百式観音を背負いて。 作:ルール
原作では月光ハヤテさんの死により他国への警戒を強めた木ノ葉ですが、
当作品ではそのイベントが無くとも大蛇丸の存在で警戒はされております。
なおダンゾウ率いる根にも要請されていますが、ダンゾウは同盟国外の雲隠れや岩隠れの警戒を理由に断りました。
三代目火影猿飛ヒルゼンを超えたいあまりに大蛇丸と手を結んだダンゾウ。
しかし友の死まで望んでいたのだろうか?
なお、この世で一番大嫌いな千手谷間の忘れ形見の活躍に不快過ぎてブチギレそうになっています、
さらにダンゾウは大蛇丸の四代目火影就任を妨害していたとか。千手谷間が支持した、が理由の八割ですが、大蛇丸という自身の手駒を失わないためです。
中忍選抜第三の試験本選までの一ヶ月。
その修行期間とも言える準備期間が始まり半分以上、三週間の時間が過ぎた。
ナルトは自来也様から指導を受け、チャクラを使い切ってから口寄せの術を行う。
しかし三週間やり続けてなお完全な蛙の口寄せには至ってはないそうだ。
まあ、この修行の目的は口寄せの術習得よりもナルトの身体に封じられた九尾のチャクラを引っ張りだし利用するとっかかりを得るための修行。
契約した口寄せ獣一族の中から注ぎ込んだチャクラ量だけ強大な個体を呼び出せるこの術は、事実上術のチャクラ上限がない。
だからどれだけ九尾チャクラを引き出しても安心して使い切れる術なのだが、ナルトは未だに九尾チャクラを引き出すことができないらしい。
未だに足の生えたオタマジャクシと嘆くナルトだが、それはチャクラを水面歩行の業で使い切ってから口寄せしたから。
おそらくは平常状態ならば問題なく蛙を口寄せできる筈だが、綱手様編を思い出すとそれも怪しいか。
そろそろ自来也様もやらかすタイミングだとは思うが、ナルトの身が心配とはいえ余計な手出しは控えるべきだろう。
「狭間君の方はどんな感じ?」
「まだまだってとこ」
・・・・・・同期の娘さんがなんか当たり前のように夕飯を作りに来てくれてる件について。
木ノ葉に名高き旧家山中一族の令嬢、山中いのさんはエプロンを着て俺に山盛りご飯をよそってくれている。
ヒナタがナルトに差し入れをしていると聞いた彼女は、修行で疲れているだろうからと夕飯作りに通いだしたのだ。
いや君も本選参加者で修行で疲れているのは一緒だよね?
そして同班のシカマルとチョウジはどうした?なぜ二人きりに。
これはマズくねえかなと冷や汗をかきながら、俺はいのさん手作り野菜炒めをおかずにご飯をかっこむのであった。
(ナルトよ、来てくれ!!)
そうこの同期女子と二人きりで夕飯という甘酸っぱくも気まずい状況をぶち壊す彼の登場を俺は切実に祈った。
なおチャクラを使い切りぶっ倒れたナルトだが、娘さんを見守っていた日向家当主が保護したそうだ。
現在彼は木ノ葉随一の高級邸宅でスヤスヤと眠りについているとか。
修行期間が進むごとに増した日向一族の監視者達。彼らはナルトの印象をすっかり変えているのだとか。
修行の邪魔だから追い払うかと自来也様も悩んでいたそうな。
そして肝心の俺の虚刀流修行だが、三週間経ったが完成は遥か彼方ということを実感していた。
いやね、虚刀流自体がそもそも一子相伝のサラブレッド中のサラブレッドが生涯懸けて会得する剣法。
それを影分身の術で身体を増やして一人一つの奥義に専念したところでどうにかなるものではない。
もう少しやれば、一応は七大奥義は形になると思うが最終奥義の七花八裂、それらを百式観音に組み込むのはまだまだ先になるだろう。
虚刀流奥義に絞ってこれなのだ。
下手に欲をだして自来也様に仙人モードの修行をお願いしなくて良かった(一応は百式観音を見せてから訊ねたが、十二歳の身体には早すぎると注意された。あとサスケの呪印に関しては一応封印されたから中忍試験後に見てくれるそうだ)。
そんな進捗具合の今日この頃。
なお猪鹿蝶の三人組は順調で(そもそもこの三人は今回落ちても良い考え)、サクラはテンテンさんと共にガイ先生とリーさんに振り回されて苦しんでるそうな(サスケ断ちの禁断症状とかもでてるらしい)。
ニコニコと幸せそうないのさんと食事をしながら修行の期間は過ぎていった。
「(これは?)」
修行中に強大なチャクラの気配を感じ、俺は気配のもとへと急いで向かう。
辿り着いたそこには大きな足跡と、今度は引き出した九尾チャクラすらも使い切ったナルトが気絶していた。
修行は成功。
あとはこの感覚から九尾チャクラを自在に引き出せるようになれば、ナルトはそれだけで木ノ葉随一の実力者の一人になれる。
意識のないナルトを担ぎ木ノ葉病院で入院の手続きを取る。
あとはヒナタや同期連中に一報入れれば良いだろう。
そういえば原作ではこの場所で我愛羅の過去を知る展開があったか。
でも中忍選抜第三の試験予選でリーさんと戦ってない我愛羅が木ノ葉病院に来る理由がない。
彼ほど病院とは無縁の存在はいないのだから。
そう思い、病院を後にした三日後。
俺達は此処で我愛羅と遭遇した。
「・・・・・・なんで此処へ?」
我愛羅と遭遇したのはナルトを見舞いにきたシカマルと俺と回復したナルトだった。
ヒナタやサクラやいのさんの女性陣が別の時間に見舞いに来たのは不幸中の幸いかもしれない。
我愛羅が原作で木ノ葉病院に訪れたのは戦ったリーさんを殺すためだった。
戦い追い詰められ殺しきれず師との絆を見せつけたリーさんを仕留めにきたのだ。
「三日前強大なチャクラを感じた」
ガマブン太のチャクラか。
感知タイプでなくともあれほどデカければわかるだろう。
「その日はテマリ達に止められたが、確認のために来た」
「・・・・・・確認してどうする気だったよ」
冷や汗をかきながらシカマルが問いかける。こんな時にも情報収集をできるシカマルの胆力は流石だ。
「戦い、殺す」
もうそれしかない。
他者の命を奪うことのみが生を実感できる。
絶望が塗り固まり歪み固まった価値観が、激情の波となって襲いかかる。
「・・・・・・なんでそんなことを」
ナルトがそう問いかけた。
三日前に九尾と対面したナルトは我愛羅からナニカを感じとっているようだ。
自分に似たナニカを。
「オレは生まれながらのバケモノだ」
そこから語られたのは我愛羅の人生。
国からの予算低下により戦力を求めた砂隠れが行った人柱力を創る実験。
砂隠れが里創立時から封印してきた砂の化身とされる一尾の守鶴を生まれたばかりの赤子に宿した。
どこかで伝承が歪んだのか守鶴は前任の人柱力であった老僧の生霊と勘違いされてはいたが、我愛羅は里の実験により母の命を犠牲に生まれた。
そして、情緒育成が失敗したと暗殺者を差し向けられてきた。
そもそも、砂隠れの封印式は他里よりも劣っているという実情があった。
それは尾獣の中で、一尾の守鶴だけが初代火影千手柱間が捕らえ各国に分配した存在ではないからだ。
渦巻き一族と共に編み出した封印式があれば、まだここまで我愛羅が苦しむことはなかったかもしれない。
いや、先代人柱力の分福の件で人嫌いが増している守鶴との融和はどの尾獣よりも難しいだろうが。
「オレの存在は消えない」
我愛羅の過去語りは終わった。
貧困に喘ぐ大国の起死回生の一手はあまりにも心を蔑ろにしていた。
一族規模では無縁だった国力増強と国力維持。里という制度が生まれて起きた歪みの一つなのだろう。
「(何だコイツはマジやべー)」
同調できる経験がないシカマルはただ我愛羅の過去に圧倒され、
「(こんなヤツに・・・・・・勝てるワケねえ)」
その一人ぼっちという環境を理解できてしまうナルトは、自分よりも酷く悍ましい境遇を生き抜いた存在に呑まれて臆していた。
「・・・・・・で、やるの?」
でも、俺はなんとか平気。
前世で五十過ぎまで生きたら他所様の不幸なんて飽きるほど見てきた。
特に情報化社会の現代日本では、信じられない理由で失われる命や不幸など毎日見てきた。
慣れてしまったから、割り切れて、大切なものを見誤らない。
全力の君麻呂と死の森で交戦したからか、今の我愛羅に負ける気がしないのだ。
「・・・・・・さあ、感じさせてくれ」
「ただしその頃にはもうアンタは八つ裂きになってるだろうけどな」
そんな軽口を叩けるほどに。
今の我愛羅には何を言っても無駄だから、容赦する気がまるで起きないのだ。
「そこまでだ!」
ここでナルトの見舞いにきたガイ先生が制止に登場。同期会からか、各班の担当上忍達も俺達を気にするようになっているのだ。
ガイ先生の登場に我愛羅は引き下がり、決着は明日の本選へと持ち越される。
木ノ葉崩しが起きる明日へと。
補足・説明。
今話は、修行期間終了と我愛羅と遭遇です。
修行パートを長引かせてもなんなのでさっくり終わらせました。
結局一ヶ月では狭間は習得できず終いです。
正直微妙な出来で投稿を悩みましたが、こんな回も稀にあります。
書きづらくとも書かないと話が進まない回ですね。
ナルトの修行ですが原作通りです。
ただ、ヒナタが頻繁に差し入れしにきて、その度に日向一族がぞろぞろ増えました(ナルトとヒナタは気付いていない)。
ナルトを崖から突き落とした後に、自来也は日向一族と一戦やらかしたそうです。
ネジに関しては自然エネルギーに興味を持ちましたが、知っていて扱える存在がほぼ居らず完全に手詰まりだったそうです。ヒアシさんならば自来也と伝手がありましたが、ネジは彼を避けているので。
いのはヒナタの行動力を参考に千手宅に通ってました。山中さん家は狭間をよく知ってるため日向一族みたいにやらかしたりはしてません。
サクラは、心労で病んでます。
テンテンも苦労してましたが、善人ですがとにかくガイ先生とリーは濃いので。
書かないと止まる。
そんな焦りが過った1話でした(汗)。