。
全てを賭した土壇場の一か八かを制することができるのは主人公達だけなのだ。
「・・・・・・ならば俺はお前に殺されないし、お前を行かせない」
すまない、サスケ。
すまない、ナルト。
すまない、サクラ。
未だ生命力と怒気溢れる君麻呂相手に生き残ることだけを勝利条件とする自分を許して欲しい。
もし生存できたなら、強くなりたい。
これ以上の強者を倒せるほどに。
強化案はいくつかある。
それを試すためにも、生き残る。
場所は移り、サスケとサクラ。
百式観音による打撃音と破壊音を千手狭間の生存の証拠と認識し、怯えすくむ心を奮い立たせている二人はもう一人の班員であるナルトを探しつつも逃亡していた。
「どこいったあのウスラトンカチ」
「まさかさっきのヤツにもう」
まさか大蛇(睡眠中)の腹の中に居るとは想像すら出来ず、距離を取りながらも必死に捜索。
狭間が殿を務めている状況でナルトを見捨てることなどできないのだ。
「私がもっとヒナタみたいに感知できたら探せるのに」
「写輪眼もその点では白眼に劣る、気にするな」
同期メンバーの能力と有能さを狭間がきっかけの交友で知ったからこそ自分らのできないことに目がいってしまう。
他の皆が居れば。
そう考えてしまう。
「急ぐぞサクラ」
「うん」
捜索と逃亡。
神経すり減らしながら実行する二人だが、
「追いついたわ」
その足はここで止まる。
君麻呂に狭間を任せた大蛇丸がついにサスケ達に追いついてしまったのだ。
「な!?」
「え?狭間君は・・・・・・」
眼の前の強者、否、捕食者が此処に居る。
ならば大切な仲間がどうなったのか最悪の考えが脳裏によぎる。
「相手にしたら面倒でね、部下に押し付けたのよ」
面倒。
そう大蛇丸は言った。
穢土転生という切り札を所持する大蛇丸からすれば、経験足りぬ狭間はまだその段階。
ただ、倒し切る、殺し切る頃にはサスケが逃げ切れてしまうから追う方を選んだのだ。
「・・・・・・そうか」
うちはサスケは自身がどうすべきか高速で思考する。この明らかに試験官よりも強い下忍を装ったナニカが第二試験の巻物で交渉できるとは思わない。
命乞いの交渉など無意味だ。
死にたくない。
死ぬわけにはいかない。
復讐を果たさなければいけない。
アイツを殺すまで生きのびないといけない。
だって、そう。
兄さんがオレに言ったのだから。
【言ってる意味わかるなサスケ】
そんな過去の残照は友の言葉に打ち消された。
「わかってるよ、狭間」
自分がどうすべきか。
それがわかった時に人は笑う。
フッと全てを受け入れて笑う。
「行け、サクラ。
次はオレの番だ」
捕食者の名も目的も知らぬサスケはサクラの前に立ち、苦無を構える。
殿は強いヤツが務める。
ならば自分の番だと踏み締める。
「さ、サスケ君・・・・・・」
想い人に庇われる。想い人に守られる。
恋する乙女ならば心ときめかせ、目に♡すら浮かべてしまう状況だというのに、とてもそのような気持ちになれはしない。
今はサスケを失うかもしれない。
仲間達が死ぬかもしれない状況が現実が、サクラには耐えきれないくらいに怖い。
「・・・・・・彼の影響かしら」
困ったわと言わんばかりに大蛇丸は呟く。
サスケは、イタチを殺す為に生きてきた復讐の塊、その目的を遂げるまで絶対に死ねぬ者。
手段を選ばず目的を果たそうとする精神だからこそ、大蛇丸には引き込みやすく手懐けやすいのだ。
それが仲間のために死に急ごうとするなど、勧誘が失敗する可能性すらでてきてしまう。
「(急いだほうが良いかもしれないわね)」
第七班。
想定よりも目をつけていた器に影響があるようだと大蛇丸は判断した。
そんな大蛇丸の思考は自身へ向かう手裏剣が止めた。
「何を言ってんだサスケ。
殿ってのは一番強いヤツがやる」
その手裏剣を投げた人物はうずまきナルト。
「つまり、オレだってばよ!」
蛇の腹から多重影分身の術で強引に脱出し無事合流。突き上げた人差し指には数字ではなくリアルなラーメンが形作られていた(芸術度高し)。
「言ってろウスラトンカチ」
「ナルトォ」
サスケとサクラは絶望の最中にさした仲間の無事という光に笑みを溢した。
「サスケ、サクラちゃん、状況はわかんねーけど。狭間が合流するまでやんぞ!!」
「仕方ないな」
「うん!!」
狭間に殿を務めさせなければならないほどの強者。三人で戦うくらいなら狭間が居た時にやればよかった。
しかし狭間が殿を引き受けたから逃げられる可能性があったが、今の状況では不可能なのは明白。
そもそも危機的状況下では襲撃者から逃げてしまうものだがそれは簡単なことではない。
追う者に背を向ける。
それは後ろに目がついてなければ襲撃者の情報を得る手段を無くすことを意味する。
振り返る時のロスもまた半端ない。
だから追いかける側が圧倒的に有利なのだ。
ましてや飛び道具に事欠かぬ忍。
向けた背に手裏剣を投げつけられただけでおしまいなのだ。
「想定外ね(あの変態の息子の影響力を舐めてたわ)」
奇行と変態行為に塗れた千手谷間。しかし同時になぜか人誑しでもあった。
大蛇丸火影就任に賛成した時には上忍一割まで賛同者を増やし(それでも一割なのは大蛇丸と谷間の日頃の行いのせい)、壁のあったうちは一族との融和をあと少しのところまで成していた(女衆へのセクハラにキレた男衆が里内で写輪眼光らせ火遁ぶっ放して追いかけまわしていたが)。
「(まあいいわ、君麻呂がいつまで持つかわからないし呪印をつけることのみを優先しましょ)
口寄せの術」
腕の入れ墨に血を走らせ大樹が如き大蛇を呼ぶ。時間も押していることから大蛇丸は目的を下げてサスケ達へと襲いかかった。
「火遁豪火球の術!!」
「多重影分身の術!!」
「(私は二人をサポート、近寄ってきたら習った技で全力で殴る!!)」
写輪眼でタイミングを見計らい要所要所で火遁と手裏剣を駆使するサスケ。
激情から漏れ出る九尾のチャクラにより増した一撃で大蛇を殴り、多重影分身の物量で攻めるナルト。
二人より劣るチャクラ量だと自覚しサポートに徹し、起死回生の一撃にかけるサクラ。
その連携により押し上げられた総合力は、忍界大戦を知る大蛇丸をして感心する水準であった。
「・・・・・・けどまだまだ狭間君一人に劣るわね」
接近したナルトは舌で絡め取り五行封印で九尾チャクラとの呼応を妨害して意識を奪う(この舌を自在に操り両手をフリーにできるのが大蛇丸の微妙な強み)。
憤るサスケには無力感を与えてから首すじに噛みつき呪印を刻む。
その際にサクラが綱手のようにチャクラを拳に集めて殴りかかるも、百式観音に散々打たれた大蛇丸には誤差のうちだった。
「私の名は大蛇丸。
もしもさらなる力を求めるなら、三人ともこの試験を死にもの狂いで駆け上がり私の元へ来なさい」
見どころある原石達だと見込んだ大蛇丸はサスケのみならずナルトとサクラにまでそう勧誘した(狭間は手に余る域に居る)。
「ぐわぁ!!」
呪印。
天秤の重吾の細胞より創り出されたソレは、自然エネルギーを取り込み肉体を変質させ、さらに大蛇丸の意識まで宿った刻印である。
そんな異物を注入されてしまい、拒絶反応からの強制的な肉体の変化にもがき苦しむサスケをサクラは必死に抱き締める。
今の彼女にはまだそれしかできなかった。
ナルトは五行封印で気絶。
狭間はまだ戦っている(大蛇丸は目標の達成とナルトとサクラの意外な実力にウキウキして君麻呂に関しては忘れていた)。
サクラの孤独な孤軍奮闘の夜が始まった。
補足・説明。
まずは狭間と君麻呂のバトルを期待されていた皆さま方、すいませんでしたっ!!
戦闘中の覚醒や一か八かに賭けない狭間は、君麻呂撤退までひたすら百式観音でボコるだけです(死なない君麻呂がおかしい)。
決着はサスケ奪還編まで持ち越しで、それまでに強化入ります(ネタバレ)。
積み重ねたことしかできないオリ主なので。
今話は、狭間と君麻呂との戦いから、原作とは異なる成長した第七班の関係からの大蛇丸戦ダイジェストです。それでも原作とはほぼ変わらない結末なのは大蛇丸も谷間のせいで若干強化され、微妙に意識も変わってるからです。少しばかり視野の広い大蛇丸様です(でも木ノ葉崩しはやる)。
百式観音について。
作中設定及び解説は作者の解釈です。
あの巨大像を操るのに妙にタイマン向けな仕様に感じました。
いやサイズ的には軍隊でも一蹴できますが。
ただやはり狭間の未熟さが足を引っ張ります。
千手谷間のやらかし。
大蛇丸火影自薦時に上忍達に呼びかけを行いました。その際に「オカマが火影なら性癖フリーダムな里になるぜ!!」という勧誘発言をして危うく上忍待機所にマンダが口寄せされるトコでした(自来也が二人揃って蝦蟇に呑ませて防いだ)。
また九尾事件以降に里から遠ざけられたうちは一族に積極的に絡み(ミナトの願いだった為)、うちは一族への里人の印象を変えかけてました(写輪眼を光らせ変態を追いかけ回す姿が面白かったらしい)。
サクラの習った技。
片方は【凝】です。予想された方はその通りです。綱手に習う技に比べたら洗練さがまだ足りない段階です。