百式観音を背負いて。   作:ルール

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「くくく、うちは一族は滅び、猿飛一族の次代は三代目に及ばず、志村一族は後継がおらぬ。
 ならば九尾の人柱力を手中に収めれば木ノ葉は我ら日向のモノよ」

 なんて、卑の意志が滲み出る政治的な話を日向一族当主であるヒアシ様は、
 一切考えておりません。
 まだ納得(父親はどんな彼氏も気に入らない心理)はできませんが、娘が幸せならそれで良いと考え、ただ分家連中が騒ぎすぎだなと悩んでいます。
 あとネジにいつ真実を打ち明けたら良いかと胃を痛めています。 



原作12巻①

 

 中忍選抜第三の試験本選が開始した。

 うずまきナルトと日向ネジの戦い。

 ナルトが警戒すべきは白眼を持つ日向一族でも下手すれば数人しかできない柔拳による点穴突き。

 点穴を突かれてしまえばチャクラを練ることができなくなり忍術が使えなくなる。

 それだけではなく身体能力増加効果もなくなるのでやられてしまえば一方的にやられることになるのだ。

 HUNTER×HUNTERのクラピカの念能力、捕らえた対象を強制的に【絶】状態にする【束縛する中指の鎖】と同じくらいの反則技である。

 もっとも、ガイ先生やリーなどチャクラ強化無しに身体能力が高そうな人物や、角都や飛段のように肉体が人類からかけ離れた存在に通じるかは気になるところではある(飛段の不死身がチャクラ由来ならば即死の可能性もあるが)。

 ナルトはネジが点穴突きをできることを前提に警戒しつつ戦わなければならない。

 しかしナルトはリーほどではないが忍術が不得手。ネジの接近を許さぬほどの遠距離封殺をする放出タイプの術など使用できない(またこの手の忍術が雑魚以外に有効的だった試しがあまりない)。

 ならばどうするか。

 答えはいつも通りの、

 

「影分身の術!!」

 

 である。

 会場の観客席でとりわけ忍達がざわめきだす。ナルトが影分身の術を使用したからだ。

 ナルトが使いまくるし教えてくれるから同期連中ではもはや驚きはしないが(木ノ葉丸も覚えるし)、影分身の術は上忍レベルの術。

 中忍選抜試験の試験官を務めた中忍達も大半が使用できないのだ。

 そして白眼相手に影分身の術は最適解。

 影分身の術はチャクラが分身全てに等量に配分される(だから負担が大きいチャクラ喰い忍術なのだが)、経絡系を見切る白眼では本体を看破できない(写輪眼なら忍術とわかるが)。

 

「だが所詮、本体は一つだ」

 

 数の利を得たナルト。

 苦無構えたナルトと柔拳の型をとるネジの一対多の戦闘が始まる。

 本人同士によるナルト影分身体による連携は見事なもの。四方八方からの淀みない連続攻撃は凡百の忍ならば容易く押し潰されるだろう。

 しかし相手は日向の天才にして忍界最強の体術使いの部下である日向ネジ。

 体術のみで数の利を覆す圧倒的な実力がある。

 

「火影になる、かァ。これじゃ無理だな」

 

「なんでそうやって勝手に決めつけんだってばよ」

 

 ナルトの影分身連撃をあっさりといなしたネジはそう語りだす。

 ナルトの努力は無駄だと、火影になるなんて無理だと、それができるのは運命でそう決められてるものだと。

 分家に生まれたばかりに死を強制された父親の姿から日向ネジはそんな価値観の下で生きている。

 きっとそうしなければ耐えられなかったからだ。額の呪印ある限りは宗家に不満や嘆きを訴えることはできない。

 いつか自分も父親のように殺されるという未来を想像し、これからに希望をもてないのだ。

 生まれが全てを決める人生。

 日向一族以来最高の才能をもって生まれようと、そこに意味などないのだと。

 なぜなら自分は宗家に生まれず、父は宗家でないから殺されたのだから。

 

「だから何だってんだ!!」

 

 多重影分身の術を発動。

 それだけの影分身を作れるチャクラお化けぶりに忍達は「「「ええ〜〜〜何アレ?」」」と驚愕し、サクラなどの冷静な者は無駄にチャクラを浪費してると焦りだす。

 なお日向ネジはナルトオリジナル忍術のキングナルトの術を警戒していた。

 それを使われそうになれば直ぐ様叩き潰そうと決めているほどに恐れていた。

 あの群体合体装甲忍術は日向ネジをして驚きを隠せなかった。

 ネタ忍術と笑われてもおかしくはないが、秋道一族の倍加の術による巨大化などより柔拳とは相性が良くないからだ。

 しかしキングナルトの術は発動前に身体を組み上げる工程が必要不可欠(影分身体が変化するパーツをイメージしないといけないため)、それだけの時間があればネジであれば打ち砕くことができてしまう。

 キングナルトの術と倍加の術。

 一長一短がそれぞれあるようだ。

 ちなみに倍加の術と柔拳の相性は最悪である。

 点穴で無くともチャクラを流して内部破壊を行う柔拳にとって倍加の術は的が大きくなるだけなのだ。

 その巨体で尾獣とすら相対できる秋道一族。

 里の守り人たるこの一族が木ノ葉最強に成れなかったのは日向一族との相性の悪さがあったからだ。

 再度のナルト軍団大進撃。

 しかしコマもとい舞台がナルトで埋め尽くされる中をネジは造作なく掻い潜り、一体のナルトを本体だと当たりをつけ攻撃した。

 心理的な分析。 

 点穴突きを怖れ攻撃頻度が最も少なく距離を置いた個体、それが本体だと判断したのだ。

 本体はバレ、勝敗は決した。

 ここまでだ、そう思う観客すらいた。

 血を吐き俯くナルトをネジは無駄だと言う。

 しかし、

 

「決めつけんなって言ってんだろーが」

 

 ネジが本体だと判断した個体はボンと爆ぜ消えた。

 

「何っ!?まさか!!」

 

 虚を突かれたネジ。

 忍は裏の裏をかくべし、カカシ先生の教えがナルトにしっかりと身に付いていた。

 ・・・・・・影分身の術開発者の扉間様であれば土遁なりで本体を隠し、その怪しい素振りの個体に起爆札を仕込みそうだなと千手の末裔として思いました。

 さらにダメージを受けたらすぐに消える筈の影分身体も血を吐いてまで耐えてみせた。

 それは演出のための工夫ではない。

 影分身体もまたナルト。

 意地を張り、消えまいと耐えてみせたのだ。

 点穴が怖くとも下がらない。

 玉砕覚悟で突っ込むのがうずまきナルトである。

 残りの影分身体が殴りかかる。

 体術に長けたネジであろうと手足の可動域的に反応しきれない配置。

 これは当たる。

 そう誰もが期待と確信した中、ネジもまた新たな一手を切る。

 頬に当たる筈の拳はその箇所から溢れたチャクラが防ぎ、チャクラ放出で加速した円運動がナルト達を弾き飛ばす。

 八卦掌回天。

 柔拳の基本的な動きである円運動とチャクラ放出、さらに白眼のほぼ全方位の視界があって成せる、我愛羅と並ぶもう一つの絶対防御である(狭間の【堅】も大概だが)。

 回天は日向宗家、日向跡目だけに代々口伝される秘術。

 確かに日向一族の体質と型と技を合わせた技であり、理屈としては辿り着けないことはない。

 しかしそれが出来てしまうのは、やはり日向ネジが日向一族始まって以来の天才だからなのだろう。

 

「くっそー!」

 

 弾き飛ばされたナルト。

 一人残った本体に再度影分身をされぬようネジは必殺の奥義をかける。

 

「柔拳法八卦六十四掌」

 

 予選にて点穴突きを【凝】で防いだヒナタを倒したその技を。

 

「そいつは・・・・・・見たってばよ!!」

 

 だがナルトとてそれに無策で応じない。

 一ヶ月の修行期間、なにも毎日日向宗家に保護されていたわけではない。

 きっちりと千手狭間宅に泊まり食事を御馳走になり、ネジ対策の案を尋ね聞いていたのだ。

 

「四大行【練】!!」

 

 四大行でナルトに一番適性ある技法。

 九尾チャクラを引き出す修行を熟したからこそ、あの天才ズシですら苦労したこれをナルトはなんとか意図的に発動できるくらいに身につけていたのだ。

【練】を発動し全身から瞬間的に激しくチャクラを放出し、ネジのチャクラが込められた二本指拳による点穴突きを防ごうとするナルト、要するに点穴突きはネジのチャクラがこちらの身体に入りこまねば防げるのだ。

 しかし、

 

「・・・・・・見ていたのは、

 オレも同じだっ!!」

 

 ネジのその両手のチャクラは予選で見た時よりもチャクラが集まっている。

 ヒナタに点穴突きを【凝】で防がれたことを忘れるネジではない。

 狭間のチャクラ纏いを見て柔拳が通じない可能性を考えぬネジではない。

 新たな力である自然エネルギーの手がかりがないのならばやるべき手段は一つ。

 千手狭間から広まりつつあるチャクラコントロール技法【四大行】を使うのみ。

 カカシ経由(狭間許可あり)でガイに伝わった四大行の概要。

 予選試合を白眼で観察した成果。

 柔拳のチャクラコントロールとの相性の良さもあり、日向ネジは【凝】を半ば独学(練との併用なし)で自らのモノにしてみせた。

 

「八卦二掌!四掌!八掌!十六掌!三十二掌!六十四掌!!!」

 

 ナルトの【練】の防御を、ネジの【凝】による二本指拳が貫き破り、六十四の点穴は突き封じられた。

 一ヶ月の修行期間。

 強くなるのは何も追う側であるナルト達ばかりではない。いや、狭間という存在を知ったネジもまた追う側なのである。

 

 

「やんなるよもう、俺がどれだけ【練】と【凝】を覚えるのに時間かけて苦労したと思ってんのさ」

 

 それを見た追われる側である千手狭間は、ナルトとネジの学習能力の高さに情けなく凹んでいた。

 実質彼の一ヶ月に成果はほぼ無かったので仕方なくはあるが。

 

 

「ぐっ・・・・・・」

 

 立てぬほどのダメージ。 

 痛みを堪えナルトは俯く。

 

「フッ・・・・・・悔しいか?

 変えようのない差に跪き己の無力を知る。

 努力すれば必ず夢が叶うなんてのはな。

 ただの幻想だ」

 

 これだけの才と力があろうと変わらぬ、己の立場を呪いながらネジはそう吐き捨てた。

 ちくしょうとナルトは思う。

 届かぬ実力をナルトは思い知る。

 けれど、

 それはナルトが諦める理由にはならない。

 それはナルトが立つ理由にしかならない。

 だってナルトは見てきたから。

 勝てぬかもしれない者に挑む姿を。

 だってナルトは知っているから。

 果なき先へ進む途中を楽しむ変態を。

 前に進むと決めたのだ。

 そこに壁があって当たり前だ。

 だからナルトは立ち上がる。

 

「言っただろ・・・・・・オレは諦めが悪いんだ」

 

「(コイツ・・・・・・バカな)

 もう止めておけ」

 

 この時のネジの心境はハンター試験の時にゴンと戦ったハンゾーに近いのかもしれない。

 ここまで頑張る理由がわからない。

 ここで意地を張る理由がわからない。

 そこに合理性などありはしない。

 でも引かない。

 ゴンのようにここで引いたら進めなくなると感じたのもあるかもしれない。

 そしてなにより、

 意地があるのだ、男の子には。

 

「やめねえよ。

 諦めないオレを見てくれるヤツがいるからな」

 

 だからこそ不快に感じた。

 あんな連中のために頑張るナルトが。

 何も知らないこの少年が。

 

「なら教えてやる。

 日向の憎しみの運命を」

 

 ナルトの肉体は限界、今はかろうじて心がその身を支えている。

 ならば心を折る。

 その根底にネジへの反発があり、ネジの思想への反発があるならば、過去を伝えて納得させる。

 そうなればもううずまきナルトは立ち上がれないだろうと予測して。

 ネジから語られたのは日向宗家と分家の在り方。

 それを支える籠の中の鳥を意味する呪印術という証。

 そして、

 父ヒザシが双子でありながら分家というだけで殺された、忌まわしきあの事件。

 運命は決まっている。

 変えようのないどうにもならない事象が運命なのだ。

 その語りに会場は沈黙する、幸いなのは舞台から観客席まで距離があり、内容を聴き取れたのが聴力がとんでもない存在である忍だったこと。一般観客及び大名様は聞こえておらず、同盟国の忍び頭達は軍拡に熱心で手段選ばぬ雲隠れのいつものやり口に辟易していた。

 なお、一番悪いのは雲隠れでは?と思う忍が少なからず居たとか。

 

「わかったろう、変えられぬモノはある。

 お前はオレに負ける運命だ、絶対にな」

 

「ぐっ・・・・・・そんなもんやってみねーと分かんねーだろ!」

 

 ネジの口撃、されどナルト心折れず。

 もういい。

 ネジはそう諦め、ナルトを殴打する。

 やり過ぎれば審判が止める。

 ならばそうなるまで叩き潰そうと決めた。

 未だに試合を開始してから一度もナルトの攻撃は届いていない。

 一方的にナルトは殴り飛ばされる。

 でも、

 ナルトは諦めない。

 諦めたらいけないと感じていた。

 

「お前みたいに運命だなんだ、そんな逃げ腰ヤローにゃぜってー負けねェ・・・・・・!」

 

 その言葉がネジの癪に障る。

 だから言った、

 

「一生拭い落とせぬ印を背負う運命がどんなものか、お前などに分かるものか!」

 

 三代目火影が施行した掟。

 それがきちんと守られていたからこその無知。

 日向ネジとてうずまきナルトの事は知っていた、だが嫌われているのは孤児のイタズラ小僧だからと解釈していた。

 だから知らなかった。

 ナルトの過去を。

 だから、親を任務で亡くした千手狭間や皆殺しにされたうちはサスケとは違い自分の気持ちを察せないだろうと決めつけていた。

 

「ああ・・・・・・分かるってばよ。

 んで、それが何?」

 

 自分の気持ちがわかってなお、ナルトが諦めないだなんて想像すらできなかったのだ。

 

「別にお前だけが特別じゃねーんだってばよ」

 

 ナルトは知っている、身内を失った仲間を。

 ナルトは知っている、霧隠れの因習に立ち向かった者達を。

 ナルトは知っている、そんな者達も誰かに手を引かれれば前を向けることを。

 自分だって救われたから。

 

「ホントはお前だって、運命に逆らおうとしてんだろ。なあ日向ネジ?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「そこまで言うなら証明してみせろ。

 もはやチャクラすら練れないその身体でな」

 

「ああ!

 ぜってーお前を倒して、それを証明してやる」

 

 

 その後の両者の激突は会場を揺るがした。

 勝敗を決したのは、日向ネジがうずまきナルトの過去を知らなかったこと。

 ナルトが九尾の人柱力であり、ナルト本人のチャクラを封じることが九尾のチャクラを引き出しやすくなる。その事実を知らなかったことだ。

 またネジはナルトを揺さぶり過ぎた。

 激情が封印からチャクラを引きずりだすのだ。

 さらに四大行を習ったことで引きずりだしたチャクラ運用が原作より上手くなっていたりする。

 九尾のチャクラを纏い突き進むナルトと、それを白眼で見切りいなすネジ。

 激しいぶつかり合いの末に両者吹き飛び会場にクレーターを作る。

 そこから先に這い出てきたのはネジで、倒れ伏すナルトに周囲は勝敗を確信した。

 だがナルトは、周りが思うよりもしっかりと学んでいる。

 そして影分身の応用に関してはズバ抜けている。

 倒れ伏したナルトは影分身体であり、本体は地面を掘り進みネジの顎へと不意の一撃を叩き込む。

 担当上忍のはたけカカシが如き土遁(物理)である。

 

「勝者 うずまきナルト!!」

 

 自分は分身の術が苦手で、だからアカデミーを落ち続けていたとナルトは告げる。

 そんな自分が今、影分身の術でネジを倒した。

 変えられるモノはある。

 そうナルトは伝えたかったのだろう。

 

 

 狭間は、そんなナルトに感謝をした。  

 運命論者であるネジに、転生者であり原作知識に縋って生きる己は何も言えないからだ。

 これもまた予定調和なのだと、狭間は死んでも口にだしたくはない。  

 過程は違う。

 このナルトとネジの歩みは違うのだ。

 だからきっと、

 その歩みに意味はあるのだと狭間は思いたい。

 

 

 会場に拍手が鳴り響く。  

 うずまきナルト。

 九尾を封じられた忌み子は、また一段と里の人々に受け入れられた。

 日向一族の者達は、喜びと感動と自責と反省の感情が入り混じっていた。

 ナルト(若様)の勝利は喜ばしい。 

 しかし一族の子であるネジを天才だから大丈夫と気にかけてやってなかったことが申し訳ない。

 日向分家で亡きヒザシほど宗家に反発する者は極めて稀である。

 現当主の双子の弟という生まれ(だから争いの種になる不吉な存在として双子は生まれてすぐ殺される因習もあった)、才覚に満ちた実子の誕生がそうさせてしまったのだ。

 人は手の届きそうで決して届かぬモノにこそ執着し渇望するのだから。

 

 その後、病室で日向ネジは真実を知る。  

 真実を知り、受け入れた。

 受け入れて前を見れた。

 

 ナルトのように、ヒナタのように、白のように、また誰かに手を引かれて救われた者が出来たのだ。

 

 





 補足・説明。
 
 今話はナルトとネジ戦です。
 前書きはネタですのでスルーしてください。
 今話は飛ばしてナレ終わりにしようかと悩んでましたが、なんとかやりました。
 基本的に原作と変わりませんが、狭間の影響はあります(だから書くのが大変)。 
 ちなみに一番思ったのが、この日向のアレコレを会場で語ったらマズくね?でした。
 だから案の一つに修行期間でネジとぶつかり和解して会場は全力試合にする、というのもありました(数倍大変になるから断念)。それだとナルト負けましたし。
 日向のアレコレ聞いた忍は、木ノ葉はまじかよ日向宗家やべーじゃんと雲隠れサイテー。
 他里の忍頭は雲隠れのいつもの認識です。
 なにせ五影会談で土影が文句を言うくらい雲隠れはやらかしているそうなので。
 あと日向一族が原作より軽いのは谷間の影響もあります。
 彼の存在があっても拗れたままだったヒザシさんもかなりの頑固者ですが。
 
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